グレートジャーニー   作:照喜名 是空

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ドラゴン刺繍セットとかが好きなお年頃

カグヤが黒い刀をひゅんひゅん回して構えを取る。

かっこいいね。

 

「アカレンドール式太極拳、黒刀のカグヤ」

 

じゃあまあ……私もかっこつけるか。

手足を振り回して酒をかっこむ演武をして構える。

 

「八仙酔拳、『化仙姑』山田イブキ」

 

いいね、こういうのやるの楽しいんだ。

私はゆらゆら、相手は猫のようにゆらりと構えて一瞬のにらみ合い。

来る!

 

「きひゃあっ!」

「うおっとっと」

 

カグヤの刀と私の酒瓶がギャリギャリ火花を立てて撃ち合う。

剣の腹にあてて弾いてるんだけど、マジでこいつ強いわ。

全然隙がないもん。まあ酔拳って虚をつく拳法なんだけど。

 

「きひっ、打ち合えるか。愉快なりや」

「若いねえ、まあそう熱くなる……なって!」

 

あえて酒瓶ヌンチャクで刀を絡めとる。

とっさに刀を引いて切ろうとするけど悪手だぜそれは。

紐が切れた酒瓶はカグヤの顔に当って割れる。

その隙に下段回し蹴りだ。

こう……刈り取るような地面すれすれの足払いだ。

「きひっ、ひゃあっ!」

 

倒れこんだところを追撃しようとしたら吹っ飛んだ勢いのまま竹の幹を蹴って竹から竹に飛び移りやがる。

まるで猿か猫だな。

おっと投げナイフ!いや、これタケノコだわ。ペンくらいの長さの。

 

「えげついなー。これも浸食するやつかー」

 

作っててよかった複合式防御結界!イシュトアン様あざっす!

私が張った球状のバリアが竹でミシミシ浸食されていくし、なんかボール状に閉じ込められそうな感じだ。

囲まれる前にバリアを切って逃げるけど竹林の間からちまちまちまちま投げてくるね。

 

「痛って!」

「きひゃあっ!愉快愉快!」

 

バリアだの魔力の盾だの使って防御してたけど、後ろから刺されたよ。

なんか魔法使って刺したな?

 

「こっから魔法ありか~。じゃあまあ、なんでもありだな。塩試合になるから嫌なんだよね」

 

私の体内に爆薬を精製して根を張ってくる竹ごと爆破して取り除く。

痛えんだよこれ……普通だったら死んでるケガだけど、すぐに不死身の呪いが作用して肉が治る。

 

「くひひ、やはり不死……かかさまの言った通り。故に試せる!成せる!不死斬りを!」

「あー、浸食は不死対策かー。メタの読みあいする感じか?やめようって~。ノリでエクササイズする感じのほうが楽しいよ」

 

めんどくさくなってきたな。

私はまた酒瓶とお猪口を錬金してぐびっと飲む。

お行儀良いのは、このへんまでにしとくか……

 

「もう一杯いっときな。パームワインとウォッカを混ぜて~。ナフサをさっとステア。 モロトフカクテルはいかが?」

 

空気中に直で焼夷燃料を錬金して竹林ごと燃やす。

私自身は複合結界の中で閉じこもって、酸素を錬金し続ける。

複合結界だ。耐熱結界もあるんだよ。

 

「けひひっ、浅知恵なり」

 

うおっ、竹が爆発した。あいつも竹に爆薬仕込んでたのか……

竹の中の菌とかそのへんを操ってるのかな?

 

「あー、爆竹ね。なるほどね」

 

まずいな、吹っ飛ばされて竹林の葉っぱが茂ってるあたりまで飛ばされた。

痛って!!足が一本飛んだよ~。

複合結界に魔力鎧もぶち抜いて斬ってきやがった。あの刀、さては竹炭で作ったカーボンファイバーナイフだな?

こっちも高速飛行でマッハまで加速して竹林を抜けようとするけどダメだ。

 

「罠かー!」

 

あらかじめクッソ頑丈な竹籠で檻が作られてたよ。

 

「詰みじゃ」

 

竹に片足を絡めてこっちに刀を突き付けてくる。

念入りに竹皮で編んだガスマスクまでしてやがる。

フィルターは竹炭つかうもんねー。そりゃあ作れるか。

レンズの代わりに透明な竹を使ってるのか。よくできてるよ。

 

「なら、いかがする?小夜啼鳥として飼うてやろうか。食ろうてしまおか」

「やめときなって。私が歌える状況でも、食べられる状況でも私に勝ち筋ができるよ」

「ならば、死ぬるか」

 

黒い刀になんかやばげな魔力が集まり始める。

うーん、概念系攻撃っぽいね。

 

「まあ、もう一杯のんでも遅くない」

「どこまで刻めばその顔、青くなるか楽しみじゃ」

「いや、お前も詰みだよ?最初の酒瓶、あれはまずかったね。なんも入れてないと思うか?」

「戯言を」

 

運良かったよね。一回でも酒浴びせられたんだから。

最初から本気で来られたらまずあんなん当たんないよ。

 

「お前らバンブーエルフの正体は粘菌だろ。キノコとかに体の組成が近い」

「時間稼ぎには乗らぬ」

「たぶん竹の方に細工があって、同じ遺伝子同じ記憶、同じ人格の菌を作る魔法がかけられてるんだ。そんでもって、この竹……情報をやり取りしてるな。ほんでもってミスラはこの戦いを見てて、あいつは機械工学と情報処理の専門家だ。ここはあいつの家だろ?ならあいつは今もこの戦いを見てる、だろ?ミスラ」

 

竹がチキチキと歯車を生産し、ミスラの体を作り出す。

 

「ハーイ。ずいぶんヒヤヒヤしたじゃない?でも、種がわかれば簡単ね。私たちのネットは、そっちの竹のリゾームをもうハッキングしたわ。これ以上続けるならあなたたちの種を根絶やしにするし、あなたたちの情報も壊すわよ」

 

カグヤは刀を手放して、ガスマスクを投げ捨てた。

めちゃくちゃ悔しそうでざまあ!

 

「う……きぇっ……」

「はい、あなたの負け~!どんな気分?ねえ今どんな気分かしら!……まあ、こっちに死人はいないし、ミリスたちはバックアップはあるから。でもちゃんと謝って。あと従って。法と私に」

「うう……」

「返事は!?」

 

ミスラがカグヤを詰めてるけど、とりあえずこれ出してくんねえかな。

ケガは治ってるからいいけど。

 

「ひええええ~ん!!負けたー!!かかさまに怒られるー!!うわわわーん!」

「あー、泣くタイプなのね、面倒だわ。とりあえずナールウェン……さんに連絡とるわ」

「いやだぁー!かかさまにはいわないでー!」

「ダメ。私は容赦なく連絡入れるタイプよ」

 

ミスラが竹に手を当てて電話をする時みたいに空中を見る。

 

「やっぱ連絡できるんだそれ……そのネットあっちまでつながってんの?」

「みたいよ。あ~、もしもし……あっ、はい。そうですミスラなんですけど……え~っと、はい。はい。いやまさかとんでもないです……あ~……はい、はい。わかりました~」

 

なんかあっちでも見てたっぽいね。

 

「なんつってたナールウェン」

「死なない程度に好きにしろって。まあ私も子供からそこまで取ろうとは思ってないわよ……お姉さまもそれでいい?」

「そもそもお前のはじめた話だろこれ。だからお前がいいならいいよ」

「そう……ところでお姉さま、あの酒ただの酒でしょ?バンブーエルフが菌うんぬんもハッタリよね?」

「そうだけど?まあ見た感じで分析しただけだよ。運がよかった」

 

そう、運がよかった。

まともにやってたらそもそも酒が当たらなかった。

分析が当たったのも鎌をかけただけだ。

ミスラが見てるかも五分五分だったし。

やっぱアドリブの方がうまくいくわ。

 

「騙された~!鬼~!!」

 

ミスラと私は二人して思わず笑っちまった。

 

「「鬼だけど?」」

 

すっげーいい顔でドヤってたと思う。

遠くを見るとラビとオルフェが心配そうにしてたんで手を振ってやった。

あいつらも相当がんばったらしく、量産型の三下バンブーエルフはほぼ捕まったらしい。

我が方の勝ちってやつだな。

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