Fate/Re-start-フェイト リスタート-【完結】 作:おるか人
【聖杯戦争 二日目(夜)】
ライダーこと征服王イスカンダルと、そのマスター、ウェイバー・ベルベットの乱入。そこに至る経緯は、
ライダー組、街中で挑発するサーヴァント(セイバー)を発見 → それに釣られたサーヴァント(ランサー)も発見 → 「一旦様子を見よう」というライダーの発言を『漁夫の利狙いの戦略』とウェイバーが誤解 → 冬風吹き荒ぶ冬木大橋のアーチの上で、命綱ナシの戦場見学 → 萌えるやり取り → ランサーが決め技に訴えた事でライダーが「死んでしまったら、せっかく六人もいる強敵たち全員と戦えんではないか」と慌てる → ウェイバー、遅まきながら誤解に気付くも、置き去りを恐れてライダーに同行 → ライダーの戦車に乗って戦場に乱入――
――と、ぶっちゃけ『原作』とほぼ同じ内容である。
よって、細かなやり取りは省略する。
* * * * *
「――――AAAALaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaie!!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああ――――――ッッ!?」
戦場に轟くライダーの鬨の声。それに負けじと響き渡る、絹を裂くかのようなウェイバーの悲鳴。
あまりにも予想外の乱入者に、緊迫した雰囲気を漂わせていたセイバーとランサーが弾かれたように空を見る。
(奇襲か!)
バチバチと派手な稲光を放ちつつ、広場へと疾駆する戦車。
“
すわ、戦車の一撃によって広場は崩壊――するかと思いきや、二人の想像に反して、戦車はいっそ穏やかに着陸を果たす。
(なっ、……まさか、こちらの行動を見て『使っても当たらない』と判断し、宝具の発動を取りやめたのか……? 無意味な行動に魔力を割かない……ライダーか、それともマスターの判断か……どちらにせよ、相手はなかなか切れ者のようですね)
騎士として、決闘を邪魔された怒りはあるが……それ以上に、更なる強敵が現れた事に戦慄するセイバー。
ライダーは、距離を開いて睨み合うセイバーとランサーの間に入ってきた。一見すればライダーが圧倒的に不利な立ち位置だが……忘れてはならない。先ほどまで、ランサーはセイバーに圧されていたのだ。もしもこの状況を好機と見て、ランサーがライダーと手を結べば……セイバーを共通の脅威と見なし、ランサーに助太刀するためにライダーが乱入してきたのだとしたら……!?
(く……!)
仮にその想像がセイバーの勘違いだったとしても、セイバーが先手をとれば結果的にそうなってしまう可能性は高い。かといって後手に回れば、そのまま槍兵と騎兵の間で同盟が交わされてしまうやも知れない。
二重束縛――ライダーの思惑がどうあれ、セイバーは下手な動きがとれなくなってしまったのだ。そしてセイバーより幾分かは行動のハードルが低いものの、ランサーとて下手な対応はできまい。となれば……実質、この場を支配しているのはライダーであると言っていい。
(奇襲に気付いた時点で撃ち落とすべきだった……!)
しかし――そうは言うものの、“
恐らくランサーとの戦いが始まった直後から、セイバーはライダーの手の内で踊っていたのだ。なんという知略。なんという大胆さ。セイバーは、ライダーがランサーをも超える強敵であることを心胆から思い知らされることとなった。
そして――そのライダーがいま、戦車から身を乗り出し、堂々とした声を響かせる。
「双方、武器を収めよ。王の御前である」
腹の底まで響くような迫力のある声だ。ライダーは山のような巨躯をより大きく見せるよう、腕を振り上げて叫ぶ。
それはセイバーへの宣戦布告か、ランサーに対する同盟の申し入れか? 果たして――
「我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯戦争においては、ライダーのクラスを得て現界した!」
……自己紹介でした。
* * * * *
ライダー陣営
マスター ウェイバー・ベルベット
サーヴァント ライダー
真名 イスカンダル
出典 原作通り
協力者 マッケンジー夫妻(暗示による洗脳)
備考 特になし
* * * * *
(……は?)
それは思わず「ああ、これはどうもご丁寧に」と返してしまいそうなほど、見事な自己紹介であった。この場が聖杯戦争という「自らの正体を知られる事が大きなリスクに繋がる」戦いでさえなければ、称賛の拍手でもって迎えたいところだ。
戦場にいる全員が、一瞬――ライダーの意図を理解できずに硬直した。
『……あんな馬鹿に、世界は一度征服されかかったのか?』
念話を通じて、切嗣の呆れ声がセイバーへと届く。
その感想は全くもってセイバーも同意見であり――召喚されて以来、酷いすれ違いを続けてきたセイバーと切嗣の心が、初めて一つになった瞬間であった。
もはやこの場にシリアスな空気は望むべくもない。
短い間でしたが、応援ありがとうございました!
これより、本作『Fate/Re-start -フェイト リスタート-』は歌あり笑いありのコメディ路線へと方針を転換――
――しない。
何故なら、今しがた『戦場にいる全員が硬直した』と言ったが、それはセイバーから見た感想であるからだ。
事実は違う。
そう、この倉庫街にただ一人――誰もが(ライダーのマスターでさえ)予想外であったライダーの介入を、
かの人物の名は、暁美ほむら。
キャスターのサーヴァントであり、この狂った第四次聖杯戦争の
「礼を言うわ、ライダー……」
暁美ほむらは高らかに謳う。
己の勝利――その確信を。
「
そして、世界は動きを止めた。
* * * * *
「うぬらとは聖杯を求め――ぬっ?」
名乗りを終えたライダーが清々しい気持ちで続きを口にしようとした時――異変に気付いた。
「何を――考えてやがりますか、このっ」
マスターが
「坊主、掴まれ!!」
「えっ、うわあぁあ!?」
ウェイバーの首根っこを掴み、万が一にも振り落とされないよう懐へと招き入れると、ライダーは神牛に強く鞭打った。
「全速力だ! 頼むぞ、ゼウスの仔らよ!!」
ライダーの意思に従い、コンマの間も挟まず“
気でも違ったか。正体を明かしたのはそのためか? ――否。
「切嗣、令呪の使用をお願いします!!」
「アーチボルトさんッッ―――――!!」
気付けば、動揺を露わにしているのはライダーだけはない。セイバーは主へ救援を要請し、ランサーは何処かにいるのだろうマスターの下へと駆け出している。
見よ――彼らの周囲には、無数の銃弾が、雨のようなミサイルが、大量の可燃性燃料を積み込んだタンクローリーたちが、空を覆い尽くすような量の爆薬が、それぞれ命を殺らんと襲い掛かっているではないか。
――
そう、この夥しい数の兵器たちは、
「ひぃ、う……ああああああああああああああああああああああああああああッッ!!?」
一歩遅れて事態に気付いたウェイバーが悲鳴を上げ――
その刹那、倉庫街は爆炎の海と化した。
* * * * *
――大成功だ、と切嗣は自分に言い聞かせる。
ケイネスのサーヴァントがランサーである事が分かった。ランサーの『槍』が持つ力を推し量る事ができ、セイバーの実力なら力押しで勝てる事も照明された。
外様マスターの一人であるライダーのマスターも人相をハッキリと確認できた。調べれば、近いうちにその正体も判明するだろう。何よりライダーの真名を知れたのは予想外の幸運だ。ライダーのマスターが見せた、直後の狼狽えようからして――虚偽の可能性も低い。
対してセイバーは、正体に繋がる能力を一切使用せず、高い戦闘能力だけを誇示することができた。
大成功。ああ、まさに大成功だ。最高の情報収集ができた。
「はあ、はあ、……た、助かりました……感謝します、切嗣……」
だが――いま、目の前で冷や汗をかいているセイバーの姿を見ると、その成果を手放しに喜べない。
いま、彼らがいるのはあの倉庫街ではない。
セイバーを除くアインツベルン陣営……切嗣・アイリスフィール・舞弥の三人は、セイバーとランサーの戦闘中に無事、新たな拠点――深山町の武家屋敷――へと避難を果たしていた。そして切嗣は契約のラインを通じてセイバーの窮地を受け、令呪を用いてセイバーを倉庫街からこの場へと召喚したのである。
本来は己に逆らうサーヴァントを律するための魔術である令呪だが、主従の意思が合致する用途――今回のケースで言えば、死地からの脱出――であれば、魔法にも匹敵する奇跡を起こす。セイバーは時空の壁を超越し、倉庫街からこの武家屋敷へと瞬間移動する事で難を逃れたのだった。
マスターに与えられた、三回限りの切り札。――それを二日目にして使ってしまった事は構わない。切嗣が思い悩むのは、その切り札を使わざるを得ない状況へと追い込んだ下手人についてだ。
(機関銃、手榴弾、対戦車弾、迫撃砲にミサイルだって……? はは、イカれてる)
あの時セイバーたちを襲った攻撃は、近代兵器のオンパレードだ。セイバーの視界を通して確認できただけでも、それだけ。冷静に探せばもっと凶悪なモノも見つかるかもしれない。
切嗣もたいがい手段を選ばぬ外道だが、その切嗣にさえドン引きされるレベルの馬鹿が、この戦争には参加しているらしい。
本来、ただの兵器であれば、神秘の具現たるサーヴァントを傷つけることなどできはしない。しかし……あの兵器たちは……
(
ランクは低いが、確かな神秘が『後付け』されている。
セイバーの高い神秘に阻まれ、一発一発は見た目通りの破壊力を発揮せずとも――全てを受ければセイバーとて耐えられないだろう。なにせあの時の攻撃は、文字通り空を覆い尽くすほどの量が投入されていたのだ。
敵は自分の能力を正確に把握している。だからこそあんなにも馬鹿げた数の兵器を投入し、一発一発の威力よりも、絶対に逃げられない包囲網を作る事を優先した。
切嗣の令呪が間に合ったのは、半分偶然だ。
もしもあの時、まばたき一つ分でも行動が遅れれば――それで、切嗣の聖杯戦争は終わっていた。
「セイバー……あの時、何が起こった?」
「分かりません。あの攻撃は突然……本当に突然現れたのです」
「攻撃を不可視化する能力か……? いや、それなら命中するまで隠しておけばいい……」
「瞬間移動ではないでしょうか?」
「可能性は高いが……それなら、今度はどうして令呪が間に合ったのかが疑問だな」
――分からない。
「兵器を扱うサーヴァント……現代か、もしくは近い未来から呼ばれた英霊なのか……。いや、兵器を用意したのはマスターで、サーヴァントはそれに魔力を付与させただけとも考えられる……」
――分からない。
「セイバー……敵の姿は見えたか?」
「いえ。……すみません」
「そうか」
元から分かっていた事ではある。セイバーが見ていた景色は、切嗣も見ていたのだ。それに、こんな手段を用いる相手が、そう易々と敵に姿を晒すとも思えない。
「――アイリ、脱落者は?」
「いえ……新しい魂は感じられないわ」
「くっ……」
無情な宣告に、いよいよ切嗣は歯ぎしりをする。
残る三騎のサーヴァント。
ケイネス・ランサー組。
少年(仮)・ライダー組。
そして、切嗣らセイバー組を含め、三組まとめて殲滅せんと奇襲をかけてきた最後の一騎……。
未だにアーチャー・アサシンのどちら(もしくはどちらも)が敗退したか掴めていない以上、クラスの特定はできそうにない。必然的にマスターの情報もない。完全に謎だ。
その謎の相手が、自分と同じく魔術師の誇りなど度外視に、『勝利』だけを狙って行動している――。
「ッ……!!」
背筋に氷柱を差し込まれたような悪寒が走り抜ける。
もしや、あの敵はとっくに切嗣の行動に気付いていて、今にもこの武家屋敷に兵器を向けているのではないか――そんな最悪の想像が頭を過ぎった。
(大丈夫だ! こちらに
――もしも、あの敵が御三家と何ら関わりのない、外様のマスターに召喚されたサーヴァントだったら……?
(あ……)
敵は、アイリスフィールが聖杯である事を知らないかもしれない。
もし、馬鹿正直に『聖杯は監督役が預かっている』などと勘違いしているなら……このアドバンテージには全く意味がない。
ぶわっ、と肌が栗立つ。
自分は致命的なミスを犯したのではないか?
聖杯戦争の趨勢を無視してでも、堅固な護りを誇るアインツベルン城に逃げ込むべきだったのではないか?
「くそっ!!」
ダン! と、切嗣が畳に拳を叩きつける。
「僕は負けるわけにはいかないんだ! 聖杯を手に入れなくちゃ、この戦争を、人類最後の戦いにしなくちゃ……絶対に勝たなくちゃいけないんだ! なのにっ!」
思わず漏れたそれは……紛れもない恐怖。
切嗣はいま、自分の敗北を強く感じている。
自分と同じ手段を、自分よりも大きい規模で行う事ができる敵……そんなやつを相手に、どうやって戦えばいい?
「どうすればいいんだ、どうすれば……!!」
まるで子供が泣きじゃくるように膝を抱える切嗣。
初めて見るマスターの姿に、セイバーは茫然とするばかり。
アイリスフィールは愛情から、舞弥は義務感から切嗣を抱きしめ――
「あら?」
「……?」
と、不思議そうにお互いの顔を見つめ合うのだった。
* * * * *
【聖杯戦争二日目・・・終了】
【脱落者】
■マスター 不明
■サーヴァント 不明
【備考】
倉庫街の惨状を隠匿するのは非常に困難として、監督役より参加者へ向けて警告を行う予定――。
* * * * *
TO BE CONTINUED・・・
【補足】
読者の中には「何で時間止めてる間に爆発させねーの?」と疑問を覚える方もいらっしゃるかと思いますが、それをされると、どう頑張っても勝てないので……ほむほむの時間停止は、ジョジョ三部におけるDIO様の『世界』による謎ナイフ現象と同じように思ってください。
要は『当たる直前』で止まり、時間が動き出すと同時に直撃するという具合です。
スピードのある英霊ならスタプラのようにギリギリ回避可能、人間なら無理なタイミングです。
今回のような絨毯爆撃だと、一発一発は対応できても全部は躱し切れないので、一発当たった時点で足が止まり、残りは全弾命中となるでしょう。