幼馴染が一人暮らしする部屋に行く危険。もしくは満足。あるいは中毒。〜幼馴染にキスをされて一緒に寝た。もとの関係には戻れないかもしれない〜   作:冷泉七都

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第9話 キスマークとホンモノカップル

 私と裕誠の危うい関係は、四日に一回ぐらいのペースで、二週間ほど続いている。

 裕誠から誘って欲しいのだが、毎回私がそれとなく家に来ない?――と誘っている。

 そして昨日も例に漏れず、裕誠とひと時を楽しんだ。

 

 通学途中の電車で、私たちは扉にもたれて横並びになっていた。

 横を向いて裕誠を眺めるが、今日の裕誠はぼんやりとして眠たそうにしていて気づいてくれない。

 そして、ふと首元にあるいみありげな赤紫の痕跡が視界に入った。

 私が付けたキスマークだ。

 クラスメイトに付き合っていると匂わせるために、わざとブレザーの上あたりにハッキリと見えるよう、昨日しっかりと吸った。

 多分、裕誠のお母さんは気づいているだろう。

 

「――? どうした? 俺の首に何かついてる?」

 

 急に裕誠と目が合って、不思議そうな顔をしてくる。

 

「いや、なんでもない」

「ああ……、そうか――」

 

 強めに否定してみれば、裕誠はまんまと信じてくれる。

 どうやら裕誠は、私の打算的な作戦に気づいていないらしい。

 このままにしておいて、学校での周りの反応を見てみよう。

 

   / / /

 

「真結ちゃんっ」

「どっ……どうしたの?」

 

 放課後――。

 私が自席に座っていると、親友の由樹が机を叩いて迫り寄ってくる。

 

「東郷くんにキスマークが付いてたんだけど……あれ、絶対に真結ちゃんのだよねっ――」

「あーね……」

 

 今日一日で、裕誠のそこに気づいたのは見た限りでは二人くらいだった。

 それがもう一人増えたというのもあり、顔に出してはいけないのに、赤面しそうなほど嬉しい。

 今教室に裕誠はいないし、もっともっとみんなに誤解されたい。

 付き合っていると思われたい。

 なんとも酷い考えだが、裕誠のしたい体位もしてあげているし、したいプレイも応じてあげると言っているから許してくれるはずだ。

 

「ってことは――」

「由樹、耳貸して」

 

 親友という関係ゆえに、私と裕誠の現状をある程度伝えているしいいか――と、私のしたことや目論見を赤裸々に耳打ちした。

 

「なるほどね。でも、東郷くんの首の話は結構広まってるよ」

「ぇ……?」

「なんてったって、お相手があの――一瀬真結――だって言うんだから、そりゃあ……ねっ」

 

 

 由樹と色々なことを話した後は、文藝部の部室へと向かう。

 その途中――。

 

「なっちゃんは今日も可愛いね」

「ゆぅくんだって、いつもどおりかっこいいよ」

 

 なんて意味があるのかわからない(もし付き合えば、分かるものなのかな……)言葉のラリーをするカップルが、廊下の真ん中で抱き合っていた。

 ゆぅくんと呼ばれている男子が、なっちゃんという女子の頭の撫で撫でしている。

 女子は満足気に、とろけたような表情をさらしている。

 そういう顔を見せるのは、彼氏と二人きりの時だけにしなよ――と突っ込みたくなるのだが、彼女たちの世界を壊さないように、できるだけ離れて通り過ぎようとした。

 が、私の視線は二人の首に集中する。

 

「すご……」

 

 さっきまでは気づかなかったが、二人の首筋にはそれぞれ五個くらいの赤い鬱血(うっけつ)がある。

 いや、首の前側にもある気がする。

 私の記憶にも新しい強いキスをしてつくるやつ――。

 それを見ると、裕誠の首が脳裏を通過する。

 しかし、私たちと彼女たちでは、大きな違いがある。

 それは、私にはキスマークが付いていないということだ。

 

「いいな……」

 

 小声だが、私は思わず呟いてしまっていた。

 この二人は本当に愛しあっているホンモノカップルだから、イチャイチャとして互いにマークしていくんだ。

 でも、私たちは一方通行の愛の片想いで、私が自分勝手にやっているだけなんだ。

 

 これ以上考えるのは辛くて、私は部室へと足を早めていく。

 

「今、裕誠とあの二人みたいに愛し合える訳じゃない。だから、今から着々と仲を深めていかなければ……」

 

 見覚えのあるドアに手を掛けた。

 部室に入った私は思わず、裕誠に聞いていた。

 

「次の土日、デートしようよ」

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