機動戦士Gundam GQuuuuuuX 自由の奴隷   作:スペースデブリ

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「参参伍伍」さん誤字報告ありがとうございました!

本作を進めつつ、R-18版の構成考えてます。果たして今年中に出せるかなぁ…w?とりあえず本作が終わらないことには出せないので、今はコッチに集中したいですね。


呪いと祈り

 

 

 

 

 

 ──EXAM SYSTEM STANDBY──

 

 その無機質な音声が、コックピット内に冷たく響く。

 

 直後、シイコの脳裏に──キラキラと輝く光の粒子が舞う、美しい空間が広がった。

 

 一瞬だけ広がった、虹のような光の領域。それはまるで、死の向こう側にある楽園のようだった。

 

「……綺麗……うふふふ……」

 

 その言葉と共に、シイコの意識は、陶酔の深淵へと堕ちていく。

 彼女の機体──ガンダムが、突如として異様な雰囲気を纏い始めた。

 

 関節部からの発光。ブースターの発光色の変化。そして、挙動そのものが一気に“無機的”になる。

 

 その映像は、遠く離れた《ドミトリー》のオペレーションルームにも届いていた。モニター越しにその異変を目にした整備主任が叫ぶ。

 

「な、なにこれ……!? は、博士!! こんな仕様、報告されてません!!」

 

 モスク・ハンの顔が引きつる。

 

「私も知らんぞこんな仕様は! なぜ突然……っ! まさか……アナハイム……!!」

 

 彼の目が見開かれる。

 

「“データ収集”……このことを……!? 我々に話さずに隠れてやっていたというのか……!?」

 

 怒声と共に、指示が飛ぶ。

 

「すぐに解析に入れ! 遠隔でシステム解除を試せ!! 今すぐだ!!」

 

「了解!!」

 

 オペレーターたちが一斉に端末を叩き始める。解析ウィンドウが次々と開かれ、シイコの機体データが洗い出されていく。

 

 だが──

 

 その間にも、ガンダムは動いていた。シイコの駆る白い機体が、凄まじい速度で赤いガンダムに迫る。

 

「っ……来る……っ!!」

 

 シュウジの目に映るのは、まるで人間の“殺意”を持った兵器そのもの。

 

 反応が速すぎる。機体の予測演算を超えた挙動。まるで操作系が自律神経レベルにまで短絡化されているかのような──

 

「……速いッ!!」

 

 ブースターを振り切り、回避行動を取るも──すでに遅い。

 

 白い機体が、ほとんど空間を切り裂くように現れ、ビームサーベルを逆手に構えて斬りかかる! 

 

「っく……ッ!!」

 

 シュウジが咄嗟に防御に入るが、反応がわずかに遅れる。赤いガンダムの左肩装甲が、鋭い音と共に切断され、火花が迸る

 

「っ──シュウジ!!」

 

 アマテは叫びながら、ビームライフルの引き金を絞った。発射された光束は、白い機体と赤いガンダムの間に割り込むように走る。

 

「っ……! マチュ!」

 

 シイコの機体が瞬時にバーニアで距離を取る。だがその動きに、迷いはなかった。

 

「……やっぱり、止まらないっ!!」

 

 シイコのガンダムの右腕が、再びアンカー射出機構を展開。ワイヤーが赤いガンダムの脚部を捕らえる。

 

「また……あの動きっ!」

 

 スティグマ攻撃の始動。

 

「シュウジ、下がって!!」

 

 アマテは叫びながら、スラスターを全開。射撃しつつ距離を詰める。

 その姿勢のまま、ヒートホークを大きく振りかぶった。

 

「うぉりああああああああっ!!」

 

 咆哮と共に振り下ろされる斬撃。だが──

 

 ガンダムは、それを待っていたかのように反応する。赤く染まったツインアイが、恐ろしい光を宿して輝く。

 

「っ……!!」

 

 ビームサーベルが起動し、アマテの攻撃を真っ向から受け止める。火花が散り、機体同士が押し合う。

 

「シイコさん!!」

 

 アマテは必死に叫ぶ。だが──返事はない。ただ、無音のまま圧を加えてくる白い機体。

 

「……っ!!」

 

 そのときだった。アマテの頭に、嫌な感覚が走った。

 

(……なに? この感じ……!)

 

 視界がわずかに歪む。機体のシステムではなく──彼女自身の感覚が、何かを捉えていた。

 

 目の前のガンダムが、透けていく。その内部に、見えたシイコ。

 

 虚ろな瞳。モニターも操作パネルも認識していないような空虚な表情。彼女の身体の周囲には、黒いモヤのようなものが纏わりついていた。

 それは生き物のように脈動し、シイコの精神を喰らっているかのようだった。

 

(──コレは……なに……っ!? シイコさんが、見える……!)

 

 そのモヤからは、明確な“感情”が放たれていた。殺気。狂気。そして、深い、孤独。

 

(この人は……何かに、取り込まれてる!!)

 

 目の前のガンダムは、もうただの兵器ではない。「何か」を内に宿した、狂気の器。

 

「──っ!!」

 

 アマテはシイコを狂わせているガンダムを強く睨みつける。握ったヒートホークに力を込め、ブースターを噴かせて一気に踏み込む。

 

「止まれえぇぇッ!!」

 

 重い衝突音。白い機体のビームサーベルを思い切り弾き飛ばし、強引に距離を取らせる。

 

《マチュ!!》

 

 背後から、シュウジの声が飛ぶ。それと同時に、赤いガンダムのビームサーベルが放物線を描いて飛んでくる。

 

「っ……!」

 

 アマテは迷いなくヒートホークを投棄し、その代わりに空中でビームサーベルを掴み取る。

 

「まだいける……! もう一度……!!」

 

 アマテは加速する。再び、シイコとの距離を詰めていく──

 

 だが。

 

「また……!」

 

 白いガンダムが再度、アンカーを赤いガンダムに射出。ガチャッ──と巻き取りが始まり、再びスティグマ攻撃が始まる。

 

「くっ……シュウジッ!!」

 

 アマテは目を見開く。

 

 シイコの機体がまるで意思を持ったように空間を跳ね回る。超高機動の連続回避、そして設置トラップの即座展開。ビームの狭間を滑るようにすり抜け、反撃の暇すら与えない。

 

(な、何これ……速い! 異常すぎる……! どうやって……あんな動きが……!? どうすれば……どうすれば──!!)

 

 その時だった。

 ジークアクスのコクピットに一緒に乗り込んでいたハロが、突然喋り出す。

 

「マチュ! アノニキノアイダヲキレ!」

 

「……えっ?」

 

 その意味はわからなかった。だが──直感的に、「従うべきだ」と理解した。

 

「“あの二機の間”……?」

 

 アマテは、目を凝らす。シイコのガンダムと、シュウジの赤いガンダムが作り出している螺旋。その軌道はまるで死のダンス。

 

(あそこを……“切る”?)

 

 自分の中で、何となくだが「いける」──そう思った。

 

「わかった……! やってみる!!」

 

 ジークアクスが、一気に加速。その魔女の魔法を断ち切るために──少女は、光の刃を握って飛び込んだ。

 

「うおりぁあああああ!」

 

 アマテはハロの助言を信じ、高速円運動を描いていたシイコのガンダムと赤いガンダムの間、その“中心”にビームサーベルを振るった。

 

 空間を裂くような感触。同時に、「バツンッ!」という金属の断裂音と火花が散る。

 

「……っ!!」

 

 直後、シイコのガンダムがその運動軸を喪失し、まるで投げ出されるかのように遠心力で弾かれていく。

 

「これ……!」

 

 アマテは理解した。

 

(あの動き……ワイヤーみたいなやつを使ってたんだ……!! シュウジの機体を軸に、自分の機体を巻き取って動いている!)

 

「ジークアクス!」

 

 コックピットで叫ぶ。

 

「何か機体に当たったら、すぐ教えて!!」

 

 まだ距離を保っていた白いガンダムが、再びスラスターを炸裂させて急接近してくる。

 

 その軌道は不規則でありながら正確。空間を切り裂き、まるで“刺すように”向かってくる。

 

「……来る……っ!」

 

 そのときだった。HUDに赤い矢印が表示され、警告音がコックピットに鳴り響く。

 

「っ……!?」

 

 アマテが視線をそちらに向けると──ジークアクスの左腰部装甲に、何かが突き刺さっている。

 

「これだっ!」

 

 小さな、だが強靭な金属フック状の射出器具。先端から伸びた極細のワイヤーが、シイコのガンダムから伸びている。

 下手をすれば自身の機体ですらも空中分解してしまう綱渡り。しかしそれでもシイコはそれを難なくやってのける。

 

(だったら……!)

 

 アマテの瞳が強くなる。

 

(もう一度、あのワイヤーを断つ!)

 

 だが、動くよりも速く、白い機体がすでに回転運動に入っていた。空間が、再びシイコの“支配圏”になっていく。

 

「くっ……速い……!!」

 

 コクピットの中、警告音がさらに増していく。アマテは、ビームサーベルを握り直し、再び突き進んだ。

 

 この攻撃を止めなければ、シイコは“戻ってこない”。

 

 アマテはすぐさま腰部のアンカーを握り、ビームサーベルで切断しようと振りかぶった——が、その時、

 

「ッ! マチュ! ウシロダ!!」

 

 ハロの叫びと同時に、ジークアクスが警告音を鳴らす。

 

「──っ!!」

 

 背後から高出力のビームライフルが放たれ、アマテは回避に遅れ、避けはしたものの、機体が体勢を崩す。

 

「くそっ……! 一本じゃなかったんだ、ワイヤー……!」

 

 ビームの爆風が吹き荒れる中、アマテは思考を巡らせる。

 

(私が切った一本、私に取り付けた一本、そして──今のビームライフルを遠隔で射撃した一本)

 

「今、シイコさんが使えるワイヤーは2本!」

 

 視界に白いガンダムの姿がよぎる。その動きは依然として“人の限界”を超えたものだった。

 

「シュウジ! お願い、手伝って!」

 

《……うん。『必ず倒す』と、ガンダムが言っている》

 

 赤いガンダムが、アマテの前へと飛び出す。

 

「ありがとう、シュウジ……!」

 

 その瞬間、シイコの駆る白いガンダムが加速。スラスターが激しく吹き荒れ、二本のアンカーが射出される。

 

「来るっ!!」

 

 シイコの狂気が、シュウジとアマテに襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 

 

 なんだろう……フワフワしている……私……どうなったの? ここは……あの、綺麗な空間……なのよね? 

 

 だが、そこに広がっていたのは赤くキラキラした光ではなかった。代わりに、緑色の穏やかな光が全身を包んでいた。

 

 そして、耳に届いてきたのは──

 

 ラ──ラ──

 

 ……? なに……? この歌は──? ……っ!! 

 

 歌が響いた瞬間、頭の中に奔流のように“記憶”が流れ込む。見たことのない、記憶。

 

 

 

 

 ⸻

 

 

 

 

 

《お前たちは私をいじめに来た!! 私から記憶を奪ったのは、お前たちだ!!》

 

フォウ! 戦っちゃいけない!! 戦っちゃいけないんだ!!」

 

《前に出てくるとは!! いい自信だよ!!》

 

フォウ!!」

 

《来るな!!カミーユ!》

 

 ──黒いモビルスーツを、自分の駆るガンダムに似た白い機体が、必死に止めようとしていた。

 

(なに……? この記憶は……? 誰なの……? 顔が……ぼやけて、見えない……)

 

 映像はさらに変わる。

 

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 

「……いつまで、そうやっているつもり……?」

 

「……あなたには分かりませんよ……。生まれながらに甘やかされてきたような人間には」

 

「……っ!」

 

 パシン! 

 

「それでも男ですかっ!! 軟弱者っ!! しっかりなさいっ!!」

 

「……俺を殴って満足ですか……? 気が済んだのならもういいでしょう?言われれば出撃しますよ。……すればいいんでしょ?もう……放っておいてください」

 

「っ……貴方の気持ちも分かるっ! でも、そうやって殻に篭って、自分を傷つけ続ける貴方を……私は見ていられない!」

 

「だったらどういうんです。……貴方が慰めてでもくれるんですか……!?」

 

「っ……」

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 

 これ……フブキくん? なんで……? どうして、泣いてるの……? あなたは、ニュータイプでしょう? なのに……なんで? ニュータイプは、望むもの全て……手に入れられる選ばれた人じゃないの……? 

 

 

 ──違うぜ。ニュータイプが“新たな人の形”だったとしても──望むものがすべて手に入るなんて、そんな都合のいいものじゃない。

 

「……っ! 誰……?」

 

 ──そうですよ、シイコさん。フブキくんは……失っても、歩き続けただけなんです。そして──あの人には、今では守る人がいる。

 

「守る……?」

 

 フブキはさ、危なっかしいけど、マチュちゃんだっけ? あの子がいるなら大丈夫だろ

 

 ふふ……。私も、あの子がいるなら……大丈夫だと思う……ちょっと妬いちゃうけどね

 

「待って……っ! あなたたちは──……!」

 

 シイコは震えるように声を出す。──視界に映るのは、緑の光の中、ぼんやりと浮かぶ二つの姿。

 

 一人は、真っ直ぐな声の男性。もう一人は、あの頃のままの笑顔をした少女。

 

 

 そろそろ戻ってくださいよ、シイコさん──アンタにも、守るべき者がいるはずだろ? 

 

 そうよ、シイコさん。貴女がするべきことは──復讐なんかじゃない……お子さんが大人になって、あなたが“おばあちゃん”になって、その孫の顔を見る──その時まで、生きなきゃダメなんです

 

 

 

 瞳から、涙が一筋……溢れ出た。

 

 緑色の光の空間、優しい声、懐かしい笑顔

 

 ああ、これは──幻なのだろうか──

 

 記憶とも幻影ともつかない“声”と“光”に包まれながら、

 シイコの心は、揺れていた。 が──

 

 

 

 ──殺せ。

 

 背後から、ゾワリと背筋をなぞる冷気。

 

 振り返るよりも早く、黒い手がぬっと伸びてくる。影のようなそれは、シイコの肩に触れ、耳元で囁いた。

 

 ──敵はニュータイプだ。お前の仇だ。

 

「貴方っ……!?」

 

 声を上げるが、空間は応えない。ただ、黒い影だけがゆっくりと、そして確実に迫ってくる。

 

 ──殺せ。迷うな。お前はそのためにここまで来たのだろう? ──家族を捨ててまで。なら迷うな。今更、後戻りなどできはしない。

 

「わたしは……」

 

 言葉が、喉に詰まる。光が、少しずつ翳り始める。さっきまで温かかったはずの空間が、だんだんと冷たくなっていく。

 

 ──殺せ。ニュータイプは、望むものを“全て手に入れる”存在などではない。望むもの全てを、"奪う"存在なのだ。

 

 ──お前の愛した人間も──ニュータイプに奪われた。ならば、奪え。今度は、お前の番だ

 

「……わ、たしは……っ」

 

 シイコの肩に乗った黒い手が、まるで意識に喰い込むように囁き続ける。

 

 ──殺せ。ニュータイプを。

 

 その言葉がこだまするたびに、彼女の足元から、黒い泥のような影が広がっていく。

 

 

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