機動戦士Gundam GQuuuuuuX 自由の奴隷   作:スペースデブリ

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 色んな方が評価してくださり大変嬉しく思うと共に、期待に添えられるだろうかとプレッシャーを感じている次第です。まあ、気楽にやりはしますが──
 本当に暑くなってきて色々と大変ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?私もマチュみたいに海で泳ぎたくなってきました。──まだ早いか。


模擬戦

 

 

 ブリーフィングルーム内——

 

 壁面に設置された大型モニターに、模擬戦訓練場のリアルタイム中継映像が映し出される。イズマコロニーの外、訓練域に二機のザクが対峙している。両機ともに非実弾の訓練用装備を装備しており、セーフティはすでに解除済み。中継用衛星が各角度から戦況を補足していた。

 

「本当にやるのかよ、マジで」

 

「どっちが勝つと思う?」

 

「そりゃあ、アラガ隊長だろ。模擬戦とはいえ、あの人が負けるところなんて見たことない」

 

「けどさ、あのアルジェントって奴……傭兵なんだろ? 総長がアラガさんに“実力を見ろ”って言うくらいには、あるんじゃねぇの?」

 

 隊員たちは誰彼となく言葉を交わし始め、やがてそれがざわめきとなって部屋全体に広がっていく。

 

「ゼネラルリソース社だっけ? ここ2、3年で出てきたPMC。……って言っても所詮は傭兵じゃねえのか」

 

「落ち着いてたよな。全然ビビってなかったし……実戦経験豊富なのかもな」

 

「いやいや、アラガ隊長も伊達に隊長やってねぇよ。いくら傭兵でも“現場”で使えなきゃ意味ねぇわけだし」

 

 観戦する者たちの表情は、好奇、懐疑、揶揄、期待——さまざまだった。それでも共通していたのは、誰もがこの一戦に強い関心を持っているという事実だった。

 

 訓練とはいえ、これは軍警という閉じた集団の秩序に、外部から派遣された一人の男が“試される”場だった。

 

 その視線の重さは、モニター越しにいるフブキにも届いているようだった。

 

 

 

 

 

 訓練用ザクのコックピット内。

 

 全身を包む拘束感と、機体から伝わる軽微な振動。フブキは沈黙の中、シートに深く腰を沈め、起動済みのモニター群を流し見ていた。

 

 その静寂を破るように、通信回線が開く。

 

《……制限時間は──そうだな、5分だ。ま、MAV戦じゃないし十分だろう》

 

 渋みのある、しかしどこか楽しげな口調。間違いなく、総長の声だった。

 

《アルジェント君、武装は確認済みか? ソイツは訓練用のレーザー弾を装備している。命中判定はシステムによる即時解析、被弾と同時に判定が下る。そういう寸法だ》

 

 フブキはメインディスプレイに視線を流しながら、状況を脳内で整理する。

 非実弾。ビームではなく、出力を制限した訓練用レーザー。もちろん殺傷能力は皆無。だが、その照準制度と解析判定は、実戦に限りなく近い。

 

(……実用的だ。俺の(時代)にも、こういうのがあればな……)

 

 一瞬だけ、かつての戦地——01ガンダムと共にあったあの過酷な日々が脳裏をかすめたが、フブキはすぐにそれを振り払った。

 

《と、ここまでは大丈夫か? アルジェント君》

 

 通信越しの問いに、フブキは短く、しかし確実な声で応じた。

 

「問題ありません。いつでも行けます」

 

 それは、感情を極限まで排した兵士の声だった。だがその内には、確かに過去とは違う世界への適応と、静かな決意を滲ませる。

 

《そいつは結構。よし……では、これより制限時間5分の模擬戦闘訓練を開始する》

 

 通信が開かれた瞬間、場の空気が一変する。

 

《ミノフスキー粒子、散布開始。各機、通信制限レベル2。戦闘開始》

 

 直後、レーダーにノイズが走り、視認以外の情報手段が制限されていく。

 ——ミノフスキー粒子下、有視界戦闘。

 

 これは、宇宙戦での最も実戦的な訓練形式だった。

 

 フブキのザクが、白銀に霞む星々の狭間を縫うように、静かにスラスターを噴かす。単なる直線加速ではない。微細な姿勢制御を繰り返し、宇宙空間の遮蔽物——デブリ、通信衛星の残骸、廃棄された構造物の影を継ぐように移動していく。

 だが——

 

「……凄い動くな、アルジェント」

 

「な。あんなに動いてちゃ……見つけてくれって言ってるようなもんじゃねぇの?」

 

「あの動き……遮蔽物で姿を切りながら移動してんだ。見えてるようで、見えない」

 

「てかアラガ隊長は?」

 

 観戦ルームでは、モニターに映るフブキ機の動きに、次第にざわめきが広がっていた。

 一見すれば派手な機動。しかしその実、全ての行動は計算の上に成り立っていた。遮蔽線、逆光、死角。まるで宇宙そのものを戦場として“読む”ようにして、フブキは移動していた。

 

 その姿は、派手ではあるが無駄がない。速すぎるのではない。最小の露出で最大の機動性を確保する、一年戦争を、単騎で生き延びた人間の動きだったのだ。

 

 

 

 

 アラガはザクの操縦桿を慎重に操作しながら、静かに宇宙空間を進んでいた。

 空気のない無音の世界。だが、そこには確かに“敵”が存在する。ミノフスキー粒子によりレーダーは沈黙し、頼れるのは己の目と、現場で培って染み付いた勘だけだった。

 

(……必ずどこかにいる……絶対に何か違和感があるはずだ)

 

 遮蔽物の陰、太陽光の逆光、身体の僅かな発熱。アラガは視界の端まで神経を張り巡らせ、空間の“違和感”を探っていた。

 

 その瞬間——視界の端で、一瞬だけ光が走った。それは、デブリ反射か、敵機の熱源か。わからない。だが確かに、何かがそこに“いた”。

 

「……見つけた!」

 

 アラガは即座に機体を反転させ、フルスラスターで加速。まっすぐ、その光のあった方向へ突入する。

 

 視界に飛び込んでくるのは、ジャンク屋の回収が漏れた廃棄物や、破損した衛星の残骸。宇宙という戦場における“ゴミ”の密度は想像以上に高く、それゆえに“目”を曇らせる。

 

 ——だが、それを承知の上で、敵はここにいる。アラガは確信していた。

 そして、光のあった座標に辿り着いた瞬間。ディスプレイが、突如赤く点滅した。

 

〈HIT COUNT: 1〉

 

「……ッ!?」

 

 アラガの声が漏れる。

 

 ——撃たれた。視認できなかったはずだ。正面にも、左右にも、索敵には何も引っかかっていなかった。それなのに。

 

「……どこだ!? どこからだ!?」

 

 周囲をスキャンし、遮蔽物の裏まで視線を送り込む。だが、いない。いないのだ。目の前には、ただ漂う鉄屑と、冷たい闇が広がる宇宙空間だけ。

 

(隠れていたんじゃない……"動きながら"俺を撃ったのか!?)

 

 思考が回る中で、アラガの額に僅かな汗が滲む。冷却装置が作動し、内圧が調整される。訓練とは思えぬ“本物の狩り”のような、そんな緊張。

 

(このままじゃ……)

 

 ディスプレイの右上には、残り時間:3:00 のカウントダウンが点滅していた。

 アラガの心に、はじめて焦燥が芽生える。

 

 

 

 

 

 

 フブキはデブリの影に身を潜めながら、小さく舌打ちをした。

 

(……動きが重い)

 

 機体の応答に遅れはない。入力したことをしっかりとザクは返してくれる。──だが、フブキの入力に対しては、ワンテンポ遅れてしまう。その挙動が、神経をすり減らす。

 

(下手に急制動でもかけたら、操縦系を壊しかねんな……こっちが気を使う羽目になるとは)

 

 軍警が使用するザクは、あくまで標準仕様の枠を出ない。民間仕様のMSも然り。ジオンが正式採用している機体ですら、未だに摩擦キャンセル技術(マグネットコーティング)は搭載されていないのが現状だった。

 

 この技術はパイロットからの操縦応答の高速化と、機体の負荷軽減を両立させる高精度処理技術だ。しかし導入には精密な専門知識と高磁場処理が必要とされるため、量産機に適用されるためのデータが足りず、結局お蔵入りになってしまっていたのだ。

 

(……まあ、仕方ない)

 

 フブキは吐息交じりに苦笑する。

 

(ある意味恵まれた環境で“あの機体”に慣れた俺が悪い)

 

 思い出すのは、ロイドたちと共に運用していた黒いザク。あれは、純粋な戦闘用ではなく、あくまで戦闘データとサイコミュ適性を測るための実験機だった。

 

 だが、マグネットコーティングを含む先進制御系を備えたあの機体は、旧式機でありながら、正真正銘、時代を先取る礎の機体だった。

 

(あの応答性は……芸術品だ)

 

 フブキはふと、元連邦の技術者——モスク・ハン博士の名を思い出す。

 

 この宇宙世紀における応答制御理論を築いた男。その技術は、あの黒いザクに乗るたびにその偉大さを痛感させる。

 

(博士の技術が実用化されていれば、この機体も多少はマシだったかもな……)

 

 そんな思考を巡らせつつも、フブキの目は冷静に次の攻撃ポイントを捉えていた。遅れてくる機体の反応を先読みし、最小の動きで、最大の成果を狙う。

 

(しかし、このザクに関して言えば——)

 

 フブキはコックピット内で静かに思考を巡らせていた。

 

(……俺よりも、アラガさんの方がよほど乗りこなしている)

 

 機体そのものの性能差はほとんどない。だが、整備状態、クセ、反応速度といった“身体の延長”としての習熟度において、明らかに彼が上だ。無理に持久戦へ持ち込めば、その差が露呈するだけだろう。

 

(時間をかけるのは悪手。残り2分があったとしても、逃げれば“見せるべきもの”は何も残らない)

 

 ならば——選ぶべきは

 

 フブキは、デブリの影から静かに姿を現すと、照準システムを即座に稼働させた。マシンガン型の訓練用ビーム射出装置が、小刻みに振動しながら敵影を捉える。

 

「……行くぞ」

 

 引き金が引かれ、赤く鋭いレーザーが空間を裂いた。光弾はデブリを跳ねながら、アラガのザクを正面から狙う。

 

「チッ!」

 

 アラガもすぐに反応した。機体を傾け、右側の補助スラスターをフル出力。レーザーは間一髪、肩の外側をかすめていった。

 

 その直後、フブキの機体が急加速。

 

 回避行動で軌道を逸らしたアラガの隙を突くように、スラスターを噴かしながらフブキが接近していく。

 

 攻撃と同時の接近——ただ撃つのではなく、射線と機動の両面から圧力をかけるという戦術。訓練の域を超えた“実戦の間合い”だった。

 

 アラガの機体は後退しつつ、右腕のマシンガンを構えるが、その銃口がフブキを捉えるよりも早くザクが接近していた。

 

「——接近戦だと? 舐めるなよ!」

 

 アラガは機体を旋回させながら、腰部マウントから訓練用警棒を抜き放った。高周波も殺傷力もない、だが質量と運動エネルギーは確かに実在する。訓練機同士の白兵戦を想定した実体装備。

 

 正面から突っ込んでくるフブキ機へ、アラガは迷わず振りかぶる。

 

 だが——

 

「……遅い」

 

 フブキは機体の全スラスターを点火。機体を瞬時に横方向へ捻りながら急回転させた。

 

 その回転力を活かした脚部の軌道が、流れるようにザクの右脚から放たれる。“蹴り”だった。

 

 ガガンッ! 

 

 警棒が、真正面からの質量攻撃に耐えきれず、無様に折れ曲がった。

 

 次の瞬間、加速の勢いをそのままに、フブキの機体の膝がアラガ機の頭部正面に直撃した。

 

 バチッ——というノイズと共に、アラガの視界が一瞬で暗転する。

 

「……!? 視界が……!?」

 

 メインカメラ、沈黙。

 

 アラガの機体のモノアイが、ゆっくりと停止し、その光を失っていった。

 

 ——勝負は決した。

 

 直後、通信が入る。落ち着いた声だったが、どこか面白がっているようでもある。

 

《……模擬戦終了。アルジェント君、申し訳ないが……アラガを連れて帰投してくれ》

 

 フブキは一拍置いて、応じた。

 

「了解」

 

 訓練機としてはあまりに重く、無骨な質量を持つザクを片腕で抱え込むようにして、フブキはスラスターを吹かし始める。

 沈黙したモノアイを傍らに、フブキの機体がゆっくりと訓練宙域から離脱していく。

 その映像を呆然と見つめていた観戦室は、一瞬だけ無音になった。誰もが、今の一撃を受け止めきれずにいた。

 やがて、ぽつりと誰かが口を開く。

 

「……あんな蹴り、喰らったら動けなくなるよな、そりゃ」

 

「ていうかさ、機体あんなに回転してたのに……中の人間、なんで平然としてんだよ……?」

 

「俺だったら、間違いなく吐くね……断言できる」

 

 言葉にならない混乱が、少しずつ、漏れ始める。茶化す声も、賞賛も、戸惑いも、全てが“沈黙の否定”であったことを覆すように、空気を変えていった。

 

 

 

 

 

 模擬戦から帰還したフブキは、格納庫のデッキでザクを収容した後、静かにコックピットから降り立った。静かで、乱れひとつない足取りだった。そんな彼に、総長が声をかける。

 

「お疲れ様」

 

 視線を合わせず、フブキは問う。

 

「……期待に、添えましたか?」

 

 総長は一拍置き、ニッと笑みを浮かべた。

 

「ああ。これで、君のことを軽んじるやつはいなくなるだろう。……あいつらにも、いい刺激になる」

 

 そう言って、軽くフブキの肩を叩くと、総長は迷いなくアラガ機の方へと歩き出していった。

 

 取り残されたフブキは、静かに一息吐き、独り言のように呟く。

 

「……初めから、こういうつもりだったというわけか」

 

 格納庫の天井を仰ぎ見ながら、フッと笑う。

 

「——折り込み済みとはいえ、少し……気後れするな」

 

 その笑みに、疲労の色はなかった。だが確かに、あの無骨な機体に残った“爪痕”と、揺らいだ空気の重さは、彼がこの場に何を“示した”かを物語っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白く、無機質な部屋。冷却機の駆動音だけが静かに鳴り続ける。

 

 中央に設置された球形の拘束フレーム。その中には、白銀の髪を持つ少女が座していた。椅子は、まるでモビルスーツのコックピットのような構造をしている。頭部、背中、手首、足首……身体の各所には細いコードとセンサーが何本も接続されており、彼女はまるで精密機械の一部のようだった。

 

 分厚い強化ガラスの向こう側。観察室には複数の研究者たちが並び、静かにモニターを睨んでいた。

 

「はぁ……ようやく安定したな」

 

 一人が呟く。

 

「例のデータが効いたらしい。サイコミュの数値、精神感応波も安定した。これならサイコ・ガンダムの稼働試験にも問題ないはずだ」

 

 別の一人が頷くが、顔にはどこか訝しむような影が差していた。

 

「だが……何故、急に安定した? つい先週までは拒絶反応も出て、強制遮断を繰り返していたはずだ。精神インターフェースが壊れる寸前だった」

 

「それも“例のデータ”の影響だと?」

 

「さあ……原因の特定はまだだ。ただ、あの子供……完全に安定したわけじゃない。時折、意味不明な言葉を発しているからな……」

 

 研究者たちは視線をガラス越しに戻す。

 

 その先——コードに繋がれ、まるで眠るように項垂れていた少女が、ゆっくりと目を開けた。

 

 虚ろな瞳。だがその奥には、微かに灯る何かがある。

 口元が、ゆるやかに、しかし確かに笑みを浮かべた。そして、誰にともなく呟く。

 

「ふふ……僕とお兄ちゃんとの……キラキラ……」

 

 誰も、その言葉の意味を理解できなかった。観測室の空気が一段冷たくなったように感じた。

 




 ……そう…いうのもありなのか……シャロンの薔薇…な…るほど。
あと3話で終わるの?嘘でしょ?

 僕っ子、白髪、マスク、ダウナー、癖の集大成。好きよ、私。
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