現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦 作:ソル
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「スタート」
「くっ!?」
戦闘開始の合図とともに、赤い閃光があたりを照らす。
その場から飛びのき破壊から逃れた伏黒が、自身に言い聞かせるようにして考える。
(落ち着け! 向こうも本気じゃない、一撃当てるぐらいはできるはずだ!)
初撃で殺されてない。その事実が、ある種の救いになっている。
相手との実力差を考えれば、反応する間もなく殺されていたほうが自然である。五条悟との間には、一切誇張抜きにアリと恐竜ほどの力の差があるのだから。
事実、先ほど放たれた攻撃はこちらを殺さないよう最大限に気を使って放たれている。そうでなければ、先ほどの攻撃でここら一帯が吹き飛び、伏黒たちもバラバラになっていた。
(あいつはレベリングと言っていた……。これはあくまで、俺たちを使った遊び。なら、付け入るスキは必ずある)
「なにぼさっとしてんの!」
頭で考えるよりも先に体を動かすタイプの人間は、窮地においても動き出しが早い。
伏黒を叱咤するとともに、五条へ向けて釘を飛ばす釘崎。しかし、五条に到達しようとした瞬間、勢いを殺されるようにして空中で止まる。
「思い切りいいねー。けど、流石に考えなさすぎだよ。格上がおとなしくこんなもん喰らってくれると思う?」
「思ってねーよ! 簪!」
釘崎が叫ぶと同時、静止した釘に呪力が流れ込む。低級の呪霊程度なら体を貫き、祓いきることも可能な一撃。
だが。
「止められることは計算済みで二段構えか。悪くないね」
「ッ!?」
呪力は確かに流れ込んでいたが、それも不可侵により五条までは届かない。
釘崎を褒めながらも、彼女へとわざとらしく手を向ける五条。莫大な危険を感じた釘崎がその場を飛びのくと同時に、五条の手の直線上にあった物体が吸い込まれるように消滅した。
「……でたらめね。伏黒、アンタなんか作戦とかないの?」
「あるならさっさと伝えてるよ」
禪院家とのつながりがある伏黒は、無下限呪術についての情報をある程度だがつかんでいる。自身の記憶から一つでも突破口を見出そうと頭を回す。
(無下限呪術……。俺が知ってるのは無限の能力による絶対障壁と、それを強化した術式順転『蒼』。それと、その術式を操るための六眼。片方だけしかないとはいえ、呪力操作については宿儺先生と同等って考えたほうがいいか)
しかし、情報があれば攻略できるようなら、目の前の男は最強などと呼ばれてはいない。
(……ダメだ、取っ掛かりすら見当たらねえ。そもそも不可侵をなんとかしなきゃ一撃入れるも何もないってのに、特攻になる術式も呪具も心当たりすらない。クソッ、シン・陰が一人でもいれば簡易領域でなんとかできたかもしれないのに!)
自身の鬼札である魔虚羅のことも一瞬頭によぎった。だが、
(魔虚羅の強さは適応によるものだ。あいつの不可侵だって適応さえすれば貫けるはず。けど逆に言えば、相手に合わせて適応しなければ効果がない。いくらでも時間を使っていいならともかく、残り2分程度で無下限呪術に適応できるのか……?)
ここまでの逡巡は数秒。だが、この状況では貴重すぎる時間だった。
「悩んでる暇ないでしょ! とにかく攻撃して少しでもなんか見つけんの!」
「っおう!」
しびれを切らした釘崎の声で、伏黒も動き出す。
迷いを振り払ったわけではない。堂々巡りの思考を続けるより、とりあえず動き出すことを優先しただけだ。
「簪!」
「鵺!」
釘崎が飛ばした釘を追うように、伏黒の召喚した鵺が五条へ向けて突進する。各々が、今できる全力で攻撃をした。
しかし、それも届かない。鵺による雷撃すら、五条の皮膚を少し焼くこともできなかった。
「この……!」
攻撃と同時に飛び出していた釘崎が金づちを振るう。だが、苦し紛れの一撃が届くような相手ではない。
「野薔薇はもっと攻撃手段を増やすんだね。釘飛ばす、普通に殴るぐらいしか選択肢ないなら前線に出てこないほうがましだよ」
お手本のようなカウンター。
一切術式を用いない単純な体術によって、釘崎の意識が刈り取られる。
「さて、あと一分とかだよ。どうすんの恵」
一対一。増援はない。
二人がかりでも糸口すら見つけられなかった相手に、伏黒ができることは一つしかなかった。
(やるしか、ないか)
未確定の切り札。それでもここでできることは、魔虚羅を召喚することしかない。
突き出した右腕に、左拳を当てるような独特の構えを取る。
それは、十種影法術の担い手にとっての奥の手。制御不能なほど強力な式神の調伏儀式を相手を巻き込む形で行う自爆技。
「布瑠部由良――」
禪院家の虎の子、最強の式神が顕現しようとしたその直前。
「……ハァ」
五条悟が、つまらなそうにため息を漏らした。
出来の悪い生徒を見るようなその表情に、伏黒の動きが停止する。
(ふざけんな、なんだその顔! 誰のせいで命かけてると……)
「こっちとしては別にいいんだけどさ。……ほんとにそれしかないのか?」
まるで、他の手段があるだろうと言っているようなその言葉。
しかし、これ以外選択肢はない。そのはずだ。魔虚羅以外に不可侵を突破する手段など、今の伏黒は持っていない。
(今の……。今の、か)
そこで気づく。頭から消していた選択肢の一つに、使ったことがないだけで、使えるかもしれないものはなかったか。
(領域……。もし領域を展開できれば、あいつの体に一発ぶち込むぐらいはできるかもしれない。けど、あれは呪術の最奥だ。今の俺に使えるはずがない)
出来ない理由が頭の中を埋め尽くす。実際、領域を展開するのは至難の業だ。現代の術師の中で、完全な形で領域を展開できるのはわずか5人。いずれも規格外の怪物たちである。
今の伏黒に領域を使える可能性などほとんどないだろう。
(……それでも。ほんの少しでも、可能性があるなら)
絶対的な強者を前にしたことによる極限の集中と、呪術師としての信念からくる覚悟。磨かれてきた才能が、それらによって形を成す。
「やってやるよ!」
領域展開
嵌合暗翳庭
影が周囲を埋め尽くし、一切の光を奪い去る。
禪院家の相伝、十種影法術。その領域が世界を塗りつぶすように顕現した。
「正解。自分で自分の可能性を見限るのはもったいないよ? 今の自分がどこまでやれるかなんて、自分じゃ案外わかんないんだから」
(嵌合暗翳庭……十種の領域ってことは、必中効果のついた式神を無数に呼び出すとかそんな感じだろ。ただ、あくまで不完全な領域だ。結界を閉じるんじゃなく今いるこの部屋を直接外殻として使ってるし、必中効果は最低限。ただ、今の状態なら一撃当てられてもおかしくないな)
六眼が片方しかないことでの弱体化として大きなものは二つ。
一つ目は、六眼の性能が半減していること。
呪力の起こりを感知しづらくなったことで、相手の攻撃を完全に読み切るのは難しくなっている。
二つ目は、無下限呪術自体の性能の低下。
現在、無下限呪術の性能はオートマからマニュアルへと変化したようなものだ。不可侵によって攻撃を防御するには自分の意志でその攻撃を対処する必要がある。術式対象の自動選択ができない以上、五条の認識の外にある攻撃は止めきれない。
(……こうして整理してみると弱体化酷すぎるな、さっさと完全になりたいもんだ。羂索の奴はどこで何してんだか)
事故などで手足を失って、その状態にすぐ適応できる人間はそうはいないだろう。当たり前にあったものがなくなることは、かなり大きなズレを生む。
(さて、恵はどうするのかな)
(あいつの言ってたリミットまで45秒ってとこか!? それまで領域を保てるかもわからない、後先考えてねーで動け!!)
次の瞬間、足元に渦巻く影が形を成し、無数の式神が顕現した。
玉犬。
蝦蟇。
大蛇。
鵺。
現在伏黒が調伏しているすべての式神が五条に向け殺到する。
伏黒が選択したのは、消耗を度外視した物量作戦。自分が領域を展開していられる間に全力の攻撃を全開でぶつけ、相手の不可侵を突破する。
迫り来る影に対し、五条は吐き捨てるように呟く。
「悪いけど、有象がいくらいたって脅威にはならないよ」
五条を狙うすべての式神が、彼に近づいた瞬間消えていく。
術式を使っているわけではない。ただ体術によってすべての攻撃をいなし、躱し、迎撃する。
玉犬の爪が砕ける。蝦蟇の舌が切り払われる。大蛇の牙がへし折られる。鵺の翼が撃ち抜かれる。
百はいたであろう影の全てを叩き伏せ、無傷でその場に佇む最強。
だが、伏黒の攻撃はまだ終わってはいない。
「まだだ!」
三人の伏黒が、五条を囲うようにして下から湧き出る。一人は本物だが、残りは影によって形作られた偽物。粗悪な贋作ではあるが、弱体化した現在の六眼なら一瞬隙をつくることはできる。
拳を振るう本物の伏黒は、五条の死角となる右後方から奇襲を仕掛けた。
「狙いが分かりやすすぎ」
六眼のない側からの強襲。誰にでもわかりやすい弱点を突かれるほど、最強の思考は浅くない。間近まで迫った伏黒の拳が、不可侵によって停止する。
渾身の一撃をも止められた伏黒。だが、その目はまだ諦めていない。
(わかってんだよ、そんなことは!)
彼の策は、もう一段。未完成とはいえ領域は領域、上も影により覆われている。
散々下から式神を出す様子を刷り込んだ。伏黒本人の攻撃も、五条の意識が下を向くような位置を狙っている。
伏黒の本人の攻撃が止められてからコンマ数秒遅れて、上空からの奇襲。
そして、その奇襲を任せたのは――
(玉犬『渾』!!)
ぶっつけ本番、先ほど破壊された玉犬(白)の力を玉犬(黒)へと受け継がせた強力な式神。
今まで見せてすらいない、伏黒本人ですらどのような力を持つのか把握しきれていない最後の切り札。
(もらった!)
玉犬の牙が五条を襲い、白い髪が宙を舞う。そして――。
「惜しい」
無下限の不可侵は確かに破った。それでも、最強には届かない。
五条がしたのは何も特別なことではない。勘で攻撃の気配を察知して頭を少し傾けた、それだけだ。
たったそれだけで、伏黒の全力の攻撃は当たり前のように躱された。五条の受けた被害は、髪を数本切られた程度。
「……ちく、しょう」
限界を迎えた伏黒が倒れこみ、領域が解けるように消えていく。
「一撃には若干遠いけど、まあ及第点ってとこかな」
ここまでの流れはある程度想定済みだった。伏黒の術式と実力であれば、手を抜いた五条相手ならこれぐらいはできるだろうと。
(期待以上ではなかったけどね。ま、こんなもんだろ)
だから、そこで動いたもう一人は完全に予想の外にいた。
「よくやった伏黒!」
「!」
最強の攻撃をまともに受けた。手加減されていたとはいえ、本来であれば数日気を失っていて当然だ。
彼女を叩き起こしたのは、意地の力。ムカつく敵に一発も入れずに負けてたまるか、という気持ち、それともう一つ。
「喰らえ!」
切られた髪をつかみ、人形へと打ち込もうとする。 趨霊呪法『共鳴り』。それは、対象との繋がりをたどることにより本体にダメージを与える術式。
髪の毛は、趨霊呪法において決して価値は高くない。ただ、それは普通の人間の髪の話だ。
無下限呪術使いの特徴とも言えるその白髪は、呪術的な視点から見れば五条悟の象徴とも呼べるほどの大きな繋がりを持つ。
完全な状態ならばいざ知らず、弱体化した今の不可侵であれば距離を無視して貫ける。
「驚いたよ。けど、遅い!」
だが、それを黙ってみているほどに五条悟も甘くはない。殺さない程度ではあるが、確実に相手の意識を絶てるだけの呪力を込め、釘崎へと拳を向ける。
先に動きだしたのは釘崎。しかし、速度自体は五条のほうが圧倒的に速い。何もなければ、五条の拳のほうが先に相手に届いていただろう。
……そう、何もなければ。
(やっちまえ、釘崎!!)
五条が縛りを結んだときに言っていた言葉を覚えているだろうか。彼は、体を借り受ける時間を『大体三分』としていた。
三分間きっかりではない。大体三分。
大体、ということは三分より少し前に奪い返したとしても縛りには抵触しない。
それでも、最強の意識を抑え込むのは並大抵のことではない。自分の意志で体を貸している今ならなおさらだ。
だから、虎杖が身体を奪えたのは釘崎と同じ意地の力。
『『同級生が命かけてるってのに、俺(私)だけ寝ていられるか!』』
「ぐっ!? 悠仁か!」
虎杖悠仁による、内側からの干渉。それによって、五条の動きが停止する。
止まったのは、瞬きほどのほんの一瞬。それでも、その一瞬で釘崎の金づちが先に標的へと届く。
極限の集中と死地での危機感が、釘崎の潜在能力を引き出した。打撃と呪力との誤差が0.000001秒以内に起こる空間のひずみが、辺りを黒い光で照らす。
黒閃
「フ、ハハハハッ! やるじゃん、君たち!」
釘の先端のような呪いが、内側から飛び出すように体を貫く。黒閃でのバフをも載せた、これ以上ないほど完璧な一撃。
(あー、楽しかった)
ジャスト3分。反転術式により共鳴りの負傷を治したところで、制限時間が訪れる。
釘崎による奇襲と虎杖の干渉は、五条の予想をも完全に超えていった。前世ですら感じることのなかった高揚感とともに、五条悟の人格は虎杖の内へと眠りについた。
原作との相違点
・伏黒がこのタイミングで不完全領域を習得
・釘崎が黒閃を発動
本来呪霊を倒すために無量空所を使う予定だったけど伏黒が魔虚羅を出し惜しむ理由がなくなるのでカットしました。
読み返してて思ったけど普通に使っといたほうが収まりよかったかもな…
感想、評価よろしくお願いします
TS要素裏梅しかないんですが必要ですかね…?
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いる
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いらない