現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦   作:ソル  

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五条家

 

 

「五条覚が六眼を使ったか」

 

 五条覚が任務を達成してから数日後。

 総監部の中にいる傀儡から手に入れた報告資料を読みながら笑みを浮かべているのは、額に縫い目のある一人の男だった。

 

「この時代、私の敵になるのは彼だと思っていたんだけどね」

 

 結界術の強化や補助などを行うことで、日本の呪術界の礎となっている天元。

 彼女が人間から逸脱するのを防ぐため、500年に一度星漿体との同化が行われる。

 羂索は、それを妨害することによって天元を呪霊に近い存在へ進化させ、呪霊操術やそれに近い手段を用いて手中に収めようとする。

 そして、その羂索を阻止するため、六眼を持つ人間がその場所、その時間に現れる。

 

 天元。羂索。六眼。この三つは因果で繋がっていたはずだった。

 しかし、千年前にこの因果を破壊する出来事が起こってしまった。

 

 五条悟。

 歴史上2人目の、六眼持ちの無下限呪術使い。

 

 彼がその六眼を呪物と化し、のちの時代への受肉を望んだことにより、この因果は成り立たなくなってしまった。

 

「一時的、一度きりとはいえ、無下限呪術を使いこなす事のできる逸材。おそらく彼は、壊れかけた因果の鎖が無理矢理に用意した代替品だったのだろう」

 

 だが、その代替品ももう使えない。呪いにあふれた異形によって、因果の鎖は完全にこじ開けられた。

 

「今の段階でも直接戦闘だとぎりぎり勝てるかどうか。用意が整ったころにはどれほどの化け物になっていることか」

 

「随分待たせてしまったが、もうすぐだ。始まるよ、悟」

 

「呪術全盛、平安の世が」

 

 ◆

 

 1993年 五条家

 

 憮然とした表情で廊下を進む、異形の少年。

 野生児として山を駆け回っていたのは昔の話、四本の腕を問題なく動かせるよう、体格に比べ少し大きい着物を着せられている。

 

 五条家の最奥にある、ほかの者よりも少し大きい一室。そこへたどり着くと、声もかけずに襖を乱暴に開く。

 

「何の用だ」

 

「敬語使えバカヤロー。拾ってやったの誰だと思ってんだ」

 

 そこで少年を待っていたのは、あの時の戦闘で失った右目に眼帯を付けた、五条家当主。

 不自然に染められていた髪の色は、本来の黒に戻っている。

 

「腹が減っている。早く済ませろ」

 

「お前昼飯食ったの2時間前とかだろ」

 

 山中で過ごしていたこともあり栄養失調気味だった少年。

 五条家に迎えられてから、彼は成人男性の数倍の量を平らげるようになっていた。その食費が馬鹿にならないため、覚が頭を悩ませている。

 

「……まあいいやもう。言葉覚えてから少したったし、そろそろお前を拾った理由を伝えておこうと思ってな」

 

「まず結論から言おうか。俺の目的は、五条家を終わらせることだ」

 

 ◆

 

 五条覚が五条家の現状を理解したとき、まず最初に浮かんだのは「この家はもうダメだ」という諦観だった。

 千年前、五条悟が存在していた。それだけを支えとして何とか成り立っていただけの張りぼて。

 いつか六眼が帰ってくればそれでまた盛り返せると、その希望しかすがるものがないような。

 

 目に見えて弱くなっていく権威、それと反比例して強くなる周囲からの圧力。

 泥船に乗り続けるより、後ろ盾を捨てても自らの力で生きたほうがましだと判断したのだろう。呪術界から離れ、一般社会へとびだしていく者も増えていく。

 

「今まだここにしがみついてんのは、ここ以外でどう生きてきゃいいかわからない連中や、まだ御三家の地位を諦められない、現実が見えてないジジババども。そういう奴らを捨てられずに残ってるやつってとこだ」

 

 一級相当の力を持っているのが自分しかいないのだ。術師の家系としてもそろそろ終わりが見えている。

 

 限界。自分がどうあがいても、引き延ばせるのは精々2~3世代の間だろう。

 ならば、いっそのこと自分ですべてを終わらせる。

 

「地位や名誉はもうどうだっていい。この家の連中がこの先安心して生きていけるだけの環境を整備して、安泰にここを終わらせる」

 

 難しいことだ。減っているとはいえ、70人近くはいる五条家の人間すべての今後を保証するなど。金も時間も何もかも足りない。

 そんな中で見つけた希望が、目の前の少年だった。

 

「――とまあ、そんなわけだ。そのためにもお前には、五条家所属の術師としてひたすら任務をこなし続けてもらう」

 

 彼の力は間違いなく特級クラス。

 与えられる任務も一級以上の物が多くなるだろう。それは、成功した時の報酬の高さに直結している。

 

「頑張れば千万単位の金も稼げるだろう。20年はかからんぐらいで必要な分は貯まると思う」

 

「その後は?」

 

「好きにすりゃいい。……つっても、暴れ出したりはすんなよ頼むから」

 

 今現在、呪術界に特級術師は存在していない。彼が暴走した時止められるものはいないのだ。

 そのうえ、少年を迎え入れる際縛りをつけているため、連帯責任で覚の首も飛びかねない。

 

「で、わざわざお前を呼び出した理由はこっから」

 

「俺の名前は、術式が判明してすぐに改名された。呪術において言霊の力ってのは相当なもんだ。六眼を術式で扱えるようにするために、見た目や名前は元の持ち主になるべく近づけようとしたらしい」

 

 完全に同じになられたら困るから漢字は同じにはしなかったらしいがな。と語る覚。

 五条家の人間からしても、自分たちの興盛と没落、両方の原因となった人間をそのまま使おうとするのはリスクが高いと考えたのだろう。

 

「今からお前にするのもそれと似たようなことだ。名前を借りることで、お前の力を維持、強化する」

 

「『両面宿儺』 これが正式にお前の名前だ」

 

 

 覚との話を終え、自分に与えられた部屋へと戻る宿儺。

 その途中、数人の女中とすれ違う。遠ざかっていく背中から、いつもの陰口がかすかに聞こえた。

 

「当主様とはいえ、あんな化け物にここの敷居を跨がせるなんて」

 

「あれの教育係も心労がたたって入院している」

 

「ああ、恐ろしい」

 

 事実だ。

 宿儺に言葉を教えた教育係は、現在療養のために五条家から離れている。

 機嫌を損ねれば殺される。『縛り』によってそれができないと知ってはいても、そう感じさせる呪力をたぎらせた宿儺と向き合い続ける日々に、術師ですらない一般人は耐えられなかった。

 

 宿儺が呪力を抑えるなりしていればそんな結果にはならなかったかもしれない。

 だが、彼にそのつもりはなかった。彼の心は依然、野生の動物に近いのだ。弱者に気を遣う意味がわからない。強ければ生き、弱ければ死ぬ。それだけだ。

 

 おとなしくこの家にいるのは、あの時覚に敗北したから。生殺与奪の権を握られた以上、従うのは当然である。

 それに、衣食住はあの山よりもずっと整っている。これを提供できる間はここにいてもいいか、と思うくらいには、宿儺も五条家に慣れてきていた。

 

 とはいえ、

 

「……煩わしい」

 

 嫌悪、もしくは畏怖。

 覚以外の人間が向けてくる感情はその二つだけだ。

 その見た目もそうだが、自分たちの中で最強だった当主に、わずか三歳で切り札を切らせたその強さ。

 そのうえ、彼をここで引き取るため、覚は六眼を総監部に提出している。もはや必要のないものだったとはいえ、自分たちの権威の象徴を手放すきっかけになったのだ。宿儺への印象が良くなるはずがない。

 

 表立って何かをすることはないが、ああいった陰口はもはや日常茶飯事だった。

 だが、そんな環境にも慣れてきた。鬱陶しいが、どうでもいい。その程度。

 

 一人歩く少年は、他者とのかかわりを必要としていなかった。

 

 

 それから12年。

 呪霊を祓い、呪詛師を殺し、任務をこなして飯を食う。そんな日々が続いていく。

 数年で特級術師に認定された宿儺を苦戦させるような任務は存在していない。代り映えのしない日々。

 そんな生活が終わりを迎える。

 

 「宿儺。お前は春から、高専に入学してもらう」




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TS要素裏梅しかないんですが必要ですかね…?

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