現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦   作:ソル  

22 / 39
死滅回游先行上映、凄かった



懐玉ー肆ー

 自身の乗る飛行機の墜落。宝くじが当たるよりも低い確率だが、その可能性自体は0ではない。

 

 だが、それが今日だと思っていた者は一人もいなかっただろう。

 状況を理解している者、目の前の現実に追い付いていない者、乗客の反応は様々だった。

 

(逃げ場のない空間で襲ってくる可能性自体は想定していた、だがここまで派手に……!)

 

 現在飛行機が飛んでいるのは東京湾上空、高度4km。放り出された乗客は十人ほど。

 この高度なら下が水だろうと関係ない。着水の瞬間ミンチになってしまうだろう。

 

 加えて、振動と共に響き続ける連続的な破壊音。刺客による飛行機への攻撃がまだ続いているのだ。

 

(外からの攻撃……。こっちを誘ってるな)

 

 敵の狙いは空中戦だろう。

 だが、それをわかっていても行くしかない。

 まだ不時着できる範囲ではあるが、これ以上飛行機への攻撃を許せば、爆発炎上して全員が助からないかもしれない。

 

「行くぞ!」

 

「ああ!」

 

 派手に開けられた穴から、二人が飛び出す。

 

 その目に映ったのは、左手に長い鎖のような呪具、右手に刀のような呪具を構えた筋肉質な男。

 乗客の中にはいなかったその男を敵と認識した宿儺は、自身の役割を設定した。

 

「敵は俺がやる、救出と足場!」

 

 時間が足りない。一言で目標を伝える。

 

「っ、任せた! 二人とも、掴まって!」

 

「理子様、手を!」

 

「えっ、ちょっ、うわああああ!」

 

 夏油の声掛けに対し、天内の手を引いて抱き抱える黒井。

 それを守るようにして複数の呪霊が出現し、二人を抱えながら空中へと飛び出した。

 

 呪具を手にした男を無視し、乗客の救出へ向かう夏油。宿儺への援護として、空中を浮遊できる呪霊をあちこちへ残していった。

 宿儺はそのうちの一体に着地し、目の前の敵へ向き直る。

 

 「貴様……とんでもないことをしでかしてくれたな、ただではすまんぞ」

 

 「はっ、今更だろ。 こちとら星漿体を殺そうってんだぜ?」

 

 軽口への返答として放たれた斬撃は、甚爾が持つ呪具によってはじかれる。

 

(こいつ、俺の斬撃を見切っているな?)

 

 「怖え怖え。少しぐらい話そうぜ? 見りゃわかるだろうが、俺は天与呪縛のフィジカルギフテッド。呪力が完全にない代わりに身体能力が馬鹿みたいに高え。非術師に見つからず貨物室へ忍び込むなんざわけねえってこった」

 

 (情報の開示……)

 

 天与呪縛とて呪いの一種であることには変わりない。

 自らの情報を明かすことは、術式の開示と同様に自身の能力の底上げへとつながる。

 

 それを止めなかったのは、夏油たちが離脱する時間を稼ぐため。

 得体の知れない敵と、乗客や護衛対象を気にしながら戦うのはリスクが高過ぎる。

 

 「しっかし貨物室なんぞに潜むもんじゃねえな、寒いのなんのって……あんまり時間もねえな。さっさと終わらせるか」

 

 次の瞬間、甚爾が空を蹴り飛ばすようにして接近する。その速度は、地上での自分にも匹敵するほど。

 

「な……!?」

 

 衝突。

 甚爾が持つ刀のような呪具と宿儺の右腕がぶつかり合い、派手な金属音を響かせる。

 

 (当たり前のように空中を! フィジカルギフテッドというのはブラフ? いや、そういう効果を持った呪具か……?)

 

(細かい斬撃を纏い続けて素手で呪具と拮抗してやがる……。 やっぱ術式は斬撃で確定か?)

 

 互いの膂力は互角。

 だがそれは、あくまで右腕一本ずつの力が拮抗しているに過ぎない。宿儺の肉体的なアドバンテージは、四つ腕による手数の多さにある。

 

 「競り合いじゃ分が悪そうだな」

 

 もう一本の右腕が呪具を押し返すのと同時、二本の左腕が指をさすような形で甚爾へ向けられる。

 至近距離からの斬撃。まともに受ければ致命傷になりかねないそれに対し、甚爾はさらに前へと踏み込む。

 いわゆる震脚。天与の暴君の脚力で行われたそれは、周囲へ衝撃をまき散らしながら、宿儺が足場にしていた呪霊を下へと叩き落していた。

 

 「チッ!」

 

 「残念」

 

 放たれる「解」。しかし、宿儺の体勢が崩れたことで狙いがぶれたそれは、敵を捉えることなく空中へと消えていく。

 

 呪霊から離され宙に浮いた状態の宿儺。甚爾はその隙を見逃さず宿儺の足を掴み、飛行機と反対の方向へ投げ飛ばした。

 

 「解!」

 

 「遅え!」

 

 反撃として放たれた斬撃を躱しながら、宿儺の方向へと鎖を振り回す。

 甚爾の狙いは宿儺ではない。その鎖が貫いたのは、夏油が残していった呪霊。

 

 (こいつ、足場を……!)

 

 空中で身動きが取れない宿儺。その周囲360度を自由自在に駆け回りながら、鎖による攻撃が行われる。

 遠心力で加速されたそれは、音を置き去りにするほどの速度を持つ。

 

 身をひるがえし直撃を避ける宿儺だが、その体には小さな傷が刻まれる。

 反転術式によって瞬時に直せる程度の傷だが、不利な状況であることに変わりはない。

 

 敵の速度自体はそこまで脅威ではない。視線を切るための障害物は精々飛行機の外壁程度、宿儺の動体視力であれば十分に見切れる。

 

 問題は、空中を自在に駆けることによる無軌道な動き。

 「解」が狙った場所へ着弾するまでには、数瞬とはいえタイムラグが存在する。相手に斬撃を見切られている以上、動きの導線を読むことができなければ直撃させることは難しい。

 

 一見すれば甚爾が圧倒的に優勢。しかし、両者が気づいている。この状況はあくまで一時的なものに過ぎないと。

 甚爾がアドバンテージを握れているのは、あくまで空中戦であるためだ。

 先ほどの攻防ではっきりしたが、肉体的な性能はほぼ互角。地上での戦いになれば、斬撃や反転術式による回復ができる宿儺の方が圧倒的に有利だ。

 

(着水するまでせいぜい後一分ってとこか。この程度の距離から落ちたとこで死ぬようなタマじゃねえだろ? ここでケリつけとかねえとまくられるだろうな)

 

 この状況でしか勝ち目がないために、甚爾は決着を焦る。

 

 一方、ここで決着をつけておきたいのは宿儺も同じだった。

 

 (敵の狙いはあくまで天内。ここで俺を殺せなければ、次は確実に正面戦闘を避けて来る。呪力で感知できないこの速度域の相手だ、いくら警戒しようと万が一がありうる)

 

 護衛。

 暗殺。

 目的は真逆、思考も違う二人だが、その結論は一致する。

 

 ((こいつはここで殺す))

 

 今まで以上の勢いで振るわれる鎖。急所に当たれば宿儺であろうと致命傷になりかねない。

 

 だが、彼はその攻撃をわざと受けた。

 右肩の肉が裂け、鮮血が弾ける。だが、彼は生きている。呪具が当たったのは右肩。主要な臓器がない以上致命傷にはなりえない。

 反転術式による再生と同時に、鎖が肉に噛みついたまま固定される。

 

 「しまっ……!」

 

 宿儺の狙いに気づいたのか、鎖を手放し距離をとろうとするも間に合わない。

 自分の肩に固定されたままの鎖を思いきり引っ張る。それによって生まれた推進力で、敵のもとへと一気に移動する。

 

 (捕らえた)

 

「領域展開」

 

 伏魔御廚子

 

 閻魔天の掌印とともに、地獄の厨房の扉が開く。

 

 全速力で宿儺から離れようとする甚爾だが、彼は確実に黒い結界に飲み込まれている。

 

 宿儺の領域。その効果は、相手を粉微塵にするまで続く必中の斬撃。

 嵐のごとく押し寄せる斬撃によって、結界内のすべてが消えていく。

 

 その領域が消えた後には、周囲の生命の気配は掻き消えていた。

 

(終わったか。向こうに二の矢が来るかもしれないが、あれほどの使い手はそうはいない。夏油であれば問題ないだ……)

 

 トスッ、と。どこか軽い音がした。

 宿儺の思考を中断したのは、突如胸から生えた刃。

 

 それは術師の常套手段であり、宿儺であれば本来防げたであろう凡策。

 勝利を確信した者への、急襲。

 




原作の台詞やナレーションを別のシチュエーションで使う奴が好きです

感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いいたします

TS要素裏梅しかないんですが必要ですかね…?

  • いる
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。