それから二年くらいかな……クオンは見た目は変わんなかったけどわりと健やかに成長したよ。
いやまあ……言動はあんま変わらなかったけど、多少はね?
この二年は過去イチ楽しかったな~。幸せを感じたよ……
まあ花の民バンバン攻めてきてるんだけどね?
バンブーエルフもヒャッハーな感じだし、花の民も同じくらい血の気が多いんだよ。
「けひひひっ!いいぞっ、いいぞ……楽しや……何度でも斬ってやる!」
今は竹林の外周部でちょくちょくお助けで戦闘に参加って言うか後ろでウォーバンドやってる。
こう……戦歌をうたって戦意高揚みたいな。
「やるじゃない?それなりには、だけどさ!ギャハハ!」
原始人みたいに獣の皮を着て、素手から『ピースメイカー』を乱射してるガラの悪い兄ちゃんがノイン。
背中にはデカいカラスの羽だ。キメラだからね花の民は。
おまけに同調能力がクソ高いからノリに乗ると全員が絶好調になるんだ。
黒髪だけど、顔つきにセレナの面影あんだよね。
っていうか実際セレナが花の民作ってるよって言ってた。
ノイン……9か。
最初のセレナの子がゼクスで6だから、明らかに面影追ってるんだろうなアイツ。
「カグヤてめえ裸みたいな恰好しやがって!アタシの旦那を誘ってんじゃねえぞ長耳がよ!ブッ殺してやる!」
この私より治安の悪いアバズレはノインの妻で、名前はヘルツ。
バラみたいな植物質の赤髪にすらっとしたアサシン体形の女だ。
こっちは両腕がなんていうかゴリラ。細身の胴体にゴリラの腕だよいい趣味してやがる。
最近出てこないなー死んだかなーと思ったら、生きてやがんの。
「ホアチョー!ものどもかかれアルーッ!」
「ヒャッハー!待ちかねたぜー!」
「頭ねじきって晩飯にしてやるーっ!」
竹槍持った一般バンブーエルフ共も出てきて、後はもうピースメーカーとか爆裂魔法を牽制に斬り合い殴り合いだよ。
『花の民』は触るだけで相手と同化できる吸収能力持ちだし、バンブーエルフはしれっと全員がベクトルを操る『流水の魔法』を持ってる。
私との戦いでも地味に使ってたらしい。
だから、どうなるかっていうと花の民が触った端から動きを捻じ曲げられて投げられたり、血肉ごと捻じ曲げられて引きちぎられたり、『ピースメーカー』の弾丸の軌道を曲げたり。
それが間に合わなければエルフが花の民の同化で食われてるっていうか吸収されてる。
「ギャハハ!アーッハハハ!いいぞ、それでいい……!見せてみなよ、お前の力ってやつをさぁ!」
「どうしたあ!?アタシはまだまだ食い足りねえぞ!早く出せよ!後ろでこそこそ歌ってるババアをよぉ!」
ノインは修羅みたいな顔で煽るし、ヘルツのアバズレも同様だ。
後ろからはエルフ共がどんがどんがドラム叩いたりヒャッハーしたりしてる。
戦場の高揚って言えば聞こえがいいけど、ガラが悪すぎる……正直たまにじゃないといきたくない。
「あんだよ……ノインくんさあ、私はお前を殺したくないわけ。お前が死んだらセレナがどうなるかわからないからさあ」
自分でもどうかなって嫌な煽り方するけど、ノインこいつ全然効かないんだよ。うちのクオンとは別方向でメンタルが強え奴なんだ。
「あ、そう?まあ、その我が家のママから伝言があるからさあ!聞いてくれる?」
「そのためだけにクラスターミサイルを竹林にぶちこんだの?ありゃチャイムの代わりじゃねえんだよ」
こいつらこの直前にどこからか発掘したミサイルぶちこんできやがったからね。
だから私も一応いっとけって話になったワケで、おそらくそれはセレナの予想通りでさ……
「まあ、俺たちにも関係あることだからさ……あ、あー?もしもしママー?」
ノインの肩からブチブチとスピーカーとアンテナがあらわになる。
そうなんだよ、こいつら機械とも融合するんだよ。
『……一年半ぶりね、イブキ』
忘れもしねえセレナの声だ。
前に再会したときもそうだけど、昔より落ち着いててなによりだよ。
お互いいい加減に切れたナイフやってる年じゃねえもの。
「……ああ。なんかあったの?お互いほどほどに放っとこうってこないだ言ったばっかりじゃん」
お互い放っておこう、で月一で襲撃に来るんだよこいつら。
たぶん、全面殲滅戦争じゃない限りはじゃれ合いの範疇とか思ってそう。
戦争は野球の試合じゃねえんだよ。勘弁してくれ。
『価値観の違いね。誰も死なない戦争は、それはただのゲームだわ』
「まあそれはそうだけどさあ……」
バンブーエルフもクローン再生するし、花の民もめちゃくちゃしぶといし、ロボットもバックアップあるから誰も死なねえんだ。
『ところで、最近ヘルツが子を産んだのよ』
「それ言いに来たの?おめでとう」
『これは話の枕よ。生まれた子はフローラ。両性具有の子なんだけど、あなたの所のクオンと仲がいいのは知ってる?』
マジかよ~。フットワークが軽すぎる……
さすが私の娘だよ。たぶんまた勝手に分身作ったな?
あとで軽く説教しとこう。べつにいいけどちゃんと相談しなって。
まあ、年頃の子が秘密の友達出来たら言わないよなそりゃ。
「いいんじゃねえの。ガキの交友関係にいちいち目くじら立てるなよ……ほっとけって」
『それで、昨日子供ができたのだけれど、いいの?』
「ん?お前の孫ができたのはさっき聞いたよ?」
『いえ、クオンとフローラの子よ。もうその子も増え始めてるわ。今そっちに一人いるはずよ』
「ちょっと待って理解がおいつかない。クオンに?子供?なんで?」
理解が追いつかないままに、花の民から一人、フードを被った青年が出てきた。
フードを脱ぐと……黒と白の髪に、目元は私、口元はノインに似た18歳くらいの兄ちゃんが出てきた。
「やあ、ご先祖様。ということになるのかな?俺はカナタ。その……認めがたい気持ちはわかる。けれど俺はあなたたちの夢を完遂したいと思ってる」
「ハァ~~~!?」
私の今日一番の絶叫が竹林を震わせ、機械都市を震わせ、遠くの山々を震わせた。
後で聞いたらこの声は600km先まで届いてたらしい。
「タイム!わかった休戦!家族会議タイムだ!!……腹を割って話そう」
胃がキリキリしてきた。
とにかく一時休戦して関係者全員で話し合った結果、とりあえずカナタはカナタとして存在は認めるし、これを機に休戦ということになった。
「クオン!!」
「ごめんなさい……分身を作るのと同じと思って、フローラと血肉を分けてこねて作ってみたらこうなっちゃった……」
「イブキ。冷静になろう」
アダムがいつになく真剣な顔で言うからとりあえず飲み込んだ。
「あのなあ~……子供ってのはそんな簡単に作っていいものじゃなくってさ……生まれてくる命に対して責任っつうかさあ……」
「だが、カナタはもはや俺たちの手はいらない。ならば俺たちが口を出すのは違うんじゃないか」
アダムが宥めて、カナタはすまなそうな顔をしている。いや、お前を責めてるわけじゃなくてさ……
「グランマ……すまない。けれど俺はあなたたちの手を煩わせることはしない」
ご先祖様と言われるのもアレだからグランマ呼びにさせた。
気持ちが追いつかない~!!
ちなみにカナタは本当にめちゃくちゃしっかりしていた。
アダムがほとほと困った顔でフォローする。
「それに、イブキ……真に黄金種たる存在が生まれたならば、俺たちの倫理観は遅れたものになるのも初めから話し合ってた事だ」
「~~~~ッ!たしかに!そう!その通りだけどさ~。まあこんなん相談しろってのが無理なのもわかるけどさ~」
セレナがスピーカー越しにクスクス笑う。
『納得したかしら?話を先に進めていい?』
「陳謝、陳謝……!もうしわけない。これから、相談する、ます。挨拶、だいじ」
これがフローラだよ。
御影石みたいなジェットブラックの石肌に青い目、黒髪だ。
細っこいギザ歯のチビだ。私より背が低いんだぞ?!
こういうの言いたくないけど。
これは手を出しちゃいけないやつだろ~!
「クオンこれ大丈夫じゃないよ~。カナタが幸い良い感じだったからいい物のさあ……子供同士が子供作ったらマズいだろ……」
「……はい」
「まあ……まあいいや……今後はそういう重大なことは相談してくれな……最悪事後承諾でもいいから……」
「はい……」
フローラが下から私を見つめてくる。
「……ゆるされますか?」
「これ以上は怒らないけどさあ~……段階おこう?もうちょっと段階おいて?」
すでにこの場で三体くらいに増えてるフローラに私はなんも言えねえよ。
だってそういう生物だから。
「アイ、アイ!感謝!グランマ、寛容!」
「寛容寛容!」
「許される、ました!」
まあ……価値観とか倫理観違えどいい子っていうか悪意がないのはまあ……わかったよ……
悪気がなくても人を殺す生物だったけどな魔族は!
「……すまない、グランマ。あなたの気持ちを考えていなかった」
カナタが深々と頭を下げた。なんでこいつが一番倫理観あるんだよ。
「……わかった。わかったよ。納得するよ!じゃあまあ怒ってないってことで今日は解散していい……?」
『いえ、ここからが本題よ』
まだあんの!?勘弁してくれよ~お腹いっぱいだよ~。
セレナはワントーンほど声を下げて静かに言う。
『……魔王について』
「それはしっかり聞くわ」
おっ、流れ変わってきたな。
『魔王はあと数年で封印が解けるわ。もちろん、封印をナールウェンや私たちではりなおしてもいい。けれど、あなたはそれでいいのかしら?』
「なんかあんの。もう眠らせたままにしとこうぜアイツは。おめーだってアイツもう嫌いだろ」
『……私自身はいいの。でも、アレが目覚めればフローラが増え続けること、クオンやカナタが宇宙を目指すこと。そのどれもに怒り出すのは目に見えているわ。特に宇宙に逃げようなんて、アレの逆鱗だもの』
そーいえば『母の腕の中から逃げ出すなら食らってしまおう』とか言ってたな。
そういうことか~!
「あー、じゃあこいつらのために魔王を今度は完全にぶっ殺そうぜと」
『ええ。……魔王の代わりに、私が星の意思になるわ』
「おまえが~?まあ……まあわかったよ……」
『ロボットもあなたたち黄金の民もどうせ宇宙へ行く気なのでしょう?ならこの星は私たちとエルフがもらうわ』
その時、竹林の竹から小さなナールウェンが出てきて魔法で清華風のドレスを纏って私の前に浮かんだ。
アンタも大概エルフやめてるよ……
「ずいぶん愉快な話をしているな?」
「久々のあいさつでそれ~?まあ、私っつーか黄金種は……まあいいよ。アダム、いいか?」
アダムはうなずく。
「人の親になるのは大変だなあ?大統領。クックク……いいだろう。貴様ら花の民との終わりなき闘争。それでかまわない」
『決まりね。じゃあイブキはミスラを説得してくれればいいわ。じゃあ具体的な魔王の倒し方について話し合いましょう』
まあ……なんか。そういうことになった。
当然後で話を聞いたミスラは『ハァ~?!』と叫んだが、最終的にセレナが機械都市を宇宙戦艦化に改修する資材と魔力を出すって話でまとまった。
まあ……最終的にはカネで解決することになるよなこういうの。