幻剣のフブキ   作:ナスの森

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約束

 

 もの自体のやばさで言うのならば、軌跡シリーズの世界にはこの死ぬ気の炎よりもやばい代物は腐る程存在する。

 それこそ古代遺跡に由来する至宝を始めとした古代遺物(アーティファクト)やら騎神(アイオーン)やら呪いだの……数え上げればキリがない。

 それに加えて外の世界の概念もあるようで、例えば《剣帝》レオンハルトが盟主より与えられた黄金の魔剣ケルンバイター、さらに《劫炎》のマクバーンに与えられた対になる魔剣アングバールなど、外の理により作られた剣も存在する。

 外の技術で作られた代物……という点だけで見るならば、この匣兵器だってそれに相当する。

 それらに比べれば、ただ死ぬ気の炎が出せる程度の指輪のやばさなど、比べるべくもないのだろう。

 

 

 ────ただ1つ。このリングが、あの世界の属性の炎ではなく、この世界の七耀に由来する属性の炎を灯せる、という点に目を瞑ればだ。

 

 

 それも、この世界のインフラを支えるに至るまで普及している結晶回路(クオーツ)を埋め込むだけで、その結晶回路の種類に相当する属性の炎が灯せるというお手軽さ。

 下手に完全な外の代物よりも、軌跡世界の身近な技術にもある程度通じているであろうこのリングの方が、自分は遙かにやばいと感じてしまう。

 

 だって、考えても見て欲しい。

 あの世界における死ぬ気の炎を灯すためのリングは、トゥリニセッテ以外の仕様であっても、埋め込まれた石そのものが何かしらの特別な鉱石を用いて精製された代物である。リングと匣兵器による戦いが主体の未来編においては、主要人物から一般兵士に至るまで多くの人物たちがそれらを用いて戦っていたし、とある人物に至っては低ランクリングを複数使い捨てる戦法を取っていたが、例えその低ランクの石であっても決して安価で手に入れられるような代物ではない筈なのだ。

 それらの石と、この軌跡世界において存在する結晶回路を比較してみれば、このリングの異常性が浮き彫りになってくる。

 

 勿論、現代日本からやってきた自分の視点で見ればこの結晶回路だって、十分ぶっ飛んだ代物だ。そもそもこの世界でも昔においては導力革命と呼ばれる技術革命の起因の1つとなった代物なのだから、特別でない筈がない。

 だが、結晶回路はその名の通り導力機器(オーブメント)の回路にはなり得ても、決して死ぬ気の炎を灯す性質は持ち合わせ得ない筈なのだ。もし持ち合わせていたとすれば普遍的に普及したこの世界においてはとっくにその性質が見つかっている筈だ。

 

 つまり、灯される炎の属性そのものは結晶回路のモノに由来するものであるにせよ、その()()()()()()()()()結晶回路に、人体に流れるエネルギーを死ぬ気の炎に変えるフィルターとしての性質を付与しているのは、このリングとしか考えられない。

 

 もしこのリングが、何処か大きな組織の手に渡って解析されればどうなる。

 《身食らう蛇》であれば……ワンチャン自陣営内のみで留めてくれるかもしれないが、これが戦術オーブメントの開発に携わったエスプタイン財団や、世に知れ渡るエレボニア帝国の大企業ラインフォルト社であったり、カルバードのヴェルヌ社だったりと、この世界の民間や軍事に需要を供給する組織の手に渡ってしまった場合……どうなってしまうか。

 

 結晶回路を埋め込んで使用する用途からも分かる通り、その技術は明らかにこの世界の導力技術に通ずるモノとみて間違いないだろう。

 ……だが、そこから生じる現象……死ぬ気の炎は本来、この世界には存在しない代物だ。

 

 既知の系統の技術で、あり得ない事象を引き起こしてしまう代物。

 そもそもが未知である外の理由来や、古代遺物(アーティファクト)とはワケが違う。もの自体のやばさで勝るのはそれらであっても、引き起こされる事態の度合いで言えば……このリングの方が余程やばいのである。

 

 例えるのならば、使われている技術は超やばい高性能の銃を自分だけ所持している状態だが、使っている弾丸の規格は共通しているせいで、もし鹵獲されて銃の機構のみさえ解析されてしまえば、誰でもすぐに使える状態になってしまう。

 ……そうなれば正直、歩兵戦闘において導力革命とは比べものにならない程の戦術革命が起きてしまうのではないかと、自分は危惧する訳だ。

 

 ……いいや、そんなマクロな視点での危機などどうでもいい。

 私が抱いている1番の危機とは即ち……そのような団体・組織にでも渡って解析されてしまえば、今私だけが持っているアドバンテージを消失させてしまいかねないのだ。

 ここで更に匣兵器まで解析されようものならば……私は頭を抱えて死ぬまで布団の中で引きこもっているしかなくなってしまう。

 

 ……それだけは、なんとしても避けねばならない。

 ならないというのに。

 

 

「きれいな、ほのお」

 

 

 ……さて、どうしたものか。

 現在、私の目の前には、不注意にもリングに灯してしまった死ぬ気の炎と、それに惹かれて見つめるエステルの姿がある。

 (ボックス)の方は咄嗟に隠したから問題ないとして、この炎だけはもう隠しようがない。

 見つかってしまったのが、まだ子供のエステルだったのが幸いであると、そう割り切るしかないのか。

 

 

「……フブキ姉、フブキ姉ってば!!」

 

 

 熟考していたら、エステルから繰り返し呼びかけられる。

 再びエステルの顔を見てみれば、その瞳はこの死ぬ気の炎の輝きにも劣らないくらいの、好奇心の輝きが灯っている。

 

「このほのお、いったいなに!? なんでこんなキラキラいろにひかってるのっ!?」

 

 先ほどまで拗ねていたエステルの興味の先は、もはや虫獲りにも釣りにもなく、この炎だけに注がれてしまっているようだった。

 まあ、銀色の炎なんて幻想的なモノ、見せられれば誰だって見惚れるのは間違いないだろう。

 私だって、出来れば手放しで感動していたいくらいなんだが、如何せんそれよりも危機感が先行して内心それどころではない。そういう意味では、エステルの事が羨ましかった。

 ……あぁ、興味本位で死ぬ気の炎を灯そうなんて思うんじゃなかった。

 

 後悔先に立たず、焦る心を努めて抑えながら、私はやさしくエステルに語りかける。

 

「気になるか、エステル?」

「きになるっ!!」

 

 目をキラキラと輝かせながら、エステルは即答した。

 ……仕方ない。

 

 どうにかして誤魔化すか。

 

 

「これは、とても特別な炎でな。私でも今出せたのは……ほんの偶然なんだ」

「ぐーぜん?」

「いつでも出せるわけじゃないって事さ」

 

 

 噓は言っていない。この炎を灯せたのは、突発的で一時的な覚悟があったから程度のものだ。

 よくもまあ、覚悟なんて曖昧なモノで、あの世界の人物たちはあぁも簡単に炎を灯せるものだよ。そんな持続的な覚悟を私が持てる筈がない

 その証拠に、ほら。

 

「……あ、ほのおがちっちゃく……」

 

 私とエステルの目の前で、“幻”属性の死ぬ気の炎は見る見る小さくなり、最終的には消えてしまった。

 残ったのは、先ほどまで炎を灯していた幻属性の結晶回路のみだった。ほら、私の覚悟なんて所詮その程度のモノ。

 

「……きえちゃった……」

「あぁ……消えてしまったな」

 

 炎が消えてしまったのを目の前にして、エステルはションボリと落ち込んだ。

 ……そう落ち込まれると今度は逆に罪悪感が湧くのだが、生憎と再び簡単に炎を灯せる程私の覚悟は決まっていない。

 だが、そうだな……こう言ってあげればいいかもしれない。

 

「そう落ち込むな。また見せてやるさ」

「え……ほんとう?」

 

 再び目を輝かせて聞いてくるエステルに、あぁ、と優しく答えてみせる。

 

「但し、エステルが良い子でいたらな」

「……いい子?」

「さっきの炎は、本当に特別でな。本当は誰にも知られちゃいけないんだ。勿論、レナさんにもな」

「お母さんにも?」

「そうだ」

 

 そっとエステルの頭を撫でながら答える。

 ……何か、子供を上手いこと言いくるめようとしている汚い大人の図面そのもので嫌になる。

 

「だから、これは私とエステルだけの秘密だ。誰にも言いふらさないなら、また見せてやる」

 

 人差し指を口の前に立てるポーズをしながら、私はエステルにそう言った。

 

「……ひみつ。あたしと、フブキ姉だけの」

「あぁ。約束、守れるか?」

 

 言って、私は立てた小指をエステルの前に差し出す。

 その意味を、エステルは即座に理解したのだろうか。

 すぐにエステルは満面の笑顔を取り戻し、私と同様に小指を差し出した。

 

 所謂、指切りゲンマン、という奴だ。

 

「あたしと、フブキ姉だけのひみつ!! まもる!!」

「あぁ、私達だけの秘密、だな」

 

 互いの小指をつかみ合いながら、私とエステルはそう宣言する。

 ……なんか、昔母さんと似たようなことしていた思い出が蘇って涙が出そうになってくる。

 

「……それじゃあ、エステルが私の秘密を守ってくれるなら、私もエステルの秘密を守ってあげないとな」

 

 言って、立ち上がる。

 きょとん、とするエステルに私は振り向いて言い放った。

 

「釣り竿、このままじゃレナさんに叱られるだろう? その前に私が取ってきてやる」

 

 果たして、今の私は優しく笑えているだろうか?

 ……そんな不安が募ったが、私の言葉にエステルはまたパァッと表情を輝かせて「うん!」と答えてきた。

 

 

 

 

 

 ……あぁ、分かっていたとはいえ。

 

 

 

 

 

 ……本当に、不思議な子である。

 

 

     ◇

 

 

 ロレントの郊外にあるブライト家の一軒家。

 その家の台所にて昼食の支度をしながら、とある2人の帰りを待つこの家の家内の女性がいた。

 娘にも立派に遺伝された、腰の下まで伸びた栗毛色の髪。

 本来ならばあのロレントの時計塔の崩壊により、娘を庇って死ぬ筈だった女性、レナ・ブライトは今ここでキッチンの台所に立ち、とある2人の帰りを待っていた。

 

 レナはふと、帰りを待つ1人の少女に思いを馳せる。

 一週間前、自分と娘のエステルを、崩壊する時計塔の瓦礫から守ってくれた、二刀流の少女剣士。

 長い銀髪に、白と黒を基調とした東方風を見受けられる服装、深海を思わせる暗い青色の瞳に、武人然とした空気を放つ凜々しき少女。

 

 カルバード共和国からやってきた、と自称するその少女を、レナは恩返しの意味も含めてどうにか家に留まってくれるように説得した。

 幸い、家に送るまでの護衛を彼女がしてくれると言ってくれたおかげで、家に着くまでの間に彼女を説得できるだけの時間はあったのだ。

 ……その中で、レナが少女を強く引き留めようという強い決心を持つようになったのは、とある一連の会話だった。

 

『本当に、すぐに行ってしまうのですか? 今夜くらい泊まっていっても』

『……ロレントを訪れたのは偶々だ。積極的に他人と馴れ合う質でもないのでな。……貴女達を送っていくのは、ついでのようなものだ』

 

 若干、此方から目を逸らしながらそう答えてきた少女。

 馴れ合う質ではない、とか言いながら自分とエステルが家に帰れるまで心配する様子を見せてくれたあたり、レナは一目でその少女が少々ドライなフリをしているだけの心優しき人間である事を見抜いた。

 ────フブキ・カワカゼ。カルバードから来た。宜しくは……しないでいい。

 最初にそう言われたとき、思わずドライな印象を抱いたものだった。

 しかし、命の恩人である以上に、レナはこの少女をどこか放っておくことができなかった。

 

『……カルバードからの旅行者、となると戦争が始まる前からリベールに? 何処かに宿は取っているのですか?』

『そのような物は取ってない。それに……ここ数週間で野宿には慣れ切って────』

 

 少女の言葉が、そこで途切れる。

 少女自身も、今の発言が失言であると悟ったのだろう。

 ……そして、その失言を見逃すレナではなかった。

 

『……是非、戦争が終わるまで家に泊まっていって下さい』

『いや、別にいい』

『私を、恩人をみすみすと野宿させるような人間にするおつもりですか?』

『それは其方の都合────』

 

『泊・ま・っ・て・い・き・な・さ・い。』

『……ハイ』

 

 最後は、レナの笑顔の剣幕に根負けした少女。

 レナ自身は自覚していないが、彼女の主人たる『剣聖』すら尻に敷く笑顔の圧だ。

 その圧に、少女は屈してしまったのである。

 

 そんな説得の末、レナはどうにか少女をこの家に留まらせることができた。

 恩人に何も返せないまま別れてしまうのが嫌だった、という打算も確かにあった。

 だがそれ以上に、レナはあの少女を放っておくことができなかったのである。

 

 ……そんな事を考えている内に、玄関から物音が鳴り響いた。

 

「おかあさん、ただいまー!!」

 

 聞こえてきたのは、忙しない足音と、愛おしい我が娘の声。

 思わず、クスリと笑みが漏れる。

 一週間前、時計塔の瓦礫に下敷きになりかけた時、もうきっとこのような時間は来ないのだろうと思っていたから。

 何気ない日常が、今ではまさに夢のように感じた。

 

「お帰りなさいエステル」

 

 走り寄ってくるエステルを抱き上げる。

 抱き上げたエステルは笑顔のまま、頬を擦り付けてくる。

 ……時計塔で死にかけたせいだろうか、エステルの甘えてくる頻度が、この一週間で更に上がったような気がするが、無理もない。自分も同じ気持ちなのだから。

 

 ……今帰ってきた、もう1人がいてくれなければ、この時間は永遠になかっただろうから。

 

「フブキさんも、エステルに付き合ってくれてありがとう」

 

 顔を上げて、遅れて玄関からやってきた少女に礼を言う。

 

「……付き合って貰ったのは私の方です。レナさんの方こそ、釣り竿を拝借させてもらって申し訳ない」

「いいのよ別に。釣りなんてエステルと主人くらいしかしないから」

「……そうですか」

 

 ホッとしたように目を閉じるその少女こそ、自分とエステルの恩人。

 ロレントの時計塔の瓦礫から自分達親子を救ってくれた、フブキ・カワカゼと名乗る白い少女。

 長い銀髪に、広く靡く白い袖も相まって、まるで白鳥のようだとレナは思う。

 だが同時に、腰に下げた4本の刀と武人然とした儚く凜々しい雰囲気が、この少女もまたただ者ではないことを匂わせてくる。

 

 現に、ロレントを襲撃した帝国の1個小隊を数秒の間に、2本の刀で沈黙させたのだから、その腕前は計り知れない。

 だが、その少女も今では心なしか、気の抜けたような、どこか安らいだような表情をしていた。

 

 我が愛しの娘エステルと、自分達親子の恩人フブキ・カワカゼ。

 底抜けに人懐っこく明るいエステルと、一見ドライで冷たいように見えるフブキ。

 正直、一見正反対に見えるこの2人が仲良くなってくれるのか不安なレナであったが、そんなレナの不安を吹き飛ばすように、エステルとフブキは瞬く間に仲良くなっていった。

 

 特に、釣りという共通の趣味があったのが大きかったのか、ここ最近ではエステルとフブキは時間を見ては一緒に釣りをして遊んでいた。

 

「……よかった」

 

 思わず、安堵の息が漏れた。

 あんなに悲しい瞳をしていた少女でも、ちゃんと穏やかな日常を謳歌できるのだということを知れて。

 エステルを受け入れ、逆に面倒まで見て貰ってしまって、このままでは恩返しもままならないのだが、一見冷たいように見える少女の心優しき一面を見れてレナはホッとしてしまった。

 

「エステルも、フブキさんも、夕食までまだ少し時間があるから、上で少し休んでいって下さい」

「……お言葉に甘えます」

「うん! フブキ姉、いこっ」

 

 エステルに袖を引っ張られて、一緒に上に上がっていく少女。

 まるでエステルに年の離れた姉が出来たようで、少し微笑ましい気分になるエステル。

 願わくば、ずっとここにいてくれてもいいのに、と思うくらいには。

 そう思いながら暫く調理してくると、階段の方からまた足音が聞こえてくる。

 

「なにか、手伝えることはないだろうか」

 

 降りてきたのは、上でエステルの面倒を見てくれている筈だったフブキ。

 

「フブキさん、エステルはどうしているの?」

「疲れて寝てしまったようです……中々離してくれなかったですが」

「……それって」

「……元気に見えて、ロレントの襲撃はあの子には未だ堪えているらしい。これからもなるべく一緒にいてやった方がいいかもしれません」

 

 私が言うべきこともでもないでしょうが、と付け足すフブキ。

 

「……そうね。でもそれが出来るのも、フブキさんが助けてくれたおかげね」

「……何回も言うようですが、ロレントを訪れたのは偶々です」

「それでも、よ。助けて貰った上、エステルの面倒まで見て貰って……本当に、どうすれば恩を返せればいいのやら」

「面倒を見ているつもりはありません」

 

 首を横に振りながら、フブキはそう答える。

 

「逆に、私の方こそ申し訳ありません。其方の主人が帰ってくるまで貴女方を守る約束だったのに……いつの間にか私の方がエステルに付き合わせて貰ってる」

「い、いえ……そんな事ないわよ!」

 

 佇まいを正して頭を下げる少女に、レナは思わずたじろぎながらも両手を振って否定する。

 

「いいえ、貴女を守ると約束したのに、肝心の貴女から離れては本末転倒だ。……ですが、少々言い訳をさせて貰うのなら……」

「……?」

 

 気まずそうに顔を背けて間を置くフブキに、レナを思わず首を傾げる。

 

「さっきも言ったように、面倒を見ているつもりはありません。……ただあの子は、エステルは……誰が相手であっても簡単に相手の懐に潜り込んでしまう。貴女に似て、不思議な子だ」

 

 感慨深そうに天井を見上げるフブキ。

 その視線の先は、上の階で寝息を立てているエステルだろうか。

 

「……私も、いつの間にか懐を許していた。やはり貴女達は、似た者親子なのだな」

 

 悟ったように目を閉じてそう言うフブキに、レナは何とも言えなくなってしまう。

 似た者親子と言われるのは嬉しいのだが、褒められているのか、逆に貶められているのか判断に困る言い草だった。

 

「約束を反故にした詫びです。……配膳くらいは手伝わせて下さい。」

「……分かりました。では、お願いしますね」

 

 無理を言って引き留めてるのはむしろこちら側だというのに、そう言ってくるフブキもまた折れる様子がない。

 観念したレナは少し呆れたように微笑みながらも、お願いすることにした。

 

 ……主人が帰ってくれば、その時点でこの子ともお別れになってしまう。

 そうなる前に、少しでもこの子と話がしたかったのも本当だから。

 

 

 ……そう思っていた頃に。

 

 

「無事か!? レナ、エステル!!」

 

 

 玄関から、愛しの主人の声が聞こえてくる。

 ……一報を聞き、急いで軍を抜け駆けつけてきてくれたのだろうと嬉しく思うと同時。

 

 ……もう少しだけ、遅れて来てくれてもよかったのにと、そう思ってしまった。

 

 

 





という訳で、ブライト家での主人公の短い日常でした。

因みに、指輪に嵌めた結晶回路から死ぬ気の炎を出すという発想は、昔に雲雀さん風のロイドさんが主人公の話を書きたいと妄想していた時期に思い付いた物だったりします。

なんやかんやあってもクロスベル風紀財団を立ち上げたロイドさんが、エスプタイン財団と共同でリングと匣兵器を開発する……とかいう下らない妄想をしていたなぁ(黒歴史)。
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