◯月◯日 晴れ
今日は、エース君と一緒にお菓子を作った。
……うん。
最初は、あたしが作るつもりだったんだよ?
でも、エース君が「ミカ様、料理の経験はおありですか?」って聞いてきたから、「もちろん!」って答えたら、なぜかすっごく心配そうな顔をされた。
失礼しちゃうよね!
あたしだって、お菓子くらい作れるもん!
……たぶん。
というわけで、今日はエース君と一緒にお菓子作り!
ナギちゃんも誘ったんだけど、仕事があるからって断られちゃった。
残念!
でも、二人きりなのは悪くないよね。
まずは材料を用意して、エース君の説明を聞きながら作業開始!
卵を割って、砂糖を入れて、混ぜて……。
あれ?
なんだか、エース君が妙に慎重なんだけど。
「ミカ様、そちらはもう少しゆっくり混ぜてください」
「えー? これくらい普通だよ!」
「……先ほど、ボウルから材料が飛び出しましたので」
「うっ!」
「それと、砂糖を入れる前に小麦粉を追加されましたが、何か理由が?」
「……えっと、いっぱい入れたらおいしくなるかなーって?」
「……なるほど」
いや、その沈黙は何!?
結局、エース君が手伝ってくれたおかげで、ちゃんとしたお菓子が完成した。
焼き上がったお菓子を食べてみる。
……おいしい!
すっごくおいしい!
「エース君、これおいしいよ!」
「ありがとうございます。ミカ様にも気に入っていただけたようで何よりです」
「でも、あたしも頑張ったんだからね!」
「もちろんです。最後まで諦めずに取り組まれたのは、素晴らしいことだと思います」
……。
……えへへ。
なんだか、褒められると嬉しい。
そのあと、あたしはエース君にもお菓子を食べさせてあげた。
もちろん、あたしが作ったところを中心に!
……え?
味が違う?
気のせいだよ、気のせい!
それから、エース君は後片付けまできちんとやってくれた。
あたしが手伝おうとしたら、「ミカ様はゆっくりしていてください」と言われちゃった。
うーん……。
いつもお世話をしてもらってばかりなのは、ちょっと申し訳ない気がする。
今度は、あたしがエース君のために何か作ってあげようかな?
……料理以外で!
◯月◯日 晴れ
今日はナギちゃんが遊びに来た。
最近、ナギちゃんはよくあたしの部屋に顔を出してくれる。
理由は、あたしの様子を見るため。
……だと思う。
「ミカ、最近は随分と機嫌がいいですね」
「そうかな?」
「ええ。以前よりも、ずっと」
「えへへ~。そう見える?」
「……何かありましたか?」
「えっ? な、何もないよ!?」
「そうですか」
ナギちゃんは、じーっとあたしを見てきた。
……うう。
こういう時のナギちゃんって、すっごく鋭いんだよね。
そのあと、エース君がお茶を淹れてくれた。
ナギちゃんは一口飲むと、満足そうに頷いた。
「相変わらず、丁寧な仕事ですね」
「ありがとうございます、ナギサ様」
「ミカの思いつきに振り回されているでしょうに、よく対応できていますね」
「いえ。ミカ様は、思いつきを実行に移す行動力がおありですから」
「……それ、褒めてる?」
「はい。もちろんです」
「本当かなー?」
エース君は、困ったように笑った。
ナギちゃんも、少しだけ笑っていた。
……なんだろう。
こうして三人でお茶を飲んでいると、すごく落ち着く。
あたしとナギちゃんは、小さい頃から一緒だった。
楽しいことも、悲しいことも、たくさん経験してきた。
でも、今はそこにエース君がいる。
最近知り合ったばかりなのに、もうずっと前から一緒にいたような気がするんだ。
不思議だね。
お茶を飲み終えたあと、ナギちゃんがエース君に質問していた。
「ところで、エースさん。ミカの仕事について、何か困っていることはありませんか?」
「そうですね……。予定が急に変更されることが多い点でしょうか」
「エース君!?」
「ただ、それもミカ様らしさだと思っております」
「……それ、絶対にフォローになってないよね!?」
「申し訳ありません」
「むー!」
あたしが頬を膨らませると、エース君はまた笑った。
……。
……やっぱり、エース君の笑顔って好きだな。
なんだか、こっちまで楽しくなっちゃう。
ナギちゃんにそのことを話したら、絶対にからかわれるから、内緒にしておこうっと!
◯月◯日 曇り
今日は、ちょっと嫌なことがあった。
廊下を歩いていたら、何人かの生徒がエース君の悪口を言っていた。
聞こえてきたのは、ヘイローがないだとか、ミカに取り入っただとか、そんな話。
……。
……どうして、そんなことを言うんだろう。
エース君は、誰かに迷惑をかけたわけじゃない。
仕事だって真面目にやっている。
困っている生徒を見かければ、立ち止まって助ける。
それなのに、どうして?
あたしは、思わず声をかけそうになった。
でも、その時。
エース君が、廊下の向こうからやってきた。
悪口を言っていた生徒たちは、気づかれたと思ったのか、急に黙り込んだ。
エース君は彼女たちを一瞥したけど、何も言わなかった。
ただ、いつも通りに挨拶をした。
「こんにちは。何かお困りですか?」
生徒たちは、ばつが悪そうに目を逸らした。
エース君は気にした様子もなく、そのまま通り過ぎていった。
……。
……ねえ、エース君。
どうして、そんなに優しいの?
嫌なことを言われたのに。
馬鹿にされたのに。
それでも、相手を責めようとしない。
あたしだったら、きっと怒っちゃう。
……ううん。
実際、怒ってる。
だって、あたしの大切な人を馬鹿にされたんだもん。
……。
……大切な人、か。
そう書いたら、なんだか胸がドキドキしてきた。
最近、あたしはエース君のことばかり考えている気がする。
今日は何を話そうかな。
明日は何を一緒にしようかな。
エース君は、今、何をしているのかな。
……。
……うーん。
やっぱり、ちょっと変かも。
でも、嫌じゃない。
むしろ、嬉しい。
……明日は、エース君を誘ってお出かけしようかな!
4月某日 晴れ
今日はエース君とお出かけした!
もちろん、ナギちゃんも一緒。
……最初は二人で行くつもりだったんだけどね。
あたしが出かける準備をしていたら、ナギちゃんがやってきて、
「私も同行します」
って。
「なんで!?」
って聞いたら、
「あなたとエースさんだけでは、予定通りに帰ってこられるか心配ですから」
だって!
失礼すぎない!?
……でも、否定できなかった。
だって、あたし、気になったお店を見つけると、つい寄り道しちゃうんだもん。
今日も、予定になかったお店に入っちゃった。
そこには、かわいいアクセサリーがいっぱい並んでいた。
あたしが夢中になって見ていると、エース君が隣に来た。
「お気に入りのものは見つかりましたか?」
「うーん……。どれもかわいいから、迷っちゃう!」
「でしたら、ゆっくり選ばれてはいかがでしょう。時間には余裕がありますから」
「いいの?」
「はい。ミカ様が楽しんでくださるのであれば」
……。
……。
……。
……もう!
エース君って、どうしてそういうことを自然に言えるの!?
あたしが喜ぶことを、当たり前みたいに考えてくれる。
それが、すっごく嬉しい。
結局、あたしは小さなブローチを買った。
淡い青色の石がついた、シンプルなもの。
エース君が「ミカ様によくお似合いだと思います」と言ってくれたから、それに決めた。
……えへへ。
大事にしようっと。
そのあと、三人でお茶を飲んだ。
ナギちゃんは紅茶。
あたしは甘いジュース。
エース君はコーヒー。
「エース君って、苦いものも平気なんだね」
「はい。慣れていますので」
「大人だねー!」
「ミカ様も、もう少し苦いものに慣れてみてはいかがでしょう?」
「えー! あたしは甘いものがいい!」
ナギちゃんが呆れた顔をしていた。
……でも、楽しかった。
すごく、すごく楽しかった。
帰り道、あたしはエース君に聞いてみた。
「ねえ、エース君。今日、楽しかった?」
「はい。ミカ様が楽しそうにされていたので、私も楽しかったです」
……。
……そっか。
エース君も、楽しかったんだ。
それを聞いて、あたしは嬉しくなった。
また一緒に出かけたいな。
今度は、もっと遠くまで。
……。
……いつか、エース君が行きたい場所にも行ってみたいな。
◯月◯日 晴れ
今日は、エース君がいなくなった。
……。
……。
……いや、正確には、ちょっとした用事で部屋を離れただけなんだけど。
それでも、すごく落ち着かなかった。
いつもなら、部屋のどこかにエース君がいる。
お茶を淹れてくれたり、書類を整理してくれたり、あたしの話を聞いてくれたり。
でも、今日は用事があって、しばらく戻ってこなかった。
最初は、普通に待っていた。
そのうち帰ってくるだろうって。
でも、時間が経つにつれて、なんだか不安になってきた。
……何かあったのかな?
仕事で困っているのかな?
誰かに嫌なことを言われていないかな?
もしかして、怪我をしたんじゃ……。
……。
……。
……あたし、何を考えているんだろう。
まだ帰ってきていないだけなのに。
なのに、こんなに心配になるなんて。
その時、扉が開いた。
「ただいま戻りました、ミカ様」
エース君だった。
いつも通りの、落ち着いた声。
いつも通りの、優しい笑顔。
……。
……よかった。
本当に、よかった。
気がついたら、あたしは立ち上がっていた。
「エース君!」
「はい?」
「遅いよー!」
「申し訳ありません。予定より少し時間がかかってしまいまして」
「……心配したんだからね!」
口に出してから、気づいた。
……あ。
……言っちゃった。
エース君は、少し驚いたような顔をした。
それから、優しく微笑んだ。
「ご心配をおかけして、申し訳ありません」
……違う。
謝ってほしかったわけじゃない。
ただ、帰ってきてくれて嬉しかった。
あたしのそばにいてくれて、安心した。
……。
……。
……ねえ、エース君。
あたし、あなたが思っているより、ずっとあなたのことが大切みたい。
自分でもびっくりするくらい。
あなたが怪我をしたら嫌だ。
あなたが悲しんでいたら、何とかしてあげたい。
あなたがいなくなったら……。
……。
……。
……。
そんなこと、考えたくもない。
だから。
だから、ずっとあたしのそばにいてね。
……なんて。
今はまだ、言えないけど。
◯月◯日 雨
今日は雨だった。
外に出られないから、部屋で過ごしていた。
ナギちゃんも来てくれて、三人でお茶を飲んだ。
……。
……。
……。
あれ?
最近、日記にエース君のことばっかり書いてない?
いやいやいや!
そんなことないよね!
ほかにも色々あったはずだし!
……。
……。
……。
……でも、今日もエース君の話。
だって、今日は嬉しいことがあったんだもん!
あたしが少しだけ落ち込んでいたら、エース君が気づいてくれた。
「ミカ様、何かありましたか?」
「……え?」
「少し元気がないように見えましたので」
……。
……。
……。
どうして分かったの?
あたし、自分では普通にしていたつもりだったのに。
ナギちゃんにも気づかれていなかったのに。
エース君は、すぐに気づいてくれた。
あたしが理由を話すと、エース君は静かに聞いてくれた。
それから、
「ミカ様がどのような気持ちであったとしても、無理に明るく振る舞う必要はないと思います」
って。
……。
……。
……。
そんなこと、言われたことなかった。
あたしは、いつも元気でいなきゃいけないと思っていた。
笑っていれば、周りも安心する。
明るく振る舞っていれば、余計な心配をかけずに済む。
だから、落ち込んでいても、できるだけ笑っていた。
でも。
エース君は、無理に笑わなくてもいいって言ってくれた。
その言葉が、胸に染みた。
……。
……。
……。
あたし、エース君のことが好き。
……うん。
もう、認めちゃおう。
好きなんだと思う。
どんな好きなのかは、まだ分からない。
でも、エース君がそばにいてくれると安心する。
エース君が笑ってくれると嬉しい。
エース君が困っていたら、助けてあげたい。
エース君が傷つくくらいなら、あたしが代わりに……。
……。
……。
……。
……ううん。
それは、駄目。
エース君は、きっとそんなことを望まない。
だから、あたしはあたしにできることをしよう。
エース君が困った時には、あたしが助ける。
エース君が悲しい時には、あたしがそばにいる。
エース君が笑えない時には、あたしが笑わせてあげる。
……。
……。
……。
……えへへ。
なんだか、ちょっと恥ずかしいね。
◯月◯日 晴れ
今日は、ちょっとした事件があった。
学園の外れで、武装した集団が暴れていたらしい。
正義実行委員が現場へ向かったものの、相手は重火器を持ち、建物の陰から銃撃を繰り返していた。
銃弾を受けても、キヴォトスの生徒は簡単には倒れない。
だからこそ、銃撃戦が長引くこともある。
今回も、正義実行委員が負傷者をかばいながら応戦し、なかなか決着がつかなかったそうだ。
……。
……。
……。
その時、エース君がいなくなった。
あたしが別の用事をしている間に、気づいたら姿が見えなくなっていた。
ナギちゃんに聞いても、分からないと言う。
……。
……。
……。
少しして、事件が解決したという知らせが入った。
武装集団は全員拘束され、正義実行委員にも大きな被害はなかったらしい。
そして、現場にいた生徒たちは、口々に同じ人物のことを話していた。
青と金の装甲をまとった、謎の戦士。
魔法陣のようなものを展開し、光の盾で銃撃を防ぎ、空中から現れた武器で敵の重火器を弾き飛ばした。
さらに、光の拘束具で敵を捕らえ、正義実行委員が安全に制圧できるようにしたらしい。
……。
……。
……。
ねえ。
もしかして。
……。
……。
……。
いや、まさかね。
エース君は、ただの執事だもん。
……。
……。
……。
……でも。
事件が起きていた時間、エース君はどこにいたんだろう?
帰ってきたエース君に聞いてみたけど、
「少し用事を済ませておりました」
って言われただけだった。
……。
……。
……。
気になる。
すっごく気になる!
でも、エース君が話したくないなら、無理に聞き出すつもりはない。
それに、あたしはエース君を信じている。
……うん。
信じてる。
だから、いつか自分から話してくれるまで、待っていようと思う。
ただし!
何か危ないことをしているなら、ちゃんと相談してほしい。
これは主人としての命令です!
……。
……。
……。
……なんてね。
◯月◯日 晴れ
今日は、エース君と約束をした。
……え?
何の約束かって?
それはね。
これからも、ずっと一緒にいてもらうこと!
……。
……。
……。
いや、もちろん、執事としてのお話だよ?
でも、それだけじゃない。
あたしは、エース君に言った。
「ねえ、エース君。これからも、あたしのそばにいてくれる?」
エース君は、少しだけ驚いていた。
それから、いつものように丁寧に頭を下げた。
「私でよろしければ、喜んで」
……。
……。
……。
えへへ。
嬉しい。
すっごく嬉しい。
それから、あたしは思い切って聞いてみた。
「ねえ、エース君。あたしのこと、どう思ってる?」
……。
……。
……。
……言っちゃった!
とうとう聞いちゃった!
エース君は少し考えてから答えた。
「ミカ様は、明るくて、行動力があって、周囲の方を大切にされる方だと思います」
……。
……。
……。
そ、そういうことじゃないんだけどなー!
でも、エース君らしい答えだと思った。
あたしのことを、ちゃんと見てくれている。
そう感じたから。
だから、あたしは笑った。
「そっか! じゃあ、これからもよろしくね、エース君!」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
……。
……。
……。
あたしのナイト様。
あたしを守ってくれる人。
あたしが、守りたいと思う人。
いつか、エース君にも伝えたい。
あたしがどれだけ、あなたのことを大切に思っているのか。
今はまだ、言えないけど。
……。
……。
……。
いつか、きっと。
* * *
夜。
トリニティ総合学園から離れた街の一角。
人目につかない小さな宿泊施設の一室で、一人の女が資料を広げていた。
その女の名は、雷帝。
ゲヘナ学園の頂点に立ち、独裁的な支配体制を築いている人物である。
彼女は今、トリニティにいた。
もちろん、正体を隠して。
髪型も服装も普段とは変え、身分を偽装している。同行する者も最小限に抑え、ゲヘナとの繋がりを示す物品は持ち込んでいない。
万が一にも、トリニティ側に自分の存在が知られるわけにはいかなかった。
「……神城エース」
雷帝は、一枚の写真を見つめていた。
写っているのは、黒髪黒目の男子生徒。
聖園ミカの隣に立ち、執事服を身につけている。
写真の隅には、別の資料から切り取られた、青と金の装甲をまとった戦士の姿が添えられていた。
「間違いないな」
報告を持ってきた部下が頷く。
「はい。トリニティで発生した複数の事件に、同一と思われる装甲者が介入しています。目撃者の証言にあった装備や戦闘方法は、陸岡エースが使用していたものと酷似しています」
「そうか」
雷帝は、写真を机に置いた。
かつて彼女は、陸岡エースの力を手に入れようとした。
しかし、陸岡エースが死亡した直後、彼女が持っていたベルトとバックルは忽然と消失した。
まるで、最初からそこには存在していなかったかのように。
部下たちを使って捜索させたが、手掛かりは何一つ見つからなかった。
その失敗を、雷帝は今も忘れていない。
「陸岡エースの時は、他人に任せすぎた。状況を把握する前に動き、結果として何も得られなかった」
雷帝は立ち上がった。
「今回は違う。私自身が接触し、確実に回収する」
「ですが、トリニティでの行動が発覚すれば、ゲヘナとの関係に影響が――」
「だから、正体を隠して行くのだマヌケ」
冷たい声に、部下は口を閉ざした。
「私がここにいることを知る者は、必要最低限でいい。トリニティの生徒に勘付かれるな。神城エースにも、こちらの正体を悟らせないよう」
「承知しました」
雷帝は、もう一度写真へ視線を落とした。
「陸岡エースと同じ力を持つ者が、今度はトリニティに現れた。これは偶然ではない」
彼女の目に、執着の色が浮かぶ。
「仮面ライダーの力は、私が手に入れる。今度こそ、必ずな」
窓の外では、夜の街が静まり返っていた。
その静寂の中、雷帝の計画が動き始めていた。
* * *
同じ夜。
トリニティ学園内の一室で、数人の女子生徒が密談を交わしていた。
机の上には、ミカとエースが一緒に歩いている写真が置かれている。
「……最近、ミカ様はあの執事を随分と気にかけているようね」
「ええ。何をするにも一緒。まるで、あの男がいなければ何もできないみたい」
「それだけ信頼されているということなのでしょう」
「だからこそ、利用価値があるのよ」
先頭の女子生徒が、写真を指先で叩いた。
「神城エースを困らせれば、ミカ様は必ず動く。あの人は、あの執事を見捨てられない」
「でも、前回は失敗したじゃない」
「だから、次は確実に成功する作戦を立てた」
女子生徒は、別の紙を取り出した。
そこには、学園外の連絡先らしき情報が記されていた。
「ゲヘナには、トリニティを快く思っていない連中がいる。あちらに任せれば、私たちは何もせずに済む」
「……本当に協力してくれるの?」
「相手にも利益があるからね。こちらは必要な情報を渡すだけ。あとは、ゲヘナの生徒が勝手に動いてくれるわ」
「それなら、私たちは無関係というわけね」
「そう。何が起きても、私たちは知らない。ゲヘナの生徒が勝手に騒ぎを起こした。それだけよ」
彼女たちは、互いに顔を見合わせた。
やがて、誰からともなく薄い笑みを浮かべる。
「……ミカ様には、少し痛い目を見てもらわないとね」
その言葉に、誰も異を唱えなかった。
彼女たちが望んでいるのは、ミカへの復讐。
そして、エースを利用して、彼女の立場を揺るがすことだった。
だが、彼女たちは知らない。
自分たちが利用しようとしているゲヘナの生徒たちが、必ずしも彼女たちの思い通りに動くとは限らないことを。
そして、雷帝という別の存在が、すでにトリニティで神城エースを狙っていることを。
ミカの日記帳には、今日も楽しそうな言葉が綴られている。
明日もエースと一緒に過ごしたい。
エースが笑っていてほしい。
ずっと、そばにいてほしい。
そんな、ささやかな願い。
しかし、その願いのすぐそばで、静かに悪意が膨らみ始めていた。
――そして、エースはまだ知らない。
自分が大切に思い始めた少女を守ろうとする行動が、やがて彼女の心に深い傷を残すことになるのを。
──────────────────────────────
『A』─情報
エースは、基礎スペックが高いため、家事、戦闘、執事業と、基本何でも卒なくこなすことができる。(執事業は、やってるうちに覚えた。)
こ〜れだから頭トリニティはよォ