現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦 作:ソル
自身の乗る飛行機の墜落。宝くじが当たるよりも低い確率だが、その可能性自体は0ではない。
だが、それが今日だと思っていた者は一人もいなかっただろう。
状況を理解している者、目の前の現実に追い付いていない者、乗客の反応は様々だった。
(逃げ場のない空間で襲ってくる可能性自体は想定していた、だがここまで派手に……!)
現在飛行機が飛んでいるのは東京湾上空、高度4km。放り出された乗客は十人ほど。
この高度なら下が水だろうと関係ない。着水の瞬間ミンチになってしまうだろう。
加えて、振動と共に響き続ける連続的な破壊音。刺客による飛行機への攻撃がまだ続いているのだ。
(外からの攻撃……。こっちを誘ってるな)
敵の狙いは空中戦だろう。
だが、それをわかっていても行くしかない。
まだ不時着できる範囲ではあるが、これ以上飛行機への攻撃を許せば、爆発炎上して全員が助からないかもしれない。
「行くぞ!」
「ああ!」
派手に開けられた穴から、二人が飛び出す。
その目に映ったのは、左手に長い鎖のような呪具、右手に刀のような呪具を構えた筋肉質な男。
乗客の中にはいなかったその男を敵と認識した宿儺は、自身の役割を設定した。
「敵は俺がやる、救出と足場!」
時間が足りない。一言で目標を伝える。
「っ、任せた! 二人とも、掴まって!」
「理子様、手を!」
「えっ、ちょっ、うわああああ!」
夏油の声掛けに対し、天内の手を引いて抱き抱える黒井。
それを守るようにして複数の呪霊が出現し、二人を抱えながら空中へと飛び出した。
呪具を手にした男を無視し、乗客の救出へ向かう夏油。宿儺への援護として、空中を浮遊できる呪霊をあちこちへ残していった。
宿儺はそのうちの一体に着地し、目の前の敵へ向き直る。
「貴様……とんでもないことをしでかしてくれたな、ただではすまんぞ」
「はっ、今更だろ。 こちとら星漿体を殺そうってんだぜ?」
軽口への返答として放たれた斬撃は、甚爾が持つ呪具によってはじかれる。
(こいつ、俺の斬撃を見切っているな?)
「怖え怖え。少しぐらい話そうぜ? 見りゃわかるだろうが、俺は天与呪縛のフィジカルギフテッド。呪力が完全にない代わりに身体能力が馬鹿みたいに高え。非術師に見つからず貨物室へ忍び込むなんざわけねえってこった」
(情報の開示……)
天与呪縛とて呪いの一種であることには変わりない。
自らの情報を明かすことは、術式の開示と同様に自身の能力の底上げへとつながる。
それを止めなかったのは、夏油たちが離脱する時間を稼ぐため。
得体の知れない敵と、乗客や護衛対象を気にしながら戦うのはリスクが高過ぎる。
「しっかし貨物室なんぞに潜むもんじゃねえな、寒いのなんのって……あんまり時間もねえな。さっさと終わらせるか」
次の瞬間、甚爾が空を蹴り飛ばすようにして接近する。その速度は、地上での自分にも匹敵するほど。
「な……!?」
衝突。
甚爾が持つ刀のような呪具と宿儺の右腕がぶつかり合い、派手な金属音を響かせる。
(当たり前のように空中を! フィジカルギフテッドというのはブラフ? いや、そういう効果を持った呪具か……?)
(細かい斬撃を纏い続けて素手で呪具と拮抗してやがる……。 やっぱ術式は斬撃で確定か?)
互いの膂力は互角。
だがそれは、あくまで右腕一本ずつの力が拮抗しているに過ぎない。宿儺の肉体的なアドバンテージは、四つ腕による手数の多さにある。
「競り合いじゃ分が悪そうだな」
もう一本の右腕が呪具を押し返すのと同時、二本の左腕が指をさすような形で甚爾へ向けられる。
至近距離からの斬撃。まともに受ければ致命傷になりかねないそれに対し、甚爾はさらに前へと踏み込む。
いわゆる震脚。天与の暴君の脚力で行われたそれは、周囲へ衝撃をまき散らしながら、宿儺が足場にしていた呪霊を下へと叩き落していた。
「チッ!」
「残念」
放たれる「解」。しかし、宿儺の体勢が崩れたことで狙いがぶれたそれは、敵を捉えることなく空中へと消えていく。
呪霊から離され宙に浮いた状態の宿儺。甚爾はその隙を見逃さず宿儺の足を掴み、飛行機と反対の方向へ投げ飛ばした。
「解!」
「遅え!」
反撃として放たれた斬撃を躱しながら、宿儺の方向へと鎖を振り回す。
甚爾の狙いは宿儺ではない。その鎖が貫いたのは、夏油が残していった呪霊。
(こいつ、足場を……!)
空中で身動きが取れない宿儺。その周囲360度を自由自在に駆け回りながら、鎖による攻撃が行われる。
遠心力で加速されたそれは、音を置き去りにするほどの速度を持つ。
身をひるがえし直撃を避ける宿儺だが、その体には小さな傷が刻まれる。
反転術式によって瞬時に直せる程度の傷だが、不利な状況であることに変わりはない。
敵の速度自体はそこまで脅威ではない。視線を切るための障害物は精々飛行機の外壁程度、宿儺の動体視力であれば十分に見切れる。
問題は、空中を自在に駆けることによる無軌道な動き。
「解」が狙った場所へ着弾するまでには、数瞬とはいえタイムラグが存在する。相手に斬撃を見切られている以上、動きの導線を読むことができなければ直撃させることは難しい。
一見すれば甚爾が圧倒的に優勢。しかし、両者が気づいている。この状況はあくまで一時的なものに過ぎないと。
甚爾がアドバンテージを握れているのは、あくまで空中戦であるためだ。
先ほどの攻防ではっきりしたが、肉体的な性能はほぼ互角。地上での戦いになれば、斬撃や反転術式による回復ができる宿儺の方が圧倒的に有利だ。
(着水するまでせいぜい後一分ってとこか。この程度の距離から落ちたとこで死ぬようなタマじゃねえだろ? ここでケリつけとかねえとまくられるだろうな)
この状況でしか勝ち目がないために、甚爾は決着を焦る。
一方、ここで決着をつけておきたいのは宿儺も同じだった。
(敵の狙いはあくまで天内。ここで俺を殺せなければ、次は確実に正面戦闘を避けて来る。呪力で感知できないこの速度域の相手だ、いくら警戒しようと万が一がありうる)
護衛。
暗殺。
目的は真逆、思考も違う二人だが、その結論は一致する。
((こいつはここで殺す))
今まで以上の勢いで振るわれる鎖。急所に当たれば宿儺であろうと致命傷になりかねない。
だが、彼はその攻撃をわざと受けた。
右肩の肉が裂け、鮮血が弾ける。だが、彼は生きている。呪具が当たったのは右肩。主要な臓器がない以上致命傷にはなりえない。
反転術式による再生と同時に、鎖が肉に噛みついたまま固定される。
「しまっ……!」
宿儺の狙いに気づいたのか、鎖を手放し距離をとろうとするも間に合わない。
自分の肩に固定されたままの鎖を思いきり引っ張る。それによって生まれた推進力で、敵のもとへと一気に移動する。
(捕らえた)
「領域展開」
伏魔御廚子
閻魔天の掌印とともに、地獄の厨房の扉が開く。
全速力で宿儺から離れようとする甚爾だが、彼は確実に黒い結界に飲み込まれている。
宿儺の領域。その効果は、相手を粉微塵にするまで続く必中の斬撃。
嵐のごとく押し寄せる斬撃によって、結界内のすべてが消えていく。
その領域が消えた後には、周囲の生命の気配は掻き消えていた。
(終わったか。向こうに二の矢が来るかもしれないが、あれほどの使い手はそうはいない。夏油であれば問題ないだ……)
トスッ、と。どこか軽い音がした。
宿儺の思考を中断したのは、突如胸から生えた刃。
それは術師の常套手段であり、宿儺であれば本来防げたであろう凡策。
勝利を確信した者への、急襲。
原作の台詞やナレーションを別のシチュエーションで使う奴が好きです
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TS要素裏梅しかないんですが必要ですかね…?
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