機動戦士Gundam GQuuuuuuX 自由の奴隷   作:スペースデブリ

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「儚木倖一」さん「白金」さん誤字報告ありがとうございました。


ソドンからの脱出

 

 

 

 アマテは冷たい営倉の中、浮遊しながら天井を見上げていた。

 

「シュウジは……薔薇を探している。異常なオブジェクト……もしかして、行方不明になったのは薔薇のせいなの……?」

 

 そう呟いた時、スマホが微かに震えた。

 表示された差出人は──Unknown。

 

──もうすぐ薔薇は咲く

 

「薔薇……?」

 

 ハロが小さな声で繰り返す。

 

「バラガサク、バラガサク!」

 

 アマテが眉を寄せた瞬間、再びメッセージが届く。

 

──ロックが外れる。右

 

「……だれなの?」

 

 アマテが小さく呟いた直後、営倉の扉が ピッ と音を立てて解除された。

 恐る恐る通路に顔を出すが──そこには誰もいなかった。

 

「イクノカ?」

 

「……これって出ていいのかな……」

 

「モンダイナイ! ミツカルナ!」

 

 アマテは心を決めると、壁を蹴って慣性をつけ、静かに廊下を進む。

 その瞬間、スマホが再び震えた。

 

──At the end of the corridor go left(突き当たりを左に行くんだ).

 

(……あの時も“音を立てるな”って警告してくれた。誰なのか分からない。でも──あの時、カネバンで話を聞いてシュウジを逃がすきっかけになったのは確かだ)

 

「この突き当たりを左……でいいんだよね?」

 

 アマテは指示どおりに左へ曲がる。するとまたスマホが震える。

 

──Go straight through the centrifuge.(遠心分離区画をまっすぐ進むんだ)

 

「遠心……? どういうこと?」

 

 廊下を進んだ先にあった扉に進むと、先程まで浮いていた身体が、すとんと床に落ちた。重力区画に入ったのだ。

 

(重力……コロニーと同じってことか……)

 

──Don’t get on the first elevator.(最初のエレベーターには乗っちゃダメだぞ)

──Let 3 go by then go up on the 4th.(3つ通り過ぎた先にある4つ目に乗るんだ)

 

「4つ目……」

 

 アマテは小走りになって廊下を進む。

 一つ目、二つ目……人影はない。三つ目を過ぎると、目の前に四つ目のエレベーター。

 

 そして──アマテが前に立った瞬間、 扉が静かに開いた。

 まるで「入れ」と誘うかのように。

 

 エレベーターに乗り込むと扉は閉まり、ボタンは勝手に押されて動き出した。

 アマテの心臓はドクドクと脈打ち、狭い箱の中で息が詰まるように感じる。数秒経った後に、扉が開くと目の前にはまた通路。

 

 再びスマホが震え、文字が浮かぶ。

 

──Go to section 1 of the main deck(メインデッキのセクション1に行くんだ).

 

(この艦……すごく大きい。こんな案内がなきゃ、絶対に迷子になるよ……)

 

「ッ! マチュ! カクレロ!」

 

 ハロが警告音を鳴らした。

 

「っ!」

 

 アマテは反射的に壁際へ飛び込み、コンテナの影に身を潜める。

 息を止める。鼓動だけがやけに大きく響く。

 

 その直後、廊下に軍人たちの声が響いた。

 

「なあ、あの黒いガンダム、なんで中佐は廃棄しないんだよ?」

「俺に聞かれても知らんよ。……木星帰りの勘ってやつじゃねぇか?」

「黒いガンダムもそうだけど、まさか"鬼神"があんなガキだったとはな」

「ガキ? あの赤い髪の女の子か?」

「違う違う、あの子はなんていうか、巻き込まれたんだろ? 鬼神が脅迫してたってニュースで聞いたぜ?」

 

(黒いガンダム……フブさん!? フブさんもここに居るの!? どうしよう……助けに行ったほうが……)

 

 そんな迷いが胸を占めた瞬間、スマホが震える。

 

──He's fine. Hurry up now.(彼は大丈夫だから。今は急ぐんだ)

 

(……っ! 誰なの、この人……!? どうしてフブさんのことまで……!)

 

──Count to 10 then enter blue door.(10秒数えてから青い扉の先に進むんだ)

 

 アマテはギリッと唇を噛み、影からそっと覗く。

 軍人たちが通り過ぎるのを確認すると、震える手でスマホを握りしめ、青い扉へと足を進めた。

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 警告音が耳をつんざくように鳴り響き、艦橋内は混乱の渦に包まれていた。

 オペレーター席のセファが、手元の端末を叩きながら絶叫する。

 

 

「モ、モビルスーツデッキで──オメガサイコミュの起動シグナルを受信! ジークアクスが起動しています!!」

 

 報告にラシットは反射的に立ち上がり、モニターを睨む。

 

「なんだと!? 誰が動かしている!?」

 

「無人です! ジークアクスには、誰も……っ!」

 

 しかし、その直後モニターの映像が切り替わった。

 カメラが捉えたのは、格納庫に固定されているジークアクスへと飛び乗り、コックピットへと滑り込む少女──アマテ。

 

「……マ、マチュ!? 何で!? 独房の電磁ロックは!?」

 

「どういうことだ、少尉!? まさか解錠したのは貴様か!?」

 

 ラシットは振り返りざま、厳しい口調でコモリを問い詰めるが、コモリには勿論、何の心当たりもない。

 

「そ、そんなことしてません!! 私は何も──!」

 

 セファはコンソールを叩いてログを確認するが、特に目立った痕跡はない。

 

「記録に不正アクセスはありません! 電磁ロックは、外部からの解除履歴がない……! “内側から”開けられたとしか……」

 

「左舷モビルスーツデッキを封鎖! 作業員は直ちに退避! ジークアクスを外へ出すな!」

 

「了解!」

 

 赤く点滅する警告の下、混乱する艦橋。

 ラシットの命令でモビルスーツデッキ封鎖のオペレーションが進んでいくが、シャリアの一言でその流れが凍りついた。

 

「……いや、行かせてあげましょう」

 

 ラシットは思わず振り返り、声を荒げる。

 

「中佐!? 何を仰っているんです! このままでは……!」

 

「同感です! 中佐、いくらなんでも危険すぎます! まさか、また“木星帰りの勘”だなんて言うんですか!?」

 

 シャリアはそんな二人を静かに見渡し、手にしたスマホを掲げた。

 画面には、アマテのスマホとまったく同じメッセージが映し出されている。

 

「ただのミラーリングですよ。……検閲の件は、あらかじめ伝えてあります。ここは、謎の“誰か”が送ってきているメッセージに従うのが得策でしょう」

 

 艦橋に重苦しい沈黙が流れる。

 ラシットもコモリも納得はできないが、シャリアの言葉の裏にある「確信めいた何か」を感じ取り、強く反論することができなかった。

 

(な、なんで楽しそうなんだ……? 中佐……)

 

 コモリは目の前のシャリアが分からなかった。

 自分たちにとっての明らかに“敵”とも取れる行為を見逃し、しかもそれを楽しげに眺めているのだから。

 

「発艦させます……本当にいいんですか!」

 

 困惑を抑えきれないオシロの問いかけに、ラシットは深いため息をつき、ぶっきらぼうに答えた。

 

「もう好きにさせろ……! さっさと放り出せ!」

 

「ハッチ解放! ジークアクス発艦します!」

 

 ジークアクスは加速し、青いスラスターの光を尾に残しながら、あっという間にソドンの外へ飛び出していった。

 その光は小さくなり、やがて遠くの闇に溶けていく。

 

「……さて」

 

 艦橋のざわめきの中、シャリアは再び手元のスマホを見下ろした。

 そこには新たなメッセージが届いていた。

 

──Let’s get the Beginning.

 

 その文字に、シャリアは小さく笑みを浮かべる。

 

「これは……誰からのものなのか。まったく、世話の焼けるニュータイプだ」

 

 彼の声には、まるで“懐かしさ”と“楽しさ”が入り混じっていた。

 

 

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 

「……なんだ?」

 

 フブキはベッドにつけられていた固定ベルトで足を止め、腹筋をしていた。汗を腕で拭いながら天井を見上げる。

 先程まで響いていた警報は止み、艦内は一転して静けさを取り戻している。

 どうやら問題は解決したらしい。

 しかし、独房の扉につけられた格子に、人影が映る。

 

「身体を休めるのも重要ですよ? 少年」

 

 低く落ち着いた声。

 振り返らずとも、声の主が誰かは分かった。

 

「はぁ……アンタ、暇なのか? 中佐」

 

 シャリアは軽く肩をすくめ、静かに独房へ入ってきた。

 その表情には柔らかな笑みが浮かんでいるが、フブキにはその裏にある意図が読めず、自然と眉が寄る。

 

「で? 何の用だ? また尋問か?」

 

「いえ、そういうわけではありません。君とは……色々と話したいことがあるんです。ぜひ、どうですか?」

 

 そう言って、シャリアは独房の外へ片手を差し出した。

 その仕草は「着いてこい」という無言の誘いだ。

 

「はぁ……ん」

 

 フブキは一度だけ短く息を吐くと、立ち上がった。

 そして両手を差し出す。その動きにシャリアは一瞬だけ首を傾げ、目を瞬かせる。

 

「……? なんですか?」

 

「おいおい、俺は一応“捕虜”だろ」

 

 フブキは肩をすくめ、苦笑を浮かべながら言った。

 

「捕虜を自由に歩かせちゃ、アンタにとっても良くないだろ」

 

 シャリアは一拍置いてから、ふっと小さく笑った。

 

「ふっ。律儀ですね、あなたは」

 

「律儀ってわけじゃない。ただ……お互いに役割というものがある。それだけだ」

 

 フブキの返しに、シャリアは瞳を細め、どこか探るような視線を送った。

 しばし沈黙が流れた後、シャリアはゆっくりと腰のホルスターから小さな端末を取り出す。

 

「仕方がありませんね。なら、形式だけ整えましょう」

 

 そう言って、軽い電子音とともにフブキの両手首に磁気式の拘束具をはめた。

 見た目は簡素なリング状の金属だが、内蔵されたセンサーが常に位置とバイタルを監視している。

 

「行きましょうか」

 

 フブキは無言のままシャリアの後ろに続く。

 

 廊下は眩しいほど明るく、一定間隔で配置された照明が金属壁を冷たく照らしている。

 

「どこへ連れて行くつもりだ?」

 

「擬似重力区画にある部屋です。士官用なので、話をするにはピッタリです」

 

 シャリアとフブキはしばらく艦内を進み、青い扉を抜けて足が地面に付く。そこからさらに進んで扉の前で立ち止まる。

 

「ここです。どうぞ」

 

 シャリアはそう言って、暖色の光が柔らかく灯る部屋にフブキを入れた。

 小さな会議室のような空間。壁際には資料棚が並び、中央には低めのテーブルとソファーが置かれている。

 手錠を外すと、シャリアは手で「座れ」と促した。

 

 フブキはソファーに促された通りに腰を下ろす。

 シャリアはスマホを操作し、ミラーリングした画面をフブキに見せる。

 

「さて、フブキくん」

 

 彼は端末を指先で軽くスワイプさせながら、じっとフブキを見つめる。

 

「あなたは、このメッセージの送り主に関して、何か心当たりは?」

 

 フブキに見させられたのは匿名アカウント「Unknown」からの一連のメッセージ。

 画面には、一方的にアマテに対してああしろこうしろという指示が送られている。

 

 フブキは一瞥しただけで眉をひそめた。

 

「……なんだこれは?」

 

「ミラーリングでマチュくんのスマホを監視していたんですがね。この人物が、彼女をジークアクスへと導いたようなんです」

 

「年頃の女の子の携帯を盗み見るのか……?」

 

 フブキは半ば呆れたように視線を投げた。

 

「彼女にはミラーリングすると伝えていますよ。承諾済みです」

 

 フブキはしばし画面を見つめ、深く息を吐いた。

 

「……コイツが誰なのか、俺にはさっぱりわからない。だが、このメッセージを見る限り──この艦の構造をよく知ってるやつだろうな」

 

「ほう?」

 

 シャリアは片眉を上げ、少し身を乗り出した。

 

「もしかすると、アンタの近くにいる奴かもしれないぞ? アンタら、確か身内争いしてるんだったか」

 

 シャリアは小さく息を吐き、口元に薄い笑みを浮かべた。

 

「ええ、ギレン派とキシリア派。我々ソドンの人間は、一応キシリア派に属しています」

 

「……あくまでも仮定の話だがな」

 

 フブキは視線を端末から離さず続ける。

 

「このペガサス……いや、ソドンのクルーの中にギレン派の人間が紛れ込んでいたとして──そいつがアマテをモビルスーツに導いた可能性はある」

 

「なるほど」

 

 シャリアは腕を組み、興味深げに頷いた。

 だが、フブキは言葉を切らなかった。

 

「だが、それだとサイド6に居た時期で起きた事に説明がつかない。特に「静かに入れ」とかな。この時間はアマテがシュウジを売られるって話を聞いた辺りだ」

 

「……ふむ」

 

 シャリアの瞳にわずかな警戒が走る。

 

 フブキはソファに深く体を預け、腕を組む。

 

「意外と熱心なストーカーかもしれないな」

 

 シャリアは数秒だけ無言のままフブキを見つめた。

 やがて、小さく笑って首を振る。

 

「……君らしい見立てですね」

 

 その声音は柔らかいが、どこか探るような響きが混じっている。

 

 




もう終盤ですねぇ。週一にしようかな?失踪はしないので安心してくださいね。
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