機動戦士Gundam GQuuuuuuX 自由の奴隷   作:スペースデブリ

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劇場では見返してもよく分からなかった、なんと言ってるのか分からない部分も、配信では鮮明に分かるのはやはり良いですね。
あとOPもEDも良い。OPでは庵野さん好き放題してて好き。ED関しては、あまりVtuberというのは分からないのですが、難しい曲調なのにレベル高いんですね…!ニャアンすき。


正しさの代償

 

 距離を詰めながら、フブキはバズーカのトリガーに指をかけた。発射ラインはすでに確保済み。

 

「……撃つ」

 

 まず一発。真正面から撃ち出された弾頭が、敵機の目前を目掛けて一直線に進む。すかさず二発目。少しだけ狙点を外し、敵機の回避行動を読んだ軌道に発射。

 

 そして三発目──それは、敵機を狙ってはいなかった。彼はあえて、右側に浮かぶ金属デブリの塊へと弾頭を撃ち込んだ。

 

 弾頭がデブリに命中し、微細な破片が宇宙空間に四散する。光を反射する無数の金属片が、シャワーのように敵機へと降りかかった。

 

(あれをシールドでやり過ごすか……ならば)

 

 フブキはすでに次の動作に入っていた。全スラスターを吹かし、一気に加速。相手はビームライフルで遠距離から攻撃できる。ならば自らの“間合い”──近距離戦に持ち込めばいい。

 

 しかしその瞬間、敵機が動いた。ビームライフルを構え、放つ。正確に飛来した光線が、バズーカ弾のひとつを撃ち落とす。残る1発も、敵機の機動によって巧みに躱された。

 

 破片も、シールドで防がれる。だが、それの混乱に乗じて──フブキが、接近していた。

 

「……やるな」

 

 その言葉が、思考の中から思わず溢れる。バズーカ三発、内ひとつは間接攻撃、残る二発も高精度に撃ち分けた。それをすべて処理してなお、姿勢を崩していない。

 

(予想より、はるかに洗練されている……)

 

 フブキは、バズーカを構え直した。残弾、あと二発。機体は今なお射線を維持しており、敵機の照準中央にそれが位置していた。

 

(狙っていると思わせればいい)

 

 引き金に指をかけ、残りの2発を撃ち放つ。だが、弾は敵機へ向かわなかった。

 

 バズーカは、そのまま敵の背後にいる新型艦へと向けて発射された。コースは正確。しかし敵機は自分に向けられて撃たれたものだと錯覚するだろう。

 このまま弾を避けるか? それとも迎撃するか? どちらでも構わない。どちらにせよ隙が生まれるのは確実だ。フブキは、発射と同時に全スラスターを最大出力で点火した。

 

「──っ!」

 

 敵機が反応するよりも早く、フブキは急接近を開始。急激なGで体が軋む。そして──弾がなくなり使い物にならなくなったバズーカを、敵機へ向けて投げつけた。

 

 質量を伴う鋼鉄の塊。接近するMS。そして背後へ向かっていく砲撃。敵機視点では、わずか数秒の中で三つの脅威が同時に襲いかかってくる。

 

(さあ、どう捌く?)

 

 視線の先で、敵機の姿勢が崩れる。狙いを定める暇もなく、砲弾の回避行動を余儀なくされた。

 

 その一瞬の“ずれ”──それこそが、フブキの狙いだった。

 

 機体が距離を詰め、ビームサーベルが抜き放たれた。紫電が奔る。加速したMSが、敵機の回避行動に併せて斜めに軌道を切り替える。

 

 剣閃は、光と金属の狭間を鋭く貫こうとしていた。

 

 コンソールには依然《RX-78-02》の表示。だがそこに乗っているのが誰なのか、フブキは知らない。それでも直感した。

 

 ──これは、只者ではない。機体も、そしてパイロットも。だからこそ、撃ち落とす価値がある。

 

 シールドを構え、ビームサーベルに手を伸ばす。サーベルが閃き、二機のモビルスーツが交差した。

 

 フブキによる不意の一撃を、敵機は寸前で受け止めた。盾を投げ捨て、背中のバックパックから抜き放たれたビームサーベルが、青白い粒子を放ちながら衝突する。

 

 MS同士の空間が蒼く染まった。粒子の奔流が互いの刃を押し合い、鍔迫り合いが生まれる。粒子同士がこすれ合い、光の火花が宇宙に弾けていた。

 

 01ガンダムの腕がわずかに沈む。機体の左腕が、滑らかに背中のバックパックへと動いた。二本目のビームサーベルを抜こうとしたその瞬間だった。

 

 敵機が反応する。関節が沈み込み、重心が低くなる。次の動作を悟るよりも早く、敵の脚部が大きく跳ね上がる。鋭い蹴撃が、01ガンダムの腹部、コックピットブロックを狙って突き刺さった。

 

「ッ……!」

 

 衝撃が機体全体に響き、内部フレームを伝って揺さぶる。モニターがぶれ、警告音が重なった。

 

 フブキはリニアシートに押し込まれ、腹の奥に熱と重さが広がる感覚を覚えた。喉が焼けるように熱くなり、呼吸が一瞬止まる。こみ上げる吐き気を完全には抑えきれず、わずかに嘔吐する。

 

 腹部への一撃の余波がまだ身体に残る中、フブキは操縦桿を握り直し、機体の体勢を立て直そうと姿勢制御をかけた。

 

 だが、その動作すら完了する前に、敵機がさらに踏み込んでいた。左から回り込むように跳躍したその機影は、次の瞬間勢いを乗せた蹴りを01ガンダムの頭部へと叩き込む。

 

 ゴンッという鈍い衝撃音と共に、メインカメラが軋んだ。

 

「くそ……!」

 

 視界に、一瞬遅れてノイズが走る。スクリーンの表示が揺れ、白黒の干渉線が上下に走った。──しかし映像はまだ“見える”。だが、その中心には断続的なブレと歪みが生じ、敵機の動きの一部が視覚的に遅れて伝わる。

 

(……やられた。メインカメラが……!)

 

 視界は維持されている。だが、精密な照準も、正確な読みも、今までのようにはいかない。

 

 

 それでも──フブキの眼は、ブレたスクリーンの先、ガンダムをしっかりと捉えていた。

 

(まだ見える……!)

 

 警告灯が明滅するコックピットの中、静かに呼吸を整えた。二本のビームサーベルを構え、軌道予測ではなく、感覚をもとに敵の動きを読みにいく。

 

「こっちの目を潰した程度で、勝ったつもりか……」

 

 ノイズ混じりの視界の向こうに、ガンダムの機影がまだはっきりと見えていた。頭部のメインカメラの負傷で多少の歪みはある。だが、ブレる映像の中でも、敵の動きは見える。

 

「……まだ動く、戦える……!」

 

 機体を再点火する。スラスターが火を噴き、フブキは二本のビームサーベルを構えたまま一気に突進した。

 

 速度を乗せたまま振り下ろされた一撃。光の刃が唸りを上げて、ガンダムの胴へと迫る。しかし、ガンダムも反応した。

 

 片手で構えていたサーベルが、01ガンダムの斬撃を正面から受け止める。ビームとビームがぶつかり合い、空間に粒子の火花が走る。

 

 敵機の右手が、まだ装備していたビームライフルを、ためらいもなく手放す。それは無重力に漂いながら、静かに宇宙空間へ放たれていく。

 その動作と同時に、ガンダムの背中──01ガンダムと同じように、バックパックからもう一本のサーベルが引き抜かれる。

 

(……そっちも二刀になるか!)

 

 フブキと同じ。接近戦における最適解。相手もまた、それを選んだ。声を上げずとも、その胸中に小さな昂りが灯る。

 言葉ではない。ただ、戦場の中で交わされる“意思の応酬”。

 

 それはもう、機体の性能や技術だけではない。どちらが、より“生き残る術”を知っているか──それを証明する戦いなのだ。

 

 粒子の奔流が交錯する中、二機の機体は鋭く斬撃を繰り返していた。ビームの余剰粒子が周囲の宇宙を焦がし、どちらの刃も決して軽くはなかった。その中で、わずかに隙が生まれた。ガンダムの左の切り込みが浅くなる。その瞬間、フブキの01ガンダムが踏み込む。

 

 サーベルを交えた状態から、機体の足が鋭く跳ね上がった。

 

「……お返しだ!」

 

 重量と加速度を乗せた蹴りが、ガンダムの腹部へと直撃する。打ち込まれた衝撃に、敵機の機体が後方へと滑る。その姿勢が崩れた一瞬──左手のサーベルを構え、トドメを刺すため一気に加速した。

 スラスターが爆ぜ、光が走る。勝負を決する刹那──その瞬間だった。

 

 頭の奥に、激しい閃光が走った。

 

(──っ!?)

 

 "紫電"

 それは音でも光でもない、説明のつかない"感覚"だった。視界のノイズが一瞬、すべて消えたかのような錯覚。重力のないはずの空間で、全身を引かれるような感触。心の奥を直接揺さぶられるような、高周波のような衝撃。

 

 レバーにかけていた力が、咄嗟に緩む。機体の加速が僅かに止まり、刃の先端が敵機の装甲へ届く寸前で停止した。

 

 敵機の視線が、こちらを見ている。だがそれは、ただの視線ではなかった。言葉よりも、光よりも速く、何かが互いの心に流れ込んできたような──

 

(なんだ、これは……気持ち悪い──)

 

 問いかける余裕などない。だが、確かに“何か”がそこにあった。

 

 刃は止まった。止まってしまった。トドメを刺すはずだったその一撃は、まるで何かに手を引かれたかのように。

 

 紫電の余韻が、まだ頭の奥に残っている。あの瞬間、確かに“何か”があった。理解できるはずもない感覚が、思考と肉体のわずかな統一を裂いた。

 

 その一瞬。それだけで、ガンダムが動くには十分だった。

 

 目の前の敵機が、迷いなく踏み込む。両のビームサーベルを交差させながら、目前に迫る。フブキは反応できなかった。あまりにも短く、あまりにも鋭いその踏み込みを前にして──

 

 刃が頭部ユニットを斜めに薙ぎ、紫の残光が空間に焼きつく。直後、コックピットのモニターがバチリと音を立て、すべての映像が暗転した。

 

 静寂。通信も、センサーも、何もかもが切断された。真っ暗なコックピットの中、フブキは座席に深く沈んだまま、息ひとつ吐かずにいた。

 

(──視界が……何も見えない……)

 

 ああ、俺は──

 

(……負けたのか)

 

 皮肉なほどに冷静な思考が、浮かぶ。音のない宇宙の中でシートに背を預けるしか事しかできない。 

 

 引き金を引けなかった。斬りつけられなかった。あの一瞬の気持ちが悪い“感覚”。その一瞬が勝敗を決したのだ。

 

 

 

 

 

 

──

 

 

 

 

 

 

 

 ビームサーベルの残光が、暗い宇宙に弧を描いて消えた。その刹那、敵機──01ガンダムの頭部が、音もなく軌道を逸れて漂い始める。

 

 シャアは一瞬、息を吐いた。

 

「……長かったな」

 

 トリコロールの機体を静止させながら、機体の背をそっと仰ぐ。そこには、宇宙空間を抜けていく二隻の艦影があった。

 

 一つは重厚な姿をしたムサイ級。もう一つは、どこか異質な構造を持つ、白を基調とした新造艦──連邦の新型、ペガサス級。どちらも、濃密な機雷原を抜け、安全圏へと移動を完了していた。

 

 その様子を確認したシャアは、静かに頷く。死闘の裏で遂行されたV作戦強奪任務。目的であった、敵の"切り札"を奪い、未来の戦場を制するための布石を打つこと。そしてそれは、達成された。

 

 漂う01ガンダムは、もはや一切の動きを見せなかった。頭部を失い、サーベルの粒子の光すら消えたその黒い機体は、宇宙に溶け込むように静かだった。

 

 シャアは、その姿を見下ろすようにして機体を静止させる。トリコロールのガンダムの胸部には、戦闘の痕がいくつも刻まれていた。

 

「……連邦の兵士にしては、いい腕だった」

 

 仮面の奥で、彼は静かに言葉を溢した。それは、敵を賞賛するためのものではない。戦場で生き延びた勝者が、敗者に対して抱く、ごく私的な言葉だった。

 

(だが……なぜだ?)

 

 最後の瞬間。あの01ガンダムは確かに私を斬れる距離にいた。むしろ、こちらが斬られてもおかしくなかった。なのに、このパイロットは──ほんの僅かに、動きを止めた。

 

 理由はわからない。感傷もいらない。それでも、シャアの中に、戦士としてのひとつの引っかかりだけが残る。

 

「……答えは、そのうち見えてくるかもしれんな」

 

 それだけを呟くと、彼はレバーを引き、ガンダムを反転させた。背後には、未だ沈黙を守る01ガンダム。そして前方には、既に機雷原を抜けたムサイ級とペガサス級の影が待っている。

 

 シャアは迷いなく、推進力を最大にし、母艦との合流軌道へと乗っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 後の時代、戦史に記録されることとなる──人類史上、初の"ガンダム同士の戦い"は、こうして幕を下ろした。

 

 黒き試作機・01ガンダムは頭部を失い、無力化される形で宇宙に漂った。だが、その機体は間もなく合流した連邦艦に回収される。

 パイロット──フブキ・アルジェントも命を取り留め、その身柄と共に機体は保全された。

 

 その後、機体に記録された戦闘データは、技術本部によって徹底的に解析されることになる。

 その戦闘挙動、レスポンス、干渉制御記録は、以降のモビルスーツ開発──とりわけRX計画の加速に、大きく寄与したとされている。

 

 ただし、損壊した頭部ユニット──特にメインカメラは完全に破壊され、再利用は不可能と判断された。結果として、頭部の修復には既存の試作機体である「ガンキャノン」の上部ユニットが流用され、やや異様な外観を携えた状態で、再び戦場へと投入されることになる。

 

 その後のフブキは、記録上、幾度となく戦線に立ち、主にデータ収集機としての任を担うこととなる。だがその戦いの軌跡は、公式な戦果とは裏腹に、彼の名と共に語られることは少ない。

 

 一方──

 

 赤、青、白のトリコロールを纏っていた敵の"ガンダム"は、次に目撃された際には、その装甲を一面に朱へと染めていた。

 "赤いガンダム"──そう呼ばれた機体は、主要な戦場で幾度となく姿を現し、そのたびに圧倒的な戦闘力で敵を駆逐した。

 

 連邦は対応すべく戦力を再配備しようと試みるも、各地で次々と敗走を余儀なくされていく。その姿を見た者たちは、ある者は「悪夢」と語り、ある者は「死神」と呼んだ。

 

 

 

 

 そして、地球連邦は一つの"決断"を下す。




 
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