グレートジャーニー   作:照喜名 是空

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フェスっていうかツアー

ってなわけで緊急ライブだ。ラジオで全国放送もしている。

シケたツラのマイ国民共が私の言葉を待っていた。

目の前を埋め尽くす群衆。きらびやかなステージ。バックバンドも勢ぞろいだ。

 

「……スゥーッ」

 

一呼吸して、ありったけの感情を込めて『全力』でギターを思いっきり早弾きした。

スラッシュメタルによる火の出るようなギターリフ。

私の今の全力を込めた力強いメロディ。

 

「お前らーッしけたツラしてんなあ!目ぇ覚めたか?」

 

一瞬の間を置いて大歓声。

私の演奏はわずか15秒でうなだれた観衆の心をつかんだ。

つかめちゃったんだ。戦友死んで落ち込んでる状態の客相手にだ。

もうこんなん音響洗脳兵器だよ。

 

「お前らのつらさはわかる。きつかったな。つらかったな。けど……よく考えてくれ。なんで私たちがこんな目に会わなきゃいけねえ?私らあいつらに何かしたか?いや!そもそもなんでアイツラ偉そうに私たちに命令してんだ?ふざけるなよ!!」

 

私の考えた士気高揚の策は簡単だ。落ち込むくらいならブチ切れろ!

 

「私たちはここにいるんだ!ここで生きていいんだ!それを誰かから指図されるいわれはない!誰が何と言おうと……頼まれなくっても生きてやる!!生き延びようぜ!皆!!」

 

噴火のような歓声。よし、とりあえず乗せることはできたな……

 

「なんか……こないだあっちで魔王教とかいう宗教が出来たらしい。私ら破門で魔族でも何でもねえってよ。……ざまあみろだ!!魔族なんざ辞めてやらあ!美味い飯もイカした音楽もねえ、魔法オタクに戻りたい奴いるかぁ!?」

 

ここで耳に手を当てて返事を聞いてみる。

 

「ノー!!」

「俺たちは魔王軍なんかに戻らねえ!」

「イブキ様についてくぜー!」

 

こりゃあ私、死んだら地獄に落ちるなマジで。

だからこそ……死んで楽になるわけにゃあいかねえんだよ。

生き切ってやるんだ。駆け抜けてやる。

 

「なら私たちが何か教えてやる!!いくぜ!『無明外道経』!!

『私の業がこれだというなら、私は鬼だ

光溢れる世界でも、呪われた者には何も見えやしない

呪いを飲み干し、無明の中ですべての鎖を引きちぎる。それが私の道だ』」

 

ノリのいいギターとハイテンポなドラム、それらを絶妙に混ぜ合わせるベース。

いいね。ノッてきた。

 

「ここにスタースタイツ大統領として宣言する!私たちは!『鬼』だ!」

 

ここで『錬金』で今着てる服を分解して即新しい衣装に変えていく。

真っ赤な花柄の『晴れ着』ってやつをコートみたいに羽織って。

紅白の『しめ縄』をベルト代わりにした。これが鬼の『正装』だ。私がそう決めた。

 

「鬼ってのは、まつろわぬモノ、人じゃねえ強いモノ、そういう意味がある!力強く泳いでいこうぜ!この人生という激流をよお!!」

 

間奏は終わり、歌が始まる。スタミナに来るけど、気分がいいからやってやるぜ!

 

『アタシは飛ぶ。アタシは地を這う者達の翼になりたい。高く、高く。輝いて。誰も迷わないくらいに。私はここにいるんだ!』

 

私は拳を突き上げると、1万人はいる大群衆も拳を突き上げた。

この一体感、最高だね。

 

 

その後……この衣装が鬼の『正装』であることを告知したり、私が左手に入れた蓮の花と蛇の模様の入れ墨を見せたり。

ガンガン入れ墨とか晴れ着とか真似しろよっていったり。

ひと通り発表したら新人発掘だっつって前座バンドをその場で募集してオーディション企画をいきなりやったり。

合間合間に余興でストリートファイトを開催したり。

休憩挟みつつ、とにかく間を持たせるために色々したよ。

 

そうやって3日間騒ぎ通して時間を稼いだ所にバアルの絶品料理が出てまあ美味いのなんの。

なんかよくわからねえ前衛的な料理だったが。

これでそのへんの野菜や肉からできてるからよくできてるよ。

分子ガストロノミー?とか言ってた。

 

「どうですかァ……?さすがに一万人弱用意するのは骨が折れましたよォ……」

「なんかよくわからねえけどうめえ!うめえしか言えねえ!言葉なくなるわ」

「それは何よりですゥ……!」

 

一万人分の極上の美食を用意してバアルも倒れてたけど。

でもこれなら合格点あげられるわ。

そして半日の休憩を挟み……私は宣言した。

 

「しゃあっ!うめー飯だったな!まだバカ騒ぎできる体力残ってる若えの!このまま隣の魔王軍まで飯届けに行こうぜ!飯と!歌と!酒で!魔王軍を買収してやるって言ってんだよ!!」

 

三日間の乱痴気騒ぎでテンションが上がり切った体力バカ勢はノリノリで私についてきた。

そうだよ!私の軍ってのはこういうもんだ!こざかしく軍備とからしくねえんだ!

 

 

この狂気の沙汰は都市七つを落としたところでいったん停滞した。

隣接する最前線は落とせたし要衝もいくつか落とせた。

だがいよいよ魔王軍のお膝元となるとガードが堅いっていうか、魔王教の『聖歌』による文化の防壁があったのだ。

毎回レベルの高い対バンになって勝ったとしても寝返るやつが三分の一以下だった。

けっこうがっちりファンをつかみやがってセレナのやつがよ……

弟子レベルでこれだもん。あいつが今どれだけのレベルにいるかを考えるとな。

 

「今回はこのくらいで勘弁してやらあ!行こうぜ新入り共!!」

 

とにかく、『洗礼』もして頭の構造から変えて、ドギツイ娯楽にドップリつけてもう帰れないようにしてから寝返らせたやつを引き連れて凱旋行進よ。

 

……とにかく当初の狙い通り、人口増加と寝返りで街は落とした。

侵攻計画からいっても普通に撃ち殺して進軍するのと同等の戦果だ。

これで、魔王国の南半分は落とせた……けど、こらからはおそらく戦線は膠着するはずだ。

これより先にいるのはセレナの強火ファンなうえに魔族としてもガチな奴らばかりだからな……

 

とにかく、とにかく街の拡張とかからやって、兵を休ませて……内政しよう。

国内をちゃんと整備しよう……さすがに疲れたわ。

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