機動戦士Gundam GQuuuuuuX 自由の奴隷   作:スペースデブリ

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この夏場に体調が悪くなるのは本当に良くないですね。頭がポワポワします。ご飯食べても味がうっすいです。


ドム使い達

 

 

 

 アマテは肩で息をしながら、駅構内を駆け抜けていた。何度も後ろを振り返るが、軍警はすぐ後ろにはいない。けれど、進む先々で制服姿の軍警たちが固まっている。

 

(っ! どんだけ居んのよ!)

 

 焦燥感に駆られながら、逃げ道を必死に探す。

 

(どうしよう……! どこが一番近い……!?)

 

 その時、不意に誰かがアマテの腕を掴み、そのまま力強く引っ張った。

 

「わっ! ちょっ! ちょっと!!」

 

 その人物はアマテを荷物ロッカーの中へと押し込み、自分も狭いスペースに滑り込んで扉を閉めた。

 

「なっ……なに!? ちょっ!! ちょっと何なの!!」

 

「動かないで、見つかる」

 

 男は小さな空気穴から外の様子を伺っている。外では軍警たちの足音が響き、次々と無線が飛び交っていた。

 

「よし、こっちはいい。4番ゲート押さえろ」

 

「探せ、逃げた対象はこちら側に来たはずだ」

 

「容疑者は学生との報告もある。慎重に対処しろ」

 

 軍警の一団がロッカー付近から遠ざかると、アマテはようやく息をついた。

 

「っ……はぁ……」

 

(……こいつ……どこかで……)

 

 アマテの脳裏に蘇るのは、あの日。初めてジークアクスに乗った記憶。軍警のザクと対峙し、ジークアクス乗り換えたその瞬間。機体の傍にいたのが、この目の前の男だった。

 

(あの時のパイロット……!? 何これ……もしかしてバレてる? ……っ、それよりも)

 

「あんまり、くっつくなよ……キッショいなぁ……!」

 

「はぁ……助けてもらった礼はなしか?」

 

 男が静かに返しながら、アマテの制服や体格、そして顔立ちを改めて確認した。

 

(制服も、背格好も……顔も……似てる、か?)

 

 男はアマテをじっと観察し、その襟元に付いた学章バッジに目を留める。

 

「ハイバリーって! あのお嬢様学校の!?」

 

 突然の声にアマテは思わず顔をしかめた。

 

「ナンパかよっ……キモっ」

 

(そんなお嬢様学校の子が、モビルスーツなんて乗れるわけ……)

 

 男──エグザベは困惑した表情を浮かべながらも、しばしアマテを観察し続けていた。

 対してアマテはロッカーの中で息を潜めながらも、心の中では焦りが渦巻いていた。

 

(……? もしかしてバレてない……? でも……)

 

 安堵しそうになるが、まだ油断できない。外では軍警の声や足音が途切れず、しばらく出られそうにない。

 

「はい。この辺りで見失いました」

 

「A班は西口方面へ。B班はこのフロアを探せ」

 

(……っ、早く行かなきゃいけないのに……!)

 

 アマテはそっとスマホで時間を確認する。すると、男が静かに問いかけてきた。

 

「時間が気になるのか?」

 

(もうクランバトルが始まる。これでジークアクスが出てこなければ決まりだな……)

 

 

 

 ──

 

 

 

(マチュ……動けないの? どうしよう……荷物も私が持ってるし……もし不戦敗になったら……)

 

「チキュウタノシミ! チキュウタノシミ!」

 

(違約金もある……間違いなくシュウちゃんと一緒に地球にいけなくなる……)

 

「っ!」

 

 ニャアンは迷いを振り切るように、駅の人混みの中を思いきり走り出した。

 

 

 

 ──

 

 

 

「西口改札はもういい。中央コンコースの監視を増員しろ。引き続き、フロアは探せ」

 

「了解。ったく、どこに消えたんだよ……」

 

「アイツ、大丈夫か?」

 

「玉蹴られたらしいぜ。なんかやったんじゃねぇの? 相手女子高生だろ?」

 

「セクハラでもしたのかねぇ……w」

 

 軍警たちは苛立ちを隠しきれずに巡回を続けている。

 ロッカーの中、アマテは苛立ちと焦りに拳を握りしめた。

 

(こ、こいつ……わざと待ってるんだ……! クランバトルに間に合わないように……! シュウジ、ごめんね……)

 

 エグザベはそんなアマテの様子を横目に、無表情を装いながら静かに考える。

 

(もう時間だ。今からじゃ間に合わない。もしこれで彼女がジークアクスのパイロットだったとしたら、僕は運がいい。見つかるわけがなかったジークアクスの在処を、こうして捕まえることができたわけだから……)

 

 ロッカーの中、静かに時が流れていく──。

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 ジェジーは焦りと苛立ちを隠せず、格納庫で声を荒げていた。

 

「まだ来ねえ! どこに行ってやがんだよ!」

 

 ケーンもモニターを見つめたまま顔をしかめる。

 

「まずいっすよ! このままじゃ違約金で、今までの賞金なんて全部吹っ飛んじゃいます!」

 

「しょうがねぇ! 俺が出るか!」

 

 ジェジーが勢いよくジークアクスへ向かおうとした瞬間、ナブが慌てて腕を掴んで止める。

 

「ジークアクスはマチュにしか動かせない。分かってるだろ……」

 

 だがその時、リフトの方で人影が動いた。

 ジークアクスの前に、マチュらしきパイロットスーツ姿の人物が静かに近づいてくる。

 

「あれ? 間に合った!?」

 

「やっと来たか……」

 

「遅せぇぞ! マチュ! てめぇ!」

 

 ケーンもナブもジェジーも、ホッとしたように一斉に声をかける──が、誰もがほんの僅かな違和感を覚えていた。

 

「……変……だな」

 

「……なんか、スラッとしてない? それに、ジェジーに言い返しもしないなんて……」

 

「いつもと変わんねぇだろ?」

 

 ニャアンは緊張した面持ちで座席に座り、ハロを抱えてぶつぶつ呟いていた。

 

「えーとぉ……どうすればいいんだっけ……? 落ち着け、落ち着け……。あの時も何とかなったし、やれそうな気がする時はやれる……。動いてくれるよね? ガンダム……」

 

 意を決して操縦桿を握る。

 ジークアクスはいつものようにリフトで降下し、地下トンネルへと下ろされていった。

 

 格納庫ではジェジーがインカム越しに怒鳴る。

 

「モタモタすんな! マチュ!」

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 エグザベはスマホを取り出し、ライブ中継されているクランバトルの映像をアマテに向けて見せた。

 

「君、クランバトルって知ってるか?」

 

「……っえ? ……知らないよ……なんかヤバいギャンブルとかだろ……」

 

(流石に惚けてくるか……さて、どうなる?)

 

 エグザベはアマテの反応に内心納得しつつ、画面に目を戻した。そこには「ポメラニアンズ」のクラン名、そして──

 

(ジークアクス……!? どういうことだ!? やはり人違いだったのか!?)

 

 映し出されたジークアクスの映像に、エグザベは驚きを隠せない。

 だが、それはアマテも同じだった。

 

(な、なんで!? 誰が乗ってるの!?)

 

 思わず画面を凝視するアマテ。その目に、いつもと違う違和感が走る。

 

 

 

 ──

 

 

 

 ジークアクスのコックピットで、ニャアンは小さな声でつぶやく。

 

「久しぶりだなぁ……宇宙って……。バトルには間に合ったし、あとはお兄さんがなんとかしてくれる……」

 

 その頃、赤いガンダムのコックピットではフブキが通信を入れる。

 

《……いくぞ、マチュ。俺が先行するから、ライフルで援護してくれ》

 

 ジークアクスから返事はなかったが、ゆっくりと機体が動き出す。

 

 カウントダウンが進み、モニターには敵クラン「BINARYS」、そして敵機体──リックドムが2機、表示される。

 ソドンの艦橋で、コモリは画面を見つめながら背後のシャリアに言った。

 

「珍しい……リック・ドムです」

 

 シャリアもどこか懐かしそうに微笑む。

 

「推力はガンダムと遜色がない。多少重いですが、優れたモビルスーツです」

 

「確か、中佐もリックドムに乗ってらっしゃいましたね?」

 

 ラシットの言葉に、ソドンのクルーたちが一斉に驚きの声を上げる。

 

「え!? そうなんですか?」

 

「確か青い奴でしたっけ?」

 

 シャリアは淡く微笑んだ。

 

「僅かな期間ですよ。それに、キシリア様の配下には、私よりはるかに優れたドム使いがいましたから……」

 

 

 ──

 

 

 戦闘開始直後、2機のドムは真っ直ぐニャアンの乗るジークアクスに突撃してくる。

 ジークアクスのコックピット内では、警告音が激しく鳴り響き、ニャアンは狼狽えながらモニターを必死に見つめた。

 

「……っえ? わ、私が狙われてるの!?」

 

 混乱するニャアンの視界の端で、赤いガンダムがドム2機の間に飛び込んだ。

 

「嫌なカラーリングだな……何処ぞの三連星みたいじゃないか」

 

 フブキは冷静にそう呟き、ビームサーベルを抜いてドムに切りかかる。しかし、ドムの胸部から強烈な閃光が放たれ、ジークアクスのコックピットにまで白い光が差し込む。

 

「目眩しか……っ!」

 

「う、ううっ! 見えない……っ!!」

 

 フブキも視界を奪われながら、無線で叫ぶ。

 

《マチュ! 動くんだ! 視界が戻るまで動き続けろ!》

 

 だがニャアンは、どこに敵がいるのかも分からず、ただパニック気味に操縦桿をがむしゃらに動かすことしかできなかった。

 

「お、お兄さん!! っ!」

 

 その時、敵ドムの腕部からワイヤーが射出され、ジークアクスに絡みつく。

 

「え!? な、なn……っあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」

 

 次の瞬間、ワイヤーから強烈な電撃が走り、ジークアクスごとニャアンを包み込む。ニャアンの体に激痛が走り、絶叫がコックピットの中にこだました。

 

「はあ……はあ……な、に? これ……」

 

 モニター越しに観戦していたナブやジェジーも思わず声を上げる。

 

「電撃で中の人間にダメージを与える気か……!」

「そんなんありかよ!?」

 

 ジークアクスはなおもワイヤーで縛られたまま、激しく震え続けていた。

 戦況は、いきなり緊迫したものとなる。

 

「くそっ! マチュ! どうした、応答しろ! マチュ!!」

 

 だが、ジークアクスの動きは普段のアマテとは明らかに違っていた。

 

(……どういうことだ、マチュの動きが鈍い。いつもの感じじゃない……これじゃまるで素……人……?)

 

 嫌な予感がフブキの背中を走る。アマテは最低限の戦闘訓練は積んでいるはずだ。なのに今、コックピットからはそれが感じられない。

 ──アマテは今日、ニャアンと一緒だった。ということは、今ジークアクスに乗っているのは……

 

「まさか……! ニャアンちゃんなのか!? マチュはどうした!?」

 

 焦りをにじませながら、フブキは赤いガンダムのスラスターを全開にし、ジークアクスを絡めとるワイヤーをビームサーベルで切り裂いた。

 

「ニャアンなんだな!? 応答しろ!」

 

《お……兄……ちゃん……》

 

(まずいな……ダメージが思ったより入ったか)

 

 フブキは必死にニャアンへ声をかける。

 

「ニャアンちゃん! 動けるか!? 動けるなら──!」

 

 赤いガンダムがジークアクスを庇うように動く。しかし、敵のドム2機はバズーカを連射しながら、再びワイヤーをジークアクスめがけて撃ち込んでくる。

 

(っ! 成程……相手は初めからジークアクス狙いか……マチュならどうにかなったかもしれんが……間が悪い……っ!)

 

 ドムの2機が重なって、フブキの赤いガンダムに容赦なく攻撃を仕掛ける。

 フブキは必死に機体を操り、ヒートサーベルとビームサーベルを激しく打ち合わせて応戦するが──

 

(ちぃっ!! いくら操縦系が同じでも、機体の動きが重いっ! 動きがワンテンポ遅れる!)

 

 鍔迫り合いの最中、敵パイロットの無線が割り込む。

 

《ははぁ!! 子守りは大変だなぁ!! ガンダムゥ!!》

 

 フブキは低く吐き捨てる。

 

「……はっ。卑劣な手を使わなければ戦えぬ。情けのない奴」

 

《好きに言えよ!! 勝ちゃ良いんだよ! どんな手を使ってもなぁ! お前も喰らいなぁ!!》

 

 次の瞬間、フブキの赤いガンダムはドムの強烈な蹴りで弾き飛ばされる。着地と同時にワイヤーが撃ち込まれ、機体に絡みついた。

 

「っ! ぐあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」

 

 容赦ない電撃がコックピット内のフブキを襲う。体中に走る激痛、視界がパチパチと白く弾け飛ぶ。

 

 それでもフブキは歯を食いしばり、強引に操縦桿を引くが、ガンダムの計器にはエラーが点滅し始めていた。

 

「くそっ! 操縦系が……!」

 

(当たり前だ……ガンダムは旧式機だぞ! ただでさえろくに整備されていない中、クラバでの連戦……! いつガタがきてもおかしくない……!)

 

「くそっ! ニャアン!! 逃げろ!!」

 

 

 

 ──

 

 

 

「つぅ……痛い……マ……チュはこんなのに耐えてたの……? 痛いっ……」

 

 ジークアクスのコックピットで、ニャアンは涙目で必死に耐えていた。

 

「ニャアン! ニゲロ! ニゲロ!」

 

 ハロが必死に叫んでいるが、体の痛みと混乱でニャアンは思うように動けない。警告音が鳴り響く中、敵ドムがジークアクスに容赦なく接近してくる。

 

 ドムの一機がジークアクスに思い切り蹴りを入れ、もう一機は背後に回り込み、機体胸部にパンチを叩き込んだ。

 

「ぐゔっ! うっ! うぇぇ!!」

 

 シートに叩きつけられた衝撃で、ニャアンは軽く吐いてしまう。呼吸が乱れ、涙が滲む。それでもなんとか体勢を立て直そうと操縦桿を握りしめるが、二機のドムは一切容赦しない。

 

 再びワイヤーがジークアクスを捕え、瞬間、また強烈な電撃が襲いかかる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……い、嫌! く”あ”あ”あ”あ”あ”!!」

 

 ニャアンの絶叫が、コックピットの中でこだまする。

 

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