ミリスたちのパトカーで送ってもらってミスラの部屋に帰った。
私にハンドル握らせたくないっていうか普通に飲酒運転だからだって。
「帰ったよ~ただいま~」
「あらおかえりなさい。ご飯たべてく?」
ミスラはだだっ広い社長室みたいな部屋で黙々とパチンコ打ってた。
自室に筐体もってくるのはだいぶ末期的だよ。
末期的な酒カスの私が言うのもなんだけど。
「私はいいよ。でもラビたちはまだ食うだろ?さっぱりしたもんばっかりだったからな~」
「タケノコとかキノコばっかりだったので、まあ……ところでアダムは?」
ミスラはうなずいてパチンと指を鳴らすと社長室があっという間に豪華な食堂に組み変わる。
こう……壁にはランプがかかってて、黒壇のバカ長いテーブルにふかふかの椅子がある感じ。
このバーチャル空間な感じのノリは慣れないな~。これが機械都市か……
「えっ、図書室が気に入ったみたいだからおやつだけ渡して好きに見てていいってしてたけど」
「あ~!お前なあ……世話してっつったじゃん!約束は?」
「えっ、私はお姉さまに明後日までに帰ってきてって約束したけど、世話してってのは『お願い』であって努力目標よね?」
そうだった!こいつそういやつだったよ~。基本的にポンコツなんだったよ。
「え~」
「そ、それにべったり一緒にいるだけがお世話じゃないでしょ?図書室で危険なんてないんだから!」
うわー、若い二人からの目が痛い!ダメな大人を見る目だ!
なんも否定できねえ!その通りダメな大人だからな。
「その……やっぱりイブキさんの仲間ってやっぱりそういう感じなんですね……」
「そうだ、クロトさんに聞こうぜ。あの人はたぶんしっかりしてるはずだから。ちょっと俺たちアダムを迎えに行ってきます!」
ミスラがため息をつくと、耳に手を当てて『通話』した。
「クロト、図書室までラビとオルフェを案内してあげて。ええ。早めにね」
一分しないでクロトが来たよ……働かせすぎじゃない?こいつもうジジイだよ?
まあ、本人が納得してるならいいか……
この興味ないことにはスゲー適当な感じとか、忠誠誓った相手には従う感じとか、鬼って言うか魔族の特性で懐かしいなあ。
そういうのから自由になるには、やっぱり超えなきゃいけねえなあ。種族の限界ってやつを。
「お呼びですね、ミスラ様。どうぞ、お二方とも。図書室にご案内します」
「お願いね~」
ミスラは相変わらず適当な感じでスパスパタバコ吸いながら軽く手を振った。
「……こういう時くれえパチ打つの止めたら?」
「今激アツ演出だから手が離せないのよ」
こいつ今の今までずっとパチ打ち続けてるんだよ!私もたいがいだけど、こいつも相当だよ。
パチの音と光がすげえうるせえ。
「お前の金がお前のところに戻ってくるだけじゃん」
「それは言わないで……虚しくなるじゃない」
私はミスラの横で錬金した酒瓶を飲みながら床に座る。
まあ……なんだかんだでこういうのが気楽ではあるんだよな。
☆
あれ、なんか遅えな……と思ってたら青い顔したクロトが入ってきた。
「ミスラ様、少々問題が。アダム様がバーチャルアーカイブにロックをかけた状態で入っておられまして……危険かと。数万倍の速さで視聴されています」
「もう、しょうがないわね。私がいくわ」
「申し訳ありません」
「オイ大丈夫なの?」
「私が作ったものだから、私がなんとかできないはずがないでしょ」
ちょっと心配になってきたからついてったら、まあ大丈夫じゃなかった。
「ウソでしょ……不正なアクセスがされて、見たこともない魔法がかかっているわ……アクセス日時は一万年以上前……!?」
「オイどこからだ。エルフ共か?処す?」
「違うわ。アカウント名は……『預言者ノア』。場所は……旧魔王領!?どういうことなの……?」
なんか……どっかで聞いた名前だな。
「ノア……?聞き覚えあるんだよね。どっかに記録ない?」
「……調べてみるわ。お姉さまは魔法を解析して」
「わかった」
ラビとオルフェも青い顔だ。
「どうなってるんですかイブキさん!?」
「これ、やばくないか……?もう何百年分も視聴してるって出てるんすけど……大丈夫なんすか!?」
アダムの寝かされてるカプセル型のベッドはバーチャル空間内に意識をダイブさせて視聴するタイプの記録だ。
視聴してる内容はどうも、スターステイツの成立から今までの歴史らしい。
「私だってわかんねえよ。けど、今度こそ絶対助けるよ。何度も助けられなかったを繰り返す気はねえ」
「信じていいんですよね……?」
「信じてくれ」
「……はい」
ラビは疲れ果てて図書室の中の椅子に座り込んでいる。
私は本気を出してバーチャルカプセルの全体に張られているバリアに手を振れ、魔法を解析していく。
これだけで夜中までかかったから、途中で飯をクロトに持ってきてもらって食った。
最終的にはお子様二人にはソファで寝てもらったよ。
この状況で帰って寝ろとは言いにくいだろ……
「複合結界にアダマスの『硬化』を重ね掛けして、その上この座標に一万年前から時限式であっただと!?ウッソだろ……」
これ一万年前に仕掛けられてた地雷みたいな術式だ。今この時間を標的に最初から設定してある。
「……予知の魔法か!ずっと昔に今のこの状況を予知してかけられてたんだ」
私がうめくと、ミスラがモニターから顔を上げた。
「それよ!お姉さま。思い出した!予知だわ!予知魔法のナザル!あいつが死に際に『ノア様の遺言』がどうとか……きっといたのよ。ナザルの師匠にほかの予言者が!」
そこにミスラの操作してるモニターからメール着信の音が鳴った。
「……今、その当人からメールが来たわ。動画付きみたい。……見る?」
「……見るしかねえだろ。あとクロト。万一を考えてこの建物から二人を避難させろ」
「わかりました。御武運を祈っております。行きましょう、オルフェ様、ラビ様」
二人はしばらく迷った後、私に向けて目を合わせてきた。
「……アダムを、お願いします」
「わかった。なんとかするよ。なんとか」
「信じてますから。俺」
「やってみせるさ……!」
そうして、二人が退避した後、ミスラと動画を見てみることにした。
「思い出すな~このヒリつき。ステイツができる前はこういうギリギリ感あったよな」
「ええ。慣れたものよ。予言者だか何だか知らないけど、舐めないでちょうだい」
カチリ。動画が、再生される。