荒田くんはかからない   作:あすけちゃ

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荒田ハキは、なにかと''かからない''。

まず世話があんまりかからない。
そしてお金もあんまりかからない。

マジックもすぐに種を見抜くし、おまじないもかからない。
詐欺にもひっかからないし、噂にも動じない。

だけど彼にも彼なりの悩みがある。

「彼女ほしー。」

それは全くモテないことだった。

顔は大して悪くない。性格的にも難はないはず。…多分。
彼は非常に悩んでいた。

「田中ぁ、どうやったらモテると思う?」

荒田は友達の田中マサに話しかける。

「えー?やっぱ積極的にアプローチっしょ。お前は積極性がねーんだよ。
 でもやっぱぁ、好きな子とかいないの?モテたいってもわかんねぇよ。」

ことごとく杭を刺す田中の言葉に荒田はまた顔を歪ませた。
そして頬を赤らめて、荒田は絞り出して言った。

「…となりのクラスの、美香ちゃん…が…その…」

ごにょごにょと恥ずかしそうに話す。

「えーっ!お前美香ちゃんすきなのー!?」

「お前ぇ!声がでかい!!」

荒田は田中の肩をバシバシ叩く。クラス中からクスクスと声が溢れた。

「恋の病ってやつねぇ。」

クラスの誰かが冷やかすようにハッキリ言った。

「誰か…殺してくれぇーっ!」

荒田は逃げるようにトイレへ駆け込んだのだった。


荒田くんはわからない

朝日が少し高く登った頃、静かな商店街を荒田と田中は並んで歩いていた。

田中のたっぷりなキーホルダーが歩くたびにチャラチャラ鳴き、クマ鈴の様だった。

 

「ねぇねぇっ、いつ美香ちゃんに告るんだヨォ。」

 

田中が茶化す様に言う。

 

「はっ、はぁ?」

 

「ほっらぁ、昨日好きってさぁー。」

 

「ちっがうし。ちょっと気になるってだけで別にそんな好きだとかそう言うんじゃ」

 

荒田は焦る様に取り繕えない事実を取り繕うとする。

もちろん田中はクスッと笑って言った。

 

「恋ですなぁ。」

 

「うるせ!」

 

すると前からコツコツとヒールの音がしたと思えば、前から女性が歩いてきた。

田中はその女性をまじまじと見て、

 

「この女の人、めっちゃ綺麗…」

 

小声で荒田にこそっと伝える。

 

「…そうかなぁ。」

 

だけど荒田は不思議そうに言う。

 

「すみませぇん。神社の場所を教えて欲しいんですけどぉ。」

 

噂をすればなんとやらか、女性が田中に話しかけてきた。

田中はひどく顔を赤らめて、女性の質問に一生懸命に答えようとした。

 

「あっ…えっとお…」

 

田中はタジタジしてひどく汗をかく。

 

「…お前、猫に何動揺してんの?猫アレルギー?」

 

「なーんで猫になるんだヨォ。どう見てもきゃわいい女の人でショオ。」

 

田中は茶化す様に言う。

だけどよく見れば、女性の人は何やらすこし焦り出した。

 

「ほらこれ猫又でしょ。尻尾2本あるし。初めてみたなぁ。」

 

そう言った途端、女性は猫又の姿に変わって、荒田にひどく叫んだ。

 

「あぁあああっ!なんでなんで!!お前ぇ!!」

 

突然そう言われて、荒田はひどく驚いた。

 

「えっ!猫が喋った!」

 

田中は目を丸くして驚く。

 

「なんでわかっだぁ!!!絶対殺してやるぅうう…っ!!」

 

まるで魔女の様ながなり声で、猫又はどこかに行ってしまった。

 

「ひいぃぃいっ、それだからお前はモテないんだよ…って、おーい?」

 

荒田はびっしょりと汗をかいて、動揺していた。

だけどすかさず意識を取り戻し、いつもの様子に戻った。

 

「いつまでその話すんだぁ。さっさと行くぞ。」

 

荒田は急ぐ様に学校へ向かった。

 

 

 

 

 

教室に入れば、何やら騒がしい。

荒田は不思議に思って田中に聞いた。

 

「今日は転校生が来るってさ。」

 

田中はニコニコして、楽しそうにしている。

 

「て、転校生?」

 

荒田は初耳だった。

 

「クラスライン見なかったの?」

 

「くらすらいん…?」

 

「…なんかごめんな?」

 

クラスの話題は転校生の話に持ちきりなった。

女の子がいいだとか、イケメンがいいだとかで…

 

「ねぇねえん。荒田くんは誰がいいのカナァ?」

 

「えー、えーっ…?やっ、やっぱ女の子…」

 

「えーっ!?荒田には好きな子いるのにー!?」

 

「うるっせぇ!なんでもいいだろなんでも!」

 

キーンコーンカーンコーン。

 

一斉にクラスメイトがいそいで席につく。

シーンとなったクラスの中で、ガラガラとドアが開く音がする。

すると灰色のスーツに身を包んだ大きな人が…先生が来た。

 

「今日はね、転校生がきます。」

 

そういい先生はちょいっと手招きをして、転校生を呼んだ。

コトコトと教壇の前までやって来た転校生は、それは実に可愛い少女だった。

 

「神田こころです、よろしくお願いします。」

 

瞬く間にクラスがざわつく。

「めっちゃかわいい…」「うちの彼氏取られたらどうしよ〜」

「お姫様みたい…!」「えっぐぅ…四次元じゃん…」

 

「はーい皆んな静かにー。神田さん、空いてる席にどうぞ。」

 

そう言われ、神田はコトコトと荒田の隣の席に座った。

 

「うっわぁ、荒田ずりぃ〜!」

 

田中がそう言って茶化す。

だが荒田はひどく怖がって、とても震えていた。

 

「大丈夫?」

 

神田は不安そうに荒田に話しかける。

だけど荒田は一層怖がり、神田の方を見ようとはしなかった。

 

 

 

 

 

夕焼けが赤く差し掛かる頃、荒田はひとりいた。

 

「荒田くん、ひとり?」

 

転校生の神田が荒田に話しかける。

だけど変わらず荒田は気味悪そうに神田の顔を覗く。

 

「うっ、うん。まぁ、ね。」

 

「田中くんは?」

 

「バスケ…てか神田さん、クラスに馴染むの早いですね。」

 

神田はそう言われれば少しハッとした顔を浮かべて、ふふっと朗らかに笑った。

 

「そうだ。今日付き合ってくれない?」

 

「…いいですけど。」

 

荒田は神田に恐る恐るついて行った。

消して顔は見ようとせず、神田の後ろをついて行った。

 

「今日は色々ありがとうね。」

 

神田は優しく問いかけた。

 

「はい…」

 

「ごめんだけど、もう少し手伝ってもらうね。」

 

「はい…」

 

「荒田くんはやさしいね。」

 

「はい…」

 

「私のこと、どう見えてるの?」

 

「はい…」

 

繰り返し、神田は同じ質問をする。

 

「私のこと、どう見えてるの?」

 

すると荒田はやっと気づいたようで答えた。

 

「えと…可愛いお、女の子…」

 

「ふふっ。」

 

神田は優しく笑う。

 

「''バケモノ''に見えるでしょ。」

 

荒田はそう言われて、躊躇うことなくコクっとうなづく。

 

荒田には、神田が気持ちの悪い化け物に見えた。

顔は昆虫の見た目をして、背中には立派な羽が生えている。

手は人間であるが水かきがついている。加えれば腕に魚のヒレのような物がある。

足は馬か羊の足をしており、だが、言い切れないほどの見た目だった。

言い表せないのだ。

 

「誰にも言わないでね。」

 

神田はそう言い杭を刺す。

 

「…うん。」

 

「とりあえず、神社に行きましょうか。私の家なの。」

 

靴を履き替え、2人は縦になって歩く。

いうて荒田にはバケモノに見えても、皆んなには絶世の美少女に見えている。

神田の姿を見たくないのもあるが、やはり荒田にしては周囲からの誤解が恐ろしかったのだ。

 

荒田と神田は長い神社の階段をゆっくり上がって、鳥居をくぐった。

 

「ここなら大丈夫。さて話すよ。」

 

やはり柔らかい顔で神田は話し始めた。

荒田は恐る恐るながらも神田の顔を見ていた。

 

 

 

 

 

神社の裏で、2人はコソコソと話し合っていた。

 

「話って、何?」

 

荒田が聞くと、神田は答える。

 

「ちょっとここらで面倒ごとがあってねぇ。」

 

「手伝って欲しい、と…」

 

「…そう。話が早くて助かるよ。本題に入るよ。」

 

荒田は顔を伏せて、神田の話の続きを待つ。

チクチク歩くアリを見つけて、指で突っついて遊んでいた。

 

「問題。私の正体はなんでしょう。」

 

「神。」

 

迷うことなく荒田は答える。

 

「正解だけど…なんの神様かも考えなよ。」

 

神田は少し苦笑いをしてあっけなく正体を明かした。

 

「まぁここの土地神かなぁ。まだ若いけどね。質問ある?」

 

神田はそう言い新たに聞く。

 

「…なんでそんな見た目をしてるんですか…?」

 

躊躇うことなく荒田は神田に聞く。

神田はまたクスッと笑って嫌がることなく答えた。

 

「色々な生き物と親しくするためよ。…説明すると長くなるけど、

 その生き物にはその生き物と同じ見た目になるの。最も好かれるね。」

 

だが荒田は納得のいかない様子であったものの、無理やりうなづいていた。

 

「そして、神様には突如として課せられたミッションがあるのです。」

 

そう言い、荒田はごくりと眉唾を飲む。

 

「''荒振神''を見つけよ、とね!」

 

「''あらぶるかみ''?」

 

荒田が不思議そうに聞くと、神田は迷わず答える。

 

「邪神だよ邪神。そいつが今世に甦っちゃってねぇ。今たくさん世界に悪影響がでてるの。

 前まで大したことなかったんだけど…今はなんか強くなってね。正体も掴めないの。」

 

「…神スケールの話に、俺が入っていいもの…?」

 

「そこでね、いろんな怪異の正体が分かる君だよ。私はなーんにも分からずじまいなのに、

 君はすぐに、バシッと私の正体に気づいたからね。採用ってわけ。」

 

「神様なのにラフっすね。」

 

少し壮大な話だと感じ、荒田はやや怖くなっていた。

 

「しかも期限があと一ヶ月しかないの。まずいから人の手も借りたいってわけ。」

 

「期限すぎるとどうなるんですか。」

 

「荒振神が暴走し出して1時間で辺りを更地にするよ。」

 

「怖…」

 

荒田は少し冷や汗をかいて、ふとアリを潰してしまった。

指を擦って、地面に引っ付けて肌から剥がそうとする。

 

「だから、一ヶ月私と調査をお願いね。付き合ってくれる?」

 

「まぁいいですけど…」

 

「休みの日はずっと駆り出すよ?」

 

「まぁ別に…」

 

「たまに学校休んでもらうよ?」

 

「まぁ嬉しいし…」

 

「ならよかった。」

 

神田は安心したように立ち上がる。

 

「じゃ、君は彼氏で私は彼女。」

 

「…ん?」

 

「ということで、それじゃ。」

 

「…んん!?」

 

気がつくと神田は姿を消していた。

 

荒田は焦りに焦った。

ついには神田に怒りさえ覚えていた。

 

「あの神…!!」

 

神田の自分勝手な行動に苛立ちを覚えつつも、相手神様だしなぁ…と

荒田は素直に怒れなかった。

 

「…うぅっ…うぇ」

 

荒田は神田の姿を思い出し、吐き気を催した。

 

人の痛みを知らぬ神に、荒田はわからない神の心に翻弄されたのだった。




初めて?の投稿です
拙いところマシマシのマシですみません

妖怪とか神とかのバトル系が書きたくなり書いてみました
物語は自分の中でまとまっているので要望あっても聞けません(ごめんね)

黒歴史にならないことを祈ろう
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