キヴォトス最硬の神秘   作:たらこ饅頭

5 / 37

前回の補足
原作よりも2年見つかるのが早く、電力に余裕があったケイは超高性能AIという自分の体を作れる大義名分を叶えられる命令が来たので、フル稼働してアリス相当の体を作る事を画策。

しかし一番大事なデータの移動中に、おじさんからお笑いの極意を教えられた砂狼にデータの一部を吹っ飛ばされてしまう。
自身の使命を忘れ、王女の事をただ心配に思い自身でも分からない謎の力を持つ、元世界を終わらす破壊兵器がここに誕生したのであった。



狼とAIとお泊まり会と 

結局廃墟から自宅に戻って来たは良いが、まさかこんなものを持ち帰る事になるとは思っていなかった。

晩御飯の準備をしつつ、棒のように固まっている赤い目の少女を見てコウはそんな事を思う。

 

 

「……シロコ、頬を指で突くんじゃない、可哀想だろ」

 

 

「……ん、」

 

 

「今の内に風呂沸かしといて、俺は晩御飯作ってるから」

 

 

「分かった」

 

 

風呂場にシロコの姿が消え、少女が1人になる。ボソボソと何かを話していたので、聞こえやすいように近くに場所を移動させた。

 

 

「……わた……し……は、」

 

 

「大丈夫か?」

 

 

「……」

 

 

この子に起きた事によっては深刻度が変わってくるが、どうなったのだろうか。

 

 

「えっと……君はDiviSion System(ディビジョンシステム)ってとこで作られた、超高性能AIで合ってる?」

 

 

「……はい」

 

 

「何か引っ掛かってる事でもある?」

 

 

「……私には…何か重要な使命が…あったはずなんです…」

 

 

「重要な使命?」

 

 

「はい……この体は、王女を模して作られました。私は王女と共に何かを果たす、鍵としての役割を与えられたはずなのですが……」

 

 

「……もしかして、思い出せないとか?」

 

 

「………」

 

 

セーブ中に電源ボタンを押すとデータが消えることがある。ゲームをする人なら何度も見た注意書きだが、まさかそれを体験する事になるとは。

 

 

「ん、お風呂の準備できた」

 

 

「ん、ナイスだシロコ。もうちょっと時間かかるから、その子とお話しでもしときな」

 

 

「うん」

 

 

なんとなく少女の分も作っておく。人にしか見えない見た目だし、超高性能AIの肩書きが本当なら、食べ物ぐらい食べる機能はあるだろう。

 

 

「私は砂狼シロコ。さっき話してた人は石依コウ。貴方の名前は?」

 

 

「……私に名称などありません。鍵としての役割を持つ存在、ただそれだけです」

 

 

「名前がないの?……じゃあ私が付ける」

 

 

「私に名前など必要ないのですが、」

 

 

「鍵だから…キーはどう?」

 

 

「必要ないと言っているのですが…キーですか、流石に安直すぎませんか?」

 

 

「それじゃあ……ケイってのは?読み方変えただけだけどな」

 

 

台所から意見を一つ飛ばす。名付けをしたのは初めてだが、コウは結構手応えを感じていた。

 

 

「ケイ……ん、悪くない」

 

 

「まだ私は認めてないのですが…」

 

 

「ずっと貴方〜とか君〜とかで呼ぶのも変だから。名前があった方が都合が良いんだ、頼む」

 

 

「…まぁ分かりました、これからの私の名称をケイとしましょう」

 

 

こっちが作成依頼を出したAIにしては、事故関係なくかなり自我があることに疑問を感じつつ、コウは晩御飯の用意を進めていった。

 

 

 

「出来たぞ〜」

 

 

少し狭い気もするが、リビングの机に皿を3つ置いていく。横に座っていたケイが困惑したような目をしていたが、見なかった事にした。

 

 

「これは…?」

 

 

「カレーライス。やっぱり作りやすくて上手いなら、これ一択だな」

 

 

「ん、早く食べよ」

 

 

「……」

 

 

「「いただきます」」

 

 

「……いただきます……」

 

 

今日は色々あったからお腹が空いていた。カレーライスを口一杯に放り込んでいく。

 

 

「──!!やっぱカレー大好きだわ、上手い」

 

 

「ん、分かる」

 

 

「……」カチャ…

 

 

2人が食べるのを見て、ケイもカレーを口に含んだ。

 

 

「……!!美味しい……」

 

 

「だろ〜?……というか、食べて大丈夫なのか?」

 

 

「私は人と遜色ない様に出来ています。食べ物も同様です」

 

 

「便利なもんだなぁ」

 

 

しばらく食べた後、そろそろ話した方がいいだろうかと思って話を切り出す。

 

 

「なぁシロコ……ケイさ、記憶喪失らしいんだ。理由は……何となくわかると思うけど」

 

 

「!!……うん」

 

 

下を向いて落ち込んでいるシロコを見ると、つい慰めたくなってしまうがここは鬼になる。自分のした行動にはケジメを付けなければならないのだ。

 

 

「ケイ……ごめんなさい」

 

 

「…?いきなりどうしたのですか」

 

 

「ケイが記憶喪失になったの、私のせい……」

 

 

「……はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰ですかそんなふざけた事を教えたのは!?絶対に押すなと書いてあるなら、押さないのが当たり前じゃないんですか!?」

 

 

「あはは……すまん、それに関しては今の文化が悪いんだ。押すな=押せのフリって文化があって…」

 

 

「そんな……そんな馬鹿みたいな理由で、私の記憶がなくなったんですか……?」

 

 

まぁそりゃAIには訳がわからない理由だろう。絶対に押すなは押せという事なんて、今思えば不思議な文化だ。

 

 

「グスッ……ケイ…ゴメンナサイ……」

 

 

シロコが涙を流して謝っている。自分も記憶を無くして悲しい思いをしてきたので、特に反省しているのだろう。

 

 

「……ケイの記憶を無くした責任は取るから、今は許してくれないか?…シロコも反省してるみたいだし」

 

 

「……はぁ、まぁ…いいでしょう。ですが、絶対に私の記憶が戻る事に最善を尽くしてください。…これは尽くさないでというフリではありませんからね!!」

 

 

「……ちなみに、フリじゃないって念を押して言うのも文化にあって、それも尽くすなって意味になってるぞ」

 

 

「……???理解…出来ません……」

 

 

頭に派手なマークを浮かべて呆然としてしまったケイを見て、人間の文化の異質さを改めて実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、先に風呂入ってくる」

 

 

「ん、分かった」

 

 

「お好きにどうぞ……」

 

 

不可解な文化を教えられた反動か、色々と疲れてそうなケイを置いてコウは先に風呂に入っていく。

 

……今日は色々なことがあった。廃墟に行ったってホシノ達には言えないから、どうやって誤魔化そうか……シロコみたいに外で拾った事にするか。

 

そんな事を考えながら頭を洗って湯船に浸かっていると、ドアの向こうに人影が見えた。シロコか?

 

 

「本当に一緒に入るんですか!?正気ですか!?」

 

 

「ん、ケイも一緒に入る」

 

 

「ちょっ……分かりましたから!!せめてそこのタオルを巻いて下さい!!」

 

 

随分と騒がしい声が聞こえるが、何をしているのだろう。仲良くしているといいが。

そう思っているとドアが開いた……え?ドアが開いた?

 

 

「ん、入るよ」

 

 

「どうしてこんな事に……」

 

 

そこにはバスタオルを体に巻いたシロコとケイが風呂場に入ってくる姿があった。

 

 

「……ごめん、バスタオル一枚取ってくれる?」

 

 

「……ん、はい」

 

 

とりあえず湯船の中で腰回りに巻いておく。己の男の証を見られるわけにはいかない。

 

 

「シロコ、俺先に風呂入るって言ったよな?何で入って来た?」

 

 

「…?お風呂は一緒に入るものだって、ノノミが言ってた」

 

 

それほノノミがシロコの世話したいから言ってるだけじゃ……?いや、何言っちゃってくれてんだアイツ。

 

 

「私は止めました……何故私も入る事になってるんですか…」

 

 

「ん、お風呂は一緒に入るものだから」

 

 

ホシノに加えてノノミにも置き土産を残されていたとは……

 

 

「……まぁいいか、シロコは先に体洗って、お湯に浸かっといて。ケイ、折角だし頭洗ってやるよ。シロコは次な」

 

 

もうこうなりゃヤケだ、とことん世話してやる。コウはそう決意した。

 

 

 

 


 

 

 

自分の使命を台無しにしてくれた2人から頭を洗われているケイ。ケイが鏡を見ると、2人はケイの長い髪に苦戦している最中だった。

 

 

「ケイは髪が長いな……洗うの大変だぞこれ」

 

 

「……ん、私も手伝う」

 

 

2人によって頭上が泡だらけになっていく。やがて泡が流され、また洗われる。

 

 

「うっわ、トリートメントの消費やばすぎだろ。これ一回で俺の何回分使うんだこれ」

 

 

2人が髪を洗おうとする前に、ケイは自分の髪はナノマシンによって常に清潔さが保たれているという事を伝えたはずなのだが、洗うと言って押し切られてしまった。

 

 

「必要ないですと言っているのに……」

 

 

軽く不貞腐れながらも髪が洗い終わり、湯船に浸かる。その間はコウがシロコの髪を洗っているのが見える。

 

 

「……ほぁ…」

 

 

暖かい湯が体を覆っていき、つい声が漏れ出てしまう。それだけ気持ちがよく、先程の激情も流されて行くようだった。

 

 

「シロコはまだマシだな……2人とも長髪じゃなくてよかったわマジで」

 

ワシャワシャ

 

 

「……♪」

 

 

……王女はきっと今も私が元々いた場所のどこかにいるはず……となれば、あの廃墟に定期的に探索に行かなければならない。

 

 

「よし終わった……あがる前にもう一回入っとくか」

 

 

2人が湯船に浸かってくる。流石に3人というのは狭苦しく、肩が触れ合う程に近い。

 

 

「ふぅ……なぁケイ、王女って子はあの廃墟のどこかにいるって事で良いんだよな?」

 

 

「えぇ……私は王女の半身のようなもの、2人揃って初めて真の力が出せます。その力の内容が思い出せないのが問題なのですが」

 

 

「…また近いうちに廃墟に行かなきゃな…」

 

 

「ん、また面白いもの見つける」

 

 

「頼むから、これ以上はやらかすなよシロコ」

 

 

その調子で王女も見つけてもらいたいものだ、とケイは思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、俺はソファで寝るから2人はベッドで寝て良いぞ」

 

 

「……ん、どうぞ」

 

 

歯を磨いた後、一つしかなかったベッドに当たり前かのように入ったシロコが、毛布をめくって手招きをしてくる。恐る恐る入って背中を向けると、ギュッと抱きしめられた。……何かを抱かないとシロコは寝られないのだろうか。

 

 

「ふぁ……っそれじゃ、おやすみ〜」

 

 

「……ん、……」

 

 

電気が消され、2人の息遣いのみが聞こえてくる。

……待っていて下さい、王女。必ず私が貴方を見つけてみせます。そう誓いを立て、ケイは休眠状態に移行した。





無名の司祭「???????????????」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。