キヴォトス最硬の神秘   作:たらこ饅頭

40 / 41
 
じわじわと好評価を貰えて嬉しい(^^)
目指すは平均評価8以上!!


需要と供給

 

「今日は来てくれてありがとう、ケイちゃん」

 

 

「私を呼んだということは、商談相手が見つかったんですねユメ先輩」

 

 

朝早くにユメ先輩に呼ばれて家の前に向かう。玄関から出てきたユメ先輩の家の中を少し覗くと整理整頓されている……ように見えて部屋の奥に雑に詰め込まれた何かが見える辺り、常にきちんとしているわけではなさそうなのがユメ先輩らしい。

 

 

「今日はよろしくお願いします!」

 

 

「おう、任せとけユメちゃん」

 

 

地元の方に協力してもらい、大型のトラックの荷台に乗り込む。わざわざ荷台に乗り込むことはないと思ったが、ユメ先輩が私にはサプライズにしたい!と言うので渋々乗った。

 

 

「これ全部何が入ってるんですか?」

 

 

「砂だよ、ちょっと前から街の人達に集めて貰ってたんだ〜」

 

 

色々な活動を表立ってしているからか、ユメ先輩の横の繋がりは中々に大きい。生徒が夢物語を叫んでいたあの頃は遠く、今では会社を経営して本気になって取り組むその姿に心を動かされた人も多いのだとか。

……まぁ否定はできませんね。

 

それにしてもここまで多くの砂を持ってきて、どんな商談相手なのかは気になってきます。事前に聞いた範囲ではお試し期間という形で今回の品を受け渡し、問題がなければ継続して取引を行うといった内容だ。

 

そんな今回の品は題して『アビドス砂ガラス』。私が砂を使ってプロトコルを実行し、ガラスにしたものを商品として販売している。ガラスにする事自体は私が片手間でも出来る簡単な事で、これによって人件費や加工費がほぼ0円になって非常に安価な値段で提供することができる。

 

課題点は私に対する比重が重すぎることに加えて、運搬の際に毎回地元の人の助けを借りる訳にはいかないこと。ここはなるべく早く解決策を見つけていきたいと思っています。

 

 

「あっちに着くまでしばらくかかるから……それまで沢山お喋りしようね!」

 

 

「そんなに話す事ありますか……?」

 

 

目的地に着くまで実に数時間。その間ずっとユメ先輩と色々会話を楽しんでいた。思ったより時間が経つのを忘れて話し込んでしまった気がします。

 

 

「それでね〜、その時ホシノちゃんが……」

 

 

─おぉいユメちゃん、到着したぞー!─

 

 

「あっは〜い!……それじゃあご対面だよ、ケイちゃん!」

 

 

全くユメ先輩はいつだって楽しそうにしています。ですがこれでも私は良くも悪くもコウのお陰で並大抵のことは慣れてきました。今回の相手がとんでもない相手でもない限りは、ユメ先輩には悪いですがそこまで驚くことはないでしょう。

 

 

「じゃじゃーん!!」

 

 

「……まさか」

 

 

ビル群が立ち並び、遠くにモノレールが建物間を走っている。周囲の風景はアビドスでは見ることのない整備された風景が広がり、近くにはロボットが移動しているのが見えた。

 

違うと言ってくださいユメ先輩。今、私は冷静を欠こうとしています。

 

 

「どう?ここがどこか分かるかな?」

 

 

「……ミレニアムじゃないですよね?」

 

 

「流石ケイちゃん、大正解!」

 

 

「こんにちわ、ユメさん。今日はよろしくお願いします」

 

 

「よろしくお願いします、ユウカさん!」

 

 

あぁ〜もう!どうしてこう面倒な方向に転がってしまうんですか!?よりによってアリス……もとい王女がいるミレニアムなんて、ユメ先輩には悪いですけどなんてことしてくれたんですか!!ものすごく驚く選択ですよ!

 

 

「……あれ、アリスちゃん?」

 

 

しかもアリスと面識がある方と初遭遇ですか!?こっちは顔を隠していないからどう見てもアリスとなにか関係があるのが丸わかりじゃないですか!

 

 

せめて事前に知っていれば仮面なり覆面なりつけて来れたのに、どう足掻いても間に合わない!……ふぅ、冷静になるんです私。幸いにもアリスを直接見つけた数人以外にはロボットである事がバレていないはず。それならまだ誤魔化しが効く……!

 

 

「アリス……?あぁ、そういえばあの子はミレニアムに入学したんでしたね。迷惑をかけていませんか?」*1

 

 

「今の所問題はないけど、それにしてもアリスちゃんにそっくりね……血縁関係ですか?」

 

 

「姉妹ではありませんが、従姉妹の関係なので血縁関係ではあります。アビドス生徒会2年生、石依ケイです。よろしくお願いします」

 

 

「アリスちゃんとはかなり違うタイプですね……あの子達も見習ってほしいぐらい」

 

 

……一難去ったみたいですね。なんですかユメ先輩、そんな驚いた顔をして。

 

 

「ケイちゃんって姉妹がいたんだ!なんで教えてくれなかったの〜!」

 

 

「実の姉妹ならまだしも従姉妹ですよ?私から話そうともしない限りはそんな話題に中々ならなかっただけです。話す必要は実際今までありせんでしたし」

 

 

お願いですからそろそろこの話は終わりにしましょう。さぁユウカさん、今回の納品する窓ガラスの張り替え予定の場所に行きましょうか。そう目線で促すと彼女は気付いたのか動き出してくれました。

 

 

「えっと……こっちです。着いてきてください」

 

 

「あっ、待ってよ2人とも〜!」

 

 

〜

 

 

「ここですか……」

 

 

「ついこの前爆発があって吹き飛んだばっかりなんです。かなり危険な実験をする生徒も多いですから……」

 

 

目の前にあるのは窓ガラスが無惨にも割れた部屋の姿。すぐ側にはアハハ……と頭を恥ずかしそうに掻く生徒の姿があった。

 

 

「ちょっと実験に失敗しちゃって、ごめんねユウカ」

 

 

「なんでよりによって爆発するのよ……」

 

 

こんな感じの部屋がいくつも存在しており急速に復旧が進められているが、最近はミレニアムプライスという大会を優先して直さないままの部屋も多いらしい。

 

整備された雰囲気に反して爆発事故が多発している辺りどの自治区でもキヴォトスの宿命は逃れられないようです。……ほら今も少し遠くで爆発音がしました。

 

 

「あの方向は一旦後ね……それでえっと……ユメさん?ガラス窓の方は……」

 

 

「はい!これから準備しますね……よしケイちゃん、あの割れた位置の窓を埋める形でお願い」

 

 

「分かりました、始めます」

 

 

手を空中に翳して力を行使する。座標と位置が分かれば十分、持ってきた砂もリソース領域の範囲に入っています。これなら問題なく進めることができるでしょう。

 

 

「……ユメさん?ケイさんは一体何を……」

 

 

「ん〜……簡単に言うなら、魔法?今からあそこにガラス窓が出て来るの」

 

 

「アビドスにはそんな技術があるんですか──えっ」

 

 

1枚、2枚……よし、大体15枚といった所ですか。まだまだこんな部屋があるようですし、やはりガラスは結構な需要がありますね。かなり手応えを感じます。

 

 

「……材質もちゃんとガラスね。こんな技術ミレニアムでも見れないわ……今度のミレニアムプライスでも賞を取れるんじゃないのこれ……」

 

 

「よしユウカさん、次の窓ガラスに案内して下さい!」

 

 

「……こんなものを見せられたら信用するしかないわね、予定よりも多めの量をお願いできるかしら」

 

 

「良いの!?余分に砂を沢山持ってきたから大歓迎で……あっケイちゃん、頑張れる?」

 

 

「楽勝ですよ、ユメ先輩」

 

 

〜

 

 

ふう、とりあえずこの程度でしょうか。後半からは息をするようにフッとガラスを生み出せるようになっていました。なので効率は鰻登りで上がってガラスを大量配備、持ってきた砂を使い切るまで消費してしまいました。

 

 

「これだけのガラスを設置してこのお値段……何かに騙されてると思った方が自然ね……」

 

 

「アビドスからしてみれば砂が減らせる手段としてありがたいぐらいなんですよね〜。少しでも砂を減らせて、少しでもお金になっただけで充分なんです」

 

 

来賓室で出されたお茶を飲んで、ユメ先輩と一息つきます。プロトコルの行使にも慣れてきましたし、そろそろ本格的に列車砲の復旧を始めても良いかもしれませんね……

 

 

「ケイちゃん、私はまだユウカさんと話す事があるから……この辺りを散歩でもしたらどう?せっかくミレニアムに来たんだし」

 

 

「そうですね、せっかくなので歩き回ってみます」

 

 

「それなら案内を誰かに……」

 

 

「いえ、問題ありません。ユメ先輩と違って遭難したことはありませんので」

 

 

「ゴホッ!…さらっと古傷を抉らないでよ〜!」

 

 

すっかり板についたユメ遭難弄りを挟んで席を立つ。咳き込むユメ先輩を尻目に来賓室を後にした。

*1:
精一杯の演技




ユウカ
近頃の出費が激しい中で見つけた激安商談が上手くいってホクホク。
可愛い子好きレーダーが反応しかけたが、同年代と聞いて思い止まった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。