【完結】3年後に世界が滅ぶと知ったエイシンフラッシュとトレーナー   作:ポンタ4

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5.ホワイトデーは日本とドイツ流で

あの自分の想いを吐露して数か月後、世間はホワイトデーとなっていた。

彼女はシニア級となり、そして今年からはシニアウマ娘達との苛烈な戦いになるだろう。

 

さて、少し話は変わるが彼女からバレンタインデーの贈り物を受け取っていた。

彼女から受け取った手作りのチョコとトレーナー室に飾られた一輪のバラ。

 

フラッシュとバレンタインデーに告白をすることについて話し、そして彼女はその告白についてあまり理解を示せていなかったようだ。

これは所謂文化の違いだろう。

日本での告白は関係性を一変させる1つの魔法の言葉である。

しかし、ドイツではその”告白”という文化は存在しないようである。

 

フラッシュはこの”告白”についてあまり分からず、関係性を変えるのであれば相手に贈り物をし、そして相手に少しずつ好意を伝え、貴方と恋人になって欲しい、という心構えをしてもらう。

要は日本は言葉で明確に、ドイツでは態度や行動で少しずつ意識してもらう感じなのだろう。

 

…………つまりフラッシュが送った一輪のバラはそういうことなのだろうか。

俺はあまり花言葉に詳しくはないが、一応この一輪のバラについて意味を調べると

 

一目惚れ

貴方だけを愛しています

 

「ううむ……」

 

トレーナー室で一人、誰もいない空間で自分の携帯の画面を眺めながら少し唸る。

 

…これはつまりそういうことだろうか。

ただ悲しいことに、俺は残念ながら日本男児である。

本当に彼女が好意を抱いているのか、それについて問うことができない臆病者だ。

 

とはいえ、俺自身もフラッシュに惹かれている。

彼女の走りだけでなく、彼女と一緒に外に出かけることで彼女の人柄に惹かれ、フラッシュ自身に好意を抱いてしまった。

恥ずかしい話ではあるが。

 

 

なんにせよホワイトデーまでには時間がある。

どうやらドイツにはホワイトデーというものは存在せず、またプレゼントを贈るのにも高価、アクセサリーやバッグといった高価なプレゼントではなく実用性のあるプレゼントを贈るという。

ということで俺はフラッシュに日本流のお菓子によるお返しと、そしてドイツ流の高価ではなく実用性のあるプレゼント。

お菓子についてはすぐ思いつくが、高価ではないプレゼントとなると中々難しい。

 

高価ではなく、実用性のあるものを好む…そしてプレゼントとなると―――――

 

 

 

***

 

 

 

「ハッピーホワイトデー!フラッシュ」

「ホワイトデー…?…………バレンタインのお返しですか?」

「そう、バレンタインのお返し。ドイツでは無いみたいだけど、ここは日本だからね。日本流でお返ししようと思って」

 

トレーナー室に入ってきたフラッシュに笑顔で迎える。

フラッシュは”ホワイトデー”という単語に最初不思議そうにしていたが、すぐに理解を示し、納得をすれば

 

「ありがとうございます、トレーナーさん」

 

と頭を下げてお礼をしてくれた。

そうして俺がフラッシュに渡したものはまずは白色を基調とした包みにマーガレットが描かれたもの。

 

「開けてもいいですか?」

「勿論、そのためのお返しなんだから」

 

フラッシュはその包みをできる限り破らないように丁寧に開けていき、そして中から取り出したのはマカロンの詰め合わせ。

 

「俺はお菓子が作れないから…既製品でごめんな」

「いえっ、こうやってくれるだけで私は嬉しいです。ありがとうございます。」

 

彼女はそのマカロンを見て嬉しそうに笑顔を浮かべ、少しだけ尻尾の揺れも大きくなる。

その様子を見れば少しだけほっと胸を撫でおろす。

 

「フラッシュ、その…もう一つあるんだ」

「…もう一つですか?」

 

トレーナー室の机の上に置いてある紐の取っ手が付いた小袋。

それをフラッシュに手渡す。

先ほどのお菓子とは違い、動かすと小袋の中からはカチャリ、とガラスのぶつかる音がしていく。

フラッシュはその音を聞くと不思議そうに首を傾げていき、

 

 

「これ……開けても…?」

「あぁ、いいよ」

 

 

そう告げると彼女は小袋の閉じ口に指を差し込み、ゆっくり開いていく。

その中にはガラス瓶が3つ。

フラッシュはその中から1つ手に取り、眺めていけば

 

「これは…アロマオイル、ですか?」

「うん、ドイツの男性はそういうのを送るって見たからさ。それにウマ娘は尻尾の手入れもするから、それを使ってほしいなぁ…なんて」

 

自分で説明してて少し恥ずかしくなってきた。

そのアロマオイルは実際に俺自身が匂いを嗅いでいいな、と思ったものを選択しものだ。

とはいえ、この匂いが彼女が気に入るかどうかは分からないが、何故だか彼女は気に入ると思ってしまった。

 

「嗅いでみても良いですか?」

「勿論、気に入ってくれるといいけど…」

 

彼女はそのガラス瓶の蓋を開け、開いたところから手をぱたぱた、と仰いで嗅いでいく。

 

「あ………バニラの…香り…」

「たまに君からお菓子のバターの匂いがする時があるから……好きなのかなって…思ってさ」

「……ふふっ、嬉しいです。素敵なお返し、ありがとうございます」

 

彼女はまた手をぱたぱた、と仰いではその匂いを堪能していく。

ウマ娘は鼻が普通の人よりも敏感であるため気に入るかすこし心配であったが、彼女は嬉しそうに匂いを嗅ぐたびに耳がぴこぴこ、と揺れている。

 

「あ、そうです。トレーナーさん」

「ん?どうしたんだ?」

 

彼女がまるで何かを思いついたように此方に視線を向けてとある提案。

 

「わがままにはなりますが…更にお返しとして…尻尾のブラッシングをお願いできますか?」

「………構わないけどいいのか?」

「はい、トレーナーさんだからお願いしています」

 

ウマ娘の尻尾はそれこそ非常に大事な身体の一部分である。

尻尾のお手入れ具合では走れなくなるウマ娘もいると聞いたことがあるほど大事な部分だ。

故に信頼している者にしか触れさせないとなっているところを触れさせてくれる。

それだけ俺はフラッシュに信頼されているということが分かるのは嬉しい。

しかし、俺は知識として尻尾の手入れは知っているだけであり、実際にしたことは一度もない。

 

「下手でも…怒らないでくれよ…?」

「怒りませんよ、私が教えるので頑張りましょう?」

「わかった、頑張るよ。手ほどきよろしくな、先生」

「ふふ、はいっ」

 

トレーナー室に備え付けられているソファー、彼女は学園指定のバッグの中からブラシを取り出して俺に渡してくれる。

持ち手は木材であり、並ぶように生えている一本一本は柔らかい素材で出来ている。

その部分を自分の掌に触れさせると心地よく感じる。

 

フラッシュはソファーの少し端っこに座り、此方に対して背を向ける。

俺も彼女の背中側に座り、自分の膝元に彼女の黒く、そして艶やかな尻尾を乗せていく。

まだオイルを塗っていないのに既に煌めくように艶やかであり、よく手入れされていることが分かった。

 

恐る恐るその尻尾を下から持ち上げるようにしてしまう。

ウマ娘にとって大事な部分、そう聞くだけで慎重な手つきになってしまう。

彼女にその心理が伝わってしまったのか

 

「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。」

「そ……そういわれてもな…」

「急に怒ったりしないですから…安心してください」

「わ、分かった」

 

彼女のその尻尾にブラシを当てて、ゆっくりとまずは梳かしていく。

 

「んっ…」

「あっ、ご、ごめん。痛かったか?」

「いえ…少しくすぐったいだけです」

「そ、そうか…」

 

彼女が声を漏らしたため、少し驚いてしまったが、気を取り直してまたブラシを当てていく。

ブラシの先の一本一本が尻尾に引っかかることなく、そして梳かすと流れるようにブラッシングを続ける。

彼女の尻尾はブラシに負けないほどの手触りの良さ。

もし触っていいというのなら、暫く触ってしまいたいと思うほどである。

 

尻尾の付け根から30cm離れた所にブラシを当てて、そのまま尻尾の先端部分まで何度も何度も繰り返すように梳かしていく。

最初は緊張していたが、している間に緊張は少しずつ解けていった。

 

「フラッシュ、気持ちいいか?」

「えぇ…とても」

 

フラッシュの心地よさそうな声、それを聞けば少しだけ安心する。

暫くブラシで彼女の尻尾を梳いた後、そのブラシを置いて今度はアロマオイルに手を伸ばしていく。

アロマオイルは多く付けてしまうと今度は匂いがきつくなってしまうと聞いた。

フラッシュの尻尾に2、3滴ほどそのアロマオイルを垂らしていく。

 

そうして垂らしたあとにはブラシで尻尾全体で馴染ませるようにして梳かし始める。

既に彼女の尻尾からはアロマオイルを垂らしたことにより、バニラの仄かな匂いが漂ってくる。

この匂いを嗅いでいると不思議と心が落ち着いてしまう。

 

フラッシュの方に視線を向けると耳がぴこぴこ、と跳ねている。

どうやらアロマオイルを更に塗ったことでその気持ちよさは増したようである。

 

そのまま全体に馴染ませるようにしてブラッシングを続けていく。

少しすればフラッシュの尻尾全体は更に艶やかになり、彼女の尻尾がぱさり、と一度だけ揺れていく。

そうして、彼女が此方を振り向けば

 

「気持ちよかったです、ありがとうございます、トレーナーさん」

「俺もフラッシュの尻尾をブラッシング出来て光栄だよ」

 

お互いに笑みを零してしまう。

彼女のその嬉しそうな笑顔を見れただけで、俺はより彼女に寄り添いたいと思ってしまった。

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

トレーナーさんにブラッシングをして貰い、そのまま別れて私は寮へと帰ります。

いつもより足取りは軽く、不思議とこのまま走り出したい、なんて思ってしまうほどでした。

尻尾をブラッシングされ、そして彼から貰ったアロマオイル。

私好みの匂いであり、そしてなにより彼にブラッシングをして頂いた事実がより胸を躍らせていきます。

 

自分のスクールバッグの中にトレーナーさんから頂いたお菓子とアロマオイル。

このお菓子は夕食後に頂くとしましょう。

アロマオイルについては…お風呂上がりの尻尾のケアで毎日使うことにしましょうか。

それにまたトレーナーさんにブラッシングをして頂くのも悪くありま…いえ、むしろ良かったですね。

意中の人にして頂くというのはここまで心を震わせ、そして暖かくするものだとは思いませんでした。

 

「ふふっ…」

 

1人で歩いている帰り道、今日の出来事を振り返っては思わず笑みが零れてしまいます。

 

寮にたどり着き、既に部屋にはファルコンさんがいらっしゃいました。

 

「あっ、おかえりなさい、フラッシュさん☆」

「ただいま帰りました、ファルコンさん」

 

部屋に入るなり彼女は私に近づいてきてはすんすん、と少し匂いを嗅ぐようにしていきます。

ファルコンさんは匂いで私が作ったお菓子を当てるほどの嗅覚の鋭さ。

しかし、ファルコンさんは何度匂いを嗅いでも首を傾げ、少し唸っています。

 

「………フラッシュさんから良い匂いがする……けど…なんだろう……?」

「ふふっ、分かりますか?」

「んーー?」

 

ファルコンさんは人差し指を自分の額に当てて、考え始める。

 

「バニラの匂いなのは分かるの。でもね、普通のバニラじゃない気がして…うーん…それに尻尾からしか匂いがしないの…」

「今回は難しいと思いますよ」

 

彼女は唸り続け、そして最終的には

 

「答えをおーしえて☆」

 

と諦めては両手を顎の部分に添えて、瞳をきらきらと輝かせながら答えのおねだり。

 

「秘密、です」

「えーーー、じゃあじゃあヒントっ!」

「そうですね…」

 

これはトレーナーさんとの秘め事、尻尾を触らせ、更にはブラッシングをさせるなんて余程信頼した人物にしかさせません。

少しだけファルコンさんを揶揄いましょうか、そんな思いが出てしまい

 

「では…ヒントはこれと…尻尾、ということで」

 

私はバッグからトレーナーさんから頂いたアロマオイルのガラス瓶を見せていく。

ファルコンさんはそれを見ては

 

「これ…アロマオイル……それに尻尾って……えっ!?」

「ふふ、これ以上はしーっ、ですよ」

「えっ!?嘘っ!?フラッシュさん…本当に…?」

「さぁ…どうでしょうか」

「えーっ!教えてよーー!」

 

部屋の中でファルコンさんは少し興奮した様子で私に問い詰めてきますが、私は飄々と何事も無さそうに振る舞い、仄めかすだけ。

その仄めかしに対してファルコンさんは更に色々と思案をしては「もしかして~?」なんて言いますが、私はあえて答えませんでした。

 

これは私とトレーナーさんを信頼した秘め事。

ホワイトデーはなんと素晴らしいイベントなんでしょうか。

 

トレーナーさんから頂いたマカロン。

日本のホワイトデーではお返しに意味が籠っているといいます。

 

 

マシュマロには”貴方が嫌い”

キャラメルには”貴方と一緒にいると安心できる”

キャンディーには”貴方が好き”

 

ではマカロンは?

 

 

 

貴方は特別な人

 

 

 

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