現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦   作:ソル  

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姉妹校交流会 個人戦

「おかえり。いやーボロボロだね」

 

 四肢の一部がない漏瑚。

 体の半分が消滅したままの花御。

 外傷がないように見えるが、魂の形を変えて表面だけを取り繕っている状態の真人。

 

 帳が破られた途端に逃げ出してきた重面以外、全員が満身創痍。

 

「初めて見たけどやばいね宿儺。ほんとにあれなんとかできんの?」

 

 真人たちも消耗していたとはいえ、あの一瞬で全員が殺されかけるほどの実力差。

 その上、相手はまだまだ本気を出していない。真っ当な手段ではどう足掻いても太刀打ちできないだろう。

 

「大丈夫大丈夫。そのために色々仕込みをしてるんだからさ」

 

 ほんとかよ、と言う目が一斉に向けられる。

 心外だなあと言いたげに肩をすくめる夏油だが、そう言う態度が信用されない原因になっていることには気づいているのかいないのか。

 

「そういえば、標的の位置がわかってたのはなんでだっけ? 捕まったら情報抜かれるからって聞いてなかったけど」

 

「ああ、あれ?総監部を動かして教師陣が見てた画面を中継してたんだよ。『器』の様子がどんなものか確認したいとでも言っておけばそんなに怪しまれないしね」

 

 当然のように語られる、『総監部を操ることができる』と言う事実。

 総監部は呪術界における権力の頂点。高専はもちろん、御三家といった名家ですら彼らに表立って反抗はできない。

 それを自由に動かせると言うことは、日本呪術界そのものを掌握しているといっても過言ではないのだ。

 

 最も、宿儺というイレギュラーが存在している以上、そこまで派手に動かすこともできない。

 彼はすでに総監部の不審な動きに気づき始めている。もし本格的に呪詛師との繋がりが露呈すれば、自身の立場がどうなろうが関係なく総監部を皆殺しにするだろう。

 

「そんなわけで、こういう裏工作にしか使えないんだよね。なんならこれも結構ギリギリ。バレたら終わりだし、渋谷までは総監部は動かせない」

 

「みんなの経験値稼ぎに戦力増強、封印解除の手段も奪取。事前の仕込みはほとんど終わって、決行までほとんどすることはない。ゆっくり体を休めて、その日に備えようじゃないか」

 

 

 同時刻 東京都立呪術専門学校内

 

 宿儺によって特級呪霊は全員が撤退、呪詛師一名を確保。あの場での結果だけを見れば勝利ともいえるだろう。

 だが、教師陣の顔色は暗い。

 

 その理由は、宿儺たちの後輩でもある補助監督の伊地知からの報告にある。

 

「呪物と呪具の奪取に加え、人的被害が2級が3名、準1級が1名、補助監督5人に忌庫番2名。手ひどくやられたものだな」

 

 教師陣が交流会に気を取られている間に、高専忌庫では呪霊によって犠牲者が生まれていた。

 

 生徒や教師に死者はいなかったものの、帳の内側で行われた戦闘そのものが囮であったのは間違いない。

 戦闘単位では勝ちと言えるが、目的を果たされている以上、戦術の単位では術師側の敗北といっていい。

 

「俺のみを通さない結界を張れる呪詛師、それと徒党を組んでいる特級呪霊。面倒なことになりそうだな」

 

 今回の襲撃はいつものように、個々人による突発的なものではない。先を見据えた組織としての動きと言える。

 

 呪詛師と呪霊による、統制の取れた連携。

 教師たちの頭に浮かぶのは、まだ記憶に新しい、12月24日の災禍。

 

「捕らえた呪詛師は何か吐いたか?」

 

「口が硬いわけではないですが、要領を得ない発言が多いです。ただ件の襲撃に関して、自分は取引の上命令されてやったに過ぎないとのことで」

 

 

『椅子を作りたかったんだよ。あの四本腕を肘掛けにして』

 

『それをあの女名前は知らねえ』

 

『黒髪でポニーテールの女だよ』

 

 

 ◆

 

 数日前 鯉ノ口峡谷 八十八橋

 

 近隣の住民も寝静まった深夜。

 

 「全く、羂索のやつ……。 よりにもよって呪われてるやつを器に選ぶんじゃないわよ」

 

 小さな川をまたぎながら、そうぼやく黒髪の女。

 女の片足が川の向こうへ着いたと同時、その目に映る風景が一変した。

 

 洞穴にも近いようなその場所は、フジツボに近い形をした無数の呪霊に埋め尽くされていた。

 ここは、呪霊の結界内。八十八橋高架の小さな川を渡った対象を呪う呪霊。

 

 もっとも、今のこの呪霊にそこまで大きな力はない。何らかの呪物を取り込んでいるわけでもなく、この場所に大きな恐怖を集めるような何かがあるわけでもないからだ。

 せいぜい、肝試しに現れた人間に不幸をもたらす、その程度の呪霊。

 

 それでも女がここに足を運んだのは、単純な理由。

 

「折角手に入れた体が穢されてるなんて、冗談じゃないわ」

 

 その背後で浮遊するのは、一切のほころびがなく、ゆえに現実感のない完全な真球。

 女が呪霊を一瞥すると同時、無限の圧力が周囲の空間を削り取る。

 

「あーあ、いつになったら会えるのよ、悟」

 

 女がため息をつくと同時に、呪霊の結界が消失した。

 

 

 ◆

 

 裏から指示を出している呪詛師がいる。組屋から得られた情報はそれだけだ。

 

「黒髪ポニーテールってだけじゃ該当者が多すぎるわよ……。絞り込めるかしら?」

 

「現状手がかりはそれだけ、捜索はしてみるべきだろうな。そいつが黒幕とは限らんが、持っている情報はそれなりに多いはずだ」

 

 本人が見つからなかったとしても、自分を捜索する動きがある、という情報が渡ればある程度は活動を制限できる。

 何もせずに放置しておくよりはずっとマシになるだろう。

 

 呪詛師への対処は一応決まった。すると残る問題は交流会についてだが――

 

「言わずもがな中止ですね」

 

 それを口に出したのは夜蛾だが、他の人間も概ね同意見だった。

 生徒たちの中で一番大きい負傷は虎杖の左腕だったが、それは宿儺の反転術式によってすでに治療されている。

 しかし、相手の狙いが読めない現状、このまま交流会を続けることが得策であるとはとても言えないだろう。もしもう一度襲撃が起きれば次は本当に死人が出る可能性もあるのだ。

 

 教師陣の意見が固まりかけたところで、意外にも宿儺が声を上げる。

 

「……生徒の意見を聞いておくべきだ」

 

 

 

「伏黒も特級と戦ってたのか……。大丈夫だった?」

 

「東堂先輩と加茂先輩もいたからな。一人でやってたお前や裏梅のほうがやばかっただろ」

 

 実際、今回の襲撃で目立つ怪我をしたのは虎杖と裏梅の二人。

 同格以上の相手とほぼ一対一の勝負をしていた以上、どうしても負傷は避けられない。

 

「けどこっちも釘崎が助けてくれたしな」

 

「最後に一撃入れただけよ。先生来なかったら領域で死んでたかもしれないし」

 

「そういや、釘崎は何であそこに来たんだ?」

 

 虎杖が東堂を足止めしている間、索敵ができる伏黒とパンダを中心に二組に分かれて呪霊を捜索、というのが事前の作戦だった。一人で行動していたのは、単独で行動する方が実力を発揮しやすい裏梅のみである。

 パンダや狗巻と行動していたはずの釘崎が、一人で乱入した理由が分からなかった。

 

「アンタと別れてから京都校の奴らとかち合って、少し戦ってたんだけどね。帳が降りるわでっかい木が出てくるわでいったん中断したのよ。その向こうから戦闘音が聞こえてきたから何かあるなって」

 

 地上から見ていた虎杖は気づいていなかったが、花御が生み出した大木は戦場を三つに分けるようにして展開されていたらしい。

 分割された戦場のそれぞれで、特級相手の戦闘が繰り広げられていた。

 

「乗り越えるのも時間かかりそうだったから、パンダ先輩に放り投げてもらって私だけ先に突っ込んだってわけ」

 

「結構無茶なことしてんな釘崎……」

 

 しかし、あの一撃がなければやられていたのは虎杖の方だったかもしれない。

 虎杖が真人と戦っていた付近に釘崎がいたのは、不幸中の幸いだったとも言える。

 

「俺も似たようなもんだな。加茂先輩とやってる最中に帳が降りて、鵺であたりを調べてたら東堂先輩が戦ってるとこに出くわした」

 

「裏梅は……」

 

「京都校のメカ丸を倒した後に襲撃を受けた。おかげでこのザマだ」

 

 宿儺の反転術式によって痕も残さず治されているものの、白い肌に火傷が刻まれていたのは生徒たちも確認している。

 隔絶した実力を持つ裏梅がかなりの手傷を負っているのを見て、生徒たちの間に動揺が走ったのはいうまでもない。

 

「裏梅があそこまでやられる相手か……。ほかのやつだったらヤバかったんじゃねーか?」

 

「……そうかもしれんな」

 

 憮然とした表情を崩さない裏梅。表面上では何もなさそうに見えている彼女が、二の腕を握りしめ、歯を食いしばっているのに、つきあいの長い伏黒だけが気づいていた。

 

(負けていた。宿儺様が来られていなければ確実に殺されていた……!)

 

 火傷の痛みなどどうでもいい。

 それ以上に全身を焦がしているのは、敗北による屈辱感。

 

 奇襲を受け動揺していた。

 術式の相性が悪かった。

 周囲の環境も敵に味方していた。

 

 敗北に至った理由はいくらでも思いつく。

 

 だが、そんな言い訳を理由に敗北を認めないほどに、彼女の心は弱くなかった。

 

(あれほどの実力の持ち主が隠れ続けるとは思えない、またぶつかることもあるだろう。……だが、次はない)

 

 そうして戦闘を振り返っていると、宿儺がその場に現れた。

 

「元気そうだな。今回の被害と、交流会についてだが――」

 

 

 ◆

 

「というわけだ。教師陣としては中止の方向で動いているが、お前たちの意見も聞いておきたい」

 

「当然、続けるに決まっているだろう」

 

「続けます……貴様いつの間に!?」

 

 裏梅とほぼ同タイミングで返答したのは、いつの間にか虎杖の横に座っていた東堂。裏梅にすら気づかれずに座っていたのは一体どう言う原理なのか。

 

「理由は?」

 

 宿儺の問いかけに対し、東堂が述べた理由は三つ。

 

 一つ。

 故人を偲ぶのは当人とゆかりのあるものたちの特権であり、部外者である自分たちが立ち入る問題ではないこと。

 

 二つ。

 人死が出たのであればなおさら、敗北を噛み締め、もしくは勝利を味わい強くなっていかなければならないこと。

 

 三つ。

 学生時代の不完全燃焼感は死ぬまで尾を引くものであること。

 

 とても高校生とは思えない発言だったが、確かに理がある発言に乗り気になる生徒たち。

 

「裏梅、お前はなぜ続けるべきだと思う」

 

「は、はい。 私は、その……東堂が二つ目にあげた理由と同じです……」

 

「……一応目上だ、先輩をつけろ」

 

 他の理由も用意はしていたものの、ここまで完璧な回答を先出されてしまうと言い出しづらいものはある。

 何より、最大の理由は鬱憤を晴らすためという個人的なものなのだ。そこそこの人数がいる前で言えることではない。

 

 最も、これは裏梅が幼稚というわけではない。まともな幼少期を送っていなかったこともあるが、 それを差し引いても15歳の高校生なら大抵はこんなものだ。

 18歳にも関わらず老成し過ぎている東堂がおかしいだけである。

 

「夜蛾や楽巌寺に許可を取ってからだが、続行する方向で動く。戦闘を行ったものは体力の回復に勤めるように」

 

 

 翌日。

 

 二日目の種目は、慣習通りに単純な個人戦となった。

 

「やはり運命か……」

 

「……まぁいいか。よろしく東堂」

 

 一回戦は虎杖と東堂。

 組み合わせに関しては完全にランダムなくじ引きだったのだが、やはり何かと縁があるらしい。

 

「その前に兄弟。昨日は指摘しなかったが、何か心境の変化があったな?」

 

「……人を、殺した。ああするしかなかったけど、それでも殺した」

 

「その気持ちを忘れてはならんが、抱え込みすぎるのもまたよくない。俺が受け止めてやる、全力でぶつけてこい!」

 

「……おう。いくぞ、東堂!」

 

「始め!」

 

 ぶつかり合う二人。それを懐かしそうに眺めながら、宿儺は自身の青い春を思い返していた。




原作との相違点
・総監部はこの時点で羂索の手中
・原作の裏梅ポジションがあの人に
・決めたのが五条じゃないので慣習通りに個人戦



お待たせしました、次回から懐玉編です
多分このSS読んでくれてる人たちの大半は気になってたんじゃないでしょうか
あんまストックはないんですが週一更新維持できるよう頑張ります

感想、評価、お気に入り登録、ここすきなんかもよろしくお願いいたします

追記:
組屋のセリフについて誤字報告を何度かもらっていたんですが、原作でもあのように表記されているのでそのまま書いていました
わかりづらいとは思うんですがあのままでいきたいと思います
多分こういうことほとんどないと思うので誤字報告はどんどん送ってもらえるとありがたいです

TS要素裏梅しかないんですが必要ですかね…?

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