アリウスの更新来ちゃった……忙しいね、忙しいね。
─キーンコーンカーンコーン♪─
「……あ、定時だ」
「今日の日当だとここまでだね。帰ろっか」
「ハァ……ハァ……えっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!」
学校のチャイムが鳴ったと同時に撤収しだす傭兵バイト達。どうやら便利屋68はこの時間までの定時契約をしていたらしい。
「終わったってさ」
「帰りにどこか寄ってく?えっと……ここラーメン屋が有名なんだってさ」
「良いね、寄ってこっか」
「こらー!!どういうことよ!!仕事を途中で切り上げるなんてっ!?待って!帰っちゃダメ!!」
「えぇ……?」
まさかの終わり方に呆然とするコウ達。対するアル達はこの後の展開に悩んでいた。
「……」
「アル様……」
「まさかこの時間まで終わらないなんて……アルちゃん?どうする?逃げる?」
「あ……うう……こ、これで終わったと思わないことね!アビドス!」
「あはは、アルちゃん、それ完全に三流悪役のセリフじゃんそれ」
「うるさい!……とにかく退却よ!」
そう言うと逃げ慣れているのだろうか、中々のスピードで便利屋68は姿を消してしまった。
「……行っちゃいましたね」
「うへ〜逃げ足早いね、あの子達」
「追撃は……しなくていいでしょう」
『困りましたね……妙な便利屋にまで狙われるとは、先が思いやられます……もしかして、これもカイザーの手引きなのでしょうか……』
傭兵は誰かから依頼を受けて仕事を行う。それを出来るだけの存在となると、やはりカイザーぐらいしかいないのでは?そう思わざるを得ない。
「まあ、少しずつ調べてみようよ。まずは社長のアルって子の身元から洗ってみたら?何か出てくるよ、きっと」
「はい、そうしてみます。今日はみなさんお疲れ様でした、一度戻って解散にしましょう」
"キヴォトスって凄いね……何もない日なんてないのかな"
『先生、安心して下さい!スーパーアロナちゃんがいる限り先生の事は必ず守ってみせます!』
"ありがとう、アロナ………あれ、アヤネ?"
「あ、先生。おはようございます」
便利屋騒動の次の日。先生はアビドス校舎に向かっている際にアヤネと出会った。普段先生は生徒達より早めに校舎に着くようにしているのだが、今日は随分と早い。何かあったのだろうか。
"まだ随分と早い時間だけど……何処かに行ってたの?"
「えっと、先生は前回の定例会議の内容を覚えていますか?」
"もちろん……というか、あれは忘れられないよ…"
色々とツッコミどころのある提案が出た定例会議だったが、確か最後はビナーのグッズを作るという案に落ち着いていたはずだ。
「はい、そのグッズを販売する際に向けて著作権の申請をしてきました。これで正式に権利が保護されるはずです」
「あ、そういえば…昨日の方々の情報が見つかりました。後ほど学校で詳細をご確認いただけますか?」
"わかった。それじゃあ、学校まで一緒に行こっか"
「はい、ゲヘナ学園の生徒だったのです……が……?」
アヤネと2人で歩き始めたと思ったら、アヤネの言葉と共に歩みが止まる。不思議に思い、アヤネの目線の先を見ると見覚えのある姿が目に入った。
「あ、先生じゃん!おっはよー!」
「な、ななっ!?」
「じゃじゃーん!こんな所で会うなんて、偶然だね!」
"君は……あれ、そういえば名前聞いてなかったね?"
「確かに!浅黄ムツキだよ!よろしくね〜先生♪」
そう言うとムツキは先生に正面から抱きついて、首元に顔を埋める。
"うっ……どうしたの、ムツキ?すごい距離詰めてくるね"
「ん〜?重い?苦しい?ちょっとだけガマンだよー、先生」
"大丈夫だよ〜"
そう言って先生はムツキを撫でる。アヤネはあわあわとしているが、当の本人は気持ち良さそうだ。
「な、何してるんですか!?離れて下さい!」
「あ〜……誰かと思いきや、アビドスのメガネっ娘ちゃんじゃーん?元気してた?」
「メガネっ娘ちゃんじゃなくて、アヤネです!朝から疲れてきました……どういうことですか?いきなり馴れ馴れしく振る舞って……」
「公私ははっきりしないとって言ったでしょ、あの時は仕事だったけど、仕事以外は仲良くしたって良いじゃん?」
「今さら公私を区別するんですか……!?」
昨日の敵は今日の友を体現したかのような手の平返しに、驚愕の声を漏らすアヤネ。先生からしてみれば、生徒と仲良くなれるのは大歓迎である。
"あはは……まぁ私としては大歓迎だよ。よろしくね、ムツキ"
「シャーレの先生は、みんなの先生だもんね〜。私達のことも、困ってたら助けてくれたり?」
"もちろんだよ"
「言質取ったからね?……ま、いつかうちの便利屋に遊びにおいでよ。アルちゃんもみんなも喜ぶからさ」
「じゃあね〜先生!アヤネちゃんも、また今度ね♪」
「今度会ったらその場で撃ちますからね!?」
言いたいことだけ言って、ムツキはその場を去ってしまった。朝の静けさが元に戻ってくる。
「何なんですか……あの人は…!」
"えっと……これ、全部ビナーのぬいぐるみ?"
「ふっふっふっ……その通りです、先生」
先生が生徒会室に入って目に入ったのは、部屋にまばらに配置された多数のビナーを模したぬいぐるみ。大きいものから小さいものまで、様々な種類のものが置かれている。
「見て下さい先生!これ、みんなとお揃いなんですよ〜。あとでユメ先輩にも渡すので……先生にもプレゼントします☆」
"あ、ありがとう…"
ノノミから渡されたのは手のひらサイズのぬいぐるみ。これなら鞄にでも付けられそうなサイズだ。というかみんな付けている。
"これ、全部作ったの?もしかしてコウが?"
「ん〜……俺もやったけど、大体はケイですね。ケイは凄く手先が器用なんです」
「コウも十分早いですよ?私は……複製しただけですし」
「うへ〜……中々の抱き心地だねぇ。これならぐっすり眠れそうだよぉ」
中々の好評振りに、満足そうにコウは頷いている。これなら一般にも気に入ってもらえそうだ。
「それでは、全員揃ったので先日の内容を話したいと思います」
「私達を襲ったのは、「便利屋68」と言う部活です。ゲヘナではかなり危険で、素行の悪い生徒達だと言われています」
「話が通じる分まだマシだったような……」
「社長であり、リーダーの陸八魔アルさんの下に3人の部員がいるとのことで、課長の鬼方カヨコさん、室長の浅黄ムツキさん、平社員の伊草ハルカさんの3名だそうです」
「いやー、本格的だねぇー」
「社長さんだったんですね☆凄いです!」
「あくまで自称だそうで……勝手に起業されたのだと思います」
「ん……ユメ先輩とは違うんだね」
先生自信の総評としては、そこまで悪い子達でもなさそうだなとの評価であった。この後時間があれば会いに行こうと思っていたぐらいだ。
「今はアビドスにいるそうですが……おそらく、カイザーによる依頼である可能性が高いです」
「まぁそりゃあねぇ?アビドスを欲しがってる物好きなんて、今の所そこぐらいしかないわけだし」
「それと、その便利屋68はブラックマーケットで何度か騒ぎを起こしているそうです。事務所もここにあるとの情報が出ています」
「怪しい……アヤネちゃん、前見た部品もブラックマーケットからとか?」
「はい。以前に手に入れた戦車の部品も、ブラックマーケットからの物でしょう」
立て続けにブラックマーケット関連の話題が飛び出し、もはやブラックマーケットで何かが起きていることは明白だといえるだろう。
「よし、じゃあブラックマーケットに調べてみようか〜」
「……え?……いや、待って?今から?」
「どうしたの、コウ?用事でもあった?」
歯切れの悪い返事をするコウに、ホシノは何があったのかを聞く。何かすることでもあるのだろうか。
「あ〜……まぁ……今日はちょっと用事があって……ビナーが出て来そうな気がするというか?」
「……何を隠してるの?」
「まぁまぁシロコちゃん、コウにも隠し事の一つぐらいあるんだよ」
"それじゃあコウ、私達で行ってくるよ"
「おう……いってらっしゃ〜い」
シロコから怪しまれつつも、コウ以外の面々はブラックマーケットに向かっていった。それを見届けてから、コウは冷や汗を浮かべた。
「……後はヒフミに任せるか……」
そう呟くとモモトークを開き、電話をかけるのであった。