機動戦士Gundam GQuuuuuuX 自由の奴隷   作:スペースデブリ

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 アンケートありがとうございました!
すんごい拮抗してて驚きました〜まあ3択っていうちょっとした逃げをしちゃったこともありますが…まあとりあえず現状維持って感じですかね。
 お気に入り登録300件、ありがとうございました!


日常

 

(宇宙)って、自由ですか?」

 

 その問いに、フブキは答えなかった。いや──答えられなかった。

 

(宇宙)が……自由?)

 

 彼が知る空は、爆炎の渦巻く戦場だった。死と隣り合わせの、冷たい無音の世界。そこで交わされたのは言葉ではなく、意思でもなく、ただ命の奪い合いだけだった。

 そんな場所を、"自由"だなどと。

 

 子供の無垢な眼に、戦場を映すわけにはいかなかった。

 

「……まあ、重力がないから、多少大変だけどな……」

 

 それが限界だった。彼の、せめてもの誠意だった。アマテはそれを受けて、ほんの少し口元を緩めた。

 

「そういう事じゃないんだけど……まいっか」

 

 それきり、ふたりの間に短い静寂が流れた。しかしそれを破ったのは、アマテの明るい声だった。

 

「──そういえば私、来年には高校生だよ?」

 

 ほんの少し胸を張って、どこか得意げに言う。フブキは、少し驚いたように横目で彼女を見る。

 

「そうか……早いな。ついこの前まで、ランドセルでも背負ってそうだったのに」

 

「それは言いすぎ」

 

 アマテは頬を膨らませてぷいとそっぽを向いたが、その頬にはわずかな照れが混じっていた。

 ベンチに座るふたりを、風がすり抜けていく。公園の木々が、さやさやと音を立てた。──今だけは、戦争も過去も、肩に背負ったものも──どこか遠くにあるように感じられた。

 

「で? 何処に行く予定なんだ?」

 

 たい焼きの最後のひと欠片を口に運びながら、フブキが問いかけた。

 

「え? あ、え〜と、たしか……あ、これ」

 

 アマテは制服のポケットから少し折れた紙を取り出すと、フブキに手渡す。受け取ったフブキが目を通すと、そこには入学予定の学校名が記されていた。

 

「ハイバリー女学院……?」

 

 その名を目にした瞬間、フブキの目つきが僅かに変わる。

 

「お前……ハイバリーって……行けるのか?」

 

 どこか懐疑的な声色で問うフブキに、アマテのこめかみがピクリと動く。

 

「は? バカにしてる? これでも成績はトップなんですけど?」

 

「いや、そういう意味じゃないが……」

 

 フブキは紙から視線を戻し、真面目な声で続ける。

 

「ここは普通の学校じゃない。イズマでも指折りの“お嬢様学校”だろ。学費も高いはずだし、多分規則も厳しいだろう。サボり癖のあるお前が……本当に行けるのか?」

 

 言いながらも、どこか心配するような目で彼女を見ていた。

 

「ここ最近はサボってないも〜ん。前と同じにしないでよ」

 

 アマテはむくれたように唇を尖らせ、椅子の上で背を反らす。

 

「……まあ、いいさ」

 

 紙を軽く折って返しながら、フブキは鼻を鳴らした。

 

「それにしても……フッ、お前がお嬢様学校とはな」

 

 肩を揺らして小さく笑うその様子に、アマテは苛立ちを隠せなかった。

 

「ほんっとに人のこと、悉く舐めてるなぁ……!」

 

 握った拳を膝の上で震わせながら睨みつける彼女に、フブキは静かに目を細める。

 

「ああ、だが……そうやって文句を言う元気があるなら、案外やっていけるかもしれないな」

 

 その声に、アマテは少しだけ驚いたように眉を上げた。たった一言だったが、静かに彼女の胸に落ちた。  

 ふと横を見ると、フブキは紙を返した手を膝の上に置き、静かに風に身を委ねていた。髪がゆるやかに揺れ、頬を撫でる風に目を細めるその横顔は、どこか遠くを見ているようだった。

 

 アマテは、その姿に目を奪われた。

 

(なんか……キラキラしてる)

 

 胸の奥で、音もなく呟いた言葉。2年も会えなかったあの日から、何度も思い返してきた。

 

 最後に別れた、あの夜。名前を教えてくれたあの瞬間の、どこか優しげで、けれど…どこか寂しそうな笑み。

 今、風に吹かれるその姿に…あの時と同じ“表情”が重なる。

 

(あの時と同じだ……)

 

 そう思った瞬間、胸の奥がじんわりと熱を持ったように感じた。ただ黙って風に吹かれているだけなのに。

 ただそこにいるだけなのに。

 

(……なんだろう……この感じ……)

 

 心に浮かぶ想いを押し込めながら、アマテは少しだけ身体を寄せて、同じ風の中に身を置いた。

 それが、今の自分にできる、唯一の“距離の詰め方”だった。

 

 フブキは、少し身体を寄せてきたアマテに目をやりながら、ぽつりと問うた。

 

「……お前、ハイバリーに行って何がしたいんだ?」

 

 アマテは一瞬きょとんとした表情を浮かべ、反射的に返す。

 

「…はえ? な、何が?」

 

 フブキは、わずかに目を細めて前を向いたまま続けた。

 

「……まだ早いだろうが…将来は何したいとか、ある程度は決めてるからここを選んだんだろ?」

 

 その言葉に、アマテは視線を泳がせるように空を仰いだ。

 

「ん〜……あんまり考えたことないかも」

 

 気まずそうに呟くその声に、フブキは肩をすくめる。

 

「お前なぁ……」

 

 溜息混じりの言葉に、アマテは「うるさいなぁ」と小さくむくれた顔を見せた。しかし、次の瞬間、ふと何かを思い出したかのように「あ」と小さな声を漏らす。

 

「……私、地球に行ってみたいんだ」

 

 フブキは少し意外そうに顔を向ける。

 

「地球?」

 

「うん。なんかさ……海の中に、クラゲっていう生き物がいるんでしょ? それがすごく綺麗で、ふわふわしてて……」

 

 言葉を探すように、アマテは小さな手で空に輪を描いた。

 

「……空にいるみたいに、自由に漂ってるって。誰かが言ってたんだ」

 

 その横顔は、いつもの小生意気な言葉とは裏腹に、どこか儚く、純粋だった。

 

 フブキは何も言わず、その横顔を見つめていた。静かに、ゆっくりと風が二人の間を通り過ぎていく。

 

「……地球、か」

 

 フブキは小さく呟いた。その声は、風にかき消されるほど静かだった。

 空を見上げたその横顔は、凪いだ海のように静かで、どこか遠くを見ているようでもあった。

 

 その表情を見た瞬間、アマテの胸に淡い後悔が広がった。

 

(あ……)

 

 以前、母に同じ話をしたときのことが脳裏をよぎる。

 

『クラゲ? そんなのイズマの水族館にもいるでしょ。わざわざ地球まで行く意味あるの?』

 

 あっさりと、そして冷たく返されたその言葉が今も記憶に残っていた。

 スペースノイドにとって地球は“過去の場所”だ。遠く、天候が厳しく、重い重力が支配する、観光地のような世界。

 

 そこにわざわざ行って、「クラゲを見たい」などと口にするのは、どこか子供じみていて、笑われることなのかもしれない。

 

 だから──

 

(お願い……あんな目で見ないで)

 

 アマテは口を開きかけた。すぐに否定しようとした。

 

「ち、ちが……」

 

 その言葉を遮るように、フブキが静かに言った。

 

「……いいじゃないか」

 

 その声は穏やかで、柔らかく、風に乗って届いた。

 

「クラゲを見たい、地球に行ってみたい。お前がそう思ったなら、それでいい」

 

 アマテは思わずフブキを見つめた。そこにあの“あの目”はなかった。冷たい評価でも、失望でもない。

 ただ、まっすぐで、優しい言葉。それは、自分の言葉をちゃんと“受け取ってくれた”という証だった。

 

「……なんで?」

 

 アマテの声は、今にも風に溶けてしまいそうなほど小さかった。まるで、自分でも聞いていいのか分からないとでも言いたげに、そっとフブキに向けられた問い。

 

 フブキは少しだけ、空を仰ぐように視線を上げてから、ゆっくりと答えた。

 

「子供が夢を持つことが、そんなに悪いことか?」

 

 その声音は穏やかで、どこか寂しげだった。

 

「……たとえ馬鹿げた夢であっても笑わないさ。信じてやるさ」

 

……それが……俺の、責務だと思うから

 

 消え入りそうな声だった。聞こえるか、聞こえないかのその言葉に、アマテの目がわずかに見開かれる。

 彼は、自分の夢を否定しなかった。笑い飛ばすことも、説教することも、諦めさせるようなことも何一つしなかった。

 ただ、信じてくれた。

 

(……やっぱり、フブキさんは違う)

 

 そう思った。そう確信した。母とも違う。先生とも、街ですれ違う大人たちとも──誰とも違う。

 “ちゃんと、話を聞いてくれる”大人。

 

 だけど──

 

 アマテは、胸の奥がズキズキと痛むのを感じていた。どうしてかは、自分でもわからない。

 ──嬉しかったはずなのに。

 

 夢を笑わず、肯定してくれて。自分の話をちゃんと聞いてくれて。静かに、まっすぐに向き合ってくれたのに。

 

 それなのに、彼の言葉は──その優しさは、どうしようもなく遠く感じた。

 

(なんで……)

 

 目の前にいるのに、まるでずっと手が届かない場所にいるような──フブキの声は穏やかだった。言葉の一つも、否定ではなかった。

 

 でも、それはまるで“自分のことはどうでもいい”とでも言っているかのようだった。

 

 彼はいつだって冷静で、迷いがないように見える。だけどその立ち振る舞いが、まるで「それが自分の役目だから」と言わんばかりで──

 

 そこには、“自分自身の感情”が置き去りになっているように見えた。

 

(……なんで……だろう……)

 

 アマテの胸が痛むのは、きっとそれだった。フブキの優しさは本物だった。でもその優しさは、どこか“線を引いている”。

 

 あくまで“他人”として接していて、それ以上を決して踏み越えようとはしないような。まるで、最初から自分の行く先に誰も入らせないつもりなんだと──そう感じてしまったのだ。

 

 アマテは、ぎゅっと指先に力を込めた。声が出なかった。ただ、風の中でそっとフブキを見つめ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 アマテが嬉しさと悲しさに胸を満たしていたその一方で、フブキの胸の奥は、鈍く、静かに疼いていた。

 

(……どうしてだ)

 

 胸の奥が、ズキズキと痛む。なぜ、今この子の前に立っている“自分”が、こんなにも惨めで、重苦しいのか。

「責務」と言ったその言葉が、まるで自分の傷口を開く刃のように、静かに心をえぐっていく。

 アマテの素直なまなざしが、痛い。怖い。

 俺はそんな目をして貰うほどの価値なんてないんだよ──

 

 しばらくの沈黙が風に溶ける。ふと、フブキが静かに口を開いた。

 

「……お前、今日は学校どうしたんだ?」

 

 アマテは一瞬きょとんとしたが、すぐに「あ、今日は休みだよ……」と答えた。

 

「来年の進学の準備もあるし、いろいろ買い出しに出てきたんだよ」

 

 その言葉を聞いて、フブキは「そうか」とだけ言って、静かにベンチから立ち上がって、無言のまま歩き出す。

 

「えっ……え? ちょ、どこ行くの?」

 

 少し慌ててアマテも立ち上がり、数歩遅れて並びかける。フブキは前を向いたまま、さりげなく言った。

 

「買い物に行くんだろ? 行くぞ」

 

 その声音はどこか淡々としているのに、不思議と温かかった。まるで、さっきまでの張り詰めた空気を和らげる為の気遣いだろうか──アマテは、思わず笑みを浮かべた。

 

(やっぱり、優しいんだな……この人は)

 

「うんっ」と小さく返事をして、フブキのすぐ隣に並ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ショッピングモールの通路を歩く二人。フブキは、周囲をちらちらと見回しては、しきりにスマホで地図アプリを確認している。

 

「……なるほどな。こっちが南口、つまり向こうが……」

 

「ぷっ……」アマテは思わず吹き出す。

 

「何だ?」

 

「いや、あれだけ自信満々に“行くぞ”とか言ってたのに、全然分かってないじゃん」

 

「……言うな。久しぶりのイズマだし、ショッピングモールなんて普段は来ないんだ…察しろ」 

 

 フブキはバツが悪そうにしながら頬をかく。アマテは先導するように歩き出し、あれこれと店を覗いては、服を手に取って鏡の前に立つ。

 フブキは付き添いのように隣で見守っている。

 

「ねぇ、この服どう思う?」

 

「可愛いんじゃないか? 可愛いな。うん」

 

「絶対適当でしょ! 今、見てもいなかったでしょ!」

 

 アマテは膨れっ面で肩をすくめる。

 

「見てたぞ、ちゃんと」

 

 そう言ってやや早口でごまかすフブキに、アマテは呆れたようにため息をついたが、どこか楽しげでもあった。

 

 そんな穏やかなやり取りを交わしながらモールを歩いていると、フブキはふと足を止めた。その視線の先には、小さな雑貨屋があった。

 

「どうしたの?」と覗き込むアマテに、フブキは短く答える。

 

「……ああ、少し待ってろ」

 

 そう言い残して、彼は雑貨屋の店内へと姿を消した。アマテは店の前で、手提げ袋をぶら下げながらのんびりと待っていたが、不意に背後から声がかかる。

 

「あれ? アマテじゃない?」

 

 振り返ると、そこには同じ学校に通う数人の同級生たちが立っていた。

 

「こんなとこに来るなんて珍しいね~。あ、ねぇもしかして、今一緒にいたのって──彼氏?」

 

 からかうような口調に、アマテは思わず顔を赤らめる。

 

「ち、違うってば!」

 

「え~? でもちょっと、いい感じだったよ? ね?」

 

「うるさいなぁ……」

 

 和やかに談笑しているその時、店の扉が静かに開いた。小さな紙包みを片手に、フブキが姿を現す。

 

 彼はアマテと同級生たちの姿を目にすると、軽く頷きながら歩み寄り、申し訳なさそうに言った。

 

「すまん、待たせたな」

 

「あっ、ううん、大丈夫! ……は、早く行こ!」

 

 アマテは少し慌てた様子で、フブキの袖を軽く引き、足早に歩き出す。

 

「お、おい。あの子たちは……?」

 

 フブキが後ろを振り返りながら尋ねる。

 

「大丈夫! 学校でまた会うから!」

 

 そのままアマテは、照れ隠しのように前を向いたまま歩を進めた。フブキは小さく息を吐きながら、後ろの同級生たちに頭を下げる。

 

「すまないな」

 

 アマテの手を引かれながらモールの人混みに紛れていく二人の姿を見送ると、残された同級生たちは顔を見合わせ、ひそひそと声を上げる。

 

「ねえ、アマテのあんな表情、初めて見たかも」

 

「てか、あの人……普通にカッコよくない?」

 

「うん……誰なんだろう? 彼氏じゃないならお兄さんとか?」

 

 ざわめく声は、静かに夕方のモールに溶けていった──

 




 前半はね。うん。ビギニングだなぁ〜
後半よ。貴女料理できたんです?2号機なのに初号機?何でまた勝手に動くの?何で大気圏突入してんの?あまりにも情報量が多すぎて宇宙猫になりますて。
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