アルドノア・ゼロ ファイルs   作:デルタイオン

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Ep.3 彼が願うべからず

火星カタフラクトにはそれぞれに特別な能力がある。

 

あの日の時もそうだった。

 

「歩兵でなんとかなるわけないだろ!?」

 

「小銃でも何でも良い!!気を引けば市民は助かる!!」

 

「隊長!!ここに逃げ遅れた市民が……!?」

 

崩れ落ちたビルが良い逃げ場所になった。

 

突然の宣戦布告に市民の避難は間に合わず、この戦場に未だ何百人もの人が居る。

 

それでも火星カタフラクトは止まらない。始まった事は、進み終わる所まで行ってしまう。

 

『クソ!!市民を逃がせサーブ2!!ハブ1!!喰らいつくぞ!!』

 

『メディック!!誰か来てくれ!!し、死んでしまう!!』

 

『なんで攻撃が通じないんだ!!』

 

『弾丸が消失……いや、消滅してるんだ!!?』

 

『化け物が……!!』

 

なんと言ったって時間は止まらない。

 

現実は非常にも平等に与えられている。

 

公平じゃないこの戦力比にもはや成す術は……

 

『サーブ2。歩兵を一旦下がらせてくれ。以降はこちらがなんとかする』

 

『アレイオンか!?頼む。5分で撤退する!!』

 

『なんとかしてみせる。全機コンバット、フォーメーション《ボックス》』

 

『『『ラジャー』』』

 

4機のKG-7アレイオンが火星カタフラクトを取り囲む。

 

『ここで抑えるぞ。学生達も居る』

 

『隊長。作戦通り予定進路を変えてもそこには……』

 

『言うな。人数が一番多い所が最優先だ』

 

『嫌な役目はいつも下からだ』

 

『予定通りやるぞ。合図に合わせろ』

 

火星カタフラクトが取り囲まれる。

 

しかし、悠々と地表を漂う火星カタフラクトはそれをただ見てるのみだった。

 

『………ファイア!!』

 

ドゴゴコゴゴゴゴッ!!ドゴゴゴゴッ!!

 

2機のアレイオンが発砲を始める。しかし、全ての弾は揮散して消滅する。

 

『貫け!!』

 

しかし、それは陽動。

 

本命の遠距離狙撃用120mmライフルの弾丸が右脚間接部を狙う。

 

ドゴォ!!

 

直撃。火星カタフラクトの間接部から炎が立ち昇る。

 

だが………

 

『ダメージが足りない……』

 

まだ動かせるようで、表面上の火災も直ぐに消し止められてしまった。

 

『全機散開!!』

 

すぐさま散開し、敵機からの攻撃に対処しようとするカタフラクト隊。

 

62mmアサルトライフルによる攻撃は継続し、次の展開を作る。

 

しかし、敵カタフラクトも黙っているだけでは無い。

 

『なんだ?』

 

右手を挙げた。

 

敵カタフラクトの右手から水のような何かが頭上へ飛び出し、空中で炸裂した。

 

『全機防御!!』

 

何が起きたのか理解はできないが、攻撃であるはず。

 

そう考えすぐさま最寄りのビルへ隠れ様子を見る。

 

炸裂したものから多数の水が飛び出る。

 

それは重力に従って構造物へ降り注ぐ。

 

「嫌な予感がする……」

 

悪い予感が軽く身を突く。

 

弾丸の消滅。あの消滅は消えるというより溶けるが正しい。

 

揮散する弾丸。飛び出した液体。

 

ふと横の建物を見た。溶けたかのように欠けたコンクリートが目に映る。

 

『ッ!!?全機あの雨には当たるな!!』

 

『なに?』

 

しかし、遅いかな。

 

一粒の雨がアレイオンの胸部へと張り付く。

 

それは、光が漏れ出すかのように

 

『佐藤!!?』

 

爆発した。

 

《佐藤機:胸部破損 大破》

 

『何が起こった!?』

 

『わかりません!!全機隠れる事に集中してて……』

 

『クソ!!狙撃用のライフルの銃身が溶けてる!!腐食性の液体か……』

 

『多分、奴の周囲にその液体が漂っています。それがアクティブディフェンスシステムとして機能してます』

 

『あと3分だ。最低3分は攻撃をさせる暇を作らせるな。グレネードはそれまで使うな!!セーブウェポン、ボム!!』

 

『『ラジャー!!』』

 

チームの最低限3人で行うボックス戦術。

 

先程の攻撃のように陽動と本命攻撃による多方面からの攻撃戦術。

 

常に1人が監視による指示を行い、場合によってはローテーションにより攻撃の方向を定まらせない。

 

『こっちを向け!化け物!!』

 

ドゴゴコゴゴゴゴッ!!ドゴゴゴゴッ!!

 

物陰から現れたアレイオンの攻撃に火星カタフラクトは見向きもせず、その場に留まる。

 

まるで何も気にせず……いや、他にやるべき事があるかのようにあえて見ないようにしている。

 

『チィ!』

 

痺れを切らした攻撃役が物陰から姿を現し、精密射撃の為にその場に膝を突き停止する。

 

『何かおかしい!?回避しろ!!』

 

『もう一度……ッ!!』

 

死角となる背中を狙った筈だった。

 

火星カタフラクトの背面装甲が吸い取られるように宙へ浮かび出し、それがある一定の空間まで飛び出した瞬間。

 

 

 

 

《戸熊機:胸部破損 大破》

 

 

 

 

凄まじい速さで飛び出し、後ろの障害物も含め正面装甲を真っ向から貫いた。

 

『貫通したか!?』

 

『あの野郎!!』

 

『待て!!早まるな!!』

 

アレイオンの爆発に紛れ接近した味方は格闘用ナイフを取り出し、翼を展開して高速で接近戦を仕掛けた。

 

『クソ!!あと1分!!』

 

退避完了まで残り52秒。接近戦を見守りつつ、近くまで飛んできたアサルトライフルを取りに移動を開始した。

 

『いくら溶けようとも!!質量ではなぁ!!』

 

最も質量の多いライフルを持った左腕を火星カタフラクトへと勢いのまま足へと突き刺す。

 

それは溶けてゆく。あまりにも軽く綿あめように液体へ変わってゆく。

 

マガジン内部の火薬までも爆発はしない。完全に溶けてしまい発火点ほどの温度も発生していないからだ。

 

拳以降の腕までも溶け出すが、そこまでゆくと突然引っ掛かり始める。

 

《損害報告:左腕喪失》

 ■

■■

 ■

■ ■

 

『出力さえあれば!!』

 

《出力モード:マニュアル 右腕集中》

 

左腕を引き抜き、右腕の格闘用ナイフの振動波を敵の足元へ最大出力で突き刺す。

 

その威力は根元にまでしっかりと刺さり、明確な損害を与えている事が一目瞭然な程。

 

だが、それは唐突に始まった。

 

《電装障害 12700個 主要機能 機能障害 結果 58個 総合18%の機能低下》

 

『なんだ……溶けてる!?まさか……』

 

《Emergency...脱出用炸裂ボルト 通電消失》

 

『もういい!!離脱しろ!!』

 

『間に合いませんよ!!あとは頼みます!!』

 

《頭部システムダメージ甚大》

 

ジワジワと全身が溶け出す。

 

外装だけでなく、装甲から露出しているフレーム。その更に中へ組み込まれている駆動系までもが溶け出している。

 

『ゲホッゲホッ……クソ………せめて道連れにして……』

 

『もういい!!駄目だ……ここからでは当たる………』

 

射線上には味方の機体。その味方もあと数十秒の命だろうか。それとも数秒か。

 

『隊長!!子供達によろしくと!!』

 

『村上ッ!!?!?』

 

《動力炉機能低下 残バッテリー駆動想定残り34秒》

 

ナイフを抜き、足ではなくコックピットがあると思われる胴体へ飛び上がり狙いを定める。

 

『空気中に散りばめた酸を使っているのならば!!』

 

突き刺したナイフは左腕よりは溶けず、半分残った刀身が装甲へ突き刺さる。

 

もし、装甲を覆っていた酸を空気中に吐き出したのならば、覆っていた酸は少なくなる。つまり、今ならば何処でも攻撃が通る。

 

『やはり……隊長!!やってください!!今ならコイツの装甲を貫けれるはずです!!』

 

『駄目だ!!脱出しろ!!まだ間に合う!!』

 

『もうこれ以上!!失う訳には!!私は!!

 

《コード244573 認証完了 自爆シークエンス起動》

 

『行きます!!』

 

《お疲れ様でした》

 

爆風。破片。炎。

 

全てが目に見えていた。

 

破壊される。したはずの物の残骸の奥が爆煙で見えない。

 

だが、意志は、行動は、肉体は動いた。

 

この一撃に、全てを賭けて。

 

「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!」

 

2丁のマシンガンから排莢される薬莢。

 

前へ進み続ける足。

 

仲間を撃っている。否、その死体があるはずの所へ撃っている。

 

この一瞬。この行動をする事。

 

それは勝ちだ。勝てば良い。全てが……

 

 

 

 

 

この全ての死に意味があると声を出す事が出来るのだから!!

 

 

 

 

 

ガァン!!

 

 

金属にぶつかり、機体は急激に速度を失った。

 

残骸……いや、アレイオンよりも大きい。

 

 

(火星カタフラクト!)

 

 

思考の一文。瞬時に照準を再度合わせ、確実に当てる。

 

発射するはマシンガンの下部に取り付けられたグレネードランチャー。

 

至近距離射撃によりトリガーを引いても反応は無い。高位のコンピューター制御が自滅を防ぐ為のロックを行なっている。

 

だが、今は必要無い。何があろうとこの火星カタフラクトを破壊するのだ。

 

2度目のトリガーによるコマンド認証がカタフラクトの指先にまで上位命令として伝達される。

 

まるで風船を叩いたかのような音と同時に装甲の厚い戦車すらも破壊できる威力のグレネードランチャーが射出される。

 

そして、敵の装甲にぶつかり、内部の衝撃信管に伝達されたその衝撃は爆発を招く。

 

無論、敵とぶつかる距離で放てば敵味方諸共無事では済まない。

 

バゴン!!

 

アレイオンの装甲外部から突き抜けるような音が響く。

 

それと同時にメインカメラやサブカメラ全てがバグったかのように赤色と緑色に点滅を繰り返している。

 

だが確実に当たった。仕留めた。

 

爆発による衝撃波から回復したカメラに映る敵の姿はもう既に全損の域に達していた。

 

こちらも動く事は出来ない。

 

「やった……」

 

自然と溢れた一言。

 

コックピットハッチのロックを解除し、外へ出る。

 

煙や謎の異臭が辺りを漂う。

 

その中央にあるは上半身が完全に破壊され、今や下半身のみが確認出来るほどに壊れた火星カタフラクトとアレイオン。

 

悲惨な戦闘を物語るかのようにオイルや鉄屑が滴り落ちる。

 

確実に死んだ。もう、動いていない。

 

「取ったぞ………仇を。何故死ななくてはならない!?クソ!!」

 

本来であれば老い先短い奴から死ぬのが定石だ。家族も居た。友人も、守るべき者たちが。

 

「勝った!!勝ったぞ!!あの日散っていった仲間達!!市民の焼け焦げた顔が!!全ての仇が!!」

 

あの日起きた。もう昔の出来事。

 

あの日の惨状が記憶の奥底で眠っていた。その全ての仇を。

 

ここで………

 

取ったはずだ。

 

その筈だ。

 

だが何故だ。何故動く。

 

何故………

 

「馬鹿な…………」

 

何故、あの火星カタフラクト(恐怖)動いている(生きている)

 

一体……どんな化け物がこの世界に居ると思っていた?

 

即死する毒?どんな物でも溶かす酸?

 

それとも、殺せない不死身の存在か?

 

「クソッタレが……」

 

火星カタフラクトがこちらを見つめる。

 

全てが無かった事になる。

 

その不気味な()で此方を見つめている。

 

破壊した全てが復元されていく。

 

どれだけ殺しても。腕の一本さえありゃ復活するんだろうか?

 

それとも……原子の一粒からでもか?

 

佐藤……戸熊………児島…………

 

無駄だったのさ。戦う事が、死んだ事が。

 

淡い夢が弾けるかのように。

 

今、人が消え去った。

 

 

 

 

―記録終了―

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