機動戦士Gundam GQuuuuuuX 自由の奴隷   作:スペースデブリ

42 / 70
どうも作者です。コロナにかかってしまい大変です。頭が沸騰するってこういうことなんですね。久しぶりの日常回です。


魔女からの祝福

 

 

 

 

「……おい。これ見たか? オルテガ」

 

「ん? ……けっ、マッシュの野郎……1人だけ上手くやりやがってよ」

 

「マ・クベの野郎に追い出される前に辞めたあいつは、利口だったな」

 

 渋滞に巻き込まれたジャンク回収船の中。男たちは煙草とダーツで時間を潰しながら、無遠慮に会話を続けていた。クラクションがそこかしこで鳴り響き、喧騒と焦燥が入り混じる。

 

「ったく!! いつまで待たせんだよ!!」

 

「ジャンクの買取価格がトン7%も上がったんだ。みんな躍起になってるんだろ。ジオンが買い占めてるって噂だぜ」

 

「ぬへへ。また戦争かね?」

 

「……クランバトルもそろそろ潮時だ。ドムの整備に弾の補充、何から何まで金がかかりすぎる」

 

 男の一人がダーツの矢を投げる。突き刺さった先には「ポメラニアンズ」のロゴ、そしてジークアクスと赤いガンダムの姿が描かれたカードがあった。

 

「じゃあよ──人気者のコイツらをさっさと潰して、羽振りのいい傭兵会社にでも売り込みに行くか?」

 

「……あの時、ガンダムに手柄を独り占めされてなきゃ、今ごろ俺たちもまだ軍に居られたかもな」

 

「──ガンダムと『黒い三連星』のドム、どっちが強えぇか、ケリつけてやろうぜ」

 

「はっ。赤い方は相変わらず厄介だが、こっちの新型は造作もねぇ……ガンダムが援護してるから動けてるだけだ。──戦場の厳しさってやつを教えてやるぜ」

 

 

 

 

 ──

 

 

 

「ふっ!!」

 

 凄まじい音が部屋中に響く。サンドバッグが大きく揺れ、鋭く正確な打撃が次々と叩き込まれていた。フブキは額から汗を流しながらも、寸分の無駄もない動きで黙々とスパーリングを続けている。

 

「──あ、いたいたっ! フブさ〜ん!」

 

 元気な声が室内に響き、フブキが動きを止める。

 

「っ……はあ、はあ……ん? ああ、マチュ。どうした?」

 

 フブキが呼吸を整えながら振り返ると、アマテは小さなドーナツの箱を抱えて笑顔で近づいてきた。

 

「これ、シイコさんから。迷惑かけたお詫びって! いらないって言ったんだけどね。一緒に食べよ? ──っていうか、汗すごいよ! はい、タオル!」

 

「……ああ、すまん。ありがとな」

 

………………いい……

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「う、ううん!? なんでもないっ! それより、水ちゃんと飲んでる? 前わたしに言ってたよね、水分補給は大事って!」

 

「……ああ、まあ。適度にはな」

 

 そう言いながら、フブキは傍に置いていたペットボトルを手に取ると、一口だけ口に含んでから──残りを頭からざばっとかぶった。

 

「ちょっ!? それ飲むやつでしょ!? も〜〜〜、フブさんってば!」

 

 慌てるアマテに、フブキは少し戸惑いながらも苦笑する。

 

「……別にいいだろ。どうせ飲みかけだ」

 

「よくないって! はいはいタオル貸して! 拭いてあげるから!」

 

「いや、自分で──」

 

「いいからっ!」

 

 アマテは容赦なくフブキの顔や髪にタオルを押し当てながら、どこか楽しそうに笑っていた。

 

「すまん……マチュ」

 

「いいってば!」

 

 タオルでフブキの顔を拭きながら、アマテはふと手を止める。至近距離で感じるフブキの体温と、汗の匂い──それなのに、鼻をくすぐるのはどこか落ち着くような香りだった。

 

(……っ、匂いやばっ……なんで汗かいてるのにこんな良い匂いなの……)

 

 思わず顔が赤くなりそうになるのを必死にごまかしながら、話題を変える。

 

「な、なんでトレーニングしてたの?」

 

「モビルスーツにはシミュレーターでしか乗ってないからな。……体を動かさないと鈍る」

 

「そっかぁ……」

 

 頷きながら、アマテはふとフブキの機体のことを思い出す。

 

「ねえ、フブさんのモビルスーツ……タナトス、だっけ? まだ直らないの?」

 

「ああ。“直る”というか、“改修工事中”って感じだな。……物が物だし、時間がかかるのも仕方ない」

 

「ふ〜ん……そういうもんなんだ……はい! OK!」    

 

「ありがとう。タオr」

 

「っこれは私が持っていくよ! うん! それよりフブさん、どれ食べる?」

 

「お、おお? なんでもいいさ。お前が先に食べろ」

 

「えっ、いいの? じゃあ、私これ!」

 

 アマテが嬉しそうに選んだのは、チョコレートがかかった、少し揚げたような甘いドーナツだった。

 

「じゃあ、俺はこれを」

 

 フブキはねじられた形のドーナツを手に取る。

 

「──シイコさん、どうだった?」

 

「色々話して、もう大丈夫って、帰ったよ。フブさんといいシイコさんといい、ベッドで寝込んでたのにどうして元気なの……? その……いろいろと……」

 

 少しだけ頬を赤らめながら、アマテはそう答えた。

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 

「シイコさん……! まだ病み上がりなのに!」

 

「ふふ、大丈夫よ。今すぐにでも坊やに会いたいもの。それに──ちょっと強引に出てきちゃったから、早く帰ってあげないと」

 

「体は本当に大丈夫なんですか?」

 

「アマテちゃん。あなたが気にする必要はないのよ。でも、ありがとうね。それと──彼にも、そう伝えておいて」

 

 シイコはそう言って、小さな包みを差し出した。

 

「これ、迷惑かけちゃったから。二人で食べてちょうだい」

 

「そ、そんな! 悪いですよ!」

 

「ふふ、いいのよ」

 

 ふと、シイコは空を見上げるように視線を外し、呟く。

 

「──赤いガンダムのパイロット。彼はシャアじゃなかったけれど……私と同じ願いを持っていたのね」

 

 そして、アマテの顔をじっと見つめる。

 

「ねぇ、アマテちゃん。一つ訂正しても、いいかしら?」

 

「な、なんですか……?」

 

「“彼を諦めなさい”って言ったこと。あれ、取り消すわ」

 

「え……」

 

「いい? "この人"だと思ったのなら──逃がしちゃだめ。私と同じ轍は踏まないで。フブキ君が好きなら、尚更よ」

 

「うぇっ!? い、いや!! なんで!? そ、そういうのじゃっ!」

 

「うふふふっ。ほんと、若いっていいわねぇ。それじゃあね」

 

 笑いながらそう言うシイコの瞳には、かつて手放してしまった大切な想いが、静かに揺れていた。

 

「──アマテちゃん。絶望を退ける勇気を持ちなさい。あなたが、ガンダムのパイロット……"ニュータイプ"であるなら」

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 アマテは少しだけ視線を落として、ためらいがちに口を開いた。

 

「ねぇ、フブさん……」

 

「ん?」

 

「ニュータイプって、何なのかな……」

 

 フブキは少し間を置き、静かな口調で答えた。

 

「……ジオンのプロパガンダだよ。一年戦争の時、赤い彗星が暴れ回ったせいでな。敵の力を削ぐために、そういう噂話を流すのはよくあることだ」

 

「……もし、本当に『ニュータイプ』っていうのが存在するとしたら……フブさんみたいな人のことを言うのかな?」

 

 アマテは控えめに微笑みながら、ちらりとフブキの表情を覗いた。

 フブキは小さく苦笑し、軽く首を横に振った。

 

「揶揄うのはよせ……俺なんかがニュータイプだったら、シャアを倒せてたさ」

 

 フブキの声に自嘲が混じるのを感じて、アマテは少し唇を尖らせてみせた。

 

「ふ〜ん……」

 

 そして突然立ち上がり、軽く伸びをする。

 

「よっこいしょっと! フブさん、ちょっと買い物手伝ってよ!」

 

 フブキは少し驚いて目を丸くした。

 

「ん? いきなりどうした?」

 

「まあまあ! いいじゃん、ほら! 早く!」

 

 アマテはフブキの腕を強引に引っ張りながら、満面の笑みで続ける。

 

「──ほら! 行こ!」

 

 彼女の眩しい笑顔に押されるように、フブキは小さく息をついて、優しく頷いた。

 

「ああ……わかったよ」

 

 二人は並んで歩き始める。

 

 彼女の言う『ニュータイプ』の真意が、フブキにはまだ分からなかったが──

 少なくとも今この瞬間は、そんなことはどうでも良かった。

 なぜか、こうしている時間が心地よかったから。

 

 

 

 ──

 

 

 

 二人は、いつか訪れたあの賑やかなモールへと再び足を運んでいた。フブキは隣を歩くアマテが一体何を買いたがっているのか知らない。だから、ふと横目で彼女を見つめながら問いかけた。

 

「なあ、マチュ。いくらクラバで稼いだとしても、使うところはちゃんと見極めろよ?」

 

「分かってるって〜」

 

 アマテは軽く流すように笑った。

 

「……で、何を買うつもりなんだ? 学校で使うものか?」

 

「あ〜……うん、まあ、そんなとこ」

 

「……?」

 

 妙に歯切れの悪い返事にフブキが眉を寄せる。

 

「ふひひっ、まあまあ。とりあえず、ついてきてよ!」

 

 腕を引っ張るアマテに、フブキはため息交じりに従うしかなかった。

 

「一体なんなんだ……」

 

 するとアマテはちらりとフブキを見上げて、少し照れたように顔を赤くしながら、小声で話し始める。

 

「実はさぁ……この間、学校で体育の授業があったんだけど……その、ね?」

 

 

 

 ───

 

 

 

 

「次の授業、体育だっけ〜?」

 

「そうそう。校庭で集合だって」

 

「ええ〜、こんな暑いのにダルすぎぃ〜」

 

「ねえ、アマテもそう思うでしょ?」

 

「ん? ああ、いや、私は体動かすの好きだし……っと」

 

 アマテは制服を脱ぎ、下着姿になる。その瞬間だった。

 

「うんうん、さすが学年トップの才女だn……」

 

「ほんと、私たちとは持ってるものが違……」

 

 言いかけて友人たちの視線が一点に釘付けになる。

 

「……ふっ……? ん? えっ? どしたの?」

 

……デカい

 

柔らかそ……

 

「は、はぁ!?」

 

 突然の反応に、アマテは戸惑うばかり。

 

「ちょっとアマテ!! いつの間にそんなナイスバディになっちゃったの!?」

 

「なっ、何言ってんのっ!?」

 

「高2のスタイルじゃないでしょ! 何この胸!! けしからんなぁ!!」

 

「ちょ、別に普通じゃっ……ってあん! やめっ!」

 

 

 

 ───

 

 

 

 

「……ってことがあって……何となく……その、サイズが……ね? キツイなぁ……とは思ってたんだけど……」

 

 アマテが顔を赤らめて話を終えると、フブキは硬直した表情でぽつりと呟いた。

 

「……こんな時、どういう顔をすればいいのか……俺には分からない……」

 

 ただ呆然とした顔でそう漏らすフブキに、アマテはさらに顔を赤くするのだった。そんな中、フブキは少しばかり居心地悪そうに咳払いをしながら口を開いた。

 

「つまり……その、アレだな? 下着を買いに来たと……?」

 

 アマテは頬を朱色に染めつつ、小さく頷いた。

 

「うん……/// あ、もちろんそれだけじゃないよ!? パイロットスーツの洗濯とか、シュウジのご飯とかも買っていこうかなって……」

 

「……うん。そっちがメインだな……」

 

 フブキはぼそりと呟きながら、なんとか思考をまとめる。

 

(まあ、年頃の女の子なら……普通なんだよな……?)

 

 内心で自分にそう言い聞かせるフブキをよそに、アマテはごまかすように元気腕を引っ張った。

 

「ほ、ほらっ! 行こっ!」

 

「ああ、分かったよ」

 

 フブキは諦めたように、小さく笑みを浮かべてアマテに引っ張られるままモールの奥へと足を進めた。

 

 

 店の中でフブキは、アマテに腕を掴まれたまま、女性ばかりの店内で明らかに居心地が悪そうに視線を泳がせ、小さく声を漏らした。

 

「……なあ。やっぱり俺がここにいるのは場違いだろう……」

 

 しかし、アマテは腕を掴んだまま譲らない。

 

「良いの! ……それにちゃんと見てもらわないといけないんだから……

 

(やっぱり、場違い感が拭えない……)

 

 店内を見渡すと、当然ながら周囲は女性客ばかり。フブキは気恥ずかしさを隠せず、軽くため息を吐いた。

 

 そんな中、アマテは陳列棚の中からフリルのついた可愛らしい下着を手に取り、嬉しそうにフブキに振り返る。

 

「あ、これ可愛い! どう! フブさん!」

 

 フブキは視線を逸らしつつ、戸惑いながら返す。

 

「……どうしろと?」

 

 すると、アマテは頬を膨らませて抗議した。

 

「も〜、フブさん鈍感すぎだよ〜! ここは『可愛い』とか『似合ってる』とか、そういうことを言わなきゃいけないでしょ!」

 

「……そうなのか……」

 

「そうだよ! ……で、どう?」

 

 フブキは意を決して、アマテが手に持ったフリル付きの下着を一瞬まじまじと見つめた。そして少し照れたように、ぎこちなく口を開く。

 

「……それなら、うん。似合っている。……可愛い、な」

 

 その言葉にアマテは顔を真っ赤に染め、嬉しそうに微笑んだが、ふと興味深そうな瞳でフブキを見上げ、小さな声で問いかけた。

 

「フブさんは……その、どんな感じのが好き?」

 

 フブキは少し動揺したように目を逸らしながら答えた。

 

「……女性用下着の趣向なんて、正直分からないんだが……」

 

 するとアマテは、悪戯っぽく目を輝かせ、いくつかの下着を棚から取ってはフブキに見せ始めた。

 

「うひひっ、じゃあ……こんなのはどう?」

 

 そう言ってアマテが体に当てて見せたのは、先程よりもずっとセクシーで、大胆に布の面積が少ない下着だった。頬を染めつつも意地悪そうな視線でフブキを見つめる。

 

「ほら、私が着てるとこ想像しながらさ! どう?」

 

 フブキは一瞬動きを止め、真剣な顔つきでぽつりと呟いた。

 

「……マチュ。お前は自分が『可愛い』ということを、もっと自覚した方がいい……」

 

 思いがけない言葉に、アマテは目を丸くして頬を一気に真っ赤に染めた。

 

「……ふぇっ!?」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。