現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦   作:ソル  

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玉折ー参ー

「今日も派手にやってら。涼しくていいねー」

 

 一時限目開始前の時間。全開になっている窓からは、夏とは思えないほど涼しい風が入ってくる。

 家入が窓の外を見ると、氷塊が現れては切り裂かれ、蒸発するという光景が繰り広げられていた。

 

(初日よりは氷の範囲は狭くなってるっぽい? 宿儺のやつ、案外ちゃんと教えてるんだなー)

 

 グラウンドで行われているのは、宿儺による裏梅の指導。

 呪力を単純に抑えるより、思い切り解放させてそのコントロールの感覚を学ぶ、という方法を用いているらしい。

 

 高専で呪術に対しての向き合い方を学ぶことを決めた裏梅だが、そもそも彼女の攻撃範囲に対処できるような人材自体そうはいない。一級術師であればどうにでもできるだろうが、周囲の被害を抑えつつ、となると裏梅本人を気絶させるような手しか使えなくなるだろうし、そもそも一級術師を一人の指導のために拘束しておけるほど、今の呪術界は暇ではない。

 

 そんな事情もあり、裏梅を拾ってきた当人の宿儺が面倒を見ることになった。

 宿儺に対して裏梅の凍結はほぼ効かず、周囲が凍らされてもそれを溶かすことができ、万が一人間が凍らされた場合でも、宿儺が近くに居れば反転術式によって治療が可能。さらに、高専の生徒として動いている都合上、授業の時間をある程度裏梅に割くことができる。裏梅の指導要員としてこれ以上向いている人材もいない。

 

「にしても、いい顔してんね」

 

 今まで使ってこなかった呪術を全力で使い、必死な表情をしている裏梅と対照的に、宿儺は口の端に笑みを浮かべているのがわかる。

 宿儺にとってはあまりメリットのない話ではあるが、本人なりにこの時間を楽しんでいるのかもしれない。

 

 新たな仲間も加わり、いつも通りのような日々が続いているようにも見える高専。だが、そこには一つ足りないものがある。

 

「何してんだろ、あいつ」

 

 夏油の帰りが遅い。

 東京から離れた田舎での任務とはいえ、四日間も何の連絡もないのは、彼が高専に入学してから初めてのことだ。彼の性格を考えれば、メールの一つでも送りそうなものだが。

 そんなことを考えていると、家入の携帯に誰かからの着信が入る。

 

「お、噂をすれば……」

 

 差出人は夏油傑。連絡が遅かったことに対して文句の一つでも送ってやるか、と思ったその時。メールの開いた家入の顔が固まる。

 そこに並んでいたのは、彼女が知る夏油傑からは最も遠い言葉の羅列。呪術界からの離反を告げる文面が、しかと刻まれていた。

 

 ◆

 

「傑が集落の人間を皆殺しにして行方をくらませた」

 

「…………つまらん冗談の類ではなかったわけか」

 

「お前たち二人へ連絡が来ていたそうだな」

 

「ああ。非術師を皆殺しにして術師だけの世界を作るらしい。クハッ、似合わん理由だ。何があったかは知らんが、変わるものだな」

 

 手元の携帯を弄ぶ宿儺。液晶画面には、家入に来ていたものと同じ文面のメールが映っていた。

 『弱者生存』を掲げ、非術師を守るために己を殺して戦ってきた男の、あまりに極端な変貌。だが宿儺の態度は、それに対し嘆くでも、怒るでもなく、むしろその落差を面白がっているようにすら見えた。

 

「……随分と冷静だな」

 

 仮にも二年近い付き合いの級友の離反。もっと動揺してもおかしくないはずなのに、宿儺の顔色には一切の変化がない。

 異様なまでの冷徹さに、相対している夜蛾の頭も冷えてくる。

 

「喚き散らして何か変わるわけでもないだろう。……それに」

 

「あいつがその道を選択したのなら、何を言おうが曲げることはない」

 

 他者の言葉で止まるようなら、そもそもそんな道を選びはしない。

 夏油傑がそういう人間であると、宿儺は知っている。

 

「いずれ必ずぶつかるんだ、言いたいことがあるならそこで言えばいい」

 

 そして、その時にためらうことはないだろう。

 殺すか、殺されるかは知らないが、互いにそれを躊躇はしない。そう、宿儺は結論付けていた。

 

 

 それから数週間後。

 五条家当主、五条覚は両面宿儺に呼び出され、彼の部屋へと来ていた。

 

「何だよ突然呼び出して」

 

「お前の目標金額もそろそろだろう? 高専卒業も近いので、俺の進路を伝えておこうと思ってな」

 

「……そうか、で、どうすんだ?」

 

 高専卒業後の進路は人によるが、基本的には二つに大別される。そのまま術師を本業とするか、窓として術師の補助をするかだ。宿儺が他人のサポートに回ることなどないので、覚は前者だろうと勝手に思っていた。

 しかし、宿儺の口から飛び出したのは、予想外の選択肢。

 

「高専で教師をやる」

 

「教師? なんでまた」

 

 つきあいの長い覚からしてみれば、宿儺が教師をするというイメージなど全く湧かない。

 能力ではなく、性格の問題だ。与えられた任務自体はまじめにこなしているものの、基本的には唯我独尊、気ままに動く宿儺が、誰かに対して教鞭をとっているところなどとても想像できない。

 

「冥冥のようにフリーの術師として動くことも考えたが、俺を完全に自由にさせるほど上層部も楽観的ではないだろう。ある程度立場を固めておけば余計な干渉も少なくなると考えた」

 

「そんだけなら別に教師じゃなくてもいいんじゃねえの? それこそ今まで通り特級として命令こなしてたほうが干渉されねえと思うが」

 

 もっともらしい理屈だが、それだけでは理由として弱い。

 宿儺は少し沈黙した後、つまらなそうに話し始める。

 

「……最近いろいろと思うところがあってな。それで気づいた。人間と呪い、どちらに転ぶかわからん連中は思ったより多いのではないかと」

 

「……」

 

 誰のことを話しているのかは覚にもわかる。

 

 夏油傑の一件は、呪術界にかなりの衝撃を与えた。

 単独での国家転覆を可能とする特級術師の一人が、明確に呪詛師として離反したのだ。彼の捜索も続いているが、未だに足取り一つつかめない。

 

 覚は彼と直接会ったことはないが、流れてくる評判から善人であることは間違いないと思っていた。

 それが非術師の皆殺しを目的として動き始めたのだから、知らせを聞いたときはかなり驚いた。

 

 クラスメイトであった宿儺なら、その驚愕はさらに強かったはずだ。

 自身の進路を決める理由としては、十分すぎるほどに。

 

「認めたくはないが、俺が今呪いとしてではなく、人間として生きているのはあの時お前に拾われたからだ。あれがなければ、今頃俺は付近の人間を皆殺しにでもして、討伐対象として追われていただろうな」

 

「ま、そうだろうな。あんま考えたくねえけど」

 

 野生の動物に近かったあの時の宿儺なら、山では腹を満たせなくなれば人里に下りていた可能性が高い。

 そうなれば、犠牲者は数百単位では済まなかったかもしれない。

 

 呪術についてろくに学んでいないあの段階でも、無下限呪術を使わなければ勝てなかったのだ。

 覚以外の一級術師が派遣されていれば、技術を盗まれるだけ盗まれて殺されていたかもしれない。そうなれば、いずれは誰にも宿儺を止められなくなっていただろう。

 

 宿儺が術師として活動できているのは、色々な偶然が重なった末の奇跡のようなものだった。

 

「力を持て余し、呪いになりかねん連中に変わる機会を用意する。俺がやるべきことはそれだと判断した」

 

「……変わったなあお前。数年前まで野生児全開だった癖に」

 

「ハッ、知らんのか。人間は、きっかけ一つでどれだけでも変わるものだぞ」

 

 それがいい方向か、悪い方向かはわからないが。

 言外に、そんな言葉が読み取れたような気がした。

 

「で、本題は? わざわざそれ言うためだけに呼び出さねえだろお前は」

 

「あの時の襲撃者についての情報が欲しい。特に血縁関係を。五条家の伝手で何とかしろ」

 

「襲撃者……護衛任務の時の術師殺しか。なんだって今更?」

 

「何、スカウトというやつだ」

TS要素裏梅しかないんですが必要ですかね…?

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