キヴォトス最硬の神秘   作:たらこ饅頭

24 / 37
対決!便利屋68

『前方に傭兵を率いている集団を確認しました!』

 

 

「あれ……ラーメン屋さんの?」

 

 

"ほんとだね、さっきぶりだ"

 

 

「ぐぐ……」

 

 

アビドス校舎前にて、先生と生徒5人は突如襲来した傭兵と相対していた。*1傭兵達を率いるのはついさっき柴関で意気投合した4人のゲヘナ生徒。それを見てセリカは憤慨している。

 

 

「誰かと思えばあんた達だったのね!!ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!!」

 

 

「あははは、その件はありがと。それはそれ、これはこれ。こっちも仕事だからね〜」

 

 

「残念だけど、受けた仕事はきっちりこなす。公私ははっきりしないと」

 

 

少し前の和気藹々とした雰囲気が嘘のようで、今はお互いが睨みを効かせている。しかし、現時点で既に便利屋68の1人である鬼方カヨコは焦りを感じていた。

 

 

(あれがシャーレの先生……動画でアビドスの生徒と交流があったからもしかしたらと思ってたけど、本格的に支援に回ってたんだ……)

 

 

正直この時点で勝ち目は薄い。あの動画では先生の指揮能力の凄さを語っており、もしもそれが本当だとするならかなり厳しい。ただでさえこっちは指揮が整ってないバイトばかりなのだ。それに加えて、今あの人を敵に回すとまずいことになる。

 

 

(それにあの盾持ちの生徒……見間違いじゃなければ、あれは……)

 

 

「なっ、アルバイトじゃないわ!れっきとしたビジネスなの!肩書きだってあるんだから!私は社長で〜……」

 

 

あぁ、また始まった。そうため息をつくカヨコ。これも彼女の良い所ではあるのだが、もう止まる事はないだろう。横でニヤニヤしているムツキはきっと状況を理解しているはず。

便利屋68のメンバーに社長に着いていく以外の選択肢は元から存在していないのだ。

 

 

「はぁ……社長、ここでそういう風に言っちゃうと、余計薄っぺらさが際立つ…」

 

 

「誰の差し金……いや、なんとなく分かるか。とりあえず黙らせる」

 

 

「え、分かるの?……と、とにかく…総員、攻撃!」

 

 

アルの合図を皮切りに、多数の銃弾が飛び交う。たとえ負け戦だろうとも、手を抜いて良い理由にはならない。

 

 

「死んで下さい死んで下さい死んで下さい死んで下さい!!」

 

 

「うおっと、最近の若い子は強引なんだね〜?……でも一つアドバイスするなら」

 

 

「ぐっ…うわぁ!?」

 

 

果敢にも突撃したハルカが桃色の生徒に大盾で殴られ、蹴りを入れられる。

 

 

「踏み込みと重さが足りないね。それじゃあおじさんの守りは崩せないよ?」

 

 

(…間違いない、あれは…)

 

 

「小鳥遊ホシノ……」

 

 

「うへ?おじさんの名前が知られてるなんて、ゲヘナでも有名になったなぁ」

 

 

別名『ピンクの悪魔』。かの風紀委員長が白い悪魔と表現するなら、その対の存在と噂されている存在だった。たった数日の出来事だったが、実力がものを言うゲヘナでその噂が広がるのは早かった。*2

 

一人一人確実に潰される。どれだけ逃げても気付けば正面に立っている。風紀委員長よりも話が通じない。雰囲気や威圧感で格の違いを察せられる風紀委員長よりも、なんかうへうへしてゆるそうな生徒にボコボコにされる方が気味が悪い。

 

 

 

「……関係ないね。やるしかないか」

 

 

「ねぇカヨコちゃん、狙うならあのミニガンの子かな?」

 

 

ムツキがそう言い、肯定の意味を込めて目線を向ける。あの中で1番厄介なのはミニガンを担いだ生徒だ。あれだけでこちらのバイト達が総崩れになる危険がある。

 

 

"ホシノはそのまま前線で迎撃。アヤネは遠隔からシロコのドローンで援護。シロコとセリカはノノミのサポートをお願い。この勝負の鍵はノノミの殲滅力だから"

 

 

「今日ははりきっちゃいますよ〜!」

 

 

『コウ先輩とケイ先輩が早く来てくれるといいのですが……』

 

 

お互い何をしてくるかの予想は付いている。ただし問題なのは便利屋側に時間制限があること。短期決戦に持ち込まないと間に合わない可能性がある。

互いの銃撃音が響き、傭兵の数が段々と減りつつ膠着状態が続く中、転機が訪れた。

 

 

「そ〜れ!!」

 

 

"アヤネ!"

 

 

「はい、援護します!」

 

 

ムツキがノノミに向けて特製の鞄を投擲するが、アヤネのドローンにより撃ち落とされ爆発する。だがその爆風に隠れ、ムツキはもう一つ鞄を用意していた。

 

 

「これならどう?」

 

 

相手の位置は分かっている。あのまま迎撃されなければ完璧……

 

 

「…え?」

 

 

無機質な音と共に、放物線を描くこと無く垂直に鞄が落下し、爆発する。

 

 

「ッ……あはは!今の何が起きたの!?」

 

 

迎撃されたわけでもない、あれはどう見ても空中で停止している。まるで壁か何かにぶつかったような感じだった。その時煙が晴れ、新たな声が届く。

 

 

「遅くなりました。状況はどうなっていますか?」

 

 

「ケイちゃん!」

 

 

「ケイ先輩!」

 

 

"コウはどうしたの?"

 

 

「別行動です。あれの心配はいりません、どうせ無傷です」

 

 


 

 

「どうなってるの……?」

 

 

騒乱の地から少し離れた場所、陸八魔アルはここでアビドスの生徒達を狙っていた。さっきまで楽しく話していた相手と戦うのは少し辛いが、これもアウトローへの道だからと心を鬼にして仕事をこなす予定だった。

 

 

「なんで守りが間に合うのよ……」

 

 

顔色を悪くしている理由は一つ、狙撃がまるで当たっていないから。いや、正確には当たってはいるのだが、前線にいる盾持ちの生徒に悉く防がれてしまっている。

 

 

「私だって場所は変えてる……それに、前線と後衛まで十数メートルはあるはず……」

 

 

引き金を引いた瞬間だけ明らかにこっちを認識して狙撃を防いでくる。*3なんだあの化け物は、まだ当たってから位置を把握するヒナの方がマシかもしれない。

 

 

「やっぱりバレてるのかしら……もう一度場所を変えて……」

 

 

「こんちわ、何やってるの?」

 

 

「え?あ、どうも」

 

 

いつの間にか隣にいた男子生徒に挨拶をされ、つい言葉を返してしまうアル。何故こんな所に人がいるのか、そもそもこの生徒は誰なのか、そう思う間もなく会話は続いていく。

 

 

「どうも、石依コウっていいます。そっちは?」

 

 

「陸八魔アルよ。今私は……仕事をしているのよ」

 

 

「仕事?何の?」

 

 

「便利屋よ。ほら、名刺も作ってあるんだから!」

 

 

そう言って名刺を渡すアル。敵対関係かと思えない程ほのぼのと話しているが、そもそもアルは相手がアビドスの敵だと気付いていない。コウは注意を引く事をケイに頼まれて話しかけただけなのだが。

 

 

「便利屋68……へ〜、なんかクールな人だなと思ってたらそういうのしてるのか」

 

 

「クール……!……そ、そうかしら?」

 

 

嬉しい褒め言葉に思わず顔を綻ばせるアル。見た目だけ見れば本当にクールな生徒にしか見えないアルを見た感想なので、これはコウの本心である。

 

 

「なんか仕事人って感じ。便利屋って事は…依頼でも受け付けてる感じ?」

 

 

「そうよ!金さえ貰えば何でもする、それが私達便利屋68よ!」

 

 

「カッケェ……あ、そうだ。モモトークの交換しない?いつかお世話になるかも知れないし」

 

 

「えぇ、もちろんよ!」

 

 

キラキラとした賞賛を浴びせられて上機嫌のアルは、そのままコウとモモトークを交換する。なお、この間も向こうは戦いを繰り広げている。

 

 

「ふふふ…………あら?」

 

 

「どした?」

 

 

「いえ、……この写真って……」

 

 

そう言ってアルはコウが待ち受けに設定してある写真を指差す。それはアビドスの生徒みんなで撮った写真だった。

 

 

「これ?俺の同級生と後輩、それと卒業した先輩と撮った写真」

 

 

「その……貴方ってもしかして、アビドスの生徒かしら…?」

 

 

 

「うん」

 

 

「……」

 

 

スナイパーライフルの銃口がゆっくりとコウに向けられる。肝心のコウはどこ吹く風といった様子で戦乱を眺めている。

 

 

「みんな頑張ってるなぁ……おっ、またホシノが前線で暴れてる……ノノミも凄いよな、なんであれ撃てるんだか……」

 

 

少しずつコウとの距離を離す。それに気付いたのか、コウはアルに目線を向けた。

 

 

「……まぁ待ってよ、もうちょっと話そうぜ?」

 

 

「残念だけど、公私は区別するものなのよ。……大人しくしてくれるかしら?」

 

 

「やだ」

 

 

そう否定した瞬間、コウのすぐ横に弾丸が通り過ぎた。

 

 

「……次は当てるわ」

 

 

さっきまでの和気藹々とした雰囲気が嘘のような展開である。コウは相変わらずスナイパーライフルを向けられて尚涼しい顔をしている。

 

 

「…当ててみなよ」

 

 

その瞬間引き金が引かれ、勢いよく銃弾がコウの頭に炸裂した。

 

 

「ッ……ふう、力んでて良かった」

 

 

「……?……当たったわよね?」

 

 

この至近距離で頭に直撃したというのに、尚立ち続けるコウに首を傾げるアル。この光景を見るのはヒナに続けて2人目だった。

 

 

「俺は頑丈だから。……ケイが言ってたんだよ、スナイパーが1番嫌うのは近づかれることだって。つまり俺は、今からアルのストーカーになるってわけ」

 

 

「……」

 

 

「待てい!!」

 

 

「なんでこうなるのよぉぉぉ!!!」

 

 

全力で逃げるアル。それを全力で追いかけるコウ。2人の熾烈な鬼ごっこは校舎のチャイムが鳴るまで続いた。

*1
ユメは事務所に戻りました。

*2
数日だけ風紀委員の活動の手伝いをしたことがある

*3
銃口の向きで着弾地点を予測するアロナ演算のお陰である

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。