機動戦士Gundam GQuuuuuuX 自由の奴隷   作:スペースデブリ

11 / 70
今更ながらガンダムは、初代…って言ってもククルスドアンを少しと、逆シャア、UC、SEEDくらいしか履修出来てないんですよね。時間がないもので…水星も鉄血も見れてないんですよねぇ。Xのトレンドに上がってたりしてたので「ああ、今のガンダムってこういう感じなんだね…たまげたなぁ」て感想を抱くことしかしてこなかったオールドタイプですよ私は。それでは本編どうぞ〜


一つを失い、一つを得る

 

 翌日。

 無重力区画にて、フブキはいつものように淡々と作業をこなしていた。資材の積み替え、モビルワーカーのチェック、浮遊バランスの補正。昨日の一件がまるでなかったかのように、彼の動きには迷いも揺らぎもない。

 

(……くだらない話だった)

 

 胸の奥に残るものはあった。だが、それを気にしていては、日々の業務が滞る。それが“今の自分”だと割り切っていた。そこへ、通信が入った。

 

《アルジェント聞こえるかぁ? 整備長がお前を呼んでる。至急、事務所まで来い》

 

「わかりました」

 

 通信を切り、手を止めると、少しだけ眉をひそめる。

 

(珍しいな……何の用だ)

 

 ノーマルスーツを脱ぎ、作業用ブーツのまま事務所に向かう。ドアが開くと、そこには見慣れぬスーツ姿の男がいた。年の頃は50代前後。眼鏡の奥にぎらついた視線、そしてこんな現場には相応しくない上質すぎるスーツ──明らかにこの現場の空気には馴染まない人間だ。

 その横に、整備長がやや固い表情で立っていた。

 

「お呼びでしょうか」

 

 フブキが淡々と尋ねると、スーツの男がこちらを見て、嬉しそうに手を広げた。

 

「やあ、君が噂のアルジェント君か」

 

 その声音は柔らかい。しかし、その目は笑っていなかった。フブキは、心の奥にうっすらとした嫌悪感を覚える。

 

(……何だ、この嫌な感じは……)

 

 場違いな“丁寧さ”。そして、既にこちらの素性を把握していることを前提とした物言い。だが、フブキはそうした感情を表に出すことなく、言葉を切り詰めるように告げた。

 

「用件を聞かせていただけますか」

(さっさと終わらせて、仕事に戻る。それが一番だ)

 

 けれど、その日──彼の“日常”は、静かに歪み始めていたのだ。

 

「実はね、本社で何やら“大きなプロジェクト”が立ち上がったらしくてね?」

 

 スーツ姿の男は、にこやかに話しながらも、その声音には妙な弾みがあった。整備長は黙ったまま、所在なげに視線を逸らしている。

 

「ありとあらゆる部門、支社、そして外部からも優秀な人材を“掘り起こして”いるそうなんだよ。その声が、我々のところにも届いてね……ふと、思い当たったんだ」

 

 男はゆっくりとフブキへ歩み寄り、その顔を覗き込むようにして笑みを深めた。

 

「“君の話”が、どうにも興味深いとなってね。我々も色々と確認を取っているうちに、どうやら本社筋とも接点があったようで……これは、ちょっとした縁かもしれないと思ってね」

 

 フブキは黙って聞いていた。

 

(……昨日の“あの男”……思ったより多くの会社と繋がっていたらしいな……)

 

 直感が、確信へと変わっていく。“偶然”にしては、あまりにもタイミングが良すぎる。

 

「でね、アルジェント君。これは“昇進のチャンス”でもあるんだよ。正規採用扱い、待遇も良い。──なにより、君のような人材には、ふさわしい“場所”だ」

 

 まるで“辞退など許されない”とでも言いたげな、上機嫌な誘導。けれどその言葉の裏に、薄く貼られた圧力が滲んでいた。

 

 フブキは、男の笑顔の奥に──昨夜の“あの男”を重ねていた。

 

「君もこのご時世だ、苦労してきただろう?」

 

 男の声音が、急に熱を帯び始めた。穏やかだった笑顔は、どこか興奮気味に歪み、感情が露わになる。

 

「この話はね、非常に“貴重”なんだよ? 我々○○建設としてもね、どうしてもこのプロジェクトには関わりたい。いや──“関わらなければならない”」

 

 語気が強まる。もはや“君のため”という建前は薄れ、彼の言葉の中心には“会社の都合”がにじんでいた。

 

「だからこそ、君には是非とも──“この機会”を掴んで欲しいんだ!」

 

 勢いに任せて机に手をつく男。整備長は苦い顔で視線を下げたまま、何も言わない。その様子を、フブキは静かに見つめていた。

 

(──やはりそっちできたか)

 

 昨日、あのバーで言葉巧みに誘ってきた男。あの時、異様なほどあっさりと“諦めた”態度を見せたのが引っかかっていた。

 

(初めから“別の手段”を用意しているか……)

 

 それが、今ここに現れている。“会社”という土俵を通じて、正式なルートに見せかけた圧力。最初から計算され尽くしていた筋書き。

 

 フブキは、1人静かに納得していた。

 

(……随分手が込んでいる)

 

 けれどその目に宿るのは、苛立ちでも驚きでもない。ただ、冷静な諦観と、ほんの僅かな──薄い怒りだった。

 

「改めて、どうだろうか? アルジェント君」

 

 スーツの男は、先ほどよりも少し抑えた口調で言った。だがその目は、確実な勝利を確信した者の色を湛えていた。

 

 フブキは、その言葉にしばし沈黙した。俯くことも、苛立ちを見せることもなく、ただ静かに男を見据えたまま──やがて、静かに口を開いた。

 

「……わかりました。その話お受けします」

 

 その一言に、男の顔がぱっと明るくなる。

 

「ありがとう! 君ならそう言ってくれると思っていたよ!」

 

 そう声を弾ませながら、両手でフブキの手をがっしりと握りしめた。フブキは、その握手にただ身を任せる。

 

(素直に喜ぶとはな……)

 

 一瞬だけ、その顔を見つめる。目の奥の熱、安堵と歓喜の混ざった握手──だがそれは、この男の“使命”が果たされたという喜びに過ぎない。

 

(幸せだな……利用されたことにすら気づかないとは……)

 

 この男はただ、“俺を引き渡す役目”を担わされただけにすぎない。明日には別の"仕事"を任され、過去の功績など上にとっては何の意味も持たない。

 フブキは、哀れみのようなものを覚えた。

 

(俺が向こうに行った瞬間……あんたは、用済みになる)

 

 だからこそ、声には出さず──だが冷えた目だけで、心の底からその手を見下ろした。

 

「……よろしく頼むよ、アルジェント君! 本社にもすぐ報告しておくから!」

 

 意気揚々と整備長に話し始める男の声を背に、フブキは一歩だけ後ろに引いて、握手の余韻を払い落とすように手を拭った。

 

 そして、誰にも聞こえない声で小さくつぶやいた。

 

「……やれやれ」

 

 男たちとの話が一段落し、フブキは一足先に事務所を後にした。外の冷たい空気が、わずかに火照った頬を冷やしていく。仕事に戻ろうと、いつもの通路を歩き出したその時

 

「おい、アルジェント!」

 

 背後から整備長の声が飛ぶ。振り返ると、腕組みをしたままの整備長が、いつものぶっきらぼうな調子で口を開いた。

 

「荷物、ちゃんと持っていけよ。明日はここじゃねえんだからな? 間違えて出勤すんなよ?」

 

 フブキは、しばしその言葉を聞いたまま動きを止めた。だが、意外そうな顔はしない。ただ、静かに瞬きを一つだけすると、肩をすくめて答えた。

 

「……わかってます。忠告ありがとうございます」

 

 何の驚きも、抗議もない。こうなることはある意味想定内。フブキはそれだけを口にして歩き出す。

 

 退路は、すでに塞がれていた。この一連の流れは、フブキがあのバーに行った時から、すべて”最初から決まっていた”ことだったのだろう。

 

(……抜かりない)

 

 そして仕事を終え、フブキはロッカーを開き、私物を一つひとつ丁寧に確認しながら、無言のまま荷物をまとめていく。

 フブキは、肩にかけた荷物の重みを一度確かめると、ロッカーの扉を静かに閉め、振り返る。

 

(この事務所も、今日で最後。短かったな)

 

 その事実に対して何の感慨も抱かぬまま、廊下を抜けて外へと歩き出した。まだ空には昼の名残が微かに漂い、コロニー内の灯りも完全には切り替わっていない。

 人口制御された“夜”を迎える前の、一瞬の中途半端な時間。建物の陰が伸び、人工の風がコロニーの通気口から静かに流れ出している。

 

(太陽光集積パネルがもうすぐ閉じるな……)

 

 建設業、この業界では朝が早く、日が暮れる前に終業するのが常であった。しかしフブキにとって、その“常”はもはや形骸でしかない。連日の呼び出しと、突発的な交渉事により、帰宅は夜になることが当たり前となっていた。

 

(こうして“夕暮れ前”に街を歩くのは、いつ以来だろうか──)

 

 手にした荷物は、わずかにいつもより重い。けれどそれは、単に物理的な重さではないような気もしていた。

 フブキは足を止めて、ふとコロニーの天井──空に見立てられた湾曲した壁面を見上げた。向かいには、逆さまに広がるもう一つの街並み。明かりが少しずつ灯り始めている。

 

(──また別の場所……それもパイロットとは……)

 

 静かに呼吸を整えると、フブキは再び歩き出した。どこか、自分でも気づかぬうちに、心がわずかにざわついているのを感じながら、荷物を片手に抱えつつ、フブキはなんとなくコロニーの街を歩いていた。

 目的もなく、ただ足の向くままに。建物と建物の隙間から覗く空は、人工の制御によって徐々にその色を変えていく。やがて、夕方の柔らかな光は深い群青に沈み、街灯が一つ、また一つと静かに灯り始める。

 

 ──コロニーが“夜”に変わっていく。人々はすでに家路につき、通りには静けさが戻りつつあった。フブキは足を止めたまま、上空を──湾曲したコロニーの内壁に映る“空”を見上げる。そこには、宇宙の星々がまたたきを始めていた。

 

 その様子を、彼はただ立ち尽くして眺めていた。

 

(……夜になると嫌でも思い出してしまう……ソロモンでのあの光を……)

 

 そんな思いが脳裏をよぎったその時。

 

「……おじさん?」

 

 背後から、聞き慣れた少女の声がした。小さく息を吐き、肩をわずかに落とす。

 

「……はぁ」

 

 振り返ると、そこに立っていたのは──アマテだった。制服姿のまま、カバンを背負い、少しだけ驚いたような顔をして彼を見上げていた。その目には、再会の嬉しさと、どこか安心したような色が混じっていた。

 フブキは、口を開く前に、ほんの僅かに視線を逸らした。

 

(……こいつは本当に、タイミング良いんだか悪いんだか……)

 

 そう思いながらも、その胸の奥に、ふと一筋の温かいものが流れるのを感じていた。

 

「……もう夜になったぞ。こんな所で何してんだ?」

 

 フブキが問いかけると、アマテは制服のスカートの裾を握りながら、どこか照れたように笑った。

 

「学校の帰りだよ」

 

 短く、そして少しだけ語尾を濁す。アマテはすかさず問い返した。

 

「おじさんこそ、なんで? いつもこの時間じゃないよね?」

 

 フブキは視線を前に戻すと、小さく鼻を鳴らして答える。

 

「今日は早く上がれたからな」

 

 それだけ言って、歩き出した。荷物を持つ片手は重くはないが、今夜は少し疲れていた。

 

「ちょ、待ってよ!」

 

 アマテは小走りでフブキの隣に追いつき、自然な流れで横に並ぶ。しばし無言で歩いたのち、フブキがふと顔を横に向けて訊いた。

 

「お前……普段もこんな時間にフラフラしてんのか?」

 

 声色にわずかな苛立ち──いや、心配が滲んでいた。それを悟ったのか、アマテは肩をすくめて慌てて答える。

 

「普段はもっと早いよ、ちゃんと。今日は、その……そう、学校の手伝いとか。ちょっと遅くなっただけだってば」

 

 その“とか”という曖昧な言い回しに、フブキは心の中で(まあ、嘘なんだろうな)と察した。だが、口にすることはなかった。

 

「……そうか」

 

 短く返して、それきり。二人は再び言葉少なに並んで歩き続ける。人工の夜が広がる街を、淡い街灯に照らされながら。

 フブキの歩幅は、少しだけ、隣の少女に合わせていた。歩くうちに、通りの片隅にある自販機前でフブキの足が止まった。

 

「……少し寄るぞ」

 

 そう言って、荷物を傍に置くと、無言で操作パネルを押す。落ちてきた缶を一つ取り、もう一つ──カフェオレの缶を選んで、アマテに手渡した。

 

「……ありがと」

 

 アマテが受け取って小さく微笑むが、フブキは視線を外したまま、ただ短く答える。

 

「ああ」

 

 そのそっけない返事に、アマテは少しだけ不満げに口を尖らせたが、それ以上何も言わず、チビチビと缶を傾ける。まだ温かい飲み物が、夜風に冷えかけた体にじんわりと染みていく。

 そんな彼女の様子を、フブキは一瞥したあと、ぼそりと呟いた。

 

(……もう、会えないかもしれないからな」

 

 それは、心の中でつぶやいたつもりだった。だが──

 

「……え?」

 

 アマテがすぐに反応した。

 

「……どういうこと? ねえ、おじさん。なんで“もう会えない”なんて言うの?」

 

 缶を持ったまま、真剣な表情で詰め寄るアマテ。その目は、冗談を冗談として流せないほど、まっすぐだった。

 フブキはしばし黙ったまま、夜のコロニーの天井を仰いでいた。

 

(……しまったな)

 

 それでも──もう言い訳をするには言葉が出過ぎた。

 

「会社の指示でな。……新しい職場に行くことになった」

 

 フブキは缶を軽く傾け、ひと口含んでから、続けた。

 

「何にせよ……こうして会うことは、難しくなるだろうな」

 

 その言葉に、アマテはしばし無言になった。カフェオレの缶を両手で抱えたまま、視線を下に落とす。

 

「……そっか」

 

 わずかに肩が沈んでいた。声には出さずとも、その小さな背中が、“寂しさ”を雄弁に物語っていた。そんな姿に気づいたフブキは、ふっと小さく息を吐いて言葉を続けた。

 

「……まあ、お前にはまだまだ“未来”がある。俺がいなくてもお前は大丈夫だし、今はしっかり、勉強していけ」

 

 アマテは小さな声でぽつりと漏らす。

 

「……つまんないよ、勉強なんて」

 

 すると、フブキは珍しく馬鹿にすることもなく、すぐに否定した。声のトーンは静かで、けれど確かな強さを帯びていた。

 

「ふっ、そんなことはない。知識というのは力だ、アマテ。知識があれば、いろんな視点で物事が見える。世界を俯瞰して見て、考えて、間違って──また考えて、その繰り返しだ。……そういう経験が、お前の人生をきっと支える」

 

 淡々と語るその横顔を、アマテはじっと見つめていた。言葉が、静かに胸に染み込んでいく。

 

(どうしてだろう)

 

 語る彼は、キラキラしていて、強くて、頼もしくて、でも──どこかで悲しそうだった。楽しそうなのに、幸せそうなのに、どこか別の場所を見ているその姿に、アマテは目を逸らせなかった。

 

「今日はもう遅い。……送っていってやる」

 

 そう言って、フブキはゆっくりと歩き出した。荷物を持ったまま、淡々とした足取りで。アマテは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに小さく頷いて一言だけ。

 

「……うん」

 

 彼の横に並びながら、「こっち」と小さく言って、自分の家の方角へと導いていく。しばらくの道すがら、二人は他愛もない話を交わした。学校のこと、仕事のこと、最近見たニュースや、食堂のまずい定食の話──どれもささやかな会話だったが──心地よかった。

 

 やがて、アマテの住むマンションが視界に入ってきた。明かりのついたエントランス、その先に続くホール。立ち止まったフブキは、ふと横を見てから言った。

 

「……もう大丈夫だな」

 

 それだけを残して、踵を返す。だがその背中に、アマテの声が追いかけた。

 

「──マチュ!」

 

 少しだけ叫ぶような、でも必死に絞り出したような声だった。フブキは一瞬立ち止まり、ゆっくりと振り向く。

 

「……マチュ?」

 

 怪訝そうに聞き返すと、アマテは頬を赤らめ、視線を泳がせながら言った。

 

「わ、私の……ニックネーム的な、やつ。……だから、その……」

 

 言葉を重ねるほどにしどろもどろになっていくアマテ。そんな様子に、フブキはわずかに目を細め、口の端を緩めた。

 それは、確かに──「笑って」いた。

 

「……マチュ、か。……じゃあな、マチュ」

 

 そう優しく言って、フブキは再び背を向けた。数歩、歩き出したその背に、アマテがぽつりと呟いた。

 

「……名前、教えてくれないの?」

 

 フブキは足を止め、ふと振り返りもせずに、低く静かに名乗った。

 

「──フブキ。フブキ・アルジェント」

 

 その名前が、夜の静けさに溶けていく。アマテは、ぎゅっとカフェオレの缶を抱きしめながら、その背中を見送っていた。

 




 シイコさんのオーディションが収録寸前で決まったのは驚き。そしてあんな魅力あふれる演技ができている声優さんも素晴らしい。
 それなのになんで1話で終わるんや。人の心がないのか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。