現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦 作:ソル
開門
2018年10月31日19時00分。
東急百貨店東急東横店を中心に、半径400mに及ぶ「帳」が降ろされる。
術師の出入りは可能だが、一般人の出入りを禁止するという特殊性から、交流会での襲撃者と同一犯であると断定。
即座に事態を解決するため、総監部は両面宿儺単独による渋谷平定を決定する。
◆
20:14
JR渋谷駅新南口
「日下部先生、ほんとに俺たちは待機でいいの?」
「特級が複数体うろうろしてんだぜ? 余計な犠牲を出さないためにも宿儺一人に任せんのが一番だよ」
「しゃけ」
◆
同時刻
渋谷マークシティレストランアベニュー入口
「『帳』の中は平和そのものか。さて恵、これ邪魔だから影の中入れとけ」
「っと! ……無造作に放り投げないでくださいよ、億単位はするでしょこれ」
「ていうか気ぃ抜きすぎだジジイ。何があるかわからないんだから得物ぐらい持ってても……酒取り出してんじゃねえよ!」
◆
同時刻
都心メトロ渋谷駅13番出口
「伊地知さん、『帳』は壊せないんすよね?」
「ええ。そもそも術師を拒絶していない以上、力業ではどうにもならないようです」
「では、『帳』を降ろした呪詛師が撃破されるまではどうにもできないようですね。宿儺さんを待つしかないか」
「そうですね。氷見さん、あなたは私と一緒に連絡役を……どうかしましたか?」
「あ、ごめんなさい。すぐに」
(変だなあ、裏梅から連絡返ってこない。いつもはすぐ返信来るのに)
◆
同時刻
青山霊園
「そういやなんで俺は冥と一緒なんだ? 棘と一緒に日下部のところに行くかと思ってたんだが」
「上も色々考えてるみたいだね。パンダ君は鼻が利くから私と一緒にサポートと索敵、日下部は狗巻君と一緒に虎杖君……五条悟が暴走した時の抑え役。七海は昇級査定中の伊野君と一緒で、禪院家当主のところは……たぶん本人が関わりある二人で固めたんじゃないかな」
「分かりやすい説明、さすがです姉さま!」
「で、もう一組は……」
◆
同時刻
神泉駅北口
「Mr.宿儺のサポートに回るのはまあいいだろう、実力的に当然だ。……だぁが!
「……うるさいぞ東堂。まったく、京都校ならメカ丸もいるだろうに、何故私一人でオマエの面倒を見なければならないんだ」
◆
20:38
東京メトロ渋谷駅 B5F 副都心線ホーム
「そういえば、俺たち全員そろって戦うのって初だね」
『相手が相手。この戦力でも不足しているぐらいでしょう』
「私は直接見ていないが、そこまでのものか」
「血塗は大丈夫? 初の実戦があれになるわけだけど」
「大丈夫だろ、兄者達も控えてるし……っ!?」
「来たな」
気を張らずともわかるほど濃密な気配。
呪霊、そして九相図兄弟の視線が上に集中する。
まず聞こえたのは、何かが高速で落下し風を切る音。その正体を視認するより早く、重い着地音が周囲の空気を震わせる。
線路の上に立ったのは、全身に黒を纏う男。
何かのコスプレにも見えるその服装は、ハロウィンの渋谷であれば逆に違和感を覚えない。
呪霊たちにとっては、交流会以来となるその姿。
「解」
瞬きする間もなく、胴体を両断するような軌道で斬撃が飛ぶ。
「ぬうっ!?」
「いきなりかよ!」
『ふっ!』
「くっ!?」
「え?」
対する反応は五者五様。
誰より早く攻撃の気配を察知し、上空へと回避した漏瑚。
改造人間を使い巨大な盾を作り出した真人。
自らの術式によって大木を展開した花御。
水による防壁で周囲を守る陀艮。
「解」に対して反応できず、そのままでは切り裂かれていただろう血塗。
「ははっ、あっぶな……」
斬撃は止まった。それでも、真人の額には冷や汗が流れる。
特級呪霊が三体がかりで作り出した三重の防御。相応の頑強さを誇るそれの、四分の三ほどが容易く削り取られていた。
呪詞も掌印もない、小手調べ程度の一撃でこの威力。
勝利のための作戦はある。
だが、相手は現代最強の術師と呼ばれる男。
敵として相対している以上、一瞬の油断が自らの死に直結する。
「花御、陀艮、やれ!」
漏瑚の叫びとともに、二体の呪霊が術式を開放する。
まず響いたのは洪水のごとく流れ出る水の音。人が溺れるほどではないが、宿儺の膝より高い位置までが陀艮の生み出した水に沈む。
ほぼ同時に、突如として出現した樹木に押し出されるようにして、ホームのドアと上階から数百単位の人間が雪崩れ込む。
一瞬にして完成したのは、満員電車の中のように、ろくに身動きも取れないような状況。
人の波に押しつぶされ、怪我をした者もいるのだろう。あちこちから苦痛の声が聞こえてくる。
「チッ、面倒なことを」
分かりやすい人質に、宿儺の殺意が膨れ上がっていくのがわかる。
それでも、先ほどのように斬撃が飛んでくることはない。
普段は偽物として侮蔑している者たちに、安心感を覚えるのは初めてだろう。
人という名の壁は、真人達のものより確実に攻撃を防いでいた。
「じゃ、作戦通りに」
「わかっておるわ」
呪霊たちそれぞれが、バラバラに群衆の中へと紛れ込む。
人間たちの悲鳴の中で、最強の術師への挑戦が始まった。