書き溜めるつもりでしたが残してるだけで無限に修正し続ける気がするので投稿することで半固定する試み。
進捗無いので続きません。進捗あれば続くでしょう。
それは夏。
過ぎ去った時間。
忘れたくない声。
思い出せる笑顔。
懸命過ぎた、それだけで鮮やかな人の生。
アルバムはいつかの想いで、いつかは思い出すら消えてしまうのだろうけど。
それでも、あの蒼い日々だけは。
小さな世界が終わっても、私の瞼に焼き付いていた。
誰もいない瓦礫の中で、懐かしくも知ることの無かった声が届く。
立ち尽くし、目を瞑る私の側で、誰かが声を張っている。
ねえ、私は本当に、その光景をここに埋めたの?
口角が上がってしまう。
図らずとも腹が震えて、咳のように笑いが漏れる。
一通りの発作を流して、荒れ狂う怒りと悲しみを飲み下して。
返す言葉なんて、決まりきっていた。
私が見たのは、精々が空、時々が大地であり、
君が苦しむ光景なんて、一瞬たりとも無かったと!
この町は、昔から災害だけは多かった。
嵐、地震、洪水。
地滑り、噴煙、陥没穴。
歴史は長く、高齢化が進む町をそれらは見境無しに壊していく。お陰でこの町は中途半端だ。
古い。そして旧い。その隙間に入り込むように新しい様式が、現代社会が侵食している。まるでパッチワーク。新旧入り混じる趣深い....そんな感じの町だ。
過ごしにくい。とは確かに感じるけれど、決して快適ではないわけではない。
腐っても故郷、ふるさとである。一周回ってその特殊性を誇る自分すらいる。
積もった過去を懐かしめる、そんなノスタルジックな愛着すらあるだろう。
「まあでも、この古さだけは辛抱ならんわぁ....」
7月後期。室内気温25度。
堪らず点けたオンボロクーラーは悲鳴をあげながら頑張ってくれているが、設定温度に届くまで何時間かかるかわからない。
世界のトレンドは温暖化である。それに乗り遅れた機械が追い付く日が来るのだろうか、いや無い。
棒付きアイスもすぐに溶ける。
棒を液体のアイスが伝ってべたべたになるのを防ぐために、畳の上で仰向けにしゃぶる。
口の中で滑って喉にでも刺さる危険性はあるが目をつぶる。
今はただ無気力に涼みたかった。
「あああああああ....」
結局アイスは10分と持たなかった。
容量はともかく、涼しさという意味でである。
畳の隙間から吹き込む謎の涼しい風を求め転がりながら、ふとスマホを見た。
スマホのチャットアプリの通知音に気が付いたから。けれど起き上がって見るのが億劫過ぎて。
私はだらしなく寝っ転がったままだ。髪は乱れ、白いサマーワンピははだけ気味。
眼鏡が折りたたまれずそのままスマホの傍に置かれっぱなし。
数秒間だけ点灯する画面には、
「どうしよっかな~」
転がる。夏祭りのタイムスケジュールを思い出す。
私の家には無駄な古さ、大きさがあるせいで、この祭りの運営の節々に関わっているわけだが、どうにか面倒事を避けて親友と楽しみたい。爺婆の酒の接待や、笑顔を張り付けてのお辞儀三昧、隙あらば求められる大家の娘としての模範的な言葉、態度。
ああめんどくさい、ああ逃れたい。
転がる。祭り自体は好きだ。
古い町だけにご近所付き合いも濃厚。家からそこそこの金が出ている分、色々楽しませてもらってる。
小さい頃は無料で食べさせてもらったり遊ばせてもらったりもしたが、今では世間体もあるのでちゃんと払っている。
家系としての責任と義務、対価となる恩恵。まあわかっているのだ。一人娘としてやらねばならないことなど。
これでもお父さんたちには自由にできる時間だって確保してもらってる。
まあでも....やっぱり....もうちょっとぐらいいつもより楽しみたいっていうか....ね?
転がってスマホまでたどり着く。今年の私のスケジュールを送信し、回る場所、時間はいつも通りと返信する。
あと、上手くいったら特等席も、と。
グットマークのスタンプが返ってくる。自然と笑みを口端に並べて、今度は喜びで転がる。
見上げれば青空、彼方には入道雲。
その空に、昔見た夜の花を思い出して。楽しみを膨らませた。
私、
そんな感じの、新米高校生である。
高校一年生の夏休み、初日から数日が経過した。
実際のところ中学生の時と環境はそう変わりやしない。
中学も高校も身内、知り合いだらけで埋まってるし、場所だって近い。
私の家は丘の無駄に高いところにあるので勢いのまま下れば登校時間だってそう変わらなくて、高校生なりたての頃は少しがっかりしたものだ。
環境変化の小ささはつまらなさに繋がったが、生活のしやすさはトップレベルである。
易々と慣れて、この調子だ。高校生になれど何も変化はない。
変化があるとするならば、この前の大雨で増えた水溜まり。お家事情にうるさい人達の目。町外に進学した友達の姿。暫く着ることのない高校の制服、等。
夏の嵐は兎に角盛大で。この町の限りある年一イベントとして楽しみにしている私にとってハラハラする毎日だし、血だの家系だのなんだの言ってくる人達は私の将来の話ばっかりだし、友達は都会へ出ていくし、高校も中学とそんな変わらんし....実際のところナーバスだ。折角の休みだと言うのに。
あれもこれも見え過ぎる聞こえ過ぎるのが問題だ。
昔から気が利く、察しが良い、優等生、将来は安心と言われてきたけれど、めんどくさいなあと思うことが増えてきた。
何かをするのも億劫で、楽しいことしか飛び付けない。
ある程度周囲に誤魔化すけれど、それが終われば糸が切れたかのようにグダグダだ。
物理的に客観視できると更に惨めで、私はいつもこんな私を見下ろしていた。
まるで他人事のように、そんな自分にイラついて、目蓋を閉じても関係なくて。
仔細に見えはじめて、考えてしまうから、眠るまでもが苦手なのだ。
とはいえ、気分なんて毎日コロコロ変わるものだ。
友達とのお出かけともなれば、外面も内面も元気よくあるべきだろう。
そういう言い訳で、私は楽ができている。
「ねー、どうかなこれ。似合ってる?」
「あーうん良いんじゃないかな。ぶっちゃけどれも似合うから私としてはどう厳選するかで悩むわこれ。」
「適当だなー君は。ほらもうちょっとマシな感想をさー。」
「....この時期に白系統は透けやすいから、重ね着したいじゃん。でも暑いでしょ?じゃあこっちとか。」
「....じゃあどうする。ありがと。」
「うい。」
許された。
今日は前から予定していた
私の祭り当日の服はいつも夏着物だ。色々終われば浴衣に着替えて飛び出す予定である。正直に言うと浴衣すらも窮屈で好きではないのだが....
「今年のことちゃんの浴衣、楽しみだなー。」
親友の楽しみを潰すのもまた野暮というものだろう。
「じゃあこれは決定。こんな感じで纏めて見たよ、どうかな。」
「いいねー。」
「適当!」
いや本当にいいんだって。美少女が友達なのホント最高。目の保養です。特に陽葵は諸外国の血が交じってるので所々人形のような美を感じるのだ。白い髪と私とまた別の青い瞳、白い肌が黒と黄色のサマードレスに映えますなあ。
親指を二本突き出しておもいっきりアピールする。それだけで陽葵はふにゃりと満足そうに笑った。ああーいいっすねー。最高ビバ夏、美少女。
そこそこの街には、そこそこのスイーツも集まる。
服を沢山買ったのでお金が限界そうな友人に奢りつつ、拝みながら嬉々としてパフェを頬張る美少女を見て和む。
陽葵は態々あの町に残ってくれた私の少ない友人だ。私の友人の多くは家の縁とか機会とかそういう関係で出ていきやすい子達ばっかりで形成されていて、陽葵も将来そのつもりの一人だった。だけどそれをやめてしまったのだ。私が原因である。
陽葵は上手く隠しているつもりのようだけど私にはお見通し。
そういうわけでこの友人には多大な恩がある。返していかねばならない。
私には勿体無すぎる子だ、本当に。
「ことちゃん。」
「んー?」
「はい、あーん....」
「え、あ、あーん....」
「....おいしい?」
「.....うん。」
色んな意味であまい。 上から見ててもあまい。
流石に顔が赤くなる。周りの席には誰もいないけれど、自分が見ているってだけで恥ずかしさが混み上がる。
陽葵はそれに気がついてないのか、パフェをつついたり、私の口に突っ込むのに夢中である。
色んな意味でご馳走さまだった。まる。
他にも色々回った。ゲームセンター、カラオケ、早めの夕食。
地元じゃできないことを満喫していると、あっという間に日は落ちていく。
帰りも電車だ。
荷物は上の物置の網に乗せて、下り列車の空き気味の座席に隣り合って座る。
優しい夕日を浴びて、規則正しい電車の揺れは、陽葵を眠りへ連れ出した。
肩にかかる重さも、薄く香る彼女の髪も、全てが幸せで、私も目蓋を閉じる。
暗闇の中、友人の重さと、匂いと、電車の振動と、アナウンスと、私と_____僅かな違和が流れてきて、目を開けた。
同時に電車のブレーキ音。大きく揺れて、電車が軋む。その音と衝撃で陽葵が目を覚ました。
「なに....?」
「いつもの地震だよ。大丈夫。」
安全のための緊急停止。暫くすればそんな放送がかかって、場の空気は落ち着いていく。私の町に限らず、ここら一帯はそういうのが多いし大きめのが起こりやすい。
また目を閉じた陽葵の隣で、空気に溶けていく様子を視界に捉えて、一息を吐く。
気づけたって、どうにもならんというのにね。
なんのためなのか、私にはよくわからないままだ。
幾つもの山を越え、トンネルを抜け、駅に到着し、改札を出た頃には、もう日は沈みかけていた。
「じゃあ、ばいばーい。また今度。」
「うん、また今度。」
陽葵の家は山の中だ。西から町の中心部に食い込むように連なる丘陵の端、つまり町の中心部にありながら山中という、面白い立地の神社が実家である。その分家を出るのも帰るのも、階段を経由するしかなく、足腰の負担に彼女は辟易としているようだ。
対して私は、町の北にある高台に家があった。
高低差は丘陵とどっこいどっこいだが、この町は坂の町、中心部を突っ切ろうとするだけで上り下りを強要させられる。つまりこちらも一苦労。もう慣れて息すら切れないがただただめんどくさい。
駅は南側にあるので、帰り道はすぐ別れてしまう。
入り組んでいて、起伏だらけの道を歩く。
町を囲む山脈が作る影によって、この町の夜は他所より早く、朝は遅い。街灯は勿論取り付けられているが、こうも街角が多いと光が届かないところも多く、また大きい。
幸いにも私は夜目が利くし、迷うことも有り得ないが、観光客とかが迷い込んでいることもあるので、確認しながら帰宅するのが日課だ。外聞は良くしてなんぼである。
というのも、この町の収入源は観光業である。
自然洞窟探検とか、町をぐるりと囲む山々でのレジャーとか、観光用に整備された廃坑探検とか、金属、宝石加工体験とか、シンプルに旧時代の町景色そのものとか。
ずっとここに住んでいるので今一良さを実感し難いが、学校教育や家で教えられるので、知識としては理解している。
まあ、物好きがいるのものだな、が今でも先に抱いてしまう感想だ。
丘を登る。
少し見上げれば、私の家の光が木々の間にちらついている。
木々のあけた広場で立ち止まって振り返る。
見下ろす町明かりは疎らで、
それを覆うように、ドーム状の
星々が輝く、新月の夜は特に綺麗だ。
地盤や収入源、人口の関係上、都会化が進まず、周囲の街の光も山々に遮られるここは、まだまだ宇宙が近い。
私にとって変わらない、ちょっとした自慢の景色だった。
今日は疲れた。けれど充足した一日だった。
お気に入りの場所から、町を見下ろしながら、今日を思う。
変わらない夏休み。典型的で、それでも今しかできないこと。
大事な
そうして、上路琴目は家路へ、玄関へ向かう。
家から漏れる暖かい色、敷地の電灯の色、星の色、それに紛れて。
満天の輝きを集めて、束ねて、研いたかのような
その眼睛に
青く、白く、仄かに黄芩と、黄金の。
月光を越す、宙色の閃光は今もここに。
空より見下ろす私には、その証が見えている。
上路琴目
なんか見えてる。なんか知ってる。
神経質ぎみ。ネガティブ。
モラトリアムと、見える何らかのビジョンのせいで頭ぐちゃぐちゃ系ガール。かわいい。
責任感が強く思い込みも凄いので簡単に餌付けができるよ。