現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦 作:ソル
虎杖と真人との戦闘に、釘崎が乱入する直前。
裏梅と漏瑚の戦いは、現時点で漏瑚有利に進んでいた。
「はぁ、はっ」
息切れを起こしている裏梅。致命傷こそ負っていないものの、制服のあちこちが焦げ、その肌にも火傷が刻まれている。
両者の実力にそこまで大きな差はない。それでもこの結果が生まれているのには、二つの理由が存在している。
漏瑚が無造作に腕を振ると、地面からいくつもの噴火口が飛び出す。
裏梅へ照準を向けるようにして出現したそれは、瞬きの間もなく火柱を発射する。
全力で地面を蹴る裏梅。
避け切れなかった火柱に身を焼かれそうになるも、周囲の空気を凍らせ、盾にすることで直撃を防いだ。
そのまま流れるようにして溶け残った氷の欠片を蹴り飛ばす。裏梅自身の呪力を纏った氷は、周囲の水分を巻き込んで巨大な氷柱となり漏瑚を襲う。
銃弾のような速度で空を切る、数本の巨大な氷槍。全ては相殺し切れないと判断したのか、漏瑚は迎撃ではなく回避を選ぶ。
「喰らえ!」
パキ、という音が鳴るとともに、漏瑚の右腕が凍りつく。
先ほどの氷柱は、わざと逃げ道を残すようにして放たれていた。
攻撃を躱すルートを限定し、そこに向かってあらかじめ霜凪を放つことで漏瑚の速度へと対応したのだ。
「やるではないか。だが、こんなもの!」
そういうと、漏瑚は凍りついた右腕を自ら切り落とす。
呪霊である漏瑚にとって、四肢を一本奪われた程度では大きなダメージとはならない。自ら凍結した部分を切り離せば一瞬で再生する。
これが一つ目の理由。
人間と呪霊の耐久力の違い。
裏梅は、漏瑚の攻撃が一撃当たればそのまま勝負が決まりかねない。反転術式を使えるとはいえ、特級相手の戦闘中に大規模な負傷を治せるほどの余裕はない。
だが、裏梅の攻撃は違う。呪霊である漏瑚は、急所である頭部さえ避ければいくら当たろうが致命傷にはなりえない。全身をまとめて凍結させられれば別だが、彼ほどの速度がある相手には、策を弄しても手足の一本を捉えるのが限界である。
そして、もう一つの理由は。
「放っておいていいのか?」
今の攻撃によって、周囲の木々が黒煙を上げながら燃え始めている。
放置すれば、周囲一帯が山火事となり裏梅も炎に囲まれてしまうだろう。いくら強かろうが人間は人間。酸素を取り込まなければ数分持たずに死亡する。
「くそっ」
漏瑚への対処と同時に、辺りの木々へと延焼する前に燃え移った箇所を凍結させる。
周りを無視して戦闘を進め、煙に巻かれてしまえば戦闘を継続することは難しくなってしまう。そのため、ただ相手の対応をするだけではなく周囲の環境にも気を遣いながら戦闘を進めなければならない。
地の利が漏瑚の側にあること。
言葉に出してしまえば簡単だが、裏梅からすれば周囲の全てが敵となったに等しい。
最も、漏瑚自身も実力を出し切れてはいない。周りが森である以上、あまり火力を上げ過ぎれば大規模な山火事が起こる。真人であれば関係ないが、呪いの炎を元にした火事であれば、花御の体をも焼いてしまうだろう。
極の番といった範囲の広い攻撃を使用していないのは、仲間を巻き込まないためだった。
(想像以上に粘る……。これ以上時間はかけられん)
宿儺のみを侵入不可能にする帳があるとはいえ、そこまで長い時間持つとはいいきれない。夏油から宿儺の脅威は散々聞かされている。正直怪しいところはあるが、そもそも今回は本気で戦争をするためにきたわけではない、ある程度敵戦力を削ぐことができればそれでいいのだ。
「終わりだ、術師」
その手が形作るのは、大黒天の掌印。
「!」
その仕草によって相手が何をしようとしているかを察した裏梅は、それに対する対抗手段として自らも掌印を結ぶ。
「領域展開」
「領域展開!」
呪術の秘奥、領域展開。
結界により外界と隔てられたその内部では、術者の生得領域が映し出される。
漏瑚の背後に映るのは、熱と炎が支配する世界。
焦熱地獄の如く、全てを焼き尽くす領域。
裏梅がその背に背負うのは、雪と氷が支配する世界。
時間が止まったように、全てが静止した領域。
並の術師なら瞬時に焼き切れるほどの熱量と、並の呪霊なら瞬時に氷像になるほどの冷気がぶつかり合う。
領域同士のせめぎ合いにおいて、場を制するのはより洗練された術式である。裏梅と漏瑚の精度や込められた呪力量はほぼ同等。二人の領域の完成度は、完全に互角といえた。
だから、勝敗を分けたのは術式自体の相性。
「く、そ……!」
火口のような風景が、雪原を融かすように侵食する。
必死に領域を維持する裏梅だが、その呪力も枯れていく。先ほどまでの激戦、そして領域展開により削られた呪力では、漏瑚の領域相手にそこまで長い時間は抵抗できなかった。
(押し……負け……)
「終わりだ、術師」
裏梅の領域が崩れ落ち、必中必殺の攻撃がその体を蹂躙しようとした、その瞬間。
「!?」
領域の中からでもわかるほどの強大な気配が、突如として出現する。
それと同時、漏瑚の結界が切り裂かれるようにして消滅した。
「宿儺様……!」
その場で行われていた激戦のすべてを睥睨するように、最強の術師は舞い降りた。
(特級が3、呪詛師が2……いや1。庵の方に居たのはもう逃げているか)
状況を把握した宿儺は、まるで封印を解くかのようにその身にまとう着物を剝ぎ取る。
その中から現れたのは、人間よりも呪霊に近い異形の躰。
二対の腕。
腹部にある口。
仮面をかぶったようにも見える、変形した顔面。
(あれが……宿儺)
その身にまとう呪い、そして戦闘に特化した身体。
グロテスクでありながら、神々しさをも感じさせるその姿に目を奪われる漏瑚。
その視線に憧憬のような感情が混じっていたことに、本人は気づいていただろうか。
「さて……」
解放された四つ腕のそれぞれが、その場に存在する敵へと向けられる。まるで、照準を定めるかのように。
「解」
空気を裂くように、斬撃が飛ぶ。
着弾は一瞬。
真人は縦に両断され、花御は下半身を切り落とされ、漏瑚は左腕を飛ばされた。
楽巌寺と戦闘中だった呪詛師、組屋鞣造は両足を切断され、苦悶の声をあげている。
ダメージを受けた、と認識するが早いか、呪霊達は全員が撤退を決めた。
体の形を変え、持ち前の速度で集合し、樹木で全員を覆い、その場から離脱しようとする。
「逃がすか」
「「深謡 縛鎖 朧月」」
二つある口による、二重の詠唱。
膨れ上がったその呪力に、その場の全員が目を見開く。
「解!」
轟音。
山を二つに分けるほどの斬撃が、生徒たちを巻き込まない範囲で放たれる。
「相変わらず規格外だな」
東堂の目の前に刻まれた斬撃痕。
底が見えないほどに深く刻まれたそれは、最強の力を雄弁に物語っていた。
「これでは祓えたかどうかもわからん」
「これで終わり……というわけにもいかんだろうな」
宿儺が感じる一抹の不安。それを裏付けるかのように、高専忌庫では一つの事件が起きていた。
「夏油の言っていた通り他愛ないな」
タコのような姿をした呪霊が結界の内側から現れる。
その手に握られているのは、三つの呪物と、一つの呪具。
「受胎九相図、1から3番。そして特級呪具、天逆鉾。確かに頂いた」
今回短めなので、おまけとして本作の裏梅の強さについて解説しておきます
まず結論から言ってしまうと、平安時代の経験がない分原作よりもかなり弱いです。
原作通りの強さだと相性差ありきでも漏瑚には勝てますが、戦闘経験も呪術を使ってた期間も原作に比べるとまあ少ないので今回の結果につながりました。
加えて、呪霊の活発化の影響で漏瑚自身の強さも上がってます。
追記:読み返してて思ったより強くねコイツ?が多発したので以前置いてた強さランキングは消しました
TS要素裏梅しかないんですが必要ですかね…?
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いる
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いらない