現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦 作:ソル
「でかい家だな。五条家とはかなり違う」
「一言多いんだよこの野郎……。というかうちも他と比べりゃそこそこ大きいからな?」
禪院家。
耳にしたことこそ多いが、宿儺が実際にその本家へと赴いたのは初めてだった。
「ここが、親父の……」
つぶやいたのは、交渉の中心である伏黒。
いままでは単なる一般人だった人間からすれば、緊張するのも無理はない。
「……」
そして、禪院家に圧倒されているのはもう一人。
裏梅については、この話し合いには全く関係がないが、宿儺のそばを離れないように指示が出ていた。
呪力のコントロールについてはかなり慣れてきているが、まだ暴走の危険自体は存在しているからだ。
代表である覚が、玄関の前に立っていた女中へと声をかける。
「そちらの当主と話し合いに来たんだが」
「五条覚様ですね。お待ちしておりました、こちらへどうぞ」
◆
女中に案内されたのは、子供を含めた四人で入るには少し広い客間だった。
「当主様と直接交渉される方はこちらの部屋へお進みください。それ以外の方はここでお待ちを」
「じゃあ二人は少しここで待っててくれ。どっかの段階で伏黒君は呼ぶと思うんでそのつもりで」
「そこまで遠い部屋でもないだろう、何かあったら呼べ」
「……マジの緊急時以外はやめてほしい、いや本当に」
話し合いの途中で横やりを入れられたらまずいことになりかねない。
伏黒に関しての交渉は、あくまで甚爾と禪院家の間に結ばれたものであり、そこに五条家がかかわる余地は全くない。
本来こんな話し合い、向こうは無視してもいいところを、かなり無茶をしてようやく交渉まで持ち込んでいるのだ。
直毘人の機嫌を損ねたらそれだけでアウトである。
「……」
「……」
客間に残された二人の間に、気まずい沈黙が流れる。
「えっと、伏黒恵。よろしく」
「……氷見裏梅だ。よろしく」
この二人は、先ほどあったばかり。どちらも元々交友関係が広くはないため、何を話せばいいのかわかっていなかった。
共通の話題といえば、いま部屋を出て行った男のことくらいだろう。
「氷見は、宿儺さんとどういう関係なんだ?」
「私の命も、家族の命も救ってくれた。生きるすべを教えてくれた、恩人だ」
即答だった。
その瞳には、宿儺に対する絶対的な信頼が宿っている。伏黒は毒気を抜かれたように息をついた。
「伏黒の方は? 私は今回の件について詳しくは知らないんだ」
「ああ、俺は――」
「お待ちください、その部屋には客人が」
「だから来とんのや、黙っとれカス」
部屋の外からした声に、会話が中断される。
乱暴に扉を開け、入ってきたのは毛先が黒い金髪の青年。
見下すような目つきに、侮蔑するような言葉遣い。
その様子を見ただけで、伏黒は自分の嫌いなタイプだとわかった。
「君かぁ甚爾くんの息子さんって、面影あるわあ」
「……あなたは?」
「禪院直哉。甚爾くんの従兄弟やね。君にとっては従叔父になるんやろか」
伏黒にとっては、初めて目にする自身の親族。
親しみは全く感じず、むしろ嫌悪感のほうが強い。
(従叔父……アイツは前当主の息子って話だったな。となるとこの人は、禪院家での立場はかなり上ってことになるのか)
宿儺の禪院家に対する評価を思い出す。それに納得がいく日が来るのは、複雑な気持ちだった。
暴言を吐かれても何の反応もしない女中に、禪院家での女性の扱いがどういうものなのかはよく理解した。
こんなところで津美紀が幸せになれるはずがないことも。
「そういや宿儺とかいうのは何処いったん? 一緒にいる聞いたんやけど」
「俺の件でそっちの当主と話しに行ってます」
「……なんや随分親しげやね。自分の父親殺した奴やぞ、肉親の情とかないんか?」
「何年も会ってなかったので、どうだっていいです」
「あっそ」
期待した反応が得られなかったのか、直哉はつまらなさそうに視線を外す。
「で、そっちのは誰や。年上に対して挨拶もなしか?」
「両面宿儺様が指導をしているという子供です」
「ほーん。教育がなってへんね、やっぱ山育ちの化け物には子育てとか難しいんやろか」
「っ貴様、撤回しろ!」
「お? 何や血の気多いなあ」
宿儺へ暴言を吐いた直哉に対し、敵意を向ける裏梅。
対し直哉は、嗜虐心と侮蔑が入り混じったような表情を浮かべた。
「おい、訓練場は空いとったな」
「はい。当主様の交渉中に大きな音が立ってはいけないと」
「空いてるんならなんでもええわ。おいガキ、ついてこい。礼儀ってもんを叩き込んだる」
「……望むところだ」
「おい、無茶だろ! やめとけ!」
伏黒の制止を聞かず、二人は客間から出ていった。
(クソッ、流石に殺されやしないだろうが、加減するようなタイプにも見えなかったぞ……!)
自分だけでは止められない。
これ以上の迷惑をかけてしまうことに、申し訳なさを感じながら、伏黒は宿儺のもとへと向かった。
◆
「……あ゛?」
傷一つついていない直哉と対照的に、消耗しきっている裏梅。
だが、彼女はまだ膝をついていない。
経過した時間は3分程度。
そう、3分以上も戦闘が成立した。してしまった。
「こ、のガキィ……」
もちろん、単純な実力だけでしのがれたわけではない。いくつかの要因はある。
邪魔が入る前に片付けようと、室内の訓練場を戦場として選んだことで、直哉自身の速度を生かしきれなかったこと。
氷によって戦場の地形を変えられる裏梅の術式は、決められた動きをトレースする投射呪法と相性が良かったこと。
そして、何よりも大きかったのは、直哉が裏梅を敵であると認識していなかったこと。
直哉の目的はあくまで躾。
真希に対し行っているように、軽く嬲って上下関係を教えつける。そもそも戦闘が成立するとは微塵も考えていなかったのだ。
だが、裏梅の成長速度は、並の術師を凌駕する。
現代最強の術師と、数ヶ月に渡って戦い続けてきた。
裏梅は、戦闘の経験だけなら一級術師に並ぶほどのものを獲得している。
ただし、両者の実力に開きがあるのは間違いない。直哉が本気で殺しに行くつもりであれば、5回以上は殺せているだろう。
だが、直哉からすればそんなことは関係がない。
重要なのは、こんな子供、それも女を、三分以上も倒しきれなかったという事実。
「……殺す」
仮にも客人。やり過ぎれば自分の立場がまずい。
そんなまともな思考は一瞬で頭から消え去った。
禪院直哉という人間にとって、強さとは自分を構成する核にも等しい。
傷つけられたプライドが、目の前の相手の生存を許さない。
この場所で出せる全速。
螺旋を描くような軌道で接近する直哉は、確実に相手を殺せるレベルの呪力を拳に込めた。
裏梅もそれに対抗し氷によって壁を作るものの、薄紙のように破られる。
互いの間にある実力差は、相性だけで埋められる程に浅くはない。
自身の眼前に迫る拳に、裏梅が死を覚悟したその瞬間。
見慣れた背中が視界に移るとともに、直哉の動きが停止する。
「全く……、何をしている」
「宿儺様……!」
直哉の拳は、宿儺の掌によって軽々と受け止められていた。
(コイツが、宿儺……! クソが、腕が動かせん!)
確実な殺意を持って放たれた一撃を、自分も相手も傷つくことなく完全に抑えられた。
その事実は、直哉の精神をさらに逆撫でする。
(侮っとったわけやない、だが、御三家でもない外様のバケモンと、ここまで……!)
甚爾を殺した相手。それ相応の実力者であることは、実際にあったことはなくても理解していた。
相手から感じる、自身の数倍はあるであろう呪力。その操作精度すら自分とは桁が違うことが、止められた手から伝わってくる。
「こっちのが迷惑をかけたようだな」
「……面倒みとる相手ぐらいきちんと躾とけや」
「すまん。行くぞ、裏梅」
あまりにも簡単に謝罪することに、逆に感情を逆なでされる。
それが、宿儺が自分を敵としてすら認識していない証拠だと気づいているからだ。
自分と相手の実力差は、裏梅と直哉の間にあるそれよりも遥か遠い。その事実が、憤怒などというものでは表せないほどの感情を直哉に味合わせる。
「どうした? 随分と余裕がなさそうだな直哉」
去っていく宿儺と入れ替わるようにして声をかけてきたのは、直哉の父にして禪院家当主、禪院直毘人。
そのからかうような声色に、一周回って冷静になる。
「……フン、軽く遊んどっただけや、本気やったらとっくに殺しとる。それよりそっちの交渉はどうなったん?」
「ククク、元がこちら側優位の交渉。かなり搾り取ったさ」
「あの家にまだ取れるもんあったんか。もう搾りかすみたいなもんやろ」
心底楽しそうに話す直毘人に対し、直哉の視線は別のところへ向けられている。
(氷女ァ、お前はいずれ必ず殺したる……!)
横槍によって多少は頭も冷えた。
それでも、今受けた屈辱が晴れることはない。
機会があれば必ず殺す。
その思いを口に出すことなく、直哉は2人の背中を見送った。
裏梅を女にしたのは直哉との因縁を強めるためだったりします
初めてアンケート使うんですがTS?タグって必要だと思いますか?
あんまり性転換要素がないのでそれ目的で見に来てくださる方からすると詐欺になるんじゃないかと思ったんですよね
協力お願いいたします
TS要素裏梅しかないんですが必要ですかね…?
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いる
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いらない