機動戦士Gundam GQuuuuuuX 自由の奴隷   作:スペースデブリ

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「面倒が嫌いな人」さん、「garaasaa」さん。誤字報告ありがとうございました!
やはり自分で確認はしていても、バーと書いてしまったら色々間違ってしまいますね…w

お気に入り登録もいつのまにか100件!評価バーも赤くなってて怖いです。でもありがとうございます!

……帰るところを失うって辛いですよね?色々大興奮だったんですが…まずGQXくん不思議装甲搭載してないはずなのに何で勝手に動いたの?あとサイコくんは何で光ってんの?え?まさかあるの?アレ。
色々と知らないよ!あんな武器!


対 駆動系摩擦技術

 

 

 回収用アームのリードワイヤーが、黒いザクの背部に接続される。ゆっくりと牽引されながら、ザクは企業所有の母艦──人工重力の走る艦内ドックへと滑り込んでいった。

 

 ドック内では、複数の整備員と技術者たちがモニターを確認しながら配置についている。その中の一人が、ザクの胸部ハッチに手を伸ばし、コックピットを解放した。

 

 微かな蒸気が白く上がり、ゆっくりとハッチが開くと──その内部には、汗を滲ませたフブキの姿があった。

 

「お疲れ様です、大丈夫ですか?」

 

 作業員の一人が、キャットウォークから身を乗り出し、手を差し伸べる。フブキはその手をしっかりと握り、ゆっくりと身体を引き上げられた。ザクから降り立った瞬間、拍手の音がドック内に響いた。

 

「お疲れ様でした。フブキさん」

 

 スーツ姿の男──ロイドが、スーツのポケットに手を入れながら近づいてくる。場違いなほどにシワのないスーツを着こなし拍手をする姿に、整備員たちはわずかに表情を曇らせたが、フブキは静かに目を細める。

 

「ブランクがあるとは思えませんよ、フブキさん。動きも反応も、シミュレーター以上のパフォーマンスです」

 

 ロイドの声に、フブキはやや疲れた様子でヘルメットを外し、無造作に小脇に抱えながら短く応えた。

 

「換装して初めて乗ったが……少し慣れが必要だな。だがまあ連邦のモビルスーツとあまり変わらなかったよ」

 

「なるほど、それはよかった」

 

 ロイドは頷きながら続けようとするが、フブキは彼の勢いを制すように、少しだけトーンを落として言った。

 

「ただ──動きが重い。こちらが動こうとした時に、ワンテンポ遅れるような感覚がある。制御OSと推力の出力が噛み合ってないのか……または別の要因か、なんにせよ姿勢制御の反応がやや鈍いな」

 

 その冷静な分析に、ロイドは一瞬だけ言葉を止めた。だがすぐに、目を細めた。

 

「そのご意見はあなたでなければ引き出せない感覚ですよ。機体の限界とパイロットの感性が交わる、その感覚、普通の人間では出てきませんから」

 

 フブキは、その“熱”のこもった言葉に応じることなく、静かに作業員から差し出されたタオルを受け取り、汗を拭いながら口を閉ざした。

 

 この男は、確かに優秀なのだろう。だが、どこか普通の人とは感性が違っている──フブキは、そんな微かな違和感を覚えながら、視線を再び黒く塗られたザクへと向けた。

 

 そしてフブキの言葉を聞いたロイドは、眼鏡の奥で揺れる瞳に、思考の渦が浮かんでいるのがわかる。

 

「しかし……やはり課題は、駆動系ですか……」

 

 その声は、聞かせるものというより“自分に言い聞かせる”呟きだった。

 そして続くように小さく──

 

「フブキさんの動きに、モビルスーツが遅れをとっている……」

 

 ロイドは眉間に手を当てながら、すぐ横の技術スタッフに何やら指示を送り始めた。エラー吐出の時間、姿勢制御応答、推力配分の再調整項目。

 言葉の端々に、焦りはなかった。むしろそれは、迷いのない技術者としての熱に満ちた“確信”の声だった。

 

 フブキはそれを黙って見ていた。手渡された缶入りの栄養飲料を、カチリと開けて、口元に運ぶ。炭酸の抜けた甘さと、かすかなミントの清涼感が喉を下りていく。

 

 その間にもロイドは、止まることなく誰かに話し、指示を飛ばし、未来の戦闘モデルを語っていた。

 

(……こいつは、ずっとこうだな)

 

 黙々と飲みながら、フブキは視線を外さずに考える。自分が“こうすればいい”と言えば、彼は“それを作る”と言うだろう。だがそれは、恐らく自分のためではない。

 

 ──あの男は、俺を通して別の何かを見ている。

 

 フブキは、そんなロイドの横顔を静かに見つめながら、どこか感情を読み取らせない、曖昧な表情を浮かべていた。

 

(……ある意味俺よりも先を見据えていると言うべきか……悪い奴では……なさそうだが)

 

 そう思う。少なくとも、ロイドの言葉はいつも礼節をわきまえていて、露骨な下心も見えはしない。技術者としての執着心と熱意も、確かに本物なのだろう。だが──

 

(……やっぱり、腹の中が見えない)

 

 話し方も、態度も、論理の組み立ても隙がない。だが、それが逆に不気味だった。

 

「信用できない」と断じるほどではない。ただ、信じようにも、触れられる場所がないのだ。

 

 ロイドという男は、何かを隠している。それが“人”である以上当然のことだとしても──あまりに何も見えないこと自体が、不自然に思えてならなかった。

 

 

 

 

 

──

 

 

 

 

 ザクの整備が続く中、ブリーフィングルームの隅に設けられた控え室にて。フブキは黙って椅子に座り、ザクのシステムが表示されたタブレットを見ながら、濃く入れられたブラックコーヒーをゆっくりと口に運んでいた。

 

 すると、控えめにノックの音がして、ドアが開く。

 

「失礼、構いませんか?」

 

 入ってきたのは、ロイドだった。いつもの調子で場の空気を読んでいるような微笑を浮かべている。

 

「少しだけ、お話をいいですか?」

 

 フブキは返事をせず、手にしたカップを持ち直しただけだった。それを了承の合図と受け取ったのか、ロイドは向かいの椅子に腰を下ろす。

 

「……私も、あの戦争で多くの同僚を失いました。直接戦ったわけではありませんが、破損した機体を直していくたびに思うのです。“この機体で、また誰かが死ぬのだろう”と。そんなことを考える日々でした」

 

 思いのほか静かな口調だった。饒舌に夢を語るいつものロイドではない。

 

「私は、戦争の“裏側”にいて、現場を知らない。ですが──」

 

 ロイドは一瞬だけ、目を伏せる。

 

「──それでも、私は止まらなかった。兵器が不要になる世界なんて、すぐには来ないと分かっていたからです」

 

 フブキは、黙ってその言葉を聞いていた。彼の言葉が本心かどうかは、まだ判断できない。けれど──今のロイドに限って言えば、少なくとも“偽りの仮面”ではないように思えた。

 

「……あんたが何を考えているかは知ったこっちゃないが。少なくともモビルスーツに関しては信頼はしている」

 

 不意に、フブキが口を開いた。ロイドは少し驚いたように顔を上げ、そしてわずかに笑った。

 

「これは私の"業"ですよ。私は、理想に取り憑かれているだけです。それがどんな結果を生むのか、私自身にも分かりません」

 

 フブキは短く息を吐いた。

 

「そんな曖昧なやつが、俺を引っ張り出したのか」

 

「ええ。あなたが必要だったんです。……地獄を生き延びた、あなたが」

 

 その言葉には、打算ではない何かがあった。

 

 フブキは再び黙り込んだ。そして視線をロイドから外し、静かに呟く。

 

「……その業が、俺をまた殺すかもな」

 

 ロイドは何も言わず、ただ静かにフブキの言葉を受け止めた。その沈黙は、敵でも味方でもない、ただ一人の技術者としての誠意のように見えた。

 

 ロイドはポケットから小型の端末を取り出し、何かを確認していた。そして思い出したようにフブキへと向き直る。

 

「ああ、それと駆動系の件、一人思い当たる人物がいます。現在、警備会社ドミトリーに在籍している元連邦軍の技術士官で……名を、モスク・ハン博士と言います」

 

 その名を聞いた瞬間、フブキの眉がわずかに動いた。無関心を装っていた表情に、ほんのわずか──懐かしさと驚きが混じる。

 

「……あの、“マグネットコーティング”の……?」

 

 ロイドは目を細め、面白そうに返す。

 

「おや、ご存知でしたか?」

 

「……これでも戦争が始まる前は、技術士官の候補生だったんだ。

 名前くらいは──というより、あの技術と、その名前を知らない技術系の人間はいないだろう」

 

 フブキの口調は、珍しくどこか柔らかかった。それは、戦場とは違う“学びの時代”を思い出したからかもしれない。

 

「まあ……実際に会ったことはない。論文を見ただけだ。でも、ありとあらゆる操縦反応を極限まで0に近づける理論ってのは、今思えば革命的な物だった」

 

 ロイドは頷きながら、フブキの反応を興味深そうに見つめていた。

 

「……彼は戦後しばらく姿を消していましたが、数年前から再び表舞台に戻り、現在はドミトリーの技術顧問として在籍しています。相変わらず癖の強い人物ですが、“応える機体を作る”という信念だけは、戦時中と変わっていません」

 

「……まさか、そんな人物がこのサイド6にいたとはな」

 

「ええ、運がいい。あなたの“動き”に応えるための技術なら、彼以上に適任な人物はいないと思いましてね」

 

 フブキは、しばし無言で天井を仰ぐように視線を上げた。

 

 思えば、回り道などしていなかったのかもしれない。ただ、歩む道が違って見えていただけで、ずっと“この世界”にいたのだと。

 

「……で、その博士はすんなり協力してくれるのか?」

 

 フブキがわずかに目を細めて問うと、ロイドは一拍おいてから微笑みを浮かべた。

 

「当たってみましょう。──少々“面倒な方”ではありますが、不可能を嫌う人物でもありますから」

 

「そうか。なら話は早いかもな」

 

 ロイドの表情には確信とわずかな期待が混じっていた。一方のフブキは、その名を懐かしむように、あるいは試すように。

 

「ふん……楽しみだな」

 

 口元がわずかに緩む。それが微笑だったのか、皮肉だったのか──それは、誰にも分からない。

 

 

 

 

 

──

 

 

 

 

 

 

 数ヶ月後

 いつものように、フブキは演習を終えたザクから静かに降り立った。整備員たちはすでに待機しており、作業の準備を始めていた──そのときだった。

 

「整備員はモビルスーツから離れろ! 以降はこちらで引き継ぐ! 整備急げ!」

 

 格納庫の空気を裂くような声が響き渡る。現れたのは、白髪に混じる乱れ髪を振り乱し、技術班の制服とも異なる黒衣をまとった男。しかも一切の説明もなく、部外者然とした様子でザクに取り付き、機体に触れ始めている。

 

 不穏な空気に、整備員たちが戸惑いを見せる。フブキはすぐさまその男に歩み寄った。

 

「……このザクに、何をするつもりだ?」

 

 男は一瞬こちらを見て、眉を上げた。

 

「ん? 君は誰だね?」

 

 その飄々とした態度に、フブキの表情が僅かに鋭さを帯びる。

 

「質問を質問で返すな。部外者が俺のザクに勝手に触らないでもらおう」

 

 低く、威圧を孕んだ声。しかし男は全く動じず、むしろ目を輝かせた。

 

「おお、“俺の”とな? つまり君がこの機体のパイロットか! これは話が早い!」

 

 あまりに自由奔放な言動に、フブキは一瞬呆けたような顔になる。その間を縫って、ロイドが慌てて駆けつけてくる。

 

「フブキさん、彼ですよ、モスク・ハン博士──駆動系摩擦キャンセル技術の権威です」

 

「……モスク・ハン?」

 

 フブキはその名を反芻し、視線を男へと向け直す。

 

「あなたが?」

 

 モスクは少し驚いたように目を見開く。

 

「ご存知でしたかな?」

 

「元技術士官候補生でした。博士の論文は読んだことがあります。お会いできて光栄です。……しかし、実用化されていたとは思いませんでした」

 

 だがモスクは、肩をすくめて笑った。

 

「実用化? とんでもない。戦時中はそんな余裕もなかったよ。名前ばかりが独り歩きして、現場には届きもしなかった。──だがな、今回の君の機体が、実戦での"第1号”"になるのさ!」

 

 そう言うと、博士は意気揚々とザクへと飛びつき、機体に登攀していく。

 

「保証の限りではないが、失敗しても文句を言うなよ! なんせ、ろくなデータもない中でやるんだ! はっはっは!」

 

 彼の笑い声が格納庫に響く中、フブキはその背中を見上げ、ただひとつ呟いた。

 

「ふっ……最初は何事も1からですよ博士」

 

 ロイドは、苦笑しつつも満足げだった。

 

 

 

 数時間にわたる作業の末、整備はようやく終わりを迎えた。

 

 格納庫に響いていた工具音も止み、ザクの機体が静かに佇む。内部には目に見えぬ“革命”が仕込まれているのだろう

 

 機体から降りてきたモスクは、スーツの袖で額の汗を拭いながら、誇らしげに言った。

 

「──機械的な干渉はすべて打ち消したはずだ。制御系と駆動系の“摩擦”は極限まで最適化してある」

 

 それを聞いたフブキは、無言のままザクを見上げる。そして小さく口を開いた。

 

「……ということは、やろうと思えば速度は無限大に上げられると?」

 

 モスクは眉をひとつ跳ね上げ、笑う。

 

「ここで“できる”と断言することはできん。が──まあ、“理論上”はな。

 ただし、モビルスーツ自身の出力……そればかりは君の腕前とは別の問題だ」

 

 その現実的な一言に、フブキも思わず笑みをこぼした。

 

「……そうですね。けど、もしこれで──こいつが、俺の動きに本当に追いつけるようになったら……」

 

 視線をザクからモスクへ移す。

 

「博士、あなたは俺の“救い主”になりますよ」

 

 モスクは一瞬目を丸くした後、大きな声で笑った。

 

「ふっ、救い主だなんて、柄じゃないな。だがまあ、今回のデータ──それだけは、何らかの形で私の手元に残しておいてくれ」

 

「貸しにしますよ?」

 

「なら、利息付きで返すとしよう。あの世でな」

 

 笑いながらザクに背を向け、軽やかに歩き去っていくモスク。その背中には、年齢を感じさせぬ“技術者の誇り”があった。

 

 フブキはその姿を見送ると、再びザクに視線を向ける。まるでそこに新しい“感触”を見出すように、静かに息を整えた。

 

 そんな会話の余韻が残る格納庫に、けたたましい警報音が突如として響き渡った。

 

 ウゥゥゥ……ウゥゥゥ……

 

《敵艦接近中! 本船より急速に接近するモビルスーツ反応、複数確認!》

 

 艦内放送が鋭く鳴り響き、技術者や整備員たちが一斉に顔を上げた。その中で、真っ先に動いたのはフブキだった。

 

「ザクを出すぞ」

 

 その一声に、現場が一気に活気づく。整備員たちが驚きながらも、即座に発進準備へと移行する。

 

 フブキはすでにザクのコックピットに乗り込んでいた。コンソールに手をかけ、起動スイッチを叩く。

 

 低く唸るような起動音。そして、前方のモノアイがゆっくりと光を宿し、動き出す──鮮やかな赤の光が、格納庫に冷たい閃光を走らせた。

 

(全動作系統、起動確認。電圧安定。OS、同期良好……)

 

 表示される情報ウィンドウに目を走らせながら、フブキは敵情を確認する。

 

(──ザンジバル級戦艦、一隻。敵影反応、多数。その構成と航路、機動パターン……単なる哨戒部隊とは到底思えない)

 

「これは……正規部隊ではないな」

 

 その言葉は、あくまで独り言のように、静かに吐き出された。やがて、前方モニターにカタパルトのマーカーが点灯。緑色のラインが“発進可能”を示していた。

 

 フブキはひとつ息を整えると、低く、しかし確かな声で告げた。

 

「──ザク、出るぞ」

 

 カタパルトが始動し、ザクの足元に力強い振動が走る。その姿を見上げる整備員たちの視線が、自然とその背中へと集まっていた。

 

 刹那、スラスターが閃光を上げる。黒き機体は、音もなく宇宙へと飛び立った。

 出撃直後、ザクの通信回線が自動的に開く。音声と共にロイドの姿がモニターに映し出された。

 

《フブキさん。情報が入りました。──敵は、ジオンを離反した元兵士たち。この宙域で民間船を襲撃しては物資を奪っている、言わば“海賊”です》

 

 ザンジバル級の船影が徐々に近づいてくる中、ロイドの声は静かだが、確実に緊迫感を帯びていた。

 

《元ジオンというだけあって、機体の扱いはそこらのゴロツキとは段違いでしょう。ただ……まあ、あなたなら問題ないでしょうが。頼みました》

 

 通信が切れる。静寂が戻るコックピットに、警告音だけが淡々と鳴り続けていた。

 

 敵影との距離──およそ9000メートル。このままでは数分以内に交戦が始まる。フブキは静かに、手元の操縦桿に指を添えた。

 

「ジオン、海賊か……」

 

 独りごちるように呟くと、スラスターを少し吹かして速度を調整する。

 モニターには敵編隊のフォーメーションが映し出されていた。古びたザク──だが、明らかに戦場慣れしている動き。編隊を組み、散開し、こちらを包囲するように機動を始めている。

 

 フブキはその動きを見据えながら、ひとつだけ──言葉を吐いた。

 

「……試させてもらおう。試射にはいい目標だ」

 

 皮肉なことに、それはかつて“赤い彗星”が言った言葉と、まったく同じだった。そしてその声に応えるように、ザクのモノアイがわずかに駆動音を立てる。静かな戦場に、凶兆が芽吹き始めていた。

 

 

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