キヴォトス最硬の神秘   作:たらこ饅頭

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いざ行かんアビドス

"あっっっついぃぃぃ……"

 

 

『頑張ってください先生!もうすぐ迎えの生徒さんが来てくれるはずです!』

 

 

日差しが降り注ぐ中、先生はアビドスへの出張に来ていた。コウへの質問のおかげで広大なアビドス砂漠で遭難するような事は起きていないが、それはそれとしてこの日差しに先生は苦しめられていた。

 

もうすぐで迎えに来てくれる生徒が来るはずだと、シッテムの箱の中にいるアロナに励まされながら辛抱強く待ち合わせ場所で待っていると、

 

 

キキッ…

 

 

「……ん、コウ先輩が言ってた『先生』だよね?」

 

 

自転車に跨った生徒らしき人が話しかけてきた。コウからは事前にアビドス生徒の名前と写真を見せてもらっていたので、目の前の生徒が目的の人物と確信する。

 

 

"……貴方は、シロコ……で、あってる……?"

 

 

「えっと……これ飲む?飲みかけだけど……」

 

 

"お願い……もう喉が、カラカラで……"

 

 

まさか満身創痍になっていたとは思っていなかったのか、シロコは急いで携帯していたスポーツドリンクを先生に渡す。すると天からの恵みを貰ったかのように恍惚とした表情を浮かべて飲み出した。

 

 

"んく……はぁ〜……助かったぁ。砂漠を舐めてたよ、もうちょっと水を多めに用意しとくんだったなぁ"

 

 

「ん、次はそうした方がいい。それじゃあ先生…学校まで送ってくから、乗って」

 

 

"2人乗りね。なんだか懐かしい気分……よいしょ"

 

 

「それじゃあ、しっかり捕まってて」

 

 

"んわぁぁぁぁ!?はっっっっや!!!"

 

 

おおよそ自転車とは思えない速度で進んでいく彼女に、死に物狂いで捕まる先生。大胆な始まり方だったが、女子高生特有のエネルギッシュさに当てられたからか、学校に着くまで先生に疲れはあまり見られなかった。

 

 

 

 


 

 

 

 

「……ん、到着。ここが私達の学校」

 

 

"スゥ……あっ、着いたんだね……ん〜!!ようやく着いたぁ〜!!"

 

 

軽く伸びをしてから辺りを見渡す。見た目は先生の知る一般的な学校のようだが、所々に残された砂が異常さを物語っている。この辺りはそこまで砂はないようで、それでも積もるところは積もっている。

 

 

"……?屋上に誰かいるみたいだけど……こんにちわー!!"

 

 

こちらの声かけに気づいたのか、手を振り返してくる生徒。よくみたらあれはコウだった。そのまま屋上から飛び降りてきて……

 

 

"えっ危ない!!"

 

 

「よっと…やっほー先生、今日はわざわざ来てくれてありがとうございます。シロコも出迎えお疲れ様」

 

 

「ん、良い運動になった」

 

 

コテコテのスーパーヒーロー着地を決めて登場したコウに驚愕の視線を向ける先生。あとで聞いたが、あのぐらいの高さならシロコも出来るらしい。相変わらずキヴォトスの生徒は頑丈である。

 

 

「みんな集まってるんで、案内しますよ。着いてきてください」

 

 

そう言われてコウの後を着いていく。程なくして、アビドス生徒会という札が掲げられた部屋に着いた。隣の部屋には守備力挑戦部の看板もある。

 

 

「戻ったぞー」

 

 

「ん、ただいま」

 

 

「シロコちゃん、コウ先輩、おかえりなさ〜い☆」

 

 

「……動画で拝見しました。貴方がシャーレの先生ですね」

 

 

"あの動画見てくれたんだね、ありがとう"

 

 

「こちらにお越しいただき、ありがとうございます。支援の件はとても助かりました!」

 

 

「……あれ、アヤネちゃん。ホシノ先輩は?」

 

 

「ホシノ先輩なら先生が来るまで仮眠をとると……」

 

 

「ホシノなら屋上で寝てたぞ。声は掛けたんだけどな」

 

 

「それ絶対起きない奴じゃないの!?……私、起こしてくる」

 

 

今出て行ったセリカと、寝てるらしいホシノという子を合わせるとこれで全員揃ったのだろうか。そう思っていると少しして後ろのドアが勢い良く開かれた。

 

 

「みんな!!ヘルメット団が近くまで来てるよ!!もうすぐで先生が来るって時にどうして……ひぃん……」

 

 

「ユメ先輩……先生ならもう来られてますよ?」

 

 

「うぇ?……あっ本当だ……えっと、卒業生の梔子ユメです!アビドス復興会社を企業してます」

 

 

"よろしくね、ユメ。……それはそうと、ヘルメット団が来てるって聞いたけど"

 

 

「そうだよみんな!きっとすぐそこまで……ひゃあ!?」

 

 

気付けば校門前には多数のヘルメットを被った生徒達がおり、ここは私達の場所になると高らかに宣言をしていた。

 

 

「ん、噂をすれば」

 

 

「来ちゃいましたね〜」

 

 

「武装集団の接近を確認しました!カタカタヘルメット団のようです!」

 

 

「ホシノ先輩を連れてきたわ!先輩、寝ぼけてないで起きて!」

 

 

「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよ〜」

 

 

「……十分起きる時間だと思いますが?先生も来ていますし」

 

 

「うへ……ケイちゃんは辛辣だなぁ…くそ〜、おちおち昼寝も出来ないじゃないかー。ヘルメット団めー……」

 

 

「弾薬と補給品は十分にある。すぐに出るよ」

 

 

「は〜い、みんなで出撃です☆」

 

 

その言葉が合図になってか、生徒みんなが部屋を出て行く。残ったのはユメと、オペレーターを担当するアヤネだけになった。

 

 

"ユメはみんなと行かないの?"

 

 

「ホシノちゃんに言われてるんです、私が安心出来るように自分達でここを守りますって。それに……」

 

 

"それに?"

 

 

「私も、大好きなみんなを信じてるからです!!」

 

 

 

 


 

 

 

 

「ん……今日は数が多い」

 

 

「向こうも本腰を入れてきたのかなぁ……数で押せば勝てるって思われてるとしたら、ちょっと痛い目を見てもらわないとね〜」

 

 

「アヤネ、狙撃ポイントに付きました。いつでも狙えますよ」

 

 

『はい、ケイ先輩は後方に指揮を行っている人を重点的に狙ってください。ホシノ先輩とコウ先輩は前に出て煽動の後に撃退、シロコ先輩とセリカちゃんは中距離から迎撃をお願いします』

 

 

「私はいつも通り、アヤネちゃんの合図次第で撃ちますよー☆」

 

 

「ん、了解」

 

「分かったわ!」

 

「は〜い」

 

「あいよ、いつも通りね」

 

 

それぞれが定位置に付き、迎撃を開始する。程なくして、ヘルメット団が被弾している声が響き出した。

 

 

「……あいつら士気が全然下がってないんだけど!?補給は無くなってきてるはずじゃなかった?」

 

 

「私に言われても……アダッ!?」

 

 

「!?」

 

 

「すみません、隙だらけだったもので。……なんて、聞こえてないでしょうけど」

 

 

随分とユーモアに溢れるようになったもんだと、コウはケイを見て感心した。なんだか子供の成長を見守る親にでもなった気分だ。

 

 

「くっそ!!撃て撃てー!!」

 

 

「よいしょっと……そんなんじゃ、おじさんは倒れないよ〜?」

 

 

「うぉぉぉ!!全力反復横跳びぃぃぃ!!」

 

 

『"えぇ……コウ、真正面から攻撃受けてない?大丈夫なの?"』

 

 

『コウ先輩なら大丈夫です。ホシノ先輩、守備はどうですか?』

 

 

「おじさん1人でも何とかなりそうだよ〜。あの戦車が厄介だから、誰かにお願いしたいかな」

 

 

『分かりました。コウ先輩、戦車の相手をお願いします。シロコ先輩とセリカちゃんは引き続き迎撃をしてください』

 

 

「ん、任せて」

 

「これぐらい楽勝よ!」

 

「それじゃあホシノ、そっちは任せた!!」

 

 

コウが戦車に向かって走り出し、それを食い止めようとヘルメット団達がコウに狙いを定める。しかしアヤネはそれを狙っていた。

 

 

『ノノミ先輩!!今です!!』

 

 

「は〜い!ノノミ、いっきまーす☆」

 

 

ノノミのマシンガンが唸りを上げ、ヘルメット団達に襲いかかる。破壊力と殲滅力に秀でたそれは、ヘルメット団達を総崩れさせるのに十分だった。

 

 

「しまっグェッ!!」

 

「いったい!!」

 

「うげぇ!!??」

 

 

『"……これは私の出番はなさそうかな"』

 

 

『みんな〜!ファイトだよ〜!』

 

 

 

 


 

 

 

 

「みなさん、お疲れ様でした」

 

 

「みんな凄かったよ!!」

 

 

"ナイスファイトだったよ、みんな"

 

 

「いや〜……まさか勝っちゃうなんてねぇ」

 

 

「まさかじゃないわよホシノ先輩……勝たなきゃ占拠されるのに…」

 

 

「補給がなかったら、贅沢に弾を使えませんでしたからね。先生には感謝してます☆」

 

 

「久しぶりに自爆特攻したな……戦車の中で手榴弾片手に……ほんと、頑丈な体で良かった」

 

 

「コウ以外あんなことしませんよ、貴方の戦い方をすると命が幾つあっても足りません……それより、離してくれませんか?」

 

 

「やだ」

 

 

ヘルメット団の襲撃を乗り切って、アビドスの面々は部室に戻り休憩中。特にコウは特攻をしたのが響いたのか、ケイを抱き枕にしてソファにだらんと寝転がっている。

 

 

「…先生、少し遅れましたけど、改めてご紹介します。私達はアビドス生徒会に所属しています」

 

 

「厳密には俺は違うんだけどな、守備力挑戦部だし」

 

 

「ん、細かいこと言わない。ずっと一緒にいるから、同じようなもの」

 

 

「……まぁ、そうか…?」

 

 

「それに、それはコウが勝手に作った部活だからね〜。生徒会が部の設立を認めたとはいってないよ?」

 

 

「……マジで?」

 

 

「……」

 

 

不適な笑みを浮かべるホシノにコウは顔を青くする。

 

 

「冗談だよな……?」

 

 

「私が認めてたから心配しないで…?」

 

 

「えっと…私は生徒会にて書記とオペレーターを担当しています、1年の奥空アヤネです。こちらは同じく1年で会計担当の黒見セリカ」

 

 

「どうも」

 

 

「2年の十六夜ノノミ先輩、砂狼シロコ先輩、石依ケイ先輩」

 

 

「よろしくお願いします、先生〜」

 

 

「さっき道端で会ったのが私。……あ、別にマウントを取ってるわけじゃない」

 

 

「……コウがいつもお世話になっています」

 

 

「親目線か何か……?」

 

 

「そして、3年の石依コウ先輩と生徒会長の小鳥遊ホシノ先輩です」

 

 

「いやぁよろしく〜、先生」

 

 

「俺のことはもう分かってるだろうけどな」

 

 

"コウからは色々聞いてるよ。砂嵐のせいで人が居なくなったとか…ヘルメット団達に襲撃されてるとか……苦労して来たんだって"

 

 

「はい、先程のカタカタヘルメット団もその要因です。もしシャーレからの支援が無ければ、今度こそ万事休すってところでした」

 

 

「ほんと、良いタイミングで来てくれたね〜」

 

 

「……まぁ現状の解決にはなってないと思うけどな。あいつら多分また来るし」

 

 

「あ〜、確かに。しつこいもんね、あいつら」

 

 

セリカ達の脳裏にヘルメット団達が想起される。奴らの強みは数の多さと謎のタフネスだ。今までもそれに散々苦しめられて来た。

 

 

「…そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー」

 

 

「えっ!?ホシノ先輩が!?」

 

 

「うそっ……!?」

 

 

「いやぁ〜、その反応はいくら私でもちょーっと傷ついちゃうかなー。おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさー」

 

 

「そうだぞ2人とも。ホシノはこう見えてずっと考えてるんだからな」

 

 

「ホシノちゃんは1番アビドスの事を考えてくれてるよね〜」

 

 

「能ある鷹は爪を隠すというものですね。コウからは良く聞かされていました」

 

 

「……おっほん!…ヘルメット団は数日もすればまた攻撃してくるはず、ここんとこずっとそういうサイクルが続いているからねー」

 

 

「そうですね、今回で諦めるような人達でもないですし…」

 

 

「だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー」

 

 

理にかなっている作戦だった。今日の襲撃はいつもより本気度があったし、こちらが叩くタイミングとしても良い。

 

 

「良い考えですね。ヘルメット団の前哨基地はここから30kmなので、今から出発しましょうか」

 

 

「ん、善は急げってことだね」

 

 

「良いと思います。あちらもまさか今から反撃されるなんて、夢にも思っていないでしようし」

 

 

「そ、それはそうですが……先生はいかがですか?」

 

 

"良いと思うよ。……その代わりに、今回は私が戦闘指揮をしても良いかな?みんなにいいところを見せたくてね"

 

 

「はい!噂にもなっている先生の指揮を、私も見てみたいと思っていたので。ぜひよろしくお願いします」

 

 

「よっしゃ、先生のお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー」

 

 

「それでは、しゅっぱ一つ☆」

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