Switch2落選しましたぁ!!うわ〜ん!!人生は虚しいんですぅ……
「ガァァァァァァァ!!!」
「カモーン!!ビナーくぅぅぅん!!!!」
今日は久しぶりにビナーくんに会ったので、勝負を仕掛けている最中だ。不意を突かれて尻尾に叩かれ空を舞い、ミサイルの雨を貰って周りがえらい事になる。
そんな中でも俺は無傷であり、ピンピンしている。
「ほらっそろそろあれやってよ!!口から出す奴!!」
口からバーっと出すようなジェスチャーをすると、理解したのか光線を撃つ態勢に入るビナーくん。やっぱこの子かしこいな。
……それにしてもさっきから気になることがある。
「……」
俺とビナーの戦いを観察するかのように、建物の影から飛行する機械がいる。最初は黒服か?と思ったが、黒服は今までも何処かから観察していたらしいし、気配の一つも感じたことはない。
……つまり黒服以外の誰かが見ているのだが、邪魔してこないようなので放置している。
いつも通り口内から光が漏れ、極太の熱線が襲いかかってくる。……やっぱり段々衝撃が強くなってるな?
「うぉっほう!!もっと来いやぁぁぁ!!」
これだよこれ、俺を殺そうとする強大な攻撃に生身で立ち向かう状況。カタルシスが半端ない!!
その後も何回か光線を受けて、今日の勝負はお開きとなった。
「またなーー!!ビナーくん!!」
また砂に潜っていくビナーに向けて、大きく手を振って別れの言葉を伝える。もうちょっと高頻度に来てくれたら嬉しいんだけど、多分向こうにも事情があるんだろう。
「……」
例の機械はまだこちらを観察している。戦いの観察が目的ならもう帰って良いと思うのだが、何のつもりなんだろうか。
プップッ↑ プ↓ル→ルッ↑プッ↑ プッ↓ルッ→ルッ↓ プッ↓ルッ→ルッ↑
最近変更したばかりの着信音が鳴り響いた。誰かと思えば……ゲッ黒服じゃん。
「もしも〜し、珍しいねどしたん?」
『白夜さんに依頼があります。良ければこちらに来ていただきませんか?』
「依頼ね、りょうか〜い」
そのまま機械をスルーして、黒服の元に向かっていった。
「ブラックマーケットねぇ……」
黒服からの依頼内容は、ブラックマーケットで競りに出される遺物を買い取って欲しいという依頼。ブラックマーケットはキヴォトスでも随一の治安の悪さをしており、競りに参加した後に品物を目当てに襲われることも珍しくないんだとか。
要するに闇市なのだが、流石に俺も今回行くのは初めてだ。そこまでして欲しい物が今までなかったし、ゲヘナと違ってドス黒いタイプの治安の悪さなのであまり近寄りたくなかった。
ゲヘナは暴力が溢れる世紀末なだけで、体感マシである。
「さっさと終わらせるか……ん?」
ブラックマーケットに入ろうとした所で、少し目につく物があった。
入り口近くで、この辺に相応しくない格好をしている女の子がいる。たしかあれはトリニティの制服だ。
「トリニティの子がこんな所にいちゃダメだろ、騙されて身包み剥がされるのがオチだぞ……」
そう思い、親切心で女の子の元に近づいていく。どうやら入るのに迷っているようで、多分初めてなのだろう。
「こんにちわ〜」
「ぇっあっはい、こんちにわ……」
「トリニティの子だよね、ここに何のようで来たの?ここブラックマーケットだけど、絶対に来ない方がいいと思うよ」
「えっと……どうしても欲しい物があって、ここで競りに出される情報を聞いたんです」
「へぇ競りか、奇遇だな。俺も今から競りに行く所なんだ、何が目当てだ?」
「えっと…これですね」
スマホの画面に出されたのは、何とも言えない表情をした鳥が工事現場のような服装をしているぬいぐるみが写されている。
「これは……確かペロロだっけ?」
「そうです!!ご存知なんですか?」
「まぁ少しだけど、俺はスカルマンがお気に入りかな」
「スカルマンですか、良いですよね!!……あっすみません、モモフレンズを知ってる人がこんな所にいるとは思わなくて、嬉しくなってしまいました…あはは…」
……モモフレンズが好きなだけで、特に異質な面は見当たらない普通の女の子に見える。熱意と行動範囲がちょっと凄そうだが。
「この子はビルダーペロロと言って、ペロロ様が工事現場の格好をしたのが特徴なんです!!建設会社とコラボしたぬいぐるみで、契約をした人にしか貰えない限定品なんです!!」
「えっ契約をした人にしか貰えないの?それなんて無理ゲーだよ」
「はい……なので流通数が少なくて、ブラックマーケットぐらいにしか無いんです」
もはや売る気ないとしか思えない売り方だと思ったが、突っ込まないでおく。
「まぁそっか……じゃあさ、一緒に競りに行かない?多分会場は同じ場所にあるだろうし、オレが護衛も兼ねてって事で」
「本当ですか!!ありがとうございます!!」
テレレレ〜!!トリニティの生徒が仲間になった!!
なおこの後、この子はトリニティ総合学園の1年生であり、名前が阿慈谷ヒフミだと教えてもらった。
結論を言うと、競りは無事に終わった。
黒服から頼まれたのが遺物なのもあってかそこまで欲しがる人がおらず、特に苦戦することもなく競り落とすことが出来た。
余ったお金でペロロの着ぐるみ(頭のみ)が競りに出されていたので買い、ヒフミにあげようとしたのだが断られた。
ヒフミいわく、ペロロ様になるのはちょっと違うらしい。
ヒフミ側の競りは中々に白熱していたが、どうやらビルダーペロロをゲット出来たようだ。ぬいぐるみの競りだというのに数十万出していたのが見えたが、突っ込むのは野暮だろう。
帰り道、ペロロぬいと遺物を袋に入れてヒフミと歩いている。このまま何もなく帰れたら良いのだが……。
「コウさん、今日はありがとうございました。ビルダーペロロ様も手に入って、大満足です!!」
「いやヒフミ、ここからがむしろメインだぞ」
「……えっそれはどういうこと……」
「おい!!そこの2人組!!」
「!!」
「案の定だよ…」
「お前らさっき競りに参加してたよな。てことは、今手に持ってるそれが競りの商品……つまり価値がある物ってわけだ。後は分かるよな?」
絶対来ると思っていたので驚きもない、もはや予定調和である。
「わゎっ……コウさん、どうすれば……」
「なぁヒフミ、最初に俺護衛も兼ねて一緒に行くって言ったよな?」
「はい、確かにそう言ったはずですが…」
「俺、戦いになるとクソ雑魚になるぞ」
「……えぇ!?そんなっ、その拳銃は何なんですか!?」
慌ててヒフミが腰に刺してある拳銃に指を刺す。しかし残念かな、これはほとんど見かけ倒しなのだ。
「これ?丸腰はまずいから持ってるだけ。……まぁ案はなくは無いんだけどさぁ、一つ聞くけどその銃は弾ある?」
「はい、一度も戦ってなかったので残弾数に余裕はありますけど……もしかして、」
「おう、今からアイツら捕まえるから撃つ準備しといて。誤射は気にしなくて良いから」
「なにごちゃごちゃ話してんだ!!舐めてんのか!?」
痺れを切らしたスケバンの2人組が声を荒げる。その様子を尻目に、コウはスッと前を向いた。
「……」
「コウさん?どうしました……」
「ニゲロォォォォォ!!!」
「えぇ!?」
スケバン2人組の間を縫うように抜けて、近くの路地裏に入った。上手くいけば良いが、ダメそうならサブプランを使うまでだ。
「あっアイツ逃げやがった!!」
「……いや、大物はトリニティのそいつだ。逃げてった奴は無視して良い」
「……うぅ……きっと何か考えが……」
ジリジリと2人組がヒフミに迫っていく。背後から近づいているコウの存在に気がついていなかった。
「さっさとそれを……ヒッ」
「ヒュッ」
肩を叩かれたスケバンが思わず振り返ると、ペロロぬいを被ったコウがスタンバイ。ペロロのなんとも言えない表情に普通の等身があわさり、凄くホラーチックである。
「……」
ガシッと2人組の腕を捕まえる。そしてヒフミに目線を向けて、攻撃を促した。
「……あっ、えっと、はい!!」
「うわぁぁぁ!?離せぇぇ!!」
「怖っ……こいつ全然離さねぇ!?」
「あだだだだ!!」「待って痛い痛い!!」
「「……」」
「ふぅ……ナイスショットだな」
「何処がですか!?何発も当たってましたよ……すごく頑丈なんですね……」
「とりあえず早いとこ出ないと、また変なのが来るから急ぐぞ」
「あっ待ってくださ〜い!!」
その場から逃げるようにして、ブラックマーケットから退散していった。
「ふぅ……ここまで来たら大丈夫だろ。マーケットの範囲外だし」
「はぁ……帰るまでが遠足って、このことなんですね……」
「それはそうと、ミッション完了だな。このままトリニティに帰ると良いよ」
「はい、ありがとうございました……そうだ、モモトークを交換しませんか?また今回のお礼もしたいですし」
「お礼なんかいいけど……俺もトリニティの子と仲良くなったのは初めてだし、記念に交換するか。はいスマホ」
他校とのコネが出来るのは後々役に立つかもしれないし……
「それでは、ありがとうございました!!」
「気をつけて帰れよ〜」
その後帰って黒服に聞いたが、機械の正体は特に分からなかった。
それとブラックマーケットで、振り返るとペロロがいるという噂が広まったらしい。
……聞かなかったことにしよう。