そういうわけで半年くらいは内政に専念できた。
魔力ダムの建設はイシュトアン様やその系統の専門家を集めたら1か月でできたよ……
改めて魔族、いや鬼の魔法適正おかしいわ。
「うふふふふ……お姉さま、今日も私の魔力ダムが遠くまで良く見えるわ~」
「お前毎朝それ言ってんじゃん……」
窓を開けると遠くの荒野に山脈のようにクソデカい魔力ダムが一杯見えるんだよね。
その額……なんと五十億ミスラ。国家予算らしい額になってきたよ。
市場も好調だ。
『魔法集め』をメインにした娯楽産業や知育玩具が飛ぶように売れている。
ミスラ曰く『お札を刷っているようなもの』くらいチョロい稼ぎ方してるらしい。
「ここも小奇麗な街になったなあ」
「いいわよね広々して」
首都ガッデムはほとんどの道が片側三車線だ。
家にしたって玄関開けたら隣人が豆粒くらいにみえるほど間を開けている。
ほら……私らもともとぼっち種族じゃん?人混み無理なんだよね。
幸い土地は無駄にあるからよ……
家もだいたい円形とか曲線多めで人間が見たらおかしな街並みに見えるだろう。
「クロト、飯作ってくれ。『バアルのお好みスープ』な」
ミスラの舎弟の一人、『縫い子』のクロトを呼び出す。
私の家も伝声管がなんかできたからな……技術の進歩を感じるよ。
1分せずに金髪ひょろのっぽのイケメンが入ってくる。
「どうぞ、イブキ様。ミスラ様は『バアルの百味パスタ』でよかったですか?」
「気が利くわねー。さすが私の『執事』よね!」
「光栄にございます」
クロトの押してくるカートには虹色に光るスープとぐねぐね動くパスタが皿に乗っている。
これがバアルがあのフェスで公開した『魔法料理』の一端だ。
「いいねー。それじゃ『トマトスープ』」
スープがスッと赤色に変わる。
これ、スープに注文したら味が変わるし、何も言わずに飲んだら飲んだやつの味覚に合わせて最適な味になるんだぜ。
魔法と料理の組み合わせの可能性を知ったよ。
バアルは『料理にはサプライズが必要』とか言ってたからな。
もちろん、こんなん人間にはできない。
そんな湯水のように魔法は使えないからだ。
まさに我が国が誇る『文化』ができたってわけよ。
「うめえな……」
「毎日この料理が食べられるだけで戦争した価値はあったわよね。庶民でも食べられるのよ?収支は黒字よね」
「朝飯食ってる時くらい戦争の事忘れさせてくれよ……」
こいつ最近、輸入した経済の本を読みまくってるからいちいち損得でモノを語るんだよね。
「どうせ膠着状態だからいいじゃない?」
あれから半年、戦線は不気味に膠着している。
ミスラ曰く、人間との戦争でもそんなものだったらしいが。
そんなダラダラやってっから終わらねえんだよ!
いや、魔王は戦争を終わらせる気なかったのかもな。
殺人種族への福祉、公共事業くらいのつもりだったんだろう。
「セレナに半年与えたら絶対まずいんだよなあ……あいつ絶対なんか準備してるって」
「気にしすぎよ」
そこに伝声管からファンの鑑の声が聞こえた。
あいつ今、伝令とか使者やってんだよね。やたら生存能力高いから。
「イ、イブキさん大変です!人間どもがセレナをブッ殺すからステイツも手伝えって言ってます!」
「ほら~……絶対なんかやらかしたよアイツ。わーったよ。会うよ。そんで今どのへん?」
「もう国境で待ってます!」
「朝っぱらからふざけやがって……!飯くらいゆっくり食わせてくれよ!」
「ウス!すいません」
「行くよ、も~!」
魔法の美食をパパッと食べて錬金で服を作って外に出る。
ん~畑にポツンポツン丸くてでっかい家がある風景はいいね。
だだっ広い道には小さな露店がちょくちょくある。
私の国だ。ここが私の作った居場所だ。守ってみせるさ……