機動戦士Gundam GQuuuuuuX 自由の奴隷 作:スペースデブリ
こんにちは、作者です。GQuuuuuuX始まりましたね。
今後の狂犬がどうなるのか楽しみです。個人的には壮大に曇ってほしい。
鬼神と呼ばれた者
U.C.0078
月面にある地球連邦軍技術士官学校、分校。
白く静かな施設の一角、第7工学棟の実習室では、午前の講義が終わったばかりの空気が流れていた。
「な〜あぁ、今日も昼ここで食うつもりかよ?」
腕を頭の上で組みながら声をかけたのは、レイ・フェルラント。
戦術科所属で、いつも気軽に誰とでも話す調子のいい男だ。
「……わざわざ場所を移動する理由がないだろ」
端末を閉じながらそう返す男は表情に起伏がなく、何かと「効率」を重んじる物言いをする。その方が性に合っていたからだ。
「ほんと、変わんねぇよなあ……よし、じゃあ俺もここ!」
レイは勝手に机をくっつけて、持ってきていた弁当箱を開ける。そこへもう一人、軽やかな足音が近づいた。
「あ、やっぱりいた。ほら、二人とも一緒に食べよ」
そう言って笑顔で現れたのはカエデ・セレスタ。
工学理論科に在籍する彼女は、いつも柔らかく、何気ない言葉で空気を和ませるその姿から、学科一の美人だと言われている。
「も〜またそれだけ?それだけじゃ味気ないでしょ? 今日ね、玉子焼き上手くできたんだよ」
「毎度聞くが、いいのか?」
「もちろん!今日は会心の出来だよ!」
何も躊躇わず、笑顔で差し出される小さな切れ端を受け取り、丁寧に口へ運ぶ。
「……美味い」
「お、言った! ここ最近ようやく美味いって言うようになったよなぁ」
「ほんとほんと。私達が面倒見ないとすぐ栄養食品で済まそうとするんだから!」
レイがニヒルとはにかみ、カエデもふふっと口元を緩める。
そんな3人の空気は、ゆるやかに馴染んで過ぎていく。そんな3人がいる教室の窓の外、灰色の月面を越えて、遥か遠くには地球が浮かんでいる。
ここにはただ、言葉少なに過ぎていく時間があった。静かで、穏やかで、ほんの少しだけ、寂しさを孕んだ日常。
この何気ない時間が好きだった。
午後の実習時間。第7工学棟の演習室では、学生たちがそれぞれの端末に向かい、課題に取り組んでいた。
今週の課題は、『旧式ワーカーの姿勢制御プログラムを現行仕様に適応させる簡易モデルの設計』工学理論科では定番の課題だが、それだけに雑に済ませれば粗が目立つ。提出は夕方まで。
カエデは、前髪をかきあげながら液晶に睨みをきかせていた。
「うーん……理論上はこっちが早いけど、フレームの耐性が足りないんだよねぇ……」
「逆転の関節動作を避けるなら、ここの遅延調整を下げるのが適切だろうな」
隣から短く口を挟む。すでに自分の課題を提出済みだし、教師も何も言わない。特に目的はないが、カエデの画面をぼんやり見ていた。
「それじゃ関節に負担かかるでしょ?」
「許容範囲なら問題ない。姿勢制御が課題なんだからな。」
「……うーん。理屈は合ってるんだけど、なんか釈然としないなぁ……」
そう言いつつも、カエデは指摘に沿って数値を微調整していく。一方、戦術科のレイは──すっかり机を離れ、伸びをしていた。
「はぁ……俺にはさっぱりだね。この数字の海、溺れるぜ……」
「提出しないと単位はないぞ、レイ」
「わかってますぅ!! だから今、極限まで精神を整えてるの!」
「……精神を整えるならまずちゃんと座りなよ……」
レイは困ったような顔をしながら、椅子に戻ってきて肩をすくめる。友同士のやり取りは、ただゆるやかに流れていく。
音を立てず、穏やかで、ささやかな余白の中で、それぞれが自分の“らしさ”を保っていた。
やがて、実習室の時計が夕方のチャイムを知らせる。学生たちが端末を閉じ、ひとり、またひとりと教室を後にする。
結局3人でああでもないこうでもないと課題をこなした3人も、人の流れとは逆に、校舎の裏手にある中庭へと歩いていった。白い石が敷き詰められた小さなベンチに並び、休息していた。
月面の静けさのなかに、まだほんの少しだけ太陽の光が残っていた。
「……なあ、艦長ってさ」
レイが紙パックのストローをくわえたまま、遠くを眺めるように言った。
「でっかい船に乗って、航路決めてさ。何十人も指揮して、戦場を突っ切る。……なんか、それだけで生き様って感じするんだよな」
「……どうした突然……悪い物でも食ったのか?」
「喧嘩売ってんのか……買うぞこら」
本気で頭の心配されてわざとらしく怒るレイ、そんな馬鹿2人を見てカエデは微笑む。
「生き様って……またずいぶん古風な言い回しするね。なんか昔そういう本見たことあるよ?」
「最近ちらっと聞いたんだ。連邦軍が新しい大型艦を建造してるって。長期任務向けで、宇宙でも地球でもどこでも行けるくらいのやつ。名前はまだ聞かないけど、ありゃたぶん旗艦クラスだろうな〜」
茶化すように言ったあとで、レイは少しだけ真面目な声で続けた。
「俺、そういうのを動かす側にいつか立ってみたいんだ。俺の命令で全てが動くって、すごくね?」
その言葉に、カエデは小さく微笑む。
「ふふっ、似合うかもね。レイ・フェルラント艦長!」
「でしょ? ふん、くるしゅうない!」
レイは胸を張って誇らしげに敬礼してみせる。そしてふと、隣に座る男に視線を移した。
「なあ、お前の夢は? なんかあるのか?」
「夢……」
「カエデは“まだこれから探す”って言ってたけどさ。お前はどうなんだよ?」
「あ、それ私も知りたい。いつも難しそうな顔してる君の夢」
そう言って2人が、そっと顔をのぞきこむ。しばらくの間、なんとも言えない空気が3人を包んでいた。
「……空を」
「空?」
「
その言葉に、レイは一瞬驚き──やがて、ふっと笑った。
「──パイロットかぁ……意外だよなぁ、俺てっきり『技術者になる!!』って言うのかと」
返事はなかったが、目元がほんのわずかに和らいだ。
その沈黙が、彼なりの肯定だった。その空気のなかで、カエデがふと声をあげた。
「じゃあさ、私も決めた」
「ん?」
「オペレーター。私、それになる。今決めた!」
「お、艦長、パイロット、オペレーター。完璧じゃん、三位一体チームってやつ?」
「だからそのネーミングセンスなんとかしてよ」
「フッ。お前が艦長になるなら、俺は意地でもお前の船には乗りたくないね」
「んだと! やるかてめぇ〜!」
その静けさのなかで、三人はひとつの未来図を描いていた。
不確かで、現実味はなくとも、そこにある何かはたしかに本物だったのだ。
こんな今が、いつまでも続いて欲しかった。
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U.C.0079
星々が瞬く漆黒の空間に、一つの“闇”が潜んでいた。そこにあったのは、全身を艶のない黒で覆った一機のモビルスーツ。
輪郭すら闇に溶け、可視できるのは、時折バーニアから吐き出される淡いスラスターの光だけ。
その機体は、戦場における「影」そのものだった。
連邦軍の黒いパイロットスーツ、ヘルメットのバイザーが、モニターに映る敵影を射抜いていた。
「……2機か……機体型式からザクⅡだな。チッ……ミノフスキー粒子が濃い……」
彼の機体は、発生するノイズを最小限に保ちつつ、後方から接近する。宙域のわずかな金属反応や噴射熱まで計算に入れたルート取り。
その行動は側から見れば、まるで"既に倒した相手の背中を見ている”"かのようだった。
最初の一撃は、何の予兆もなかった。背後30メートルの距離で急加速。
死角から飛び出すと同時に、ビームサーベルを引き抜く。
闇の中、唯一の発光──紅い光刃が閃き、ザクのコックピットを一突きに貫いた。バックパックを避けているために爆発は起きず、ただ命だけがそこから抜け落ちる。
気付いたもう一機が回頭してマシンガンを構えるが遅い。
攻撃を誘導するように機体をひねり、放たれた弾の雨の外を滑る。反転しながら推進を上げ、回避と同時に2機目の背面に回り込む。
ビームサーベルの光は、再び点となって浮かび──正確で無駄のない一撃が、2機目の命を絶つ。
どちらの機体も、コックピットだけを正確に貫き、被害としては最小限。稼働系はほぼ生きている。 これの繰り返しなのだ。
「こちら01。敵機2機を制圧、損壊軽微。パイロットは排除済み。鹵獲終了。これより帰投する」
応答の確認すら待たず、スラスターを再点火。黒き影が、母艦の待つ座標へと向けて走り出す。
『誰かを殺した』という実感はない。ただ与えられた命令をこなすだけのマシーン。ある意味理想の兵士である。
ガイドビーコンが起動し、格納甲板に着艦灯が走る。
黒塗りの機体が減速しながら姿勢を調整し、緻密な軌道で母艦のMSデッキへと滑り込んだ。
固定アームが展開され、静かに接地する。直後、鹵獲されたザク2機が遠隔制御によってゆっくりと運び込まれてきた。
「格納確認。両機とも稼働系統に異常なしっと。損傷も限定的……十分、再利用可能だな」
格納庫の管制士官が淡々と読み上げたその声には、驚きもなかった。
しかし、現場にいる整備兵たちの間には明らかな"違和感"が漂っていた。
機体ハッチが開き、パイロットが現れる。ヘルメットを外した彼の黒髪が、無重力下でゆらりと揺れる。無言のままタラップを降りる彼に、整備長が近づいた。
「アルジェント少尉。機体チェックは後回しでいい。先にデブリーフィングだ」
「了解しました」
抑揚のない声。誰もが“冷静な軍人”と受け取るだろう。だが、その背後では異変が広がっていた。
牽引されてくるザク2機。どちらも外装は比較的整っている。しかし、近づいた整備員の顔が強ばる。
「……これ、中…コックピットだけ……うっ」
最初に気づいた整備兵が口を押さえるが、間に合わない。
「うわ……こりゃひでぇ……完全に焼けてるな……」
「なぁ……これ、意図的にパイロットだけやったってことか?」
「……そうだろうぜ。試験用ビームライフル使わずにわざわざコックピット潰してんだから……正気じゃねぇよ……」
「うえ。俺、触りたくねぇわ……呪われそう……」
整備クルーたちはどこか気分を悪くしたように顔を背ける。淡々と任務を遂行した結果が、人の所業ではないことを物語っていた。
「流石は──鬼神様、ってか……」
誰かが吐き捨てるように呟いたその言葉に、誰も反応しない。ただ一様に、視線がひとつの背中に注がれていた。
歩き去るパイロット。視線を受けていることすら意に介さず、彼はまっすぐに通路を進んでいく。その足取りに迷いはないし、迷いを持つことは許されない。
──これは任務だ。それ以上でも、それ以下でもない。
そう言い聞かせるように。そう、自分を納得させるように。
艦橋区画に設けられた簡素な会議室。デブリーフィングの場には上官と数名の士官、そして記録係が同席していた。
「……実に見事な戦果だ。フブキ・アルジェント少尉」
中年の軍服を着た上官が、艦内の照明よりもなお鋭い目を向けて言った。
「敵機2機を損壊最小で鹵獲。パイロットのみを確実に無力化し、味方の被害はゼロ。これ以上の戦果は望むべくもない」
無言のまま立つ事も意に介さず、上官は満足そうに続ける。
「貴官の戦闘ログと戦術判断は、今後のモビルスーツ運用において極めて重要な資料となる。V作戦における次世代機開発にも、大きく貢献することになるだろう」
上官を含め、周りの士官達は喜んでいるが、しかしフブキは何も言わなかった。目を伏せず、ただ真正面を向いたまま、微動だにせず立っていた。
上官はそれを“沈着冷静”と受け取ったのだろう。一通りの質疑を終え、解散の指示が出される。
「ご苦労だった。今後に備えて十分に休みたまえ、少尉」
「ハッ。失礼します」
フブキは敬礼を返すと部屋を後にする。誰も彼の背に声はかけなかった。
部屋に戻ったフブキは、無音の中に立ち尽くしていた。誰もいない個室。白い壁と、ベッド、備え付けの洗面台。
軍靴を脱ぎ、上着を投げ捨てるように椅子へ置いた。洗面台の前に立つ。顔を洗うでもなく、水を出すでもなく、ただ鏡を見つめている。
「……どうでもいい」
誰に向けたでもない、かすれた声が漏れる。賞賛も、未来も、技術資料としての自分も。──どうでもよかった。
今日も誰かの命を奪ったという事実が、ただ心の奥に沈んでいく。戦いにおいて慈悲はなく、ただ冷酷に心を殺して任務にあたる。
だが、いくら騙し騙し続けても…心は静かに壊れ始める。
──それでも、戦場へ出ていくのだ。それが任務だから…自分の感情なんていらない。
(これが、俺の選んだ役目。最後までやり遂げる。──そうだろ?)
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フム……V作戦。連邦の希望にして、我らが打ち砕くべき標的か。
……このコロニーに侵入し、V作戦が本当であるかを確かめねばな。……今回は私も出る。私のザクも用意しておいてくれ。
さて…勘が当たるかどうか、運試しといこう。