小町と一緒に食堂でうどんを食べ終わった後、私たちは食堂から私の執務室へと帰っていった。
正直ご飯を食べる前は仕事をする時間も無くなってしまうしあまり行きたいとは思ってなかったけど、いざ食堂に行ってうどんを食べてみるとその考えもどんどんなくなっていった。
というよりもうどんを食べる前からほとんど仕事のことは考えてなかったといっても良いかもしれない。
正直あまりにも食事をするという行為が久しぶりすぎて匂いを嗅いだだけでも唾液を止めれなかったし、食欲が私を支配している感覚がしっかりとしていた。
当たり前の話にはなってくるが前世の私は人間なわけだ。だけれども私が転生した四季映姫の種族はもちろん人間ではなく閻魔だ。
したがって人間の時と違って別に食事をとらなくとも生きることはできてしまう。
だから私は長らくの間ちゃんとした食事をしていなかったんだけど……いざ食べてみると本当に止まらない。
この繁忙期が過ぎたらまた食べに行きたいね。
さっきまでの楽しい記憶を思い出しながら私は自分の執務室の扉を開いた。
「……うわっ……多すぎでしょ」
私が扉を開けた後に真っ先に見えたのはさっき私が小町につれられた時よりもさらに大量に増えた書類の山々だった。
私が昼食を食べる前に終わっていた書類なんて今机に乗っている書類の中の何分の一なのだろう。もしかしたら二桁行くかもしれない。
「はあぁー……今日は日を跨ぎそうね」
ここ何日かの中で一番長いため息が出てしまった。
こんなため息誰かに聞かれてしまっては終わりだが、出てしまうものは仕方がない。それに今はこの執務室には誰もいない。
当たり前だが残業は確定なのだ。問題はその残業がどの程度まで伸びるか、だ。
いつもは出来るだけ残業が終わる時間が日を跨がないように気を付けてはいるのだが、何をやっても無理な時はある。
それに、日を跨がないように調整はしているものの、結局私の家に仕事を持ち越して休日に消化することがほとんどだから日を跨がないようにという意識はあんまり意味がないような気がする。
しかし、今回の量は今までのよりもかなりひどい。
さっきまで解消されていた疲れやストレスが一気に私の身に降りかかってきている気がする。
「……仕方ない……やるしかないか」
正直仕事なんてしたくないが閻魔である私がやらないといけないものも多いため、やっぱり手を抜くことなんてできない。
せめて私じゃなくてはいけないわけではない書類はほかのところへ持って行ってもらいたいものだが……ほかの仕事場も当たり前だが多忙ではある。
私だけがつらいわけではないし、誰かに仕事を押し付けるわけにはいかない。
「はぁ、仕事したくない」
ちょっとした本音と愚痴が入り混じった言葉をつぶやきながら、私は書類に目を通していった。
そこから時間がたってやっとあの書類の山々の一つ分を終わらしたところだった。
「四季様ー! 手伝いに来ましたよー!」
執務室の扉がノックもされずに勢いよく開いた。
私はちょっとびっくりして扉のほうを見てみるとなんと小町が立っていた。
「小町っ!? どうしてあなたがここに……仕事はどうしたんですか?」
びっくりした理由はもちろんさっきまで静かだった部屋の扉がいきなり開いたこともあるのだけれど、正直なところ集中力が切れて私の姿がだらけ気味ではないだろうかという心配からくるものがほとんどだった。
それにしても小町の仕事はどうしたのだろうか?
手伝いに来たと小町は言ってきたけれど彼女の仕事も私ほどではないにしろたくさんあるはずだ。
小町が手伝いに来てくれたのは正直本当に……本っ当に嬉しいのだがさすがに小町の仕事がまだある中手伝いをしてもらうわけにはいかない。
私が疑問に思って小町にそう聞いてみたところ小町からの返答は意外なものだった。
「あー……一応、私の仕事は全部終わらせましたよ。だからあたいを頼ってもらって全然オッケーです!」
まさかあの小町が仕事を終わらせてたみたいだ。あの小町が、だ。
今の時刻は昼休みが終わって結構時間が経ってはいるがまだまだ元の世界でいうところの定時には程遠い時間帯だ。
ご存じの通り、小町にはサボり癖がある。
もちろんそれは原作でもそうだし、今私が四季映姫に成り代わっているこの世界でもその性格というか癖は治っていない。
だから、そんな小町がこんなものすごい早い時間帯に仕事を終わらせれるとは思えないのだが……。
「……それとも、あたいがいないほうが仕事しやすいですか?」
「……うっ」
小町は私のほうを心配そうな目線で見てくる。
……そんな目で見てこられると手伝いを断れないじゃないか!
も、ものすごく罪悪感を感じる。
「…………」
正直な話、私は小町に手伝ってもらいたい。
だって机の上に載っている書類を終わらせるのは私だけでは絶対に無理だ。それにこの書類の山の中の一部には私でなくともできるような書類も多々混ざっている。
それだけでも小町がやってくれると非常に助かるのだ。
それに小町はサボり癖はあるものの有能な子だ。
こんな早い時間帯に自分の仕事を終わらせるだけの頭の回転の速さと集中力はしっかりと持ち合わせているのだ。……私にも分けてほしい。
だから小町が仕事を手伝ってくれるだけで私だけで仕事をする時よりも倍以上仕事のスピードが速くなるだろう。
でも、ここで小町に手伝ってもらうと私にも怠け癖が……というよりも毅然とした態度を保てるかどうかが不安だ。
どうするべきかをかなり悩んだ。それはもう長考した。
「……わかりました。せっかくですし小町に手伝ってもらいましょう。……それで良いですか?」
「──はいっ! じゃあ頑張っていきますよー!」
小町は私がそう言った瞬間、満面の笑みを浮かべながら私の隣の机に座って作業を始めた。
そんな嬉しいことなんてあるかな?
私は少しおかしく思ってしまってちょっとだけ笑ってしまった。
▽
小町は映姫と食べ終わった後、急いで自分の仕事場に戻っていった。
一刻も早く自分の仕事を終わらせたかったのだ。
いつもの小町を知っている是非曲直庁の者がこの話を聞けばびっくりしすぎて半回転ぐらいはするかもしれない。
原作を知る映姫以外の者からしても小町のサボり癖はかなり周知の事実として認知されており、映姫以上に小町への対応に手を焼いている者も当然いる。
しかし、そんなサボり癖がみんなに知られている小町が早く仕事を終わらしたい理由はとてもシンプルなものだった。
「早く仕事を終わらして……四季様のところへ行かないとなー」
理由はシンプル。映姫の仕事を手伝いたいと思っているのだ。
いつもの小町を知っている者たち全員びっくりしすぎて一回転することは間違いないだろう。
目的が仕事を早く終わらせたいのならその後に何かしらの予定が入っていてそれに間に合うようになどいろいろと考えることはできるが、そもそも真の目的が映姫の手助けなのだ。
小町が持つ理由としてはあまりにも善性過ぎているというのが周りの総意だろう。
だけれども、小町からすれば何の違和感のない目標設定ではある。
ただ、いくら映姫のことを尊敬しているにしても、いつもの小町ならここまで映姫の手助けをしたいとは思わなかった。
しかし、ここ最近の繁忙期はいつものものよりもはるかに激しい。
映姫自身は麻痺しすぎてあまり気が付いていないが、いつもの繁忙期の仕事の量よりもはるかに多い量が映姫に課せられているのだ。
だから映姫の精神はいつもよりもはるかに摩耗していっている。それも無意識に、だ。
久しぶりの昼食でちょっとぐらいはストレスが解消されたのかもしれないが、映姫も考えていた通りこの時間にも仕事は増えるわけで、そのせいでさらに映姫の精神は蝕まれていく。
そんな姿を小町は見過ごしたくなかったのだ。
だからこそ、小町はせめて自分の分だけでも仕事を終わらして映姫の手伝いをしに行こうとしているのだ。
ほぼ確実に映姫以外の別の上司にほかの手伝いをしろと命令されると思うが、もう無視するしか映姫を手助けする術はない。
「はー、つかれた……こんなに真面目に働くのいつぶりだろうねー?」
仕事はきついが映姫のためなら頑張れる気がする。
小町は映姫にご執心なのだ。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
これからおそらく大学生活忙しくなってくると思うので、しっかりとこの小説を投稿できるように高評価と感想で私を引っ張り出してほしいです笑
今後ともよろしくお願いします!