6thpvがカッコ良過ぎて泣いちゃった。
あれ見て湧かない男の子いないでしょ。
ケイの身支度を整えて、登校の準備をする。シロコは入学と同時に一人暮らしをさせるとノノミから聞いていたが、ケイに関してはまだ常識が一部抜けているところがあり、拾った人の責任ということでコウが面倒を見ることになった。
「……よし、忘れ物は無い?」
「心配しすぎです。それに私は人間ではないので、物忘れをするような事はありません」
「記憶容量の整理とかはするんじゃ?」
「つべこべ言わないでください、行きますよ」
「は〜い」
砂塵が舞うアビドスの地で、新入生が
〜時は少し戻って〜
「………」「………」「………」
顔見知りの人達が、緊迫した雰囲気を見せながらこちらを見つめてくる。何だこれ?地獄か?
目の前に広がる光景は、そう思わざるを得ない状況だと実感する。
経緯はこうだ。黒服との実験の後、ノノミ達が帰ってくるのに余裕があったコウはカイザーローンの会社に直接乗り込み、口座から約9億円をポンと払ってしまった。
黒服との実験の結果、口座の総額は余裕で10数億を超えている。それだけ過激な実験を繰り返しているのだから、見合った報酬ではあるのだが。
そして数日経ち、毎月の返済額を回収しに来るカイザーローン社員が来なくなり、周りが不審に思っていたところで
『あぁ、借金なら何日か前に返済しちゃった』
という遅すぎるカミングアウトを喰らって、緊急会議が開かれたという訳だ。
「……借金があったんですか?」
「ケイには言ってなかったっけ。借金がついこの前まであったんだ、大体9億円ぐらい」
「……それを返したんですか?……少し貴方を見直す部分が出来たかもしれませんね」
「おぉ〜照れるなぁ〜」
「……借金が無くなった事は喜ぶべきなんだろうけど、問題はそのお金をどうやって工面したかだよねぇ……」
「そうだよコウくん!!9億円近い借金なんて、そう簡単には返せない事なんて私でも分かってる……方法によっては、今すぐコウくんを捕まえないと行けなくなるんだけど」
「ん、コウは早く答えるべき」
「シロコちゃんに賛成です〜☆」
なんでみんなの悲願を達成したのにこんな雰囲気になっているんだ、と不満げな顔をしているコウを見て、また雰囲気が暗くなっていく。
「…どうやって用意したのかと言われても、簡単に言えば超高額の治験バイトみたいなものがあってさ。最初は小遣い稼ぎのつもりで受けたんだけど、借金返しても余裕があるぐらいに溜まったから、ドバーッと使っちゃった、以上!!」
「アビドスにある高額バイトなんて、怪しいものしかなかったはず……それも治験バイトでしょ?危ない事したんじゃないの?」
「……まぁ、みんながやってたら多分死んでたような奴だね」
「ッ………」
周りの空気が確実に重くなった。どう見ても言葉選びをミスったのだが、コウは気づかない。
「心配しすぎだって。あくまでみんながやってたら多分死んでたって内容の事してただけだから、俺なら大丈夫だって確信してたし」
「でも……コウ、私達なら死んでたような事だったんでしょ?私も、みんなも、コウの事は大切な仲間だと思ってる。そんな仲間が自分の知らない所で危ないことをしてたなんて知って、悲しくならないと思う?」
「ホシノ先輩の言う通りです。……結果的に借金を返すことになったとは言え、私達のために危険な目に遭っていたのも事実です。ほら、ユメ先輩も……」
「……グスッ、うぅ……」
涙を溢して泣いているユメに気づき、コウは驚いた。
「うぇっちょ!?ユメパイセン!?優しいのは知ってましたけどそんなに泣きますか!?」
「ひぃん……だって……私が何も出来てない間に、コウくんはずっと頑張ってたんでしょ……こんな先輩でごめんね…」
「だぁあもうっ!!ここまで深刻になるとは思ってなかった!!……泣かないで下さい、ユメパイセン。えっと、その……どうしたら泣き止んでくれますか?俺、何でもしますよ」
「……何でもいいの?」
「はい、俺に出来ることなら」
「……コウくん、こっち来てくれる?」
「は〜い」
泣き腫らしたせいか、顔を少し赤くしたユメにそう呼ばれる。ここで出来るような事で良いのか、土下座でもすれば良いのか。
「…あっち向いてくれる?」
「は〜い」
何をするんだろうと身構えていると、後ろからお腹に手を回され、そのまま抱きしめられる。
………?えっなにこれ。
「………」
いやなんか言って下さいよ。
「……私はもう少し、コウくんに自分を大切にして欲しいけど…」
「自分を大切にしてたら、守備力挑戦部なんて作ってませんよ」
ユメのかなりデカい胸部装甲が背中を圧迫している。やべぇこれ沈み込まれそう。
「……コウくん、もう少しだけ、このままでいさせて…」
「…気が済むまでどうぞ」
そうしているとシロコがゆっくり近づいて来た、なんの様だろう?
「……ん、私も心配した」
「………」 ポフッ
「ん……」
空いていた手でシロコを撫でる。自分の周りの人は優しさに溢れていると、コウは心の底から再確認した。
「うへ〜……コウは人気者だねぇ。ちょっと妬いちゃいそうだよ」
「ホシノ先輩には私がいますよ☆」
「うへっ!?ちょっノノミちゃん……」
「……よく分かりませんが、抱きしめればいいのでしょうか」
「ケ、ケイちゃん……」
しばらくの間、アビドス別館にほのぼのとした雰囲気が広がっていた。
「……アビドスの借金が返済されただと?」
「はい、いかがいたしましょう、理事」
「……奴等はたった数人の生徒しかいなかったはずだ。何故急になって9億もの借金を返せた。ネフティスの令嬢が払ったのか?」
とある高層オフィスビルの一角。カイザー理事である彼の脳裏によぎるのは、少し前からアビドスにいるというネフティスの令嬢。カイザーとネフティスは敵対関係であるため、部下に情報を集めさせていた理事は彼女が支払った可能性があると踏んだ。
「いえ、それが…アビドスにいる男子生徒が突然払っていったと聞いています」
「そうか……ふん、まぁいい。学校周辺に関しては、その辺りのヘルメット団を雇って襲わせろ。既に土地のほとんどは我が社のものになり、採掘場所の目星も付いている。所詮は子供だ、我々大人には従うしか無い」
「はっ」
長期的な策が一つ潰れてしまった事は悔やむが、まだ打てる手はある。理事である彼は今だにそれほどの焦りを見せなかった。
〜現在〜
「それじゃあ、今からアビドス定例会議を始めたいと思います!!」
「いぇ〜い!!待ってました!!」
「ん、楽しみ」
「うへ……そこまで面白いイベントでもないよね…?」
「まぁまぁ、みんなで話し合いをするだけでも楽しいですよ☆」
「…それで、今回は何を話すのですか?」
今から始まるのは不定期に開催されるアビドス定例会議。アビドスの今後の行動を全員で話す会議であり、在校生5名で開始するはずなのだが……
「……何故ユメ先輩がいるのですか、貴方は卒業した身のはずでは?」
「ケイちゃんには話してなかったね。私は確かに卒業したけど、アビドスからは離れないよ。アビドス復興会社を起業しようと思うの。それまでは柴さんの所でお勉強してるけど、たまにこうしてみんなの様子を見に来るんだ」
「柴大将は珍しくアビドスにいる良い大人の人だから、心配しなくていいぞ」
「……心配なんてしていませんよ」
「!!ケイちゃん大好きだよー!!」
「あぁっもう!!あまり引っ付かないで下さい!!」
「……もしかして前の私ってこんな風に見えてたの?」
「おう、そっくりだわ」
既視感のある光景を見ながら会議は始まっていった。
「それで今回の内容なんだけど、安定した収入源を得るための方法についてだよ」
「借金が無くなったとはいえ、アビドスはまだまだ財政難だからね。新しく支援してくれるような所もないし、早めに安定した収入源を見つけないと……」
「ん、私に良い考えがある」
「はい、シロコちゃん!!どうぞ!!」
「銀行強盗以外で頼むぞ〜」
「……」
「……おっと、図星だったか」
「は〜い☆私に良い考えがあります!」
「はい、ノノミちゃん!!どうぞ!!」
「アビドスをPRするためには、やっぱり人気を集めるのが良いと思うんです。だから人の多い所で歌を歌って、PR活動をしましょう!!」
「歌ねぇ……おじさんは人前で歌うのはちょっと恥ずかしいなぁ」
「人前じゃなくてもさ、動画投稿サイトとかでUPすればいいんじゃないか?」
「確かに!!それならスマホ片手に見てくれる人も増えそうだね…」
「よしケイ、今のうちに歌の練習しておくか」
「えっ、私が歌うんですか!?」
「私も協力しますよ〜☆」
「はぁ……それはそうと、私からも一つ意見を言って良いですか?」
「ケイちゃんが!?もちろん!!」
「アビドスは砂が沢山ありますが、それは汚点であると同時に美点であるとも言えます。あれから他の自治区を調べたりしましたが、ここまでの砂がある区域はありませんでした」
「ん、それで何すれば良いの?」
「砂をモチーフにした特産品を作ります。そうですね、砂で作る物があれば好ましいのですが……」
「砂かぁ……そうだ!!泥団子とかどうかな?」
「泥団子……ですか」
「泥団子ね……きな粉を使ってアビドス砂団子でも作ってみる〜?」
「おぉ!!めっちゃ良いじゃん!!」
「自治区端のお土産屋さんにでも置いてもらいましょう☆」
ケイも積極的に意見を出しているのを見て、少し感動を覚えながら会議は進んでいった。
補足
ケイがロボットだと知っているのは、アビドスメンバーの中ではコウとシロコの2人だけです。別に知らなくても問題はないからね。
ユメの身長を170cm相当と仮定し、コウの身長を165cmにしました。
なお、3年間で全く伸びません。可哀想に。