現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦 作:ソル
虎杖が高専に入学を決めてから数日後。高専支給の制服を身にまとった彼は、宿儺の指示で伏黒とともに街へと出ていた。
「で、今日は何すんだっけ」
「新入生同士の顔見せと初任務だ。急ぐぞ、遅れるとどやされる」
初任務。つまり、呪いを払う呪術師としての初陣がこれから始まることになる。前回、学校での遭遇は偶発的なもので、覚悟も力も全く足りていなかった。
だが、夜蛾との問答を経て、自分の戦う理由を見出した今なら。
「オーケー。……あれ?そういや先生は来ないの?」
待ち合わせ場所はここで会っているはずだが、宿儺がここに来る様子はない。疑問を覚えた虎杖は、色々と詳しい伏黒に話を聞く。
「あの人は忙しいからな。引率はあいつに任せたらしい」
「あいつ?」
「俺らと同じ年で一級術師まで上り詰めてる天才だよ。名前は――」
「……」
美しい女だった。
普通に歩いているだけで、通行人の目を引くほどに。
年は高校生ぐらいだろうか。白い髪に、白い肌。身にまとう雰囲気は刺すように冷たい。総じて、氷のような印象を纏っていた。
「ちょっといいですかー」
胡散臭い笑みとともに現れたのは、ふくよかな男。名刺を彼女に見せつつ、道をふさぐようにして彼女に声をかけた。
「君、モデルの仕事とか興味ない?」
「ない。どけ」
自身の歩みを邪魔されて、不愉快そうな顔を見せる女。
男の提案に対しても、取り付く島もない態度で睨みを返した。しかし、その程度であきらめることはないらしく、正面にたって勧誘を続ける。
「まあまあ、話だけでも……」
「ちょっとアンタ」
誰かが男の肩をつかむ。握りしめるような強い力に、男の顔から冷汗が流れる。
後ろにいたのは、茶色いショートカットの女。年のころは白い女と同じぐらいだろうか。その立ち振る舞いからは、人間的な強さが見て取れた。
彼女が肩をつかんだのは、無理な勧誘を止めるため――だけではなく。
「私は?」
(ワタシハ!!?)
「モデルよモデル。私はどうだって聞いてんの」
自分から勧誘に声をかけようとするその態度。やばい女に絡まれたと判断したのか、男はその場を離れようとする。
待てやこら、と引き留めようとするが、その前に勧誘を受けていた女が口を開く。
「……お前が釘崎か」
「? なんで私の名前……って、その制服! あんたも高専の?」
「氷見裏梅だ。お前と同じ一年」
「そっか、同級生の女子ってアンタね。釘崎野薔薇よ、よろしく氷見」
「裏梅でいい。ん?……ようやく来たか」
二人が軽く自己紹介を交わしていると、裏梅が近づいてくる影に気づく。
「裏梅。もう来てたのか」
「あの二人かー、同級生って。……だいぶキャラ濃くない?」
あと二人の同級生、伏黒と虎杖がそこへ合流したのだ。
「遅いぞ、恵」
「お前が早いんだよ」
「「名前呼びぃ!?」」
お互いに名前呼びの上、やけに近い距離間。色恋沙汰に興味津々の、健全な高校生二人の反応が被った。
「あんたたちつまり……そういうこと!?」
「そういうことか!?」
「どういうことだよ……」
ぎゃあぎゃあと大騒ぎする二人に、伏黒はめんどくさそうに額を抑える。
「……別になんでもねえよ。二人とも宿儺先生に世話になったから、小さい頃から知ってるだけだ」
「「ちぇっ、つまんな」」
「お前ら……」
あんまりな態度に青筋を立てる伏黒。くだらなすぎる(高校生すぎる)喧嘩が始まろうとしていたそのとき、もう一人があきれたように声を上げる。
「……いい加減にしろ貴様ら。いつまでやるつもりだ、こんな場所で」
「「「あっ…」」」
場所は原宿の往来、大声で騒げば当然目立つ。三人が辺りを見回すと、なんだなんだと通行人が自分たちに目を向けていた。
「これ以上目立つ前にさっさと行くぞ。今日の予定は聞いているだろう?」
「そうだった、こっから呪い祓いに行くんだっけ」
「現場はそう離れていない、ついてこい」
数十分後。4人がたどり着いたのは、いかにも、という外見の廃ビルだった。
「宿儺さ……先生からの指示だ。釘崎と虎杖、私で突入する。恵は外で待機」
「了解。さっさと行くわよ」
「おっけー。また後で、伏黒」
「……大丈夫か、アイツら」
裏梅に先導され、ビルの中に入っていく釘崎と虎杖。どこか連帯感のない三人を見送りながら、伏黒は一抹の不安を覚えていた。
数分後。釘崎の提案により二手に分かれた虎杖は、裏梅とともに下から登るようにして呪霊を捜索していた。
「よかったのか氷見?釘崎一人で行かせちゃって」
「問題ない。それより虎杖、上」
その声が届く前に、虎杖は動いていた。
自分の頭上に迫っていた呪霊。その腕を屠坐魔によって切り落とすと同時に、飛びのくようにして後退する。
「れ…しぃとごりよ…う」
(出た呪い!)
「雑魚だな。虎杖、一人でやってみろ」
「実地試験みたいなもんか。やってみる」
屠坐魔を構え、虎杖が動き出した。鎌のような腕で彼を切り裂こうとする呪霊に対し、真正面から突っ込み、股を抜けるようにしてすれ違う。
直後、ブシッという音とともに、呪霊がバランスを崩す。すれ違う瞬間、虎杖は呪霊の足を切り裂いていたのだ。
「フッ!」
足をもう一本切断され、呪霊が完全に倒れこむ。その隙を見逃さず上へと飛んだ虎杖は、その手に持った屠坐魔を敵の頭へと深く突き刺した。
「うん。動けんね、俺」
虎杖悠仁。その呪術師としての初陣は、傷一つない完勝に終わった。
(かなりやるな。恵の言葉は正しかったらしい)
彼の戦闘を見ながら、裏梅は内心で虎杖の評価を上げていた。
この任務が始まる前に聞いた、自身の恩師、宿儺の言葉を思い出す。
『伏黒から聞いた限り、虎杖の精神性と実力は相当なものだ。いますぐにでも術師としてやっていけるだろう。だが、釘崎に関してはまだ分からん。東京の呪いのレベルについていけないと判断したら教えろ、強制的にでも実家に帰す』
(宿儺様に任されたのだ。完璧にやり遂げねばならん)
自分は離れていたほうが彼女本来の力をしっかり見られると考えた裏梅は、物音や呪力の変化によって上の様子をうかがっていた。
「うん?」
釘崎の動きが止まる。それだけならば問題ないが、物音から察するに彼女の武器である金槌を落としたらしい。それも、自分から。
「何をやっているんだか。虎杖、ここで待機していろ。釘崎の様子を見てくる」
「わかっ……はやっ!返事聞く前に居なくなってるし!」
実力を測るのも目的の一つではあるが、死んでしまっては意味がない。最短距離を行くため、階段ではなく取り外された窓に向かって駆けて行った。
呪力で強化した肉体を使い、窓の外から飛びこむようにして釘崎のいる部屋へ突入した裏梅。着地と同時に周りの様子を見ると、何故か釘崎は呪霊を目の前に両手を上げていた。
「裏梅!」
「何をしている」
「見てわかんない!? 人質とられて動けないの!」
お前も動くな、と言わんばかりに裏梅を見る呪霊。その横には、迷い込んだであろう子供が涙目でとらえられていた。
精々三級程度の呪霊だろう。だが、呪いへの耐性を持たない一般人を殺すことぐらいなら造作もなくやってのける。
「ハア、まったく」
「ちょっと!?」
しかし裏梅はそれを無視し、呪霊へ向け歩き出す。人質が見えていないかのように平然と前へ進むその姿に、釘崎が声を張り上げる。
呪霊は子供に向かって腕を振り上げ、そして……
瞬きほどの暇もなかった。
パキ、という音が静まり返った部屋で響く。
「……氷?」
つぶやいたのは釘崎。目の前には、腕を振り下ろす直前の姿で氷像と化した呪霊。
「つ、冷た」
もう一つの声は、先程殺されそうになっていた少年。突如凍り付いた呪霊に密着しているため、その冷たさに驚いてこそいるが、その体には外傷一つ見当たらない。
「おい、何を呆けている」
(一瞬で、凍らせたってこと? あの子にはなんの影響も与えずに……!?)
同じ部屋の中とはいえ、5、6mは離れていたであろう相手を瞬間的に凍り付かせ、尚且つそばにいた子供には霜一つ落とさない、精細な呪力のコントロール。
(これが……一級術師)
斜めに外れた特級を除けば、術師の中での到達点の一つ。今の釘崎では、あの領域に到達するまで何年かかるかもわからない。
「……助かったわ。ありがとう」
「釘崎貴様、なぜ人質などに構っていた」
「……どういう意味よ」
「そのままの意味だ。あの子供を気にしなければ、あの程度の呪霊に追いつめられることはなかっただろう。また似たようなことが起こったら、今度のように助けてもらえる保障はないぞ」
術師を続けていれば、命を天秤に乗せる機会は山のようにある。自分の命か、他人の命か。少数の命か、多数の命か。
その選択を誤れば、こぼれ落ちるのは自分の命だけでは済まないかもしれない。今回は、まさにそのケースだった。
「答えろ、釘崎。貴様はこれからもそういうふうに術師をやっていくのか」
「それは――」
「どうだった、釘崎は?」
「実力はまだ不足しています」
「……そうか」
東京の呪霊は、人口の少ない場所と違い知能が高い。今日のように人質などの悪辣な手段を使うものも少なくはないだろう。
今日は運が悪かった、では済まされない。もし単独の任務でああいうことが起きた場合、今度こそ命を落としてしまうかもしれない。
「本人の希望はあるが、やはり……」
「ですが」
『わからない。けど、私が術師になったのは私が私であるためよ。あのまま実家にいれば、私は私を嫌いになってた。今回だってそう。その子を見捨ててたら、その先に明るい未来なんてない』
それが、あのとき釘崎が返した答え。それを聞いた裏梅の頭によぎったのは、自らが恩師にかけられた言葉。
『自分の在り方なんぞ自分で決めろ。その力をどう使うかはお前次第だ』
自分が自分であるために。その思いは、裏梅にも理解できるものだったから。
「……ある程度、様子を見てもいいのではないかと考えます。」
「……そうか。お前が言うのなら、そうしてみるか。ご苦労だった、裏梅」
「いえ。それでは、失礼いたします」
(ククッ。裏梅の方にもいい刺激だな。あいつが俺の言葉を遮るとは)
これはかなり珍しいことだ。何度訂正しても様付けで呼ぶほどに宿儺を敬愛している彼女が、宿儺の発言に割り込むことは、宿儺の記憶の中では一度もなかった。
(あいつは生い立ちもあって対人経験が少ない。タイプの違う同年代とかかわるのは精神的な成長にもつながるだろう)
「氷見裏梅、伏黒恵、虎杖悠仁、そして釘崎野薔薇。有望だな、今年の一年は」
原作との相違点
・見た目もあって公共機関(新幹線なんか)を使いたがらないうえワープもないので五条よりも忙しい宿儺
・裏梅が現代生まれで元から女
・宿儺とのつながりから高専に入学している
いつのまにか赤バーになっててビックリ 感想、評価ありがとうございます!
夜蛾先生のファンには申し訳ないんですが展開がまったく変わらないのでカットだ!
展開がそう変わらないところはすっ飛ばして進めていくつもりです。よければお付き合いください。
感想、評価よろしくお願いいたします
TS要素裏梅しかないんですが必要ですかね…?
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いる
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いらない