幼馴染が一人暮らしする部屋に行く危険。もしくは満足。あるいは中毒。〜幼馴染にキスをされて一緒に寝た。もとの関係には戻れないかもしれない〜   作:冷泉七都

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第6話 昼食は二人で

「せっかくだから、昼ごはん一緒に作ろうよ」

 

 真結の言葉を聞いて、本棚の上にある置き時計を見てみると、ちょうど11時をさしていた。

 確かに作るとなれば、今ごろから支度を始めないとだな。

 ――って。

 

「俺も作るの?」

「もちろん。まさか私だけに任せて、自分だけ怠けるつもり?」

 

 ジト目で俺を見つめてきた。

 軽蔑されている気がして、しどろもどろになってしまう。

 

「そういうつもりじゃなくて。俺、料理したことないし」

「私が一から教えてあげるからさ。将来のためにも出来たほうがいいよ、絶対」

「そこまで言うなら……」

「じゃあ決まりだね」

 

 食い気味で言ってくる真結。

 そんなに俺を料理上手にさせたいのか――。

 

「さっそく行こっか」

「どこに?」

「そりゃあスーパーだよっ」

 

   / / /

 

 五分ほど歩いて、最寄りのスーパーにやってきた。

 昔はよくここに、お母さんと一緒に来ていた覚えがある。

 最近は買い物ついていくことも無くなり、三年ぶりと言ったところか。

 

「私はいつもここに来てるの。だから、時々ばったり裕誠のお母さんに会ったりしてるんだ」

「それは初耳だな」

 

 真結とお母さんが謎に繋がっていた不思議が解けた。

 ここで二人の信頼関係は築かれていったのだろう。

 

「ところで、何を買うんだ? 真結の家にも、いくつかは材料があるんだろ」

「今日はカレーを作ろうと思うの。だから、ルーとか肉とかを買うつもり」

「カレー……か」

「もしかして、最近食べたりした? 一人暮らしだとあまり作る気になれなくて、せっかく裕誠もいるからと思ったんだけど……」

 

 そう。

 俺はカレーを昨日の夜に食べたばかりなのだ。

 このままでは、二日連続になってしまう。

 家の分はまだ残っていたから今日の夜もカレーだろうし。

 しかし真結を見てみると、残念そうな顔をしていて、それほど食べたいのだと伝わった。

 そして真結が、目を斜め下に逸らしてしまう。

 

「いや。昨日は、その……焼き魚だったから、心配しなくても大丈夫だ」

 

 まだ作り始めてもいないのだから正直に言っても良い気はしたのだが、別に辛いことでもないし――と、真結の意見を取ることにした。

 

「それなら良かった」

 

 微笑んで言う真結を見ると、こうして正解だったと思う。

 会話が終わったその瞬間、周囲からのヒソヒソ声が耳に入った。

 

「あの子、彼氏が居たのね。青春してるわ」

「あの子って、和田さん知ってるんですか?」

「知らないけどね。ここら辺にしては珍しく若い人だから覚えてるの」

「へえ。若いって良いですねぇ。私たちも学生時代はあんな恋愛もしたもんだわ――」

 

 どうやらマダム二人が俺たちを見ながら話をしているらしい。

 まあ、平日に高校生ぐらいの男女がスーパーにいれば、目立つのも仕方がない。

 それにしても、こそこそ話しているのに内容が丸聞こえだ。

 

「私たち、カップルだって思われてるのかな」

「……そうかもな」

 

 なんでそんなことを、わざわざ言うんだよ。

 俺は真結(お前)のことを振ったばかりなんだぞ――。

 よく分からない感情に苛まれていると、真結の顔が視界の端に入った。

 隠そうとはしているが、とてつもない笑顔が溢れ出ている。

 真結は依然として俺のことが好きなんだと実感させられた。

 

   / / /

 

 その後の買い物は何事もなく終わり、俺たちはキッチンにいる。

 

「じゃあ、裕誠はこれ切ってくれる?」

「あぁ、分かった」

 

 まな板の上に、真結が水で洗ったにんじんが置かれた。

 野菜ってピーラーで皮剥くんだっけ――?

 そうしてピーラーを取ると、真結に腕を掴まれた。

 

「にんじんは皮を剥かなくて良いの。栄養もあるし、ある程度は農家さんが綺麗にしてるんだよ」

「へぇ、そうなのか。知らなかったな」

「切り方も私が教えてあげるね」

 

 俺が包丁を手にすると、真結は俺の背後に陣取ってくる。

 すると――。

 

「危ないから不用意に動かないでね」

 

 そう言葉を置いてから、俺に身体をくっ付けてきた。

 特に、背中の中央あたりの柔らかい感触に意識がいってしまう。

 そして俺の両手それぞれに、真結の手が添えられた。

 

「真結、これはどういう……」

「これの方が教えやすいでしょ」

 

 至極当たり前のことのように言ってきて、反論ができない。

 それにしても全身が真結と密着していることが、俺の理性を壊そうとしてくる。

 俺はそんな思考を振り切って、手を少し動かした。

 

「ちょっと待って――」

「ぇ?」

「ちょっとだけしゃがんでくれる? 私の身長じゃ、前が見えないの」

「……あぁ」

 

 俺はしゃがむと、にんじん切りは始まった。

 真結が時々身じろぎをしたり、呼吸が首筋にあたったりして危うかったのだが、半月切り自体は上手くできた。

 

 その後、じゃがいもなども結局同じように二人羽織の要領で切って、他のことは全て真結が一人でやってくれた。

 

 

「「いただきます」」

 

 ダイニングテーブルに対面で座り、完成したカレーを食べていく。

 俺の家で食べるカレーとは、少しちがった味がする。

 

「裕誠、美味しい?」

「家のより美味しいかもしれない」

「それ、お母さんに聞かれたら怒られるよ」

 

 真結が苦笑いして言った。

 でもすぐに顔を綻ばせる。

 

「まぁ、ありがと」

 

 食器類の後片付けは二人でした。

 残ったカレーは、真結の夕飯になるらしい。




◇あとがき◇
 次回は、いよいよ……です。
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