現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦   作:ソル  

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先週は情報量多かったですね
死滅回遊アニメ
先行上映総集編
芥見先生の新作短期連載

楽しみが一気に増えて嬉しい


降臨

「っ……!」

 

 避けきれなかった樹木が東堂の腕を掠める。

 

 花御の攻撃が東堂に当たったのは、この戦いが始まって初めてのことだ。

 もちろん決定打にはなっていない。腕の表面を少し削られただけ。

 それでも、攻撃が当たった、という事実が持つ意味は大きい。それは、花御が不義遊戯への対応を掴み始めたということでもあるのだから。

 

 入れ替え先への攻撃。自分をも巻き込む広範囲の攻撃。

 不義遊戯への対抗手段はいくつかあるが、花御であればその全てを実行可能である。

 

 ギリギリのところで直撃を避ける東堂だが、その体には細かい傷が確実に刻まれていく。

 

『どうやら、勝負は見えてきたようですね』

 

 自身の勝利を確信する花御。

 しかし、そこへ割り込む影が一つ。

 

『っ、増援ですか!』

 

 オオカミを思わせる式神がその牙で花御を襲い、隙を見せた彼の顔面の木を、レーザーのような紅い攻撃が砕く。

 

(この式神に穿血……)

 

「加茂と伏黒か!」

 

「無事か東堂!」

 

 その場に現れたのは、御三家の相伝を継いで生まれた二人の術師。

 戦闘能力、という点で見ればまだ一級術師には届かないものの、この状況では頼りになる援軍である。

 

(まずい、あの術師の術式は……!)

 

 不義遊戯による位置の入れ替え。その真骨頂は、自分単体の攻撃や回避ではなく味方の補助にこそある。

 

「好きに動け二人とも、合わせてやる!」

 

「鵺!」

 

 その声に応え、伏黒が召喚したのは鵺。玉犬(渾)と比べれば攻撃力には欠けるものの、飛行能力と雷撃でのスタンを兼ね備えた優秀な式神。

 

 パアン、と、手をたたく音。

 それが響く度に、花御の体へ高専術師の攻撃が通る。

 

(処理しなければならない情報が増えた、入れ替えに対応しきれない……!)

 

 呪力を持った存在が現れるということは、不義遊戯の術式対象となる者がその場に増えることを意味する。

 選択肢の増加によって、せっかく慣れてきた入れ替えの挙動へ対応できなくなる。

 

 もちろん初見の伏黒も不義遊戯の効果を生かし切れているわけではない。

 鵺の操作も同時に行わなくてはいけない関係上、どうしても行動のテンポが後れてしまう。

 

 しかし、それでも確実に花御へと攻撃が届く。

 それはIQ530000(自称)を誇る東堂が、戦場を完璧にコントロールしているが故。

 

(まだ削り切れないか、何かあと一押し……)

 

「これを!」

 

 伏黒が影から取り出したのは、何の変哲もない三節根。だが、それが尋常の呪具でないことは放たれる呪力が雄弁に語っている。

 入れ替えの予兆が鳴り響き、それが東堂の手にわたる。

 

『まず……!』

 

 それは、かつて最悪の呪詛師の用いた特級呪具。特殊な効果は一つも持たない、純粋な力の塊。

 

 特級呪具 『游雲』

 

 東堂の呪力を上乗せしたその一撃は、花御の防御を貫き、鈍い音を響かせた。

 

 

 

 

(挑発は成功かな? 簡単に乗ってくれて助かるよ)

 

『五条悟の器とやってほしいって?』

 

『ああ。今の君じゃ術式を広範囲に飛ばすのは無理だろう? 経験値は稼いでおいたほうがいい』

 

『俺はいいけど、夏油はいいの? 五条悟も泳者ってやつなんだろ、それもかなりお気に入りの。戦うのはあくまで器だし、下手したら殺しちゃうかもよ』

 

『……正直、彼はどう動くかが読めなさすぎてね。すんなりこっちにつくかもしれないし、縛りに抵触しない程度に暴れまわるかもしれない。虎杖悠仁を殺すことによる間接的な殺害であればこっちにも問題はないし、出来るなら殺しちゃっていいよ』

 

(出来るなら、ね)

 

 お前には無理だ、とでも言わんばかり。うすうす気づいてはいたが、縫い目の男は明らかにこちらを侮っている。

 

(さて)

 

 一歩踏み出そうと足を上げた瞬間。

 10M以上の距離を一瞬でつぶし、虎杖の姿が至近距離に迫る。

 

(速い!)

 

 本来、真人に防御などというものは必要ない。彼は無為転変によって、自らの魂の形を自在に変えられる。

 領域を用いて術式そのものを中和するか、魂そのものをとらえる攻撃でなければ、いくら強力な攻撃であろうと傷一つ付けられない。

 

 しかし、相手は五条悟の器。自分以外の魂が体に同居している存在である。

 夏油から、虎杖が魂の輪郭を認識している可能性については聞かされている。自分へ有効打を通せる可能性があるからこそ、器相手に自分を当てたのだから。

 自分の天敵になりうる存在の攻撃を警戒し、それを防御しようとするのは当然のことだった。

 

 防御自体は成功した。

 だが、想定外だったのはその威力。

 

「これ、は!」

 

 拳の勢いに押され、真人の体が地面から離れる。

 派手に吹き飛ばされはしなかったものの、虎杖との距離が先ほどと同じように戻る。

 

「う、があああ!!」

 

 獣のようなうなり声をあげ、追撃へ向かう虎杖。

 

『無為転変』

 

「こんな足止め……!」

 

 ストックの形を変えることにより足止め用の兵隊を生み出す。虎杖の前では数秒持たないが、それだけあれば体制を立て直すには十分である。

 

(腕の痺れが止まらない……。まともに喰らったらまずいな)

 

 夏油の指示で行動を控えていたため、改造人間のストックはそこまで多くない。せいぜいがあと20かそこら。

 現在の主な戦闘手段は、真人自身の形を変えるものになる。

 

(うまく節約しなきゃ負けるかもなこれ。正直油断してたよ)

 

 間違いなく天敵。自分を殺しうる存在が目の前にいる。しかし、真人は高揚感を抑えきれない。

 

(夏油の言ってた意味もわかる。脅威が身近にあるってことは、それを打破しなきゃ死ぬってこと。成長の踏み台にするにはこれ以上ない)

 

(もっと自由に、もっと独創的に、想像力を広げて!)

 

 真人が想像するのは、相手を殺すための形。

 魂の形を変えると同時、両腕が刀のような形状へと変化する。

 

 体をコマのように回転させ、振り回すようにして腕を伸ばす。遠心力によって加速したその刃は、周囲の木を薙ぎ倒しながら虎杖へと迫る。

 

 まともに食らえば両断されるであろう刃に対し、スライディングのように下をくぐり抜けることを選択した虎杖。しかし、真人のインスピレーションは彼の想像の先を行く。

 

「なっ……!」

 

 刃が虎杖を通り過ぎようとした時、その形が棘付きの鉄球のような物へと急激に変化する。

 攻撃を躱されると判断した真人は、伸ばした腕の方へと自分の質量を移動させることにより、その軌道を捻じ曲げたのだ。

 

 攻撃自体には反応できたものの、地面を背にした状態でできることは少ない。

 咄嗟に防御へ移ったが、攻撃を受け止めた腕には深い傷が刻まれる。

 

「ぐうっ……!」

 

 その膂力で真人の腕を弾き飛ばした虎杖だが、口から苦悶の声が漏れる。

 今更痛み程度で止まりはしない。問題は、その腕の機能が損なわれたこと。

 

(直接喰らった左腕がヤバい、全然力入んねえ)

 

 利き腕ではないにせよ、主な攻撃手段の一つが失われたのは確か。攻撃力は半減したといっていい。

 相手は特級。今の一連の攻防の中で、自分よりも格上であることははっきりした。

 状況は最悪。

 それでも。

 

(……関係あるか。俺はあいつを、絶対に祓う)

 

 覚悟を新たに拳を握る。その時だった。

 

(困ってる?)

 

(……何だよ急に)

 

 自身に巣食う最強の声が、頭の中で響く。

 

(元術師として、ぶっちゃけあいつは不快だね。前回悠仁にはなんも教えらんなかったし、最低限レクチャーしてあげるよ。呪力の扱い方について)

 

(……お前、前回あんだけ暴れたの忘れたのか?)

 

 五条の口車に乗った結果、少年院では危うく同級生を殺しかけた。

 信用できるはずがない。

 

(今回はマジでアドバイスだけだからさ。ここで悠仁がやられたら俺も共倒れだし、聞くだけ聞いてよ)

 

 どこまで本気かはわからない。だが、あの呪霊相手では勝ち目が薄いことも事実。

 

(……短くしろよ)

 

(おっけー。一言で言うと、集中が足りてない。映画でさんざん訓練してたじゃん? 大事なのは腹の底から出る感情を、冷やした頭で扱うこと。怒りとか殺意は重要ではあるけど、それで頭をいっぱいにしたら意味がない。怒りに身を任せるんじゃなくて、それを燃料にして体を動かす)

 

 呪力を捻出する上で、負の感情は絶対に欠かせない要素の一つだ。だが、それは戦闘中には雑念にもなる。目の前の相手や自分自身に集中しきれないようでは、強くなることなどできはしない。

 

(あとはイメージかなー。葵も言ってたけど、呪力を流すイメージじゃ悠仁の身体能力に追いつかない)

 

(イメージ……)

 

 集中についてはわかる。先ほどまでの虎杖は、自分でも理解できるほどに精彩に欠けていた。

 だが、イメージ。

 東堂にも指摘され、なんとなく掴みかけてはいたものの、その時はまだ負の感情が足りていなかった。

 

 もし、この怒りを抱えてから少しでも日が空いていれば、それを使いこなしてコントロールすることも可能だったのだろう。

 怒りの感情に振り回されかけている今は、それを十全に扱うことはできない。

 

(……難しいんなら、少年院の時のこと思い出してみなよ。あの時の経験は悠仁の体に蓄積されてるはずだ)

 

 六眼による呪力操作の精度という大きな違いはあるものの、少年院で戦ったのは虎杖悠仁の肉体だった。呪術を使いこなした経験は、彼の体に確実に刻まれている。

 

 回想する。

 追憶する。

 想起する。

 

 あの時の戦闘。

 自身の体に宿った、最強の戦いの記憶を!

 

 怒りは消えない。殺意は満ちたまま。

 だが、それら全てを腹の中で完結させる。

 

(……一応、礼は言っとく)

 

(いいさ、頑張れ)

 

 

 

「……何だ?」

 

 動きは何一つ見せていない。

 ただ、虎杖の纏う雰囲気が変わった。荒々しい獣から、理性を持った人のそれに。

 

 明らかな異変に身構える真人。

 その視界から、虎杖悠仁が消失する。

 

(は?)

 

 その種は、あの時五条悟が使っていた体術。

 単純にイメージするだけでは、あの時の呪力操作を再現することはできない。

 だから、少年院での五条の動き自体を模倣し、単発の『型』として使う。

 

 彼が数十年にわたり磨き上げてきた、相手の意識の隙へと入り込むための動き。

 真人がそれに気づいたときには、彼は拳が届くほどの至近距離に潜り込んでいた。

 

「やっば……!」

 

 とっさに腕を交差し防御に移る。

 

(よし、間に合った……)

 

 ……はずだった。

 

「ぐっ、ご!?」

 

 ガード自体は確かに間に合った。だが、虎杖の拳は防御した腕をブチ抜き、真人の腹を貫く。

 トラックに衝突されたかのような衝撃。背後にあった木をへし折りながら、真人の体が吹き飛ばされる。

 先ほどまでの攻撃よりも、さらに威力が上がっている。呪力のコントロールを覚えたことにより、虎杖の攻撃には呪力による強化が大きく乗るようになっていた。

 

(あの、負傷で……!? 面倒くせえな、全く!)

 

 死地での成長。それは、真人だけに限った話ではない。

 足りていなかったピースが埋まったことで、虎杖の実力は爆発的に成長し始めている。

 ただ、それでもようやく拮抗し始めた程度。もう少し時間があれば違っただろうが、今の虎杖1人ではまだ真人には勝てない。

 

 改造人間を防具のように纏った上で、先ほどのように距離を詰めさせないための形へ変わろうとする真人。

 

(……正直、今の悠仁1人だと厳しいよね。悠仁1人ならだけど)

 

「虎杖!」

 

「釘崎!?」

 

 虎杖の耳に届いたのは、自身の級友の声。

 どうしてここに、などと聞くよりも早く、釘崎がその手に持ったものを目にした虎杖は、相手の動きを無視して駆け出す。

 

(無策で突っ込んで……? いや違う、あの茶髪の術式は!)

 

 その手にあるものに対して、迷うことなく釘を打ち込む釘崎。

 それは、先ほどの攻撃でちぎれ飛んだ、真人の左腕。

 

 共鳴り!

 

「がっ……!?」

  

 芻霊呪法『共鳴り』。それは術式対象との繋がりをたどり、魂そのものに干渉する攻撃。

 増幅された呪力が胸の中心を貫き、真人の動きが停止する。

 

 確実にダメージを与えられた。しかし、本当の問題はそこではない。

 

(硬直が、長い……! 次の攻撃を、かわせない!)

 

「行け!」

 

(ありがとう、釘崎)

 

 自分の中の感情を、そのまま相手へとぶつけるように。

 怒り。

 悲しみ。

 使命感。

 織り交ざった複雑な感情を、余すことなく出し切って。

 

 その呪力は、黒い火花を散らせて弾ける。

 

 黒閃 

 

 再び弾き飛ばされる身体。だが、そのダメージは先ほどとは比べ物にならない。

 一級術師に近い実力を持つ、虎杖悠仁渾身の黒閃。並の呪霊であれば致命傷になるであろう威力。

 

 特級たる真人であろうと、その被害は甚大である。

 

(……一撃だ。もう一撃あれを喰らえば、俺は確実に消滅する!)

 

 この機を逃す術師ではない。すでに2人は、真人への追撃のため動き出している。

 左右から迫る二つの脅威。それぞれが自分に有効な攻撃を放てる。

 相性は最悪。

 窮地。

 これ以上ないほど明確な、死のイメージ。

 

 だが、それこそが活路を開く。

 

 

 

 

(今ならできるよね)

 

 

 

 

 

 

『……想像以上の手傷。どうやら使うしかないようですね』

 

 

 

 

 

「終わりだ、術師」

 

 

 

 三者がそれを発動したのは、奇しくも同じタイミング。

 黒い球体が周りを包み、戦場の景色を一変させる。

 

「『「領域展開」』」

 

自閉円頓裹(じへいえんどんか)!」

 

朶頤光海(だいこうかい)

 

蓋棺鉄囲山(がいかんてっちせん)

 

 三者三様の領域が、その場にいた生徒たちを捉える。

 必中の攻撃によりそれぞれの命が危機にさらされた、その瞬間。

 

「解」

 

 突如、すべての結界が切り裂かれる。

 

「何とか間に合ったか」

 

 現代最強の術師が、戦場を睥睨するように現れた。




ちなみに虎杖の呪力操作がうまくいってない理由は六眼前提の呪力操作の経験しかないからだったりします
宿儺はあくまで普通の術師の延長線上にいるのでそっちの方が経験自体は溜まりやすい……という解釈

 五条「メンゴ!」

投稿再開してからちょっと減ってたお気に入り数が戻ってきてて嬉しい…
皆さん応援ありがとうございます

感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いいたします。

TS要素裏梅しかないんですが必要ですかね…?

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