グレートジャーニー   作:照喜名 是空

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出征式①

まあそういうわけで気が乗らないけど出征式だ……

目の前のドでかい六車線道路を埋め尽くす鬼と人の兵列。

整然と並ぶその横に私たちのステージと観覧席がある、

軍事パレードってこんな感じでいいのか?

わかんねえけど、まあサマにはなってるはずだよ。

人間側が鎧着た兵士が整然と行進してるのに比べて、こっちはド派手な着物をゆったり来た薄着の鬼どもが筋肉やらへそやら見せびらかしながら練り歩いてる感じだけど。

 

まあ……まあいいや。なんかミスラが慣れた手つきで司会してるしお任せだわ。

 

「じゃあ次は親善試合ね。選手入場!」

 

パレードの列から二人が飛行魔法で飛んできて臨時バトルステージに降り立つ。

どでかいテーブル型の岩は、イシュトアン様が魔法で五秒でやってくれました。

 

「スターステイツ代表!最強の鬼!軍務卿アダマス!」

 

アダマスが優雅に一礼する。タッパあるからサマになるんだよねそういうの。

 

「ミッドユーロ人類連合代表!最強の魔法使い!アカレンドールのナールウェン!」

 

いや、エルフって飛行魔法できるの?魔法のインフレが激しいよ。

 

「さー、どうなるかと思いますか?解説のイシュトアン様」

「さて、アダマスといえば見たものを固める『不壊の魔法』と優れた体術だが……ナールウェンには初手で硬化が決まるわけはあるまい」

「えっ、そういうものなんです?」

「手立てがなければそも試合すまいよ」

 

なんか……まあいい感じに解説してくれてるからいいや。

これで一戦した後に歌も歌うって言うんだからなんかしら算段はあるんだろう。

体力どうなってるんだよロリババアがよ……

 

アダマスは闘牛士のようにマントを右腕にたらし、さっと振ると金属の大剣に変える。

その場で見事な演武の型を見せると鬼たちから歓声が上がった。

いいね、見栄えがするよ。

 

「ナールウェン、本当に俺の魔法が防御できるのか?俺の『硬化』は生身の相手を『硬化』させたら自分でも解除できない」

 

ナールウェンは口元に微笑を浮かべながら、静かに杖を掲げる。あれすごいよね。なんか曰くあるやつだよ絶対。

 

「なあに、舐めるなよ。私はお前と違って、無数の魔法を使いこなせる。引き出しの数が違う。胸を借りる気でこい」

 

その歴戦の殺意にアダマスは少し息をのんだ。

ナールウェンは殺意を解くとにやりと笑って杖を帯電させたり、なんか花びらやら炎やら次々出して綺麗に振る。

人間側から歓声が上がった。エンターテイメントをわかってるね。

 

「これはお前への指導試合だよ。これが終わるころには、お前は『硬化解除』ができるようになっているさ」

 

アダマスは目を見開き、真剣にナールウェンを見つめた。

 

「……わかった、信じよう」

 

頃合いだな。私が『拡声』をつかって合図を出した。

 

「両者、礼!」

 

見事な礼するよね。二人は礼をするといい感じに距離を取って構えた。

よし、ここだ。

 

「はじめっ!」

 

アダマスは大剣を一瞬だけマントに戻すと、鞭のようにしなって先だけ硬化してナールウェンに切りかかる。

 

「なるほど、そういう感じか。ほらな、効かないだろ」

 

見ただけで、いや、認識しただけで相手を金属化させるアダマスの『硬化』はしかしナールウェンを固めない。

何か、バリアのようなものが周囲に展開してバチバチと火花をあげている。

「『硬化』に拮抗できる防御魔法……そんなものがあったのか」

「お前の『硬化』は別に珍しいものじゃない。見たものを石化する魔眼、触れたものをむしばむ呪い、よくある対象を変化させるタイプの魔法だ」

「だが、今まで誰も破れなかった」

 

アダマスはむしろつらそうに言った。まあ……それだけぶっ殺してきた過去があるからな。

 

「覚えておけ小僧、発動条件が重い方が出力が高い。これはそれだけの制約を課した防御結界なんだよ。そしてお前がこの結界を見切るまでに、私は『硬化』の解析を終えられる」

「……そうか」

「おや?勝ち筋が一つなくなったのにうれしそうだな」

 

アダマスは器用に移動しながら四方八方から伸びるマントの剣で斬撃を加える。

その剣術だってかなりのものだろう。

だが、ナールウェンはそのすべてを木の杖とそれから出る小さな魔弾(バレット)ではじき続けていた。

 

「お前はやれ平穏が好きだの何だの言ってるがな……お前の本質はただ輝く瞬間が好きなだけだ。そして、お前にとって輝く瞬間は平穏だけではない。命の削りあいこそ、お前のもっとも求めているものだよ」

 

ここでナールウェンはド派手な紫電でアダマスを吹き飛ばした。

アダマスもすぐに空中で姿勢を取り戻してにやりと笑いながら魔弾や『ピースメーカー』による石弾を撃ちまくる。

そのすべてが防御魔法による輝くバリアで防がれたり、矢除けの魔法で軌道をそらされたり……

よくここまで多重展開できるわ。無理だよ普通。

 

「そら、お前笑ってるぞ?」

「……なんということだ」

 

アダマスは口に手を当てて、笑っていた自分に初めて気が付いたように目を見開いて驚いた。

 

「その通りだ……!たしかに、今俺は楽しいと思っている……!」

 

あー、突っ立って隙が出たね。

 

「隙ありだ。いい的だぞ」

 

ナールウェンは瞬間移動みたいな動きでアダマスの後ろに立つと、素手で硬化したマントをつかんで、金属からマントに戻した。

ばさりと、マントが落ちる。ナールウェンの杖がアダマスの頭に突き付けられる。

「そら、解析完了。お前の詰みだ」

「……そのようだな。降参だ」

 

アダマスが戦いの構えを解いて両手を挙げた。

このあたりだな……やれやれ、死人出さずに手合わせが終わってよかったよ。

 

「そこまで!勝負ありだ!勝者ナールウェン!」

 

私は貴賓席から『拡声』を使って宣言した。

 

「なあに、お前の本質は戦士だ。それからは逃げられん。だが、それをどう使うかはお前らの言う所の自由だ」

「完敗だな、教えられたよ。感謝する」

「私も久しぶりにいい汗がかけた。これから先もよろしく頼むぞ?」

「ああ」

 

なんか……歓声でよく聞こえねえけど、いい感じに何か話して握手してるわ。

大丈夫そうだな。

 

にしても、アダマスのやつ実感しちゃったか~自分の本質。

セレナが剣に書いてチクってたけど、いまいちピンと来てないみたいだったんだよ。

心配だからそのまま触れないでおいたんだよね。

なんか見るからに『平穏な毎日が大好きだけど、それはそれとしてたまにはヒリつきたい』みたいな欲張りな願望ある感じだから。

自覚したくないだろ……そういう生々しい自分の渇望。

でも、これならいい感じに導いてくれそうだね。

「続いては大統領による出征応援ライブです!なんと今回は先ほど活躍したナールウェンさんも歌ってくれるそうです」

 

次は私か~。私にもこのレベルのお説教あるの?気が重いなあ。

そう思って笑顔で立ち上がった瞬間……

爆発とともに上空の空からなんか魔王軍が出てきたわ。

今からお葬式ですって恰好したやつらが千人はいるんじゃないの。

 

『お久しぶりね、スターステイツの皆さん。セレナよ。最近四天王に就任したの。ここにいるお友達と一緒にね。今日は出征式?おめでたい席に私も花を添えに来たわ』

 

お前かよ!いい加減にしてくれよ!

私はギターをとっさに『錬金』してステージに走りだした……

何するかって?芸だよ。芸人だが舞台で芸しなくてどうすんだ。

受けて立ってやるよ、セレナ。

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