グレートジャーニー   作:照喜名 是空

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不思議なほどハイな気分さ

夕食はベイクドビーンズにバナナブラウニー、ブルーベリーマフィン。

デザートに庭に植えたオレンジだ。

晩餐は静かに進む。言い出しにくいな~!でも早めがいいからな~!

 

「ほんでさ、これからどうすんの?いや、ここにいてもいいし、よその街に行くのでもいいけど」

 

はいラビが反応早かった。

 

「ほかに街があるんですか!?」

「たぶんね。ほら私、死なないじゃん?ほかにも殺しても死なない連中は知りあいにいるんだわ」

「行ってみたいです……でも、まず当面はとにかく生き延びたいです。生き延びて……『普通』の暮らしをしてみたいです」

 

ラビはそう言うとリビングに持ってきたリュックサックから本をだした。

あ~!それか~!ずーっと昔に私が書いた本じゃん。

 

「イブキさん……私、イブキさんの本や音楽を聞いて感動したんです。自由ってあるんだって……進化って、夢物語じゃないんだって」

 

うおっ、早口で語るね。

 

「今は?」

「今は……なんでもはできないし、思ったのとはちょっと違うけど……それでも、信じたいです」

「そっか。オルフェとアダムは?」

 

うつむいてブラウニー食ってたオルフェが顔を上げた。

 

「えっ俺!?いやあ……おれもとにかく生き延びるのは外にでるしかないって感じだったし……ほかの生き残りがいるなら会いたいけど、でもどんな人らかわかんないし……」

 

アダムは淡々とベイクドビーンズを食べてる。

 

「増えなければ滅ぶだけだろう。生き延びるならば、安全な場所をさがすべきだ。ここは安全そうだ」

「この子ってひょっとしてなんか改造人間とかだったりする?」

「デザインベビーです……イブキさんの進化思想を貴族が悪用して超人兵士を……」

 

うわー……私の罪が加算されていくよ~!マジか……

 

「そっか……なんか、ごめんな……あー、じゃあとりあえずは人類復興って感じ?」

 

オルフェは引いてる。残り二人は興味ありって感じだな。

 

「いや、そんな壮大な感じじゃないんだけど」

「でも、おめおめ滅ぶつもりがないから出てきたんだろ?」

 

ラビはスープを見つめながら、しばらく考え込む。

そして、ゆっくりとうなずいた。

 

「ええ、まあ…外がどうなってるか知りたかったですし」

「じゃー旅だね。私のダチの所に行こう。まあ体力戻って準備してからだね。まずはゆっくり休みな」

「準備って?」

 

ラビが尋ねた。

 

「旅に出るんなら、まず生きることを覚えよっか。生き延びるじゃなくって」

 

アダムが首をかしげる。

 

「戦闘技能ならある」

 

そうなっちゃうか~。そこはかとなくアダマスとヴェイルに似てるよねこいつ。

たぶんあいつらの血筋も入ってるんだろうなあ。

 

「生きるってのはさ……うまいもん食べて『おいしー!』とか、きれいなもん見て『スゲー!』とか、そういう……生きるに値することを見つけるもんだよ。もちろんサバイバルとか魔法とかも教えるけど」

 

あ~よくわかってない顔だよ三人とも。ダメかあ……

 

「生きること……生きるに値すること……見つけられますかね」

 

おっ、ラビはわかってるか。本書いてよかったなあ。

 

「だから探しに行くんだよ」

 

うまい事いえてないか私?

 

「あはは……なんですかそれ。でもうん、そうですね。ゆっくり休んで……そしたら、外の世界を見に行きましょう」

「マジで!?ゆっくりってどのくらい?」

「お前らがジジババになる前だよ。あっという間だぞ」

「だいぶ長くない!?」

 

あっという間だよ!でもまあ……オルフェもラビも笑えてよかった。

これなら、やっていけるだろう。

 

 

それから半年くらいかな……三人ともだいぶ元気になったし、魔法の練度も知れた。

『ピースメーカー』とか『高速飛行』とかまだ伝わってたのな……ファンの鑑由来か。じゃあしゃあねえわ。

 

まあ魔王大戦のころの最前線一般兵士くらいはできてるね。強くない?

 

ラビの固有魔法は『ドア』。落書きで書いたドアを実際に使える。ドアを開けた先は落書きで書いた別のドアだ。

オルフェの魔王は『アンカー』。ロープ付きの錨を体中から出せて、そのアンカーは『硬化』できる。アダマスの劣化版だね。

アダムはまだ固有魔法に目覚めてないらしいけどまあ強いわ。

 

まあそんなわけでさ。ラビの『ドア』があるから家にはいつでも戻れるんだよ。

だから魔鉱車で遠征しては帰る感じだね。車?『錬金』で出した。

数百年整備してたら出せるようになったんだよ。

 

「車ってこんな感じなんですかあ!?」

「いいだろ、真っ赤なキャメラックのシリーズ62。このいかつさがいいんだわ。テールウイングもロケットみたいでイカすだろ」

「ど、独特なデザインですね……」

 

ラビはドン引きだ。

まあマッチョカーだからね。ロックスターといえばこれでしょ。

実際パワーあるし。

 

「いや……俺はアリかな」

「わかる!?男の子だねえ!」

 

オルフェはわかるかーこの良さが。

 

「じゃー乗った乗った。荷物はトランクね」

「ええ……まあ、はい」

「スゲー!シートがふかふかだ!広い!」

「……これが車か」

 

運転席に乗ってキーを回すと心地よいエンジン音が響く。

 

「んじゃあ行くか!グレートな旅にゴー!」

「は、速過ぎませんかぁ!?」

「まだ150キロだぞー。私は無人なら200は出すからなー」

「ちょっとおお!!」

 

気持ちいいねえ!真っ青な青空!白い雲!

レコードは……ラ・アーク・アン・シエルの『ドライビングハイ』か。

いいねえー!

 

『ウォウッウォオッオ!最高のフィナーレをー!イェア!』

「出発からフィナーレになっちゃいまっすってえええ!」

 

荒野の中を一直線に砂埃が巻き上がる……

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