現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦 作:ソル
裏梅がその気配を察知したのは、メカ丸を氷に閉じ込めてから数分後のこと。
周りの風景を塗りつぶすように、帳が展開される数瞬前。
「!?」
背筋に悪寒が走る。
呪いの気配。それも、今まで出会ってきた呪霊とは秤にかけることもできないほど強力な。
(背後!? いや、上……!)
咄嗟の迎撃。
裏梅に向け開いた手のひらを向ける呪霊に対し、鏡合わせのように手をかざす。
轟音が鳴り響く。
自然界ではありえないほどの熱気と冷気の衝突。急激な温度変化により、空気が瞬間的に膨張し、互いの体が吹き飛ばされた。
すぐに体勢を立て直した裏梅だが、自身の掌に、微かな熱が残っていることに気づく。それが示すのは、一つの可能性。
相手の
今の攻防で思い知った実力。見た目も相まって、噴火寸前の火山を思わせる莫大な存在感。目の前の呪霊が特級の位階であることは、もはや疑う余地もなかった。
「何故ここに特級が……」
現れた呪霊――漏瑚は、その単眼を裏梅へと向ける。それは、獲物を見定める肉食獣のような視線だった。
「相手をしてもらうぞ、術師」
漏瑚の頭から球状の何かが飛び出る。
羽音を響かせながら空中に滞空したそれは、醜い容姿をした蟲のような何か。
「火礫蟲」
金属同士をこすり合わせたような不快な音をまき散らしながら、高速で裏梅に接近する。
(あの呪力の感じ……)
それを見て彼女が連想したのは、先ほどの戦闘でまんまと食らってしまった攻撃。
「……また爆弾か。霜凪!」
裏梅の放出した呪力に触れた瞬間、氷像と化してその場へ落下する。
火礫蟲は、音と爆発による二段構えの攻撃を行う昆虫。まともに喰らえば致命傷になりかねないそれを、至近距離へ近づく前に対処する。
だが、これは小手調べに過ぎない。
欲しかったのは一瞬の隙。
気づいた時には、裏梅の懐へもぐりこんだ漏瑚が添えるようにして手をかざしていた。
(まずっ……)
明確な死を感じるほどの脅威が目前に迫る。
至近距離。直撃すれば、裏梅の体を炭にすることもたやすいほどの火力。
「ッ!」
先ほどの戦闘でも使用した、全範囲へ向けた凍結をはなつ。大半の呪霊が反応することすらできず氷漬けになるほどの、速度と範囲を兼ね備えた大技。
だが、漏瑚の速度は現時点で存在する呪霊の中では断トツの最速。並の術師はおろか、一級の者たちでもついていけるのは一握りである。
彼は自身へと過冷却状態の呪力が届く前に、一瞬にしてその場を離れることで、氷の魔の手を逃れることに成功した。
「はあっ、はっ」
拮抗。呪力量、それを用いた破壊の規模、呪力のコントロール技術。そのすべてがかみ合い、ギリギリで拮抗状態が成立している。
(くそ、危なかった……! 殺傷力自体は相手のほうが上、手数も多い。一手誤ればそれが敗北につながりかねない!)
(相性の悪い氷の術式でここまで儂に食らいつくとは……。一級とはここまでやるものなのか。悪手を取れば逆転もありうるな)
「この
「この
「「強い」」
◆
一方、東堂と森の呪霊――花御の戦い。
四方から迫る自然の猛威に対し、手をたたく音が連続する。
東堂の術式は『不義遊戯』。位置の入れ替えという、シンプルさゆえの強さをもつ術式。それは単純な回避にとどまらず、自身の攻撃にもつながっている。
入れ替え先は、花御の真上。渾身の力を込めた回し蹴りが、花御の顔を狙って放たれた。
『っ……』
とっさに腕を挟み直撃を避けた花御だが、横滑りするように体が吹き飛ばされる。
(あれも躱しますか、なかなかに厄介。……ですが)
『焦っていますね?』
「フッ、何のことかな?」
表面上は拮抗を保っているように見える両者だが、その内実には大きな差があった。
東堂は全力で攻撃を続けているが、花御の耐久力の前では決定打にかける。
しかし、花御の攻撃はまともに当たれば確実な有効打になるうえ、不義遊戯の効果にも慣れ始めている。
もし何かの理由で花御の側に手加減があったのであれば、ここまで苦戦することはなかっただろう。
だが、今この場では花御を縛る鎖は一つもない。
結果、純粋な実力差によって東堂は押され始めていた。
「むう……!」
(強い。多彩な攻撃にかなりのタフネス、ダメージこそ通っているが削り切れるかはわからんな……。ブラザーがいればと思わなくもないが……ここで負ければそれこそブラザーに顔向けできん!)
◆
そして、虎杖は。
(人……じゃねえ。見た目は人間っぽいけど、少年院のアイツよりずっと邪悪な気配だ)
「そんな警戒しないでよ、取って食おうってんじゃないんだからさ」
友好的に話しかけてくる。……あくまでも、表面上は。
まるで、悪意そのものと対峙しているかのよう。呪霊が身にまとう死の気配が、虎杖の警戒心を跳ね上げる。
「なら、こんなとこで何してんだよ」
「ちょっと遊んでほしくてさ」
そう言うと、呪霊は口から何かを吐き出す。
苦悶の表情を固めたような形をしたそれは、呪力を流されると同時に人間大の怪物へと姿を変えた。
「行って来い」
呪霊の指示に従い、怪物が虎杖へと襲い掛かる。
(いきなりかよ、けどこの程度の相手なら!)
上から振るわれた右腕を避け、腹部に当たる場所を全力で殴打する。
たった一撃、それで十分だった。
虎杖の拳は、当たり前のようにその命を終わらせる。呪霊を殺す、今までもさんざんやってきたことだ。
だが、今までと違う点が一つ。
「ぃだあ……い」
「は……?」
消失反応が起こらない。呪霊は、完全に祓われたときにチリのようなものをまき散らし消滅する。
だが、今虎杖が殺したモノは死体を残している。そして、最後に残した言葉。
与えられた材料と虎杖の直感が、それがどういうことなのかを見抜く。見ぬいてしまう。
「オマエ……、まさか!」
「あ、気づいた? 俺の術式は無為転変。魂をいじることで人間の肉体をめちゃくちゃにするのさ」
つまり、この異形は形を変えられた元人間。
怖気を覚えるような言葉を世間話のように語りながら、さらに怪物――改造された人間を取り出す呪霊。術式が起動すると同時、それらも呪霊の兵隊へとその存在を書き換えられる。
ほとんどが、呪霊や呪術など全く関係のない世界で生きていた単なる一般人。だから、彼らからこんな言葉が出るのは当たり前のことだろう。
「だぁす……げでぇ」
「代謝がうるさいなぁ。ほら、さっさと死んで来い」
助けを求めるその声を、あざ笑うように一蹴する。その命令を与えられた被害者は、自分の意志とは無関係に虎杖へと襲い掛かった。
「ぐっ……!」
当然だが、改造人間たちの攻撃は届かない。戦略も何もないただの特攻、精々三級の呪霊程度の強さしかないものがいくら向かってきたところで、虎杖悠仁の脅威になれるはずがない。そんなことは呪霊にだってわかっている。
だから、これは単なる嫌がらせに過ぎない。目の前の
これが、
(おい五条……この人たち治せるか)
改造人間たちの攻撃をいなしつつ、体を抑える虎杖は、自身にとって唯一の希望へと話しかける。
釘崎によって受けたダメージを虎杖と変わり切る前に治したほどの回復能力。あれを使えば、目の前の被害者を救えるのではないかと。
(……無理だね、魂を壊すんじゃなくていじられてる。反転術式でどうこうできるようなもんじゃなさそうだし、終わらせてやるのが救いだよ)
反転術式は、あくまで正のエネルギーによって体を修復しているに過ぎない。魂を直接改造され、これを正しい状態とされてしまった彼らを助けることは、史上最強の術師であっても不可能であった。
「……そうか」
返答を聞いた虎杖は、覚悟を決める。彼らの命を、背負う覚悟を。
「……ごめん」
一瞬のことだった。苦しまないよう、長引かせないよう、寸分たがわず急所を狙い、確実にその命を終わらせる。
力を失い、倒れていく改造人間たちの死体。それを見下ろす虎杖の表情からは、能面のように何の感情も読み取れない。
「うーん。やっぱあの程度じゃ足止めにもならないか。……で?どう?人殺しの味ってのはさあ」
プツン、と。頭の中で、何かが切れた音がしていた。生まれて初めて感じる感情。これが、殺意というものなのかと気づく。
その衝動の赴くまま、虎杖は言葉を投げつける。
「ぶっ殺してやる」
「祓うの間違いだろ? 呪術師!」
原作との相違点
・原作ではない戦闘が発生
・呪霊組に手加減がない+タイマンなので東堂は押され気味
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TS要素裏梅しかないんですが必要ですかね…?
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いる
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いらない