機動戦士ガンダム 赤GのAnne   作:プリエ・エトワール

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 次回からは、アンシャーリーやギルバート以外の主人公側の人物描写をしつつ話を続けます。

 今回はみぃちゃん最後のお話です。


拠点探索・強襲計画フィッツジェラルド 中編 Side みぃちゃん&むぅちゃん

 ギルバート・ブライトが駆るジェムズガンは、過去のモビルスーツの恐竜的進化への反省から、新機軸の設計思想を取り入れて、設計、製造された最新鋭機だ。

 

 過去の標準的大きさを持つモビルスーツ群と同等以上の性能を有し、ダウンサイズにも成功した機体である。

 

 さらに、整備、コスト共に優れていると、現場、上層部共に評価され、連邦軍の自機主力機として採用された経緯を持つ。

 

 おまけに、新兵装を無理なく装備する拡張性も高い。

 

 そのため、先の戦闘でジャムルフィンより撃ち放たれたメガ粒子砲を、試作型大型ビームシールドで無効化できた訳である。

 

 その一方、みぃちゃんの駆るザク系モビルスーツは従来型サイズであったため、ジェムズガンの後方に位置し、大型ビームシールドに防衛される形であったにも関わらず、その大きさのため、四肢が燃焼、爆散してしまった。

 

 さらに、胴体部分も形こそ残ったが、四肢へとメガ粒子が着弾した瞬間、その灼熱の飛沫の被害をかなり受け、一部はコックピットへと到達していた。

 

 一時的に数千度の煉獄と化したコックピット内部でも、みぃちゃんは死ねず、生きていた。

 

 不完全ながらパイロットスーツ内部と外部を隔絶する高度な技術と、強化されていたみぃちゃん自身の身体が、一瞬の煉獄を耐え抜いたからだ。

 

 また、パイロットスーツに搭載されていた自死信号受信によって発動する致死薬物注入装置は破損。みぃちゃんに死の安らぎを安易に与えることはなかった。

 

 (ほんとヤダ!ほんとヤダ!ほんとヤダ!)

 

 自殺することも儘ならぬ全身大やけど。一部、炭化するまでの重傷となっても、みぃちゃんの身体は生にしがみ付き、そう易々と生命活動を停止しようとはしなかった。

 

 気道は焼け爛れ、唇は癒着してしまい、鼻で呼吸することがやっとだ。

 

 身体中には激痛。

 

 そんな状況でも、意識だけは冴え渡る。

 

 当初は、痛みに対する防衛本能が働き、みぃちゃんを気絶させようとしたのだった。だが、みぃちゃんは激痛によりすぐに覚醒し、気絶状態から、すぐさま回復してしまう。

 

 それを数度繰り返し、もう気絶すらできない状態へとみぃちゃんは追い込まれていた。

 

 (痛い!痛い!痛い! 誰か助けて! お父さん! お母さん! お祖母ちゃん! みぃちゃん苦しいよ!)

 

 いくらみぃちゃんが助けを乞おうと、救助は来やしない。

 

 すでにみぃちゃんと同じ立場の洗脳兵たちの一団は撤退を開始していた。

 

 壊れた傀儡などふたたび手にする価値はない。

 

 彼らはそのように判断し、M1ことみぃちゃんを見捨て、次なる計画のために動き出していた。

 

 もう誰も、みぃちゃんを気にする者はいなかった。

 

 それは、彼等ジオン残党モドキだけではなかった。

 

 実父、実母はすでに事故で他界していたし、本当の故郷であるコロニーの祖母は、みぃちゃんが誘拐されたと知らせを受け、むしろホッと胸をなでおろしていた。

 

 やっと重荷を降ろせた。

 

 事故に見せかけて上手く処理した実子兄妹。その近親相姦で生まれた、呪われた孫が消えてくれたと。

 

 (誰か…誰か……誰か………助けて)

 

 いくら強化された兵士と言えど、全身大やけどという重傷を負えば、治療無くして長くは生き延びることはできない。

 

 これまで多数の罪のない人々を殺していった報いでも受けているかのように、激痛がみぃちゃんを襲い続けた。

 

 (痛い…痛い……痛い………)

 

 次第にみぃちゃんの身体各部の機能は低下していき、その冴え渡っていた意識もまた混濁していく。

 

 もう、その命は長くない。

 

 

 

 (………光?)

 

 

 

 もう何もふたりで語り合う障害はなさそう

 

 ねえ みぃちゃん

 

 むぅちゃんと一緒に

 

 お宇宙(そら)の彼方の福祉事務所に行こうよ

 

 

 (…むぅちゃん?)

 

 

 みぃちゃんがその混濁した意識下で最後に見た幻影は、自らの手で殺害した少女、黒髪を左右でお団子型に結った髪形をしたむぅちゃんだった。

 

 障害を負って生まれてきたために、終始グンニャリとした姿勢だった生前の姿とは違い、シュッとした姿勢のむぅちゃん。、その幻影に後光が刺し、背中には純白の翼があった。

 

 それは、歪んでしまった命の形から解き放たれた、本来の魂の姿なのかもしれなかった。

 

 

  (ごめんね………一緒に地球の施設に入所するはずだった、たった一人の友達だったのに…みぃちゃんが、あなたを殺した………)

 

 

 そのこと許さないよ

 

 でも過去のことでしかない

 

 悪いのは みぃちゃんじゃなく

 

 みぃちゃんを操った

 

 あのポニーテールの悪魔

 

 そう遠くないうちに あの悪魔も罰を受ける

 

 

 そんなことよりも

 

 未來のことを考えようよ

 

 

 (…未来?)

 

 

 お宇宙(そら)の彼方の福祉事務所は

 

 若くして死んでしまった子たちが 次の人生への転生を待つ場所

 

 地球の施設には 一緒に行けなかったから 

 

 だから今度こそ 一緒にそっちに行こうよ

 

 

 (…みぃたちゃんを待っていてくれたの? 一緒でいいの?)

 

 

 ええ! もちろんよ!

 

 哀しいこともあったけれど 私たちは友達でしょう?

 

 

 (うん! うん!)

 

 

 生まれ変わったら 辛いことも 悲しいことも たくさんあると思う

 

 でも 楽しいことも 嬉しいことも 必ずあるから

 

 

 (うん! きっと! きっとそう!)

 

 

 だから 頑張って次の命を得るために

 

 一緒にお宇宙(そら)の彼方の福祉事務所に行きましょう

 

 

 

 そう言って、その右手を差し出すむぅちゃんの幻影。

 

 息を引き取ったみぃちゃんの身体から抜け出した、傷一つない姿の幻影は、むぅちゃんの手を取り、共に並んでお宇宙(そら)の彼方の福祉事務所へと飛翔していった。

 

 その背に拡げた純白の翼を羽搏かせて。

 

 

 拠点探索・強襲計画フィッツジェラルド中編 Side ゲッコウ に続く

 

 

 

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