機動戦士Gundam GQuuuuuuX 自由の奴隷 作:スペースデブリ
……お気に入り100件いって嬉しい!──だったのに書いてる間に200件を突破してる件について。怖いです。
でも──こんなに嬉しいことない…っ!
宇宙の静寂に包まれた、ザンジバル級の格納デッキ。若干灰色に染まった旧式のザクに乗り込んだパイロットが、通信用のスイッチを入れながらぼやいた。
「なぁコイツ、ただの商船じゃねぇのかよ。わざわざMS出してくるって、随分と大げさじゃねぇか? 先遣隊は大丈夫かよ」
通信の向こうから、仲間の声が返る。
《愚痴ってんじゃねぇ。どうせ雇われの傭兵か、護衛用の型落ちだろ。型番見りゃわかる。問題ねぇさ》
「へいへい……ったく、楽な仕事かと思ったのによ」
気の抜けた空気が、編隊全体に漂っていた。だが──それは突如として破られる。
「……っ何だ?」
デッキ内に甲高い警報が鳴り響く。
《どういうことだ? 発進したって話は聞いてたが、まだ距離があったはずだろ……?》
そのときだった。艦内通信から無線が飛び込んでくる。
《こちらブリッジ! 全機警戒しろ! 敵MS、一機だが……足が速すぎる! ザクだとしても“通常の三倍以上”だ!》
「はぁ!? おい冗談だろ!? ゲタでも履いてんのかよ!」
《……何なんだよ……!》
別の機体から、震えるような声が漏れた。レーダーの反応が、ぐん、と距離を詰めてくる。それはまるで、宇宙の闇の中から、音もなく忍び寄る“死”のようだった。“たった一機”──だが、その一機が“こちらを狩るつもりで来ている”のが、肌でわかる。
宇宙の宙域に、張り詰めた殺気が満ち始めていた。
甲高い警報音と、混乱する通信の合間──その部屋には、どこか異質な静けさがあった。
ザンジバル級艦内、艦橋の一角。モニターに映る戦闘データを眺めながら、ひとりの女性が足を組んで座っていた。
長く伸びた黒髪。片目だけが鋭く光を宿し、ディスプレイに映る「たった一機」を見据えている。無駄口を叩く者も、彼女の前では自然と口を閉ざしていた。
「……一機か」
静かに呟いたその声は、周囲の雑音の中でも確かに響く。
「……このご時世、たった一機でこの決断力の速さ。雇われ“傭兵”にしては、出来すぎてるね」
彼女の言葉に、周囲のスタッフが息を呑んだ。だが、誰一人、否定はしなかった。数秒の沈黙のあと、彼女は脚を組み直し、ゆっくりと立ち上がる。
そして、一言。
「きな臭い。私も出るよ!」
その瞳には、すでに戦う者の覚悟と、ただの"海賊"ではないことを悟った者だけが持つ鋭さが宿っていた。
周囲の兵士たちは慌てて無線機に連絡を走らせ、出撃準備を命じる。
艦内に再び鳴り響く発令音の中、──今、もう一人の“異端”が、戦場へと歩みを始めた。
機体が──応えてくれている。
スラスターの吹かしに、操縦系の制御に、あらゆる挙動が「指よりも早く」機体に伝わっていた。ついこの間まで感じていた鈍さ、遅れ、重さは、もうない。
(テストタイプとはいえ思考制御……癪だが面白い)
そう思った瞬間、口元がわずかにほころぶ。だが、それは高揚ではなく、戦士としての静かな満足に近い。
──デブリを蹴る。
無重力の宙域を足場に、滑るように敵艦へと接近するザク。その機体に、黒き塗装が宇宙の闇を溶け込ませる。
レーダーが、新たな反応を捉えた。
「……増援?」
敵艦から、もう1機──この混乱の中で冷静に戦況を判断し、援軍を差し向けてくる指揮官がいる。
(なるほど。ロイドの報告通り一筋縄じゃない、まともな“目”があるか)
フブキはすぐに進路を微調整しつつ、まずは目の前の敵を片付けることを選択した。
敵のザクが慌ててマシンガンを連射してくる。弾幕が散るが、フブキはまったく速度を緩めない。
スラスターを斜めに吹かし、逆方向にブーストをかけ、文字通り“縫うように”弾幕を抜ける。
「……遅い」
一言だけ吐き捨てると、腰のホルスターからヒートホークを引き抜く。
そして機体ごと横一閃に薙ぐ。ヒートホークが敵機の胴を断ち、内部のフレームごと焼き裂かれたザクは、爆発すら起こす暇もなく、断片となって宇宙に漂った。
切断と同時にスラスターを再点火し、フブキは視線を次の標的へと向ける。レーダーが示す“新たな敵”──その挙動は、さきほどの雑兵とは一線を画していた。
敵はすでに動き出している。そして、フブキは知っている。こういう奴は、戦場に長くいる"雰囲気"を纏っているのだ。
「……来るか」
背後で機体の断片が軋む中、“黒き鬼神”は、次の戦場へと向かった。
「クソッ、MAVがやられたッ──!」
爆散した味方機の破片が視界を埋める中、通信回線が怒号で埋め尽くされる。声の主は、戦線にいたザクのパイロットのひとり。
「一瞬だった……ッ! なんだよ、アイツ……! ただのザクじゃねぇ、動きが化けもんだ!」
怒りとも、恐怖ともつかぬ、混ざったような声。それを一喝する声が割って入った。
『狼狽えんじゃないよ! 散開しな! いつも通りのパターンで仕掛ける!』
その声には、明確な“力”があった。珍しい女パイロット──彼女のザクが、宇宙を切り裂くように加速する。
ザク特有の深緑と、あまり見ない紫のツートンカラーに塗装された機体は、量産型の外観を保ちながらも、どこか研ぎ澄まされたオーラを放っていた。
その異彩は、並ぶ雑兵のザクたちとは明らかに違う。
「隊長、正面に……っ!」
ディスプレイに映る、漆黒のMS。モノアイの光だけが、宇宙の闇に浮かぶ。
「──黒いザク」
女パイロットの目が細められる。
(間違いない……こいつ、噂になってた“アイツ”だ)
ここ最近、この辺りの宙域で話題に上がる、“正体不明の黒いザク”。編隊を単機で壊滅させ、船を無力化させる存在。多くは誇張と片付けられていたが──今、目の前にいるのは、紛れもなく“本物”だった。
「……いいじゃないか。ちょうど、腕が鈍ってたところだよ!」
彼女の機体が、一段階スラスター出力を上げる。
「アンタら! 黒い奴に意識を集中させな。左右から撃ち落とす!」
指示が飛ぶと、周囲のザクたちが即座に反応し、マシンガンを乱射し始める。無数の実弾が、宇宙の一点、黒いザクに向かって浴びせられる。
女パイロットは、その隙に中距離のブーストで回り込みつつ、確実に、“間合い”を測り始めていた。
その視線は、射殺すような冷たさと、同時に、戦場を久々に愉しむ“戦士の笑み”を含んでいた──
味方機が気を逸らしているうちにスラスターを吹かして急接近。ヒートホークを振りかぶり、切り掛かる。
「この程度かい!」
しかし黒いザクは銃撃の嵐を避けるとそのまま難なくヒートホークで受け止める。漆黒のザクと、紫と深緑のザク──双方のヒートホークが交わり、激突する。
金属が火花を散らし、粒子の残滓が弧を描く。互いの機体が拮抗し、推力の衝突が機体を軋ませる。
《……ッ》
コックピットに割り込む通信の波形。混線ではない、接触した機体同士の間で、短距離通信が開かれた。
「良い腕してるじゃないか……! なるほど、ここいらで暴れてる“黒いザク”ってのは、アンタのことだろう!」
その声には、獣のような昂ぶりが混じっていた。敵の機体、敵の存在であるはずなのに、戦士としての礼賛が滲んでいる。
「あたしらの仲間にスカウトしたいくらいさね! その身のこなし──悪くない!」
ヒートホークが軋む。接触点に火花が走る中、フブキは冷たく応じた。
《……ごめんだね》
低く、沈んだ声が返る。
《コロニーを落として、平然としておいて──そのうえ離反して"海賊"だなんて……そんな奴の仲間になれと? 寝言は寝て言え、女》
その言葉に、女の顔が一瞬だけ歪んだ。それは、怒りではなく──“痛み”を内包した色。
「……平然だって?」
声が、わずかに震えた。
「……アンタに何がわかんのさ……──気が変わったよ。お前は私が殺す!」
強引にヒートホークを押し込んでくるザク。推力を加えた一撃で、鍔迫り合いが揺らぐ。
同時に、周囲で散開していたザクたちが、一斉にマシンガンを連射。曇りのない殺意がフブキを包む。
「──ッ!」
フブキはヒートホークを斜めに弾き、強引にスラスターを全開。爆発的な推力で一気に離脱、被弾範囲から脱出する。
背後で散弾が宇宙の微粒子を引き裂き、掠めたビームがザクの左肩をかすめてバーニアに火花を走らせる。
(……危なかった)
「……来い。次は、こっちから仕掛ける」
フブキの瞳に、再び戦いの火が灯った。
機体を押し込む推力が途絶え、接触が解かれた。黒いザクは爆発的な加速で後退し、彼女の眼前から一時姿を消す。
その一瞬──“彼女”は、深く息を吐いた。
──平然としておいて
その言葉が、胸の奥でじわりと響いていた。
(……平然となんか、してるもんか)
モノアイ越しに映る宇宙の彼方。あの時見上げた、沈むように落ちていったコロニーが、記憶の底から蘇る。
白煙に包まれていく居住ブロック。モビルスーツの中から見ていた彼女たちには、それが“毒”だとは知らされていなかった。
"睡眠ガス"と聞いていた。「抵抗を封じるための手段」だと、信じ込まされていた。
──だが。“作戦成功”という報告が届いたときの、あの悪寒。そして静かに口を閉ざした上官の目を見たとき、彼女はすべてを悟った。
知らなかったでは済まされない。命令に従っただけ──そんな言い訳が通じるわけがなかった。
答えのない問いを、何百、何千回と反芻した。そのたびに吐き気がした。そのたびに眠れなくなった。
けれど、気づけばまた武器を取っている。
「平然……? 冗談じゃないよ……」
微かに震える声で呟いた。
《どうしますか! 船ならまだ間に合いますよ!》
通信越しの仲間の声に、我に返る。
「──囲みな。あいつは、ここで堕とす」
迷いを断ち切るように、機体を再加速させる。ブースターが唸り、再び宇宙を切り裂く。“あいつ”の視界に、再びこの手を叩きつけるために。
空間に火花が舞う。濃紫と緑のザクが、片手に構えたマシンガンを連射しながら、援護の爆炎の隙を縫って加速する。砲火の合間──その視界に、なお機敏に跳ねる“黒いザク”の影が映る。
(どうして、どうして──当たらない!?)
包囲されているはずだ。味方の援護もある。数でも、地の利でも、こちらが上のはずなのに──“黒いザク”はまるで幽霊のように、マシンガンの射線を抜けてゆく。
「っ……!」
女は奥歯を噛み締める。体が火照る。胸が焼けるように疼いて、気がつけば叫んでいた。
「アンタみたいなガキに……! 何が……何がわかるんだよ!!」
通信など、繋がっていない。それでも構わなかった。この叫びは、自分の心に叩きつける言葉だ。
「偉そうなこと言って……アンタだってこの辺りで、大暴れしたんだろ!?」
「多くの人を殺して、傷つけて──それで平然と“ヒーロー”ぶってるんじゃないよ!!」
“黒いザク”が翻る。その背中が、一瞬──コロニーに沈む光景と重なって見えた。
「あたしだって……知らなかったんだよ! あのガスが“殺す”ものだなんて……!」
機体のコックピット内、汗が頬を伝う。ヘルメットの中が、やけに蒸し暑く感じる。
「アンタだって……同じ穴の狢だよ……!!」
ザクの推力が唸る。女の執念が、そのまま機体を前へと叩きつける。
それは怒りであり、懺悔であり、痛みであり、ただ──「理解されないこと」への、どうしようもない孤独の咆哮だった。
再び距離が詰まる。彼女のザクが“黒い影”を捉えた、その刹那。
視界の隅で、何かが閃いた。
「投擲……!?」
警告すら鳴る間もない。コックピットの前方、閃光。
咄嗟に両腕を前に出す。シールドの代わりに己の肘で防御姿勢を取る。直後──視界が、白に染まった。
(クラッカーじゃない……!)
──白光。それはまるで、宇宙に咲いた一瞬の“太陽”だった。
「っ……!」
MS用、閃光手榴弾。視界を奪うためだけに設計された“閃光”。それが至近で炸裂し、モニターを透かしてコックピットの中すら灼く。
思わず、腕を前に出して視界を庇う。だが、次の瞬間──
"ドガン"という重く鈍い衝撃。
「くぅっ!!」
胸部装甲へ叩き込まれた、黒いザクの足。巨大な金属の塊が、自分を乗せた機体を殴りつける衝撃に、体が跳ね、振動が五臓六腑を揺さぶる。
「……ッがあぁッ!!」
呻き声が漏れる。咄嗟に踏んだペダルが宙を蹴るが、制御は遅れ、視界はまだ白んでいる。
シートベルトが彼女の肉体を無理やり座席へ縫いつける。内部警報が鳴り、HUDにエラーが次々と走る。衝撃で意識が一瞬だけ途切れそうになる。それでも彼女は必死に正気をつなぎ止める。
「……っ! まだ……動……く……っ!」
機体の外──マシンガンの音。味方のザクが前へと躍り出ている。彼女を守るように、連射の雨を“黒い影”へと浴びせかける。
だが──一発も当たらない。それどころか、黒いザクはその雨を“くぐるように”進み出た。そして──閃光とともに、部下のザクが切り裂かれる。
爆風が空間を焼き、火球が瞬く。その光に照らされて、ようやく女の視界が戻る。
「……っあ……!!」
目に映るのは──炎に包まれた部下のMS。
「……あんた……!」
噛み締めた唇から血が滲む。拳が震える。怒りか、悔しさか、恐怖か──もう分からない。
「……っざけんじゃないよォッ!!」
マシンガンを振りかざし、乱射。しかし黒いザクは撃墜したザクの破片を使い弾幕を回避する。その間に反転、旋回──全推力展開。
「……っ撤退だよ!!」
叫びながら、無線を開く。
「全機、離脱!! 今すぐだッ!!」
逃げるのではない。今は、退くだけだ。スラスターが唸り、女のザクは火線から弾かれるように宙を駆けた。
背後で、誰かが追ってきている気配がする。だが、いまは振り向かない。皮肉な事に、戦場に長く身を置いていたからこそ養われた勘が、“勝てない”と悟らせている。ならば、今はそれに従い生き延びることだけを考えなければいけない。でなければ死んでいった部下に顔向けできないと思ったから。
“勝てない”と悟った者に残るのは、生き延びることだけだ。それが、かつての戦場で彼女が学んだ、唯一の“教訓”だった。
敵機との交戦中、通信回線に割り込むようにして無線が入った。
《フブキさん、こちらは戦闘空域より離脱しました! 収集データも十分です──帰投してください!》
母艦のオペレーターの声。フブキはわずかに視線を動かし、通信パネルを見つめると、静かに返す。
「……了解」
しかし、その声には迷いが混じっていた。──彼女の声が、まだ頭から離れない。
ミノフスキー粒子が濃密に漂う宙域。聞こえるはずのない言葉が、どこかの隙間から“滑り込むように”届いていた。
『アンタみたいなガキに、何がわかるんだよ……!』
『多くの人を殺して!』
『同じ穴の狢だよ!』
“同じ穴の狢”──
「……全くもって、その通りだよ」
誰に聞かせるでもなく、フブキは呟く。コックピットに、自分の呼気だけが静かに響いた。
「……俺たちみたいな人間は──その生涯を、決して許されることはない。それでも──」
彼の右手が動いた。マウントラックから閃光弾を取る。再び視界に現れたツートンカラーのザク。さきほどの“女”──まだ戦意を失ってはいない。
フブキはためらわなかった。閃光弾を投擲。瞬間、強烈な光が視界を焼く。そのまま切り払うように機体を傾け、敵機に急接近してヒートホークを振るう──だが。
「チッ」
一瞬前に、別のザクがその前に飛び出してきた。
「割って入るか……」
横薙ぎに叩き込まれた一撃が、身代わりとなったザクを裂き、爆炎が宙を染めた。残る敵機は、反転してスラスターを噴かす。次々に離脱を開始していく。
(引き際を……分かっているな。あのパイロットは──)
淡く瞬く火線を背に、黒いザクは停止したまま佇む。
「……良い腕をしている。堕とせなかった……」
視界の片隅に、遠ざかっていく“ツートンの影”。それと同時に、女の叫びが、また耳元で囁く。
(俺とて、“同じ穴の狢”……)
言葉を振り払うように、スロットルを強く握る。スラスター、噴射。黒いザクは、戦場を背に静かに旋回し──母艦へと向けて、一筋の軌跡を描きながら帰投していった。
本編の今後はマチュVSニャアンになりそ〜…。男を取り合い、殺し合い。最高に宇宙世紀してますね。
ていうかガンダムくん良い雰囲気になると逃げるの何なのぉ…
あとエグザベくん、ニャアンにその言葉は余りにもクリティカルだぞ。