現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦   作:ソル  

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本日2話目の投稿です


秘匿死刑

「――い、起きろ」

 

「あ?」

 

 誰かに肩を揺らされ、虎杖悠仁が意識を取り戻す。

 

「……虎杖悠仁。今、お前はお前のままか?」

 

「…………アンタ確か……」

 

 寝起きでまだはっきりしていない頭でも、目の前にいるのが誰なのかは分かった。

 あの時、自分の体を乗っ取った呪いと戦っていた男。名前は――。

 

「宿儺だ。お前も知っている伏黒恵の担任」

 

「伏黒……っそうだ、伏黒と先輩たちは!?」

 

 思わず身を乗り出すも、そこで自分の状態に気づく。後ろ手で札のついた縄に縛られ、身動きが取れないようになっている。それは、自身が取り込んだ呪物の封印にも似ていた。

 

「なんだよコレ……」

 

「単刀直入に言う。虎杖悠仁、お前の秘匿死刑が決定した」

 

 

 

 

 時間は、虎杖が気を失った直後にさかのぼる。

 

「終わったぞ、伏黒」

 

 呪霊にやられたダメージのために屋上で座り込んでいた伏黒に話しかけたのは、虎杖を肩に抱えたままの宿儺だった。

 

「助かりました、先生」

 

「何があった? その怪我のこと、こいつのこと、一から説明してもらうぞ」

 

「……はい」

 

 反転術式のアウトプットにより伏黒の怪我を治しつつ、その話を聞く。

 

「……特級呪物を自分で飲み込んだだと? 馬鹿なのかこいつは」

 

「すいません、とっさのことで止められず……」

 

「気にするな。……いや、せいぜい二級程度の呪霊に追い詰められたことについては反省しておけ」

 

「はい……」

 

 虎杖をかばったという理由はあるが、それでも伏黒の実力でその程度の呪霊に負けるのは流石に擁護できない。

 

(戻ったら訓練を倍に増やすか)

 

 その思考に反応したのか、伏黒の背筋に悪寒が走った。

 

「……さて、虎杖だったか。こいつをどうする? 規定に従えばここで殺しておくべきだが」

 

「……危険なのは確かです。虎杖が目を覚ますのがもう少し遅ければ、今度は人死にが出ていたかもしれない」

 

 伏黒は、下の様子を見降ろす。戦いの舞台になった校庭は、巨大な地震にでも巻き込まれたかのようにめちゃくちゃになっている。

 小手調べのような戦いでも、これほどの破壊を生み出す呪い。今回は宿儺がいたから何とかなったものの、次に似たようなことがあればこの程度では済まないかもしれない。

 

「でも――」

 

 伏黒の脳裏によぎったのは、呪物に乗っ取られる前の虎杖。誰かを助けるために必死で戦っていた彼の姿。

 ()()()()()自身の姉のような、底抜けの善人。

 

「死なせたくありません」

 

 論理的な思考ではない。ただ助けたいから助ける。それが伏黒恵という呪術師だった。

 

「……ハァ。わかった」

 

 

 

 

「という会話があったわけだが。結局お前の死刑までは覆せなかった」

 

「……マジ?」

 

「ああ。だが、色々根回しした結果執行猶予が付いた」

 

「執行猶予・・・」

 

 まだ楽観はできないが、少なくとも今すぐ殺されるわけではない。

 少し安心した虎杖を横目で見ながら、宿儺は話を続ける。

 

「その説明の前に、お前の中にいるのが何なのかについて話しておこう」

 

「もともと、呪術界には御三家と呼ばれる三つの名家があった。禪院家、加茂家、そして五条家」

 

 五条。体を奪われていた時の記憶で聞いた名前に、虎杖の背筋が伸びる。

 

「平均的な術師の強さは禪院家や加茂家のほうが上だったらしいが、それでも五条家は御三家の一つに名を連ねていた。数百年に一度、相伝の術式である無下限呪術と、六眼と呼ばれる特殊な目を持って生まれて来る者がいたからだ」

 

「その術式とリクガンってやつだけで他の家に並んでたってこと? やばくね?」

 

 これまで呪術に縁のなかった虎杖でも、なんとなくだがその凄まじさは理解できる。

 それがいつか生まれてくるという事実だけで、数百年にわたり家の力を高められるほどの影響力。

 存在するだけでその時代の秩序を破壊できる革新者。六眼持ちの無下限呪術使いとは、そういう存在であった。

 

「だが、平安の時代に当主を務めた男がその六眼を呪物と化したことで、それ以降五条家に六眼をもつ者は現れなくなってしまった。いろいろと試してはいたようだが、どうやら六眼持ちの人間は一人しか存在できないらしい。結果、五条家は次第に力を失い、ついには御三家から除名された」

 

「つまり、俺が食べたのが……」

 

「そうだ。五条家を終わらせた当主、史上最強の術師とも呼ばれる男の成れ果て。『五条悟の六眼』。それが、お前の取り込んだ呪物の名だ」

 

 呪術界のパワーバランスをたった一人で無茶苦茶にした男、その遺物。自分が何をしでかしたのかを理解した虎杖は、体に鳥肌が立ったのを感じていた。

 

「お前にとっての幸運は二つある。一つ目は、五条家が力を失ったのがそこまで昔でないこと。五条家にゆかりのある人間がまだ上層部にいてな。そいつらにこう働きかけた。『二つの六眼を取り込ませてから虎杖を殺せば、五条家のもとに六眼が戻ってくる可能性がある』とな」

 

「あー、なるほど。それで執行猶予か」

 

 ここまで言われれば虎杖にもわかる。自身に与えられた猶予とは、もう一方の六眼を見つけ出し、取り込むまでのものであると。

 もしうまく六眼を取り戻すことができれば、五条家が御三家として復権できる可能性もあるだろう。

 

「二つ目は、呪霊の活発化。近年、呪霊の質と量がどんどん上がってきている。その原因はわからんが、御三家の一角を欠いた状態ではその被害の拡大は免れん。呪術界は、即戦力として使える人材を求めている」

 

「即戦力? まあ喧嘩はしたことあるけど……」

 

「伏黒から聞いているぞ。二級相当の呪霊を蹴り飛ばすだの、4階まで飛び移ってくるだの、人間離れした力を発揮していたと」

 

 呪力もまともに使えない状態で、そのレベルの身体能力。

 六眼という特級呪物を取り込み呪力を得た今、その力を正しく使えるようになればその実力は計り知れない。

 二級程度で留まるか、一級以上まで上り詰めるか。どちらにせよ、戦力として数えられるのは間違いない。

 

「説明は以上だ。虎杖、お前はどうしたい? 今すぐ死ぬか、戦って死ぬか」

 

 

 

 

 数日後。オカ研の先輩との別れを済ませた虎杖は、宿儺と共に祖父が燃えていく煙を見ていた。

 

「……答えは決まったか?」

 

「……こういうさ、呪いの被害って結構あんの?」

 

「かなり多い。国内での怪死者、行方不明者のほとんどは呪霊による被害だ」

 

 年間一万人を超える犠牲者の大多数。総人口に比べれば大したことはないが、それでも途方もない数字であることに変わりはない。

 虎杖の頭に浮かぶのは、呪いに出会ってしまったことで体や心に傷を負った3人の姿。あれが、今この瞬間もこの国のどこかで行われているのだ。

 

 祖父の遺言を思い出す。

 

『オマエは大勢に囲まれて死ね』

 

「俺が戦ったら、呪いに殺される人も少しは減るかな」

 

「さあな。それはお前次第だろう」

 

「……そっか」

 

 その言葉で十分だった。

 

 東京都立呪術高等専門学校一年。そこに、4人目の生徒が加わった。

 




原作との相違点
・ある理由で津美紀が行方不明
・六眼を失ったことで五条家が没落
・一年が4人に

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