アルドノア・ゼロ ファイルs   作:デルタイオン

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Ep.2 それは奴の名

民間人が多数避難したこの基地だが、その大半が高齢な人ばかりであった。

 

また、軍人も先の戦闘により負傷者、死傷者が多数出たことによって学生が出るしか無い事態に切迫していた。

 

火星騎士の降下からまだ20時間ばかりだが、既にほぼ大半の主要作戦基地は落とされていると考えていた。それはあながち間違いではない。

 

世界各地の地球連合基地は防衛の為に全戦力を注ぎ込んだ。しかし、地球降下前に防ぐ事が出来なかったその結果通信網は降下時の威力によりほぼ全てが断絶。現在新水原以外への無線、有線による通信で応答できる所は無かった。

 

しかし、火星騎士が降下する前に送られてきた座標。非常事態の際の秘匿作戦基地。

 

それは、運良く保管されていた。

 

ここは作戦司令室から少し離れた会議室。

 

そこへ今動く事のできる全ての軍人、かつ大人が集められていた。

 

「これより約20時間前。火星騎士の降下に伴い、秘匿文章の開封を行いました。その結果、我々が向かうべきは中国の山岳地帯にある76地下作戦基地。そこへ民間人を移送します」

 

「中国……?」

 

「民間人をって……」

 

「こんな状況でどうやって移送しろと……」

 

「車両も無限には無い……」

 

「民間人を取捨選択しろって……?」

 

予想通りの反応とばかりに焦りもなく、冷静にその言葉に一つ一つ耳を傾ける。

 

(やはり、一番気になるのは移送する車両の数か……)

 

残念ながらこの基地の車両の数だけではここの民間人を全て移送する事は出来ない。

 

しかし、方法というより、可能性がある。

 

「それに伴い、民間人を全て移送させる為には車両を確保する必要があります。民間車両を掻き集めても全ては移動出来ません。そこで、近場の航空基地から車両を拝借します」

 

「………それって」

 

「ええ。あの火星カタフラクト。トリケラスニクスの居る石崖街を通る事になります。それに、拝借する予定の車両が通れるルートは3つ。街中を通るルート。山岳部を通るルート。山岳部を迂回するルートの3つです。予定では山岳部を迂回するルートを選びますが、この道は火星騎士降下の際の津波に晒された可能性があります。調査隊にてこのルートを調査した後に通る事が不可能であった際。山岳部を通ります」

 

「しかし、この山岳部を通るルート。街から丸見えじゃないか?」

 

「ええ。そこで、残りの戦力を全て投入した陽動部隊を出します。現在、陽動部隊は編成中になっています」

 

誰が乗るのか。現状をよく理解している人ほどもう理解してしまっているだろう。

 

学生達だ。もう戦闘を行える人間は学生しか居ない。

 

先の戦闘でカタフラクト並びに攻撃車両部隊も出て全滅。

 

救助に行った結果生き残っていたのはあの血の医務室に寿司詰めな彼等だけだ。

 

「それは……本人は」

 

「本人からの要請です。もう、時間は無いでしょう」

 

「……そう、か―――」

 

終わらない悲劇の声はまだ、我々の足首を掴んで離さない。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

この基地の学生は62名。内カタフラクトを操縦可能な生徒数は23名。

 

だった。

 

その日は皆家か外に出ていた。

 

この基地へ来ていたのは補講で呼ばれた生徒と、そのサポートとして呼ばれた生徒のみ。

 

死傷者3名、重傷者1名、軽傷者5名、行方不明者46名。

 

内、カタフラクト操縦可能な生徒。3名。

 

基地の少し外れ。運動場に集まった7名は次に来た司令、副司令へと敬礼を返した。

 

「よろしい。直れ」

 

揃った勢いの流れが緊張を正しくこの身へ流れる。

 

誰も詳しい現状を知らなくとも、予想や予感ぐらいわかるものだ。

 

「皆、予感はしていただろうが、もうこの基地に戦える人員は居ない。

はっきりと言おう。戦ってもらう。

例え不出来であっても、ここでは生き残る為に全てを出し切るつもりだ。

もう既に3名が死亡した。この中には交流のあった者も居るだろう。

しかし、今悲しむのは惜しい。安全な地で埋葬を行えるまで生き延び、弔わなければならない。

その為には諸君らの献身が必要だ。死ぬ可能性もある。しかし、このままでは諸君以外の人々も死ぬ。

ここに安全は無い。あそこに避難している人達もだ。

すべての人々に危険が差し迫っている。その危険を避ける為に、力を貸して欲しい。

以上の7名を臨時学徒として徴兵する。

芽生(めぐみ)晴介(はるすけ)。階級は臨時繰り上げにより軍曹

高坂(こうさか)(みのり)。階級は規定内最高位繰り上げにより兵長。

加藤(かとう)(さき)。階級は規定内最高位繰り上げにより兵長。

兜坂(とさか)亮介(りょうすけ)。階級は規定内最高位一等兵。

新崎(しんざき)瞳美(ひとみ)。階級は規定内最高位一等兵。

以上5名は戦場へ出陣する者達とする。

続いて特例処置により整備士として以下2名を徴兵する。

新崎(しんざき)聡美(さとみ)。階級は二等兵。

国崎(くのさき)凛奈(りんな)。階級は二等兵。

以上2名は整備士として徴兵する」

 

「礼!!」

 

ザッ……!!

 

こうして徴兵された彼等だが、やはりその顔付きはまだまだ青く若い。

 

緊張が雁字搦めに染み付いて離れない。

 

だが、各々にはそれ以上に大切なものがあった。

 

ある人は好きな人を守る為。

 

ある人は身近な人を守る為。

 

ある人は信念を貫き通す為。

 

ある人は自身の身を守る為。

 

 

 

 

そして、ある人は記憶を取り戻す為に……





この基地の予備機

予備機としてのスレイプニールは特に代わり映えしない普通のカタフラクト。

兵装もスレイプニール・アレイオン双方共に共通の物を使用し、75ミリハンドガン、75ミリサブマシンガン及びマシンガンのアンダーバレルに装着可能なグレネードランチャー、遠距離狙撃用120ミリライフル、格闘用ナイフなどを装備可能。

また、武装開発の一環として当基地に配備されている六式誘導弾頭弾(赤外線照射式無線誘導弾頭無反動砲)や一式近接陸刀『カガチ』が配備されており、高坂機には六式誘導弾頭弾が。加藤機には一式近接陸刀が装備されており、主人公機には機体構造の関係上装備不可。使用は可能である。
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