それから十年。
とりあえずバンブーエルフと機械都市のロボットたちは良い感じに里山を緩衝地帯にして住み分けることにした。
ロボットが里山の手入れして食料作って、エルフたちがその外周の竹林で暮らして『花の民』に対する防衛線を張ってる感じだ。
ラビとオルフェは結婚して機械都市で保護された生き残りたちのコミュニティでうまくやってるらしい。
なんだかんだ各種族が数百人いてデカいコミュニティを維持してるんだからミスラすごくない?
でも二人とも結婚して子育てだ何だで疎遠になっていったんだよね。
まあうまくやってるならいいや。
アダムはあれから10年でそりゃもういい男に成長しちゃって……
エルフの男戦士みたいなバキバキの筋肉に金のようなサラサラの金髪イケメンになった。
それでしょっちゅう口説いてくるからさあ……まあ、押し負けたというか……絆されたというか……
セレナをバカにできねえ~私もおねショタしちゃったよ~いや、ショタおねか?まあ、結果的には同じだろ。
それで妊娠した後、私たちは腹の中にいる子を徹底的に『弄った』。私たちの真になりたいもの、黄金種にするために。
いや~、迷ったし、よくないかな~とも思ったんだけど。
アダムは『しかし、これは結局のところ我が子によりよく生きてほしいという願いであり祝福だ。身勝手なのは承知だが、幼い頃の子供への愛情というのはそういうものだろう』っていうからさ……
まあ……幼少期の教育ってそういうものだし、それを早めたと考えれば納得できなくもないか……何より、生まれてから苦労させるよりマシだろう。
そう言うわけで盛りに盛ったね。祝福魔法とか、ナノマシンによる改造とかで。
まず記憶の継承に、宇宙空間でも平気なレベルの環境適応能力。不老不死までできる自己改造・変身能力。
それに認知能力の発達傾向もめちゃくちゃ弄った……
たぶん欲とか闘争心は薄くて、でも恐ろしく冷静で安定したメンタルの子になるはずだ。
体力?ゴリラだよ。
穏やかな心と強靭なフィジカルを持つ種族だから、まあ結局ガワが美少女のゴリラだよ。
全身全霊をかけたいい仕事ができたと思う。
☆
「んぎぎぎぎ……!」
で、私が今何してるかって?出産だよ!いでえ!!
いやー、鬼の妊娠期間って半年ないんだけど、もっと早かったね。
お腹が丸くなる自分の体はこれはこれでスケベだなとか思ってたけど……
そういうくだらないことを思い出さなきゃいけねえほどいてえ!
「はい、ひっひっふー。大丈夫よー。鬼の出産は人間ほど長いものじゃないじゃんね」
「知ってるけどやるのはまた違うんだよ!!いででで!ていうか慣れてるな!?」
「まー、保護してる人らの出産を手伝ってるからねー。はいひっひっふー」
「いででで、ひっひっふー」
いでえ!と思ってたらなんか……声が聞こえた。
(祝福せよ―我が誕生を)
痛みがすっとなくなる。アレッなにこれ!?
「ミスラ今なんか詠唱した?」
「幻聴じゃないの?はい呼吸ー」
今度ははっきり、私のお腹の方から聞こえる。
(私はきらめく流れ星―幾千年の祈りの果てに
「えっ?なにこれ?確かに聞こえるわ」
「だろ?なにこれ!?」
「お姉さまにわからないものがわかるはずないでしょ!?こわ~っ」
静かな、舌足らずな少女の声だ。
これ魔力の振動で聞こえさせてる感じだな。
(嘆きの日々はもう終わる。これより幕開けるは黄金の時代―人々よ、私の足跡に続くがよい)
「なあなんか全然痛くなくなったんだけど私これ大丈夫?」
「わかんないわ……とりあえずお姉さまは死なないでしょ。帝王切開する?」
「いや、任せるわ。この子に」
詠唱は続く。そういや、原初の魔法は詠唱があったとかいうしな。
この痛みを消すのも、多分この子の魔法だろう。
生まれながら魔法使うってさすが私の子だ。これで死んでもまあいいや。
お前に……全部任せるよ。全部やってもいい。
(大海原を駆けるがごとく、銀河を駆ける私を祝福せよ)
ぬるっと私のへそあたりから魔方陣が出現してそこからゆっくり真っ白な赤子の手が出てくる。
ああ、祝福するよ。ほかの誰が祝福しなくても、私だけは絶対に祝福する。
(果てなき
へその緒がつながったままの真っ白い肌に白髪のちょっと生えた赤ん坊が産声を上げた。
「おぎゃああ!」
「ああ、おめでとう。生まれてきてくれて、ありがとう……!」
ミスラが素早く魔法で空中に産湯を出して優しく洗い、そっとタオルで赤子を包む。
「はい、ちくっとするわよー」
そしてささっとへその緒を切って結んで産着に包んで私に渡した。
「おぎゃあっ!びええーっ!」
「じゃあ抱きしめてあげて」
「……ああ。温かいな……本当に、あったかい……!」
涙で前が見えねえ。でも、腕の中のこの子は温かかった。
気が遠くなってきたよ……
「ミスラ……眠くなってきたわ。あとたのむ……なまえは、クオンで……」
「……わかったわ。今は、休んで。おーよしよし~クオンちゃんミスラおばちゃんですよ~」
そっと私から赤子を受け取ってあやして私の胸に口をつけさせるミスラ。
お前、赤ん坊に変顔する母性があるのな……
☆
目が覚めたら、なんかベッドのわきに白髪に白肌……っていうかコンクリとか大理石みたいなつるんとした石肌の女の子が浮かんでた。
いや浮かんでるんだよ。たぶん飛行魔法の応用で、水中に浮かぶようにふわふわ飛んでるんだ。
服も私が昔着てた赤とか黄色の服を白と青のクールな感じに直したようなのだ。
「お前……クオンか?育つの早すぎない?」
時計見たら数時間後だぞ?!そりゃ魔法で自己改造できるようにしてるから、自己成長だってできるだろうけどさあ!
早すぎない?生まれたときから魔法使って数時間で立つのすっとばして浮いてるよ。
「迷う時間をかけるのは無駄。それはお母さん自身が思ってきたことだと思うけど」
「こっちはまだ腹いてえんだよ……もうちょっと間を置こうよ……でもまあ、これが私の娘かぁ~。かわいいなあ」
私に似て顔が良い。瞳は黄金色でツインテにした髪はさらさらの白髪。クールで無表情な感じだけど、そこもいいな~!
「そう?それでいつ宇宙行こうか?」
「それはちょっと待ってくれねえかな……お前ひとり行ってもそれは繁栄じゃないじゃん」
「なら私が増えればいい」
なんか……ぬるっとクオンの背中からもう一人クオンが出てきた……。何それ分身!?そんなん積んだっけ!?
「そんなんもできるの!?」
「「お母さんからもらった記憶を読み解いて理論を組み合わせればできる」」
「そっかぁ……待ってくれる?ていうか、お前は宇宙へ行くのはいいわけ?あんなまっくらで広すぎる空間だよ?」
「「でも、私は別に行ってもいいし、お母さんはどのみち最初からそのつもりで私を生んだんでしょ?」」
それはまあそうだし、この子も生まれる時そういうの言ってたけどさあ……そこまでさらっと本気とは思わないじゃん……?
もうちょっとこう、反抗とか葛藤とかあってもいいし、世の中見てからでもいいんだよ……?
「それはまあそうだけどさあ……!そっか、完成した『人間』ってこんな感じかぁ~!」
そうだった。こいつたぶん迷わないんだよ。直感的にリスクとかを計算したうえで、ためらわずやりたいことをやるような設計だから!
「じゃあ、何人か宇宙へ送るから」
「任せて」
もう一人のクオンが親指を立てて窓を開けようとする。
「待てって!お前が増えるのはまあいいとして、もうちょっとこの星を見てからでも遅くないだろ」
でもやっぱちょっと危なっかしいわ……たぶん最強無敵だからそこまで心配しないでもなんとかなるんだろうけど、親心わくよ~!
「「……まあ、時間は永遠にあるし」」
「こういう事あんまり言いたくないんだけど、少しは可愛がらせてくれ……!」
「「まあ、いいけど。不思議だね、ヒトってそんな感じになるんだ。記憶では……うん、まあそうなるか」」
クオンたちはゆるっと空中を泳いで、ベッドで横になってる私の胸のあたりに顔を寄せてくる。
頭撫でるとあったかいなあ……これが私の生んだ子か……ママ、私もママになったよ……